手指や足指の労災事故における後遺障害等級は?労災保険や損害賠償額について解説 | アトム法律事務所弁護士法人

手指や足指の労災事故における後遺障害等級は?労災保険や損害賠償額について解説

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手足指の後遺障害等級|労災保険や損害賠償額

工事現場や作業現場では、機械に巻き込まれたり挟まれたりすることによって手足の指を負傷する事故が起こりえます。

事故によって指がうまく動かなくなるほか、指を切断してしまうケースもあるでしょう。指の機能障害や損失が、その後の日常生活に甚大な影響を及ぼすことは想像に難くありません。

今回は指の事故について支給を受けられる労災保険や損害賠償金について解説します。指の後遺障害になってしまった時にもらえる補償額がわかるので、ぜひご一読ください。

指の労災事故おける後遺障害等級の認定基準

欠損障害と機能障害がある

一部欠損・全欠損、しびれ、指が曲がらないなど労災により指に対して生じる後遺症の症状には様々なものがあります。
このような後遺症の症状が後遺障害に該当すると認定されれば、障害補償給付金、または、障害給付金を受けることが可能です。

労災保険における後遺障害の認定は、症状に応じて障害の程度を分類した後遺障害等級表を活用します。後遺障害等級表に記載されている症状に該当する場合には、後遺障害認定を受けることができるのです。

そして、各等級ごとに障害補償給付、または、障害給付の金額が定められているので、後遺障害等級表に当てはめることで支給額を割り出せます。

したがって、自分の症状が後遺障害等級の何級に該当するのかという点を知らなくてはなりません。労災事故における指の後遺障害は、大きく「欠損障害」と「機能障害」に分かれます。

ここでは、指の欠損障害と機能障害に関する後遺障害等級の認定基準を紹介します。

指の欠損障害|労災事故による指の切断

欠損障害とは、一言で言えば、手足の指を失った状態です。
後遺障害等級表では、指の欠損により以下のような等級が認定されます。

等級症状
第3級の5両手の手指を全部失ったもの
第6級の7一手の五の手指又は母指を含み四の手指を失ったもの
第7級の6一手の母指を含み三つの手指又は母指以外の四の手指を失ったもの
第8級の3一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指を失ったもの
第9級の8一手の母指又は母指以外の二の手指を失ったもの
第11級の6一手の手指、中指又は環指を失ったもの
第12級の8の2一手の小指を失ったもの
第13級の5一手の母指の指骨の一部を失ったもの
第14級の6一手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

親指の場合は指節間関節を失った状態を指し、その他の指は近位指節間関節より大きな部分を失った状態を指します。親指の場合は第一関節を、他の指は第二関節以上を失った状態と考えるとわかりやすくなるでしょう。

手の骨や関節図

手首以上の部位を失ったケースは上肢の欠損として扱われ、別の等級表が適用されるので注意してください。

指の機能障害|労災により指が曲がらない

機能障害とは、事故の影響によって指の動きに制限を課せられた状態に陥ることです。
後遺障害等級表において、指の機能障害については以下のような等級が認定されます。

等級症状
第4級の6両手の手指の全部の用を廃したもの
第7級の7一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの
第8級の4一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指の用を廃したもの
第9級の9一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指の用を廃したもの
第10級の6一手の母指又は母指以外の二の手指の用を廃したもの
第12級の9一手の手指、中指又は環指の用を廃したもの
第13級の4一手の小指の用を廃したもの
第14級の7一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

指の機能障害に関する後遺障害等級表では「手指の用を廃したもの」との言葉が用いられます。「手指の用を廃したもの」とは、以下のいずれかに該当する状態を指します。

  1. 手指の末節骨(第一関節より末端の部分)を半分以上失った状態
  2. 近位指節間関節(指先から二番目の関節)や中手指節関節(指先から三番目の関節)に著しいレベルの運動障害が生じている
  3. 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失した

2の運動障害とは、具体的には「手指の末節骨が2分の1以上失われた状態」もしくは「近位指節間関節や中手指節関節の可動域が健側可動域角度の半分以下に制限された状態」です。

3の表在感覚の脱失とは、感覚神経伝導速度検査によって感覚神経活動電位が検出されない場合に認定されます。

「手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」とは、以下のいずれかに該当する状態を指します。

  1. 遠位指節間関節が強直した
  2. 屈伸筋の損傷等原因が明らかで、自動で屈伸ができないもの又はこれに近い状態にあるもの

以上のような症状が生じてることについて、治療を行った医師に依頼して医学的に証明してもらいましょう。基本的には、後遺障害診断書を作成してもらうことになります。

その他にどのような証拠が必要となり、どのように収集するのかは、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

前提となる労災の認定要件

指の後遺障害について労災保険による給付を受けるためには、そもそも労災が発生したことについても認定を受けなければなりません。

労災認定を受けるには「業務災害」または「通勤災害」の要件に該当することが必要です。

  • 業務災害
    事業主の管理下や支配下にあり、業務行為を原因として労働者が負傷した
    作業中に工場の機械に巻き込まれた、機械の誤作動によって指を切断したといったケースが考えられます
  • 通勤災害
    通勤途中に労働者が負傷した
    会社に向かっている最中に交通事故に遭ったといったケースが考えれられます

それぞれの要件について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

会社は一人でも従業員を雇っている場合には、労災保険に加入しなくてはならないため、労災によって指に後遺障害が生じたのであれば、労災保険の給付を受けることが可能となります。
労働基準監督署に労災申請を行って下さい。

労災申請手続きに関して詳しく知りたい方は『労働災害の手続き・流れと適切な給付をもらうポイント』の記事で確認可能です。

指の後遺障害において支給される労災保険

前章では後遺障害等級の認定基準について解説しました。本質的に気になるのは、後遺障害の等級ではなく受け取ることができる給付金の金額でしょう。

指の事故で給付を受けられる労災保険にはいくつかの種類があります。金額を考えるにあたっては、労災保険の種類を把握することも重要です。こちらでは指の事故で受け取れる労災保険の種類や金額について解説します。

障害(補償)給付

障害補償給付または障害給付は、後遺障害等級に応じて算出される給付金です。業務災害の場合は障害補償給付、通勤災害の場合は障害給付という名目になります。

後遺障害等級は第1級~第14級に分かれており、該当する障害等級によって支給方法が異なることに注意が必要です。1級~7級の場合は年金として毎年支給を受けられますが、8級~14級では一時金として支給されます。

障害補償年金について、等級ごとの金額は以下のように算出されます。

等級計算式
第1級給付基礎日額の313日分
第2級給付基礎日額の277日分
第3級給付基礎日額の245日分
第4級給付基礎日額の213日分
第5級給付基礎日額の184日分
第6級給付基礎日額の156日分
第7級給付基礎日額の131日分

給付基礎日額とは労働基準法における平均賃金に相当する金額のことです。事故が発生した日の直近3ヵ月間で支払われた給料額から1日分の賃金を算出します。

指の切断や損傷では、手足指の全欠損における第3級が後遺障害で最も重い等級です。第3級の場合、給付基礎日額の245日分が支給されます。

たとえば、給付基礎日額が8,000円であれば、8,000×245=196万円を毎年受け取ることが可能です。

障害補償一時金について、等級ごとの金額は以下のようにして算出されます。

等級計算式
第8級給付基礎日額の503日分
第9級給付基礎日額の391日分
第10級給付基礎日額の302日分
第11級給付基礎日額の223日分
第12級給付基礎日額の156日分
第13級給付基礎日額の101日分
第14級給付基礎日額の56日分

また、障害補償給付には別途、一時金の障害特別支給金が受けられる場合もあります。

障害(補償)給付を受ける前に傷病(補償)年金を検討

障害(補償)給付を受けるには、これ以上は治療の効果が望めないという症状固定の状態になり、そのうえで後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

しかし、治療の開始から症状固定までの期間が長期に渡ることがあるのです。
そこで、治療の開始から症状固定にならずに1年6ヶ月が経過し、障害の程度が傷病等級に該当する場合には、傷病補償年金、または、傷病年金の給付を受けることが可能となります。

指に関する障害では「両手の手指を全部失ったもの」である場合は、傷病等級3級に該当するため、傷病(補償)年金の給付の対象となることがあるのです。
治療に時間がかかり、障害(補償)給付がなかなか受けられない場合には、傷病(補償)年金の給付について検討を行いましょう。

療養(補償)給付

療養補償給付または療養給付は、病院で治療する際に要した費用に対する補償です。治療費や薬代、手術代など幅広い項目の補償を受けられます。治療に必要といえる費用が支給されます。

ただし、労災指定病院や労災病院以外で治療を受けた場合、一度治療費を自己負担する必要です。申請することで、自己負担で拠出した金額が戻ってきます。

もっとも、費用請求権は2年で時効消滅してしまうので、早めに申請をしましょう。労災指定病院や労災病院で治療を受けた時は、上記の手続を要せず、治療の現物給付を受けられます。

休業(補償)給付

休業補償給付または休業給付は、労災事故による病気やケガが原因で働けなくなった時に受けられる補償です。

指の機能が制限されたり、指を失ってしまったりした場合、仕事を休まざるを得ない可能性も低くありません。休業(補償)給付が支給されれば、働けない期間の生活保障として機能します。

休業(補償)給付は給付基礎日額の80%相当が支給されます。つまり、働けていた頃にもらえた賃金の8割程度が支給されるといえるでしょう。

ただし、休業(補償)給付がもらえるのは、休業を開始してから4日目以降になってからです。最初の3日間は休業(補償)給付の支給は受けられません。
また、傷病(補償)年金を受けている間も、支給を受けることができません。

労災保険給付だけでなく損害賠償を請求するには?

労災保険では損害の補てんが不十分なことがある

労災保険による給付金額は機械的に算出される部分も大きく、満足な補償を受けられない可能性もあります。
また、事故によって生じた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料は、労災保険では給付されません。

そのため、不十分な部分について損害賠償を請求したいと感じる場面もあるでしょう。

業務災害であれば、監督していた会社側の法的義務違反を立証すれば、会社に対する損害賠償を請求することも可能です。
また、通勤災害であり、通勤災害発生の原因が第三者の故意や過失であるなら、第三者に対する損害賠償請求を行えます。

ここでは会社や第三者に損害賠償を請求する際の手続きなどを解説します。

会社側の安全配慮義務違反や第三者の故意・過失を立証する

会社の安全配慮義務違反を立証

労災事故で会社側の法的義務違反を追及するには、会社側の安全配慮義務違反を証明する必要があります。
会社は雇用関係にある従業員を安全・快適な環境で働かせなければならないという安全配慮義務を負っているのです。

そのため、会社側の安全配慮義務違反が原因で労災による損害が生じた場合には、会社側は損害賠償責任を負うことになります。

現場で指の巻き込まれ事故や切断事故が起きる背景には、機械のメンテナンス不足や安全管理体制に問題がある場合などが考えられます。そういった会社の管理体制の甘さを指摘し、安全配慮義務違反にもとづいた法的な責任を追及するのです。

ただし、事故が起きたからといって、必ずしも会社側に原因があるとはいえません。安全配慮義務違反を立証するには、会社が事故のリスクを認識していながら、対策を施していない、もしくは不十分だったと証明する必要があります。

関連記事では会社が安全配慮義務に違反しているかどうかを判断する基準や、損害賠償請求できる慰謝料について解説しています。

第三者の故意・過失を立証

第三者の故意・過失が原因で労働事故が生じている場合は、第三者に対する損害賠償が可能です。
通勤途中に第三者の不注意によって生じた交通事故に巻き込まれたり、駅のラッシュの際に第三者に突き飛ばされて怪我をした場合などのケースが考えられるでしょう。

また、第三者が業務中であった場合、例えばタクシー運転手が仕事中に交通事故を起こしてしまった場合などでは、第三者の使用者である会社に対しても損害賠償請求を行える可能性があります。
個人に対する損害賠償請求では、請求が認められても、資力が不十分であることから損が賠償金を得られない恐れがあるので、会社に対する請求が可能であれば、会社への請求を行うべきでしょう。

損害賠償により請求できる損害とは

指に後遺障害が生じた場合に、損害賠償によって請求できる損害は以下の通りです。

  • 治療費
    治療のために必要となった費用
  • 入通院交通費
    入院や通院するために発生した交通費
  • 入通院付添費用
    入院中の生活や通院する際に付添が必要な場合に発生する費用
  • 入院雑費
    入院中の生活用品や通信費用などをいう
  • 休業損害
    ケガの治療のために働けないことで生じる損害
  • 逸失利益
    後遺障害が生じたことで将来得られるはずの収入がられなくなったという損害
  • 慰謝料
    被害者に生じた精神的苦痛を金銭化したもの
  • 物損に関する費用

特に、後遺障害が生じた場合には慰謝料や逸失利益が高額となりやすいので、損害賠償請求によって労災保険給付では不十分な部分を補てんすべきでしょう。請求可能な金額を正確に知りたい場合は、専門家である弁護士に相談するべきです。

後遺障害が生じた際に得られる慰謝料の相場を知りたい方は『労災の後遺障害が残った場合の慰謝料の相場は?自賠責保険との併用はできる?』の記事をご覧ください。

指の後遺障害に関する請求は弁護士に相談

適切な後遺障害等級の認定を受けることができる

指に後遺障害が生じた場合として障害(補償)給付の支給を受けたり、損害賠償請求を行う場合には、後遺障害に該当する症状が生じていることを明らかにする必要があります。

しかし、後遺障害等級に該当する症状であることを証明するには専門的知識が欠かせません。治療してくれた医師に協力を依頼しても、医師は治療の専門家であり、後遺障害等級認定に関してまで詳しいとは限らないのです。

そのため、希望する等級の認定を受けるためには、後遺障害等級認定に関して詳しい弁護士に相談するべきでしょう。後遺障害等級認定を受けるために必要な証拠の内容や入手方法について知ることが可能です。

必要な手続きを代わりに行ってもらえる

弁護士に依頼すると、労働者が行うべき手続きや交渉を弁護士が代わりに行ってくれます。

労災保険給付を受けるための申請手続きについて、必要な書類の収集や作成を代わりに行ってもらうことが可能です。専門家である弁護士なら適切な手続きを行ってくれるでしょう。

また、損害賠償請求の手続きは一般的に、以下のような流れを踏みます。

  1. 会社と被害者の任意交渉
  2. 労働審判
  3. 訴訟

任意交渉ではマンパワーや証拠の有無などから、被害者側はどうしても不利に立たされます。専門的な知識の不足から、適正相場より低い賠償額を提示されても金額が妥当がどうかについて判断が難しいでしょう。

会社の思い通りにされないためにも、任意交渉の段階で弁護士に依頼しましょう。会社との交渉を代行しつつ、適切な主張を行ってくれるため、心強い味方が得られます。

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弁護士に相談や依頼を行うべきであるとしても、そのためにかかる費用が気になっている方は多いのではないでしょうか。

まずは、無料の法律相談を受けてみましょう。相談費用を気にすることなく疑問や不安を解消することが可能です。
また、相談の際に弁護士に依頼する必要性や、依頼した場合にかかる費用を確認し、依頼すべきかどうかを判断することもできます。

労災で手指や足指を失うなどの大きな後遺障害を負い、会社などに対する損害賠償請求を検討されている場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。

労災により指に後遺障害が生じたため今後の対応をどうすべきかお悩みの方は、一度ご相談ください。法律相談の予約受付は24時間体制で行っているので、いつでもご連絡可能です。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了