配偶者から不動産を相続するときの基礎知識|相続税の負担を減らす方法も

配偶者から不動産を相続する場合、相続の流れや相続税の基本について理解しておく必要があります。
また、配偶者から不動産を相続する場合に利用できる控除や特例などを知っておくと、相続税の負担を減らしつつ、不動産を相続することが可能です。
この記事では、配偶者から住宅を相続する際に知っておきたい基礎知識について解説します。
配偶者から不動産を相続する際の基本事項
配偶者から不動産を相続する流れ
配偶者から不動産を相続する流れは、以下のようになります。
- 相続人の確定
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せて、相続人を特定する - 遺産の調査・財産目録の作成
被相続人の財産をすべて洗い出して、財産目録を作成する - 遺産分割協議の実施
相続人全員が参加して、遺産をどのように分けるのかを話し合う - 遺産分割協議書の作成・署名押印
遺産分割の合意内容を書面にまとめて、相続人全員の署名・押印を行う - 相続税申告
相続税の申告・納付が必要な場合は、手続きを行う - 相続登記
相続した不動産の相続登記を行う
遺産の調査は漏れがないように注意
相続税の対象となる遺産を見落とすと、過少申告加算税や無申告加算税、延滞税などのペナルティが生じる恐れがあるので注意しましょう。
相続税の課税対象となる財産について知りたい方は『相続税の課税対象が一覧でわかる!課税対象外の財産も解説』の記事をご覧ください。
相続登記は義務
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。
義務化以前に発生した相続であっても、まだ相続登記が済んでいない不動産には登記義務があるので注意してください。
相続登記の期限
- 令和6年4月1日以降(義務化以降)の相続
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内
※その後に遺産分割が成立した場合は、成立日から3年以内に分割内容を反映した登記が必要 - 令和6年3月31日(義務化以前)までの相続
原則として2027年3月31日まで
※不動産を相続したことを2024年4月1日以後に知った場合は、その日から3年以内
正当な理由なく放置した場合は、10万円以下の過料が科されます(不動産登記法第164条1項)。
また、相続登記を行う際には相続税とは別に登録免許税を支払う必要があります。
登録免許税がいくらになるのかを知りたい方は『相続登記にかかる登録免許税の計算方法と軽減措置を解説』の記事をご覧ください。
相続した不動産に相続税がかかる条件|相続税の基礎控除
原則、小規模宅地等の特例などを適用する前の課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告が必要になります。
相続税の基礎控除とは、相続税の課税対象となる財産額から差し引くことができる金額です。
相続税の基礎控除額は、以下のように計算します。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
基礎控除額は、法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円です。
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相続税の申告期限は10か月以内
相続税の申告・納付が必要な場合は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。
申告書の提出方法は、持参や郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。
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相続税申告書の概要と記載内容
相続税の申告書は、相続税の課税対象となる財産や相続税額などを申告するための書類です。
相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。
申告書には、以下の情報などを記載します。
- 被相続人および相続人の氏名、住所、生年月日
- 相続財産の種類、評価額
- 課税遺産の総額、相続税の総額
相続税申告書は、正確に記入することが重要です。
記載に誤りがある場合は、税務署から指摘を受ける可能性があります。
相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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不動産の相続税評価額の計算方法
相続税を計算する際には、対象となる財産の相続税評価額を明らかにする必要があります。
不動産の相続税評価額は、土地部分と建物部分に分けて評価額を出し、合算して算定するのです。
住宅の土地部分の評価方法
土地は原則として時価を基準とし、路線価方式または倍率方式を用いて計算します。
路線価方式の基本計算式
- 相続税評価額 = 路線価(円/㎡)× 補正率 × 地積(㎡)
倍率方式の基本計算式
- 相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
土地は相続税法上「時価」により評価するとされていますが、実務では国税庁が定める路線価方式または倍率方式を用いて算出し、この評価額は実際の売買価格(実勢価格)と必ずしも一致しない点に注意が必要です。
より詳しい評価方法を知りたい方は『土地の相続税評価額の計算方法と形状による減額補正をわかりやすく解説』の記事をご覧ください。
住宅の建物部分の評価方法
一般的な家屋は、固定資産税評価額を基準に「固定資産税評価額×1.0」で評価します。
ただし、建物を有償で貸している場合には計算方法が異なり、一定の分譲マンションは区分所有補正率による補正が必要です。
より詳しい計算方法を知りたい場合は『建物の相続税評価額の計算方法|築年数の影響と家屋の評価』の記事で確認可能です。
被相続人が亡くなって住宅を相続する配偶者は、住宅の相続税評価額を正しく把握することが重要です。
相続税評価額を過大に出してしまうと、相続税の負担が大きくなります。反対に、過少評価した場合は過少申告加算税等のペナルティの対象になる可能性があるでしょう。
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相続税評価額とは?土地や建物ごとの計算方法・調べ方と固定資産税評価額との違い
税務調査を受けやすいケースとは
税務調査とは、税務署が納税者の申告内容を調査し、正確な申告が行われているかどうかを調査するためのものです。
税務調査は、納税者全員に行われる可能性がありますが、特に以下のケースでは、税務調査の対象になりやすいと考えられます。
- 相続財産全体の評価額が大きい場合
- 申告額に対して不自然な点がある場合
- 過去に悪質な申告漏れや申告内容に誤りがある場合
特に、評価額の高い不動産を相続する場合、税務調査の対象になりやすいため注意が必要です。
税務調査の対象となった場合、税務署から申告内容について説明を求められることもあります。
また、申告内容に不備や誤りがあると、修正申告を促されることもあるでしょう。
税務調査のリスクを避けるためにも、申告書の記載内容や添付書類を誤りなく作成することが重要です。
相続税に強い税理士に相談し、申告書の作成や税務調査対策を依頼することも検討しましょう。
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不動産相続に関して配偶者が利用できる控除・特例
配偶者控除(配偶者の税額軽減)で相続税の負担を大幅に軽減
相続税における配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税が減額される制度です。
配偶者控除の適用により、配偶者が取得した財産の額が1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば、配偶者の相続税額が0円になります。
配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人と法律上の結婚関係にある
- 原則として、相続税の申告期限までに遺産分割が完了している
- 必要書類を添付して相続税の申告を行う
なお、申告期限までに遺産分割が完了していなくても、一定の手続きを行えば、分割後に配偶者控除を適用できる場合があります。
遺産が高額になる場合は、配偶者控除の適用も検討しましょう。
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相続後も配偶者が家に居住できる「配偶者居住権」
配偶者居住権とは、被相続人が亡くなった後も、配偶者が自宅に住み続けることができる権利です。
配偶者居住権を設定することで、残された配偶者は、自宅を他の相続人が相続しても住み続けることができ、相続税の負担も軽減できます。
配偶者居住権を設定するには、以下の要件を満たしている必要があります。
配偶者居住権の要件
- 人的要件
被相続人の法律上の配偶者であること(内縁の配偶者は対象外) - 建物の要件
- 被相続人の単独所有建物、または被相続人と配偶者の共有建物であること
※被相続人が配偶者以外の者と共有していた建物には、配偶者居住権を設定できない - 相続開始時点で配偶者が居住していた建物であること
- 被相続人の単独所有建物、または被相続人と配偶者の共有建物であること
- 取得方法の要件(以下のいずれかによって取得する)
- 家庭裁判所の審判
- 遺産分割協議による取得
- 遺言による遺贈
- 死因贈与契約
要件を満たせば配偶者居住権を設定できますが、第三者に対して居住の権利を主張するためには、登記をしておく必要があります。
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配偶者居住権の相続税評価額は?計算方法や評価明細書の書き方、節税効果
小規模宅地等の特例で不動産の相続税評価額を減額
小規模宅地の特例(正式名称:小規模宅地等の特例)とは、土地を相続したときに一定の要件を満たしている場合、その土地の評価額を減額できる制度です。
減額の程度については土地の種類によって違いがありますが、「特定居住用宅地等」に該当する土地ならば330㎡を限度に80%の減額が可能となります。
小規模宅地等の特例を適用できる土地の種類は、以下のとおりです。
- 特定居住用宅地等:被相続人(または生計を一にする親族)の自宅などとして使用
- 特定事業用宅地等:被相続人が個人事業で使用
- 特定同族会社事業用宅地等:被相続人の会社(同族会社)として使用
- 貸付事業用宅地等:被相続人が貸地や貸家など貸し付け用として使用
配偶者から自宅を相続する場合は、特定居住用宅地等に該当し、土地の相続税評価額を80%減額することが可能です。
被相続人が事業を営んでいた土地を配偶者から相続した場合は、事業の継続や宅地の保有などの要件を満たすことで特例による減額が可能となるでしょう。
小規模宅地等の特例を適用できる要件は複雑なケースもあるため、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
また、小規模宅地等の特例を利用するためには、原則として申告期限までに遺産分割が終了しており、申告書を提出することが必要です。
小規模宅地等の特例の制度に関して詳しく知りたい方は『小規模宅地等の特例とは?要件・計算方法をわかりやすく解説【フローチャート付き】』の記事をご覧ください。
配偶者からの不動産相続に関するよくある質問
被相続人(配偶者)の住宅を相続した場合、相続税はかかりますか?
被相続人の配偶者の場合、配偶者控除(配偶者の税額軽減)の適用により相続税がかからない場合もあります。
配偶者控除とは、配偶者の取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれが多いほうの金額まで、配偶者の相続税負担を軽減する制度です。
ただし、配偶者控除の制度を利用するには、税額が0円になる場合も申告書の提出が必要となります。
住宅を相続する際、相続税の申告はいつまでに行えばいいですか?
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
申告期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。
そのため、相続税の申告は、必ず期限内に行うようにしましょう。
相続税の申告にはどのような書類が必要ですか?
相続内容によって異なりますが、一般的に、相続税の申告には以下の書類などが必要です。
- 相続税申告書
- 遺言書または遺産分割協議書
- 印鑑登録証明書
- 登記簿謄本
- 固定資産評価証明書
- 住宅地図
- 路線価図または倍率表
- 預貯金の残高証明書
- 死亡保険金支払通知書
配偶者から住宅を相続する場合、どのような節税対策ができますか?
配偶者から住宅を相続する場合の節税対策として、以下の方法などが考えられます。
- 配偶者控除の適用
- 小規模宅地等の特例の適用
これらの適用について検討することで、配偶者にかかる相続税負担を軽減できるでしょう。
相続について税理士に相談すると、どんなメリットがありますか?
相続税について税理士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 相続税の基礎知識や節税対策をアドバイスしてもらえる
- 相続税の申告書の作成を代行してもらえる
- 税務調査が行われた場合もサポートしてもらえる
相続税の申告には、専門的な知識や相続財産の正しい評価が求められます。
そのため、相続税に強い税理士に依頼することで、安心して相続税申告を進めることができるでしょう。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。
ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士