【空き家の相続手続き】親の遺産相続で子供が知っておきたいこと
父または母が他界し、もう一方の親も亡くなった場合は子供が遺産を相続します。空き家の相続が発生したときは、遺産分割協議や相続登記、相続税の申告などを期限内に完了させる必要があります。円満な相続や手続きをスムーズに進めるためにも、あらかじめ知識を身につけておくと安心です。
この記事では、親名義の空き家を子供が相続するときの基礎知識についてわかりやすく解説します。
『親名義の空き家相続』に関する基本事項
問題になりつつある空き家
放置されている空き家は地域の景観や治安の悪化につながるだけでなく、防災や防犯などの面でも問題となっています。そのため、近年では空き家対策を推進する動きが全国的に広まっています。
相続財産に空き家が含まれる場合は、状況に応じて適切な対応をすることが重要です。
法定相続分による相続割合【子供が相続する場合】
相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるのが法定相続分です。子供だけで相続する場合は、子供の人数で均等に分割します。
- 子供1人:全額
- 子供2人:1人あたり1/2
- 子供3人:1人あたり1/3
- 子供4人:1人あたり1/4
親が亡くなって8,000万円の遺産が発生し、子供2人で相続する場合は4,000万円ずつで分けます。
ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。それぞれの相続割合によって相続税の総額が変わることがあるので、税負担も考慮した遺産分割を行う必要があります。
空き家を相続するときの手続きの流れ
空き家を相続する場合は、以下のような流れで手続きを進めます。
1.遺言書の有無を確認する
被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。
2.相続人を確認する
相続人となるのは被相続人の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹などです。このとき相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認する場合もあります。
3.相続財産を確認する
相続財産調査を行い、空き家やその他の不動産、預貯金など、どのような財産があるのか、評価額はいくらなのかを確認します。
4.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、相続財産をどのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。
5.相続登記の申請手続きを行う
遺産分割協議が成立したら相続登記の申請手続きを行い、空き家の名義を相続人に変更します。なお、空き家の相続手続きは、売却する場合も必要です。
6.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、相続税額が発生した場合は納税も行います。
相続手続きは時間と手間がかかるため、早めに準備を進めるようにしましょう。
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空き家の相続税評価額を計算する方法
空き家の相続税評価額は、一軒家などと同様に家屋と敷地に分けて評価額を算出し、合算で算定します。
家屋部分の評価方法
空き家の家屋部分は、固定資産税評価額×1.0で評価します。固定資産税評価額とは、自治体ごとに個々の不動産に対して毎年算定されるものです。
家屋の評価額=固定資産税評価額×1.0
敷地部分の評価方法
空き家の敷地部分は、路線価方式または倍率方式のいずれかで評価します。
路線価方式
路線価方式とは、国税庁が毎年公表する、道路に面する宅地の1㎡あたりの価額(路線価)に、土地の面積を乗じて算出する方法です。
敷地の評価額=1㎡あたりの路線価×面積
1㎡あたりの路線価が50万円で敷地面積が100㎡の場合、評価額は5,000万円になります。
倍率方式
倍率方式は、路線価が設定されていない土地を評価する際に使われる方法です。倍率方式では、土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算出します。固定資産税評価額は、市区町村が土地ごとに毎年算定しています。倍率は、土地の所在地域によって異なります。
敷地の評価額=固定資産税評価額×倍率
固定資産税評価額が2,500万円で倍率が1.1倍の場合、評価額は2,750万円となります。
空き家の相続税評価額を過大に出してしまうと、相続税負担は大きくなります。反対に、過少評価をしても税務調査を受けるリスクが高くなるため、いずれも注意が必要です。
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相続税における基礎控除の概要と計算方法
相続税は遺産のすべてに対して課税されるわけではなく、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生します。また、場合によっては相続税額が発生することもあります。
相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
法定相続人が子供1人の場合は3,600万円、子供2人の場合は4,200万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。
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空き家の相続に小規模宅地等の特例が適用できる場合も
小規模宅地等の特例とは、要件を満たす土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。そのため、小規模宅地等の特例は、相続税額の大幅な負担減につながります。
空き家の相続には原則として小規模宅地等の特例を適用できませんが、一定の要件を満たす場合に限り、適用可能なケースもあります。
空き家の相続で小規模住宅地等の特例が適用できるケースとしては、被相続人が老人ホームなどに入居しており、一時的に空き家になっていた場合などが考えられます。
相続する空き家が要件を満たしているかどうか、専門家に相談してみましょう。
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空き家の売却で3,000万円の控除が適用される空き家特例とは
空き家を相続しても誰も住まないため、売却を検討するというケースも多いでしょう。空き家を2027年12月31日までに売却した場合は、譲渡所得から最大で3,000万円の控除が受けられる、空き家特例が適用できます。
対象となる空き家は、以下の要件を満たしているものに限ります。
- 空き家を相続または遺贈により取得していること
- 1981年5月31日以前に建築された建物であること
- 区分所有建物登記がされている建物ではないこと
- 相続開始の直前に被相続人のみが居住していたこと
かつ、空き家特例の控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 相続から売却譲渡までに貸家や居住をしていなかったこと
- 耐震基準を満たす空き家、または空き家を取り壊して更地になっていること
- 被相続人が亡くなった日から3年後の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
- 空き家の売却先が親子や夫婦など特別な関係ではないこと
- 売却した空き家は特例や控除などを受けていないこと
なお、2024年1月1日以降は、相続人が3人以上の場合の控除額は2,000万円となります。空き家を売却する際には、適用条件を確認してみましょう。
相続税の申告方法と申告期限
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書は税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほかe-Tax(電子申告)でも可能です。
相続税の申告書作成は自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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空き家の相続登記手続きと費用の相場
空き家などの不動産を相続した場合は相続登記の申請を行い、相続人に名義を変更する必要があります。相続登記の手続きは、民法上では被相続人の死亡日から10年以内が時効とされていましたが、2024年4月からは、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に行うことが義務付けられました。
相続登記の申請手続きに必要な書類
空き家の相続登記には、以下の書類が必要です。
- 登記申請書
- 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から亡くなるまでのすべての謄本)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
- 空き家を相続する相続人の住民票
- 固定資産課税明細書
- 相続関係説明図(戸籍謄本・除籍謄本の原本の還付を希望しない場合は不要)
- 遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合のみ)
相続登記の申請手続きは法務局で行いますが、申請方法は、法務局の窓口または郵送の2通りあります。
相続登記の申請手続きにかかる費用
相続登記にかかる費用は、必要書類の取得費のほか、申請時に納める登録免許税、司法書士への報酬などがあります。
必要書類の取得費は、それぞれ数百円程度です。相続登記の登録免許税は、空き家の固定資産税評価額に税率(0.4%)を乗じて計算します。たとえば、3,000万円の空き家にかかる登録免許税は12万円です。
司法書士の報酬はさまざまですが、相場は10万円~20万円程度と考えておくとよいでしょう。司法書士に依頼する場合は、複数の司法書士から見積もりをとり、比較検討することをおすすめします。
相続登記は手続きが複雑で、費用もかかります。相続人が決まったら、早めに手続きを進めましょう。
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空き家を相続する際の注意点
空き家を相続する際には、以下の点に注意が必要です。
空き家を放置したままにしない
空き家の相続において、状況把握は非常に重要です。放置したままにすると、不動産の資産価値が下がるほか、近隣トラブルのもとにもつながりかねません。
空き家にかかる維持費をの目安を把握しておく
空き家を相続すると、維持費がかかります。具体的には、毎年納める固定資産税や都市計画税のほか、老朽化にともなう修繕費用などが考えられます。こうした維持費がかかることも考慮した上で、検討しましょう。
『親名義の空き家相続』に関するよくある質問
空き家の相続で3,000万円の控除を受ける条件は?
空き家の売却で、譲渡所得から最大3,000万円の控除が受けられる空き家特例の要件は、以下のとおりです。なお、2024年1月1日以降は、相続人が3人以上の場合の控除額は2,000万円となります。
・空き家を相続または遺贈により取得している
・2027年12月31日までに空き家を売却する
・1981年5月31日以前に建築された建物である
・区分所有建物登記がされている建物ではない
・相続開始の直前に被相続人のみが居住していた
・相続から売却譲渡までに貸家や居住をしていなかった
・耐震基準を満たす空き家、または空き家を取り壊して更地になっている
・被相続人が亡くなった日から3年後の12月31日までに売却する
・売却代金が1億円以下である
・空き家の売却先が親子や夫婦など特別な関係ではない
・売却した空き家は特例や控除などを受けていない
誰も住んでいない家にも税金がかかる?
かかります。相続後に空き家状態になった家にも固定資産税と都市計画税が毎年課税されます。
相続後に空き家を売却したら税金がかかる?
相続後に空き家を売却する際、売買契約の際に印紙税が必要になるほか、売却益が出た場合には譲渡所得税(所得税と住民税)がかかります。ただし、空き家の譲渡所得の特別控除として譲渡益から3,000万円を控除できる場合があります。
空き家を解体して更地にしても税金はかかる?
はい。空き家を解体して更地にしても、固定資産税と都市計画税が課税されます。
空き家を解体するにはいくらかかりますか?
建物の構造や地域によって差はありますが、1坪あたり2~6万円が相場といわれています。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士