配偶者と子供で骨董品や美術品を相続する際に知っておきたいこと
被相続人が所有していた骨董品や美術品は、相続税の対象となる財産です。そのため、相続手続きの流れや相続税評価額の計算方法について理解しておく必要があります。この記事では、配偶者と子供で被相続人の骨董品や美術品を相続する際に知っておきたい基礎知識を、わかりやすく解説します。
『配偶者と子供による骨董品・美術品の相続』に関する基本事項
骨董品や美術品を相続するときの手続きの流れ
骨董品や美術品を相続する場合は、以下の流れで手続きを行います。
1.遺言書の有無を確認する
被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。
2.相続人を確認する
相続人となるのは、被相続人の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹などです。このとき相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認する場合もあります。
3.相続財産を確認する
相続財産調査を行い、骨董品・美術品のほかに不動産や預貯金など、どのような財産があるのか、評価額はいくらなのかを確認します。
4.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、どのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。
5.相続税の申告・納税を行う
相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、必要に応じて納税も行います。
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骨董品・美術品の相続税評価額を計算する方法
骨董品や美術品の相続評価は、原則として時価で行います。しかし、骨董品や美術品は、人気度や希少性などにより価値が大きく変動しやすいことから、時価を正確に評価するのが難しい場合もあります。そのため、以下の情報などをもとに評価を行います。
- 類似品の販売価格(売買実例価格)
- 美術商などによる鑑定価格(精通者意見価格)
なお、評価額が5万円以下の美術品や骨董品は、同程度の価値をもつ宝石や貴金属などと合算し、合計額で申告します。一方、5万円以上のものは個別に評価を行います。
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法定相続分による相続割合【配偶者と子供で相続する場合】
配偶者と子供の法定相続分は2分の1ずつです。子供が複数人いる場合は、遺産の2分の1を子供の人数で均等に分割します。
法定相続人 | 相続割合 |
---|---|
配偶者+子1人 | 配偶者:1/2 子:1/2 |
配偶者+子2人 | 配偶者:1/2 子:1人あたり1/4 |
配偶者+子3人 | 配偶者:1/2 子:1人あたり1/6 |
被相続人が亡くなって2億円の相続が発生し、配偶者と子2人が相続人となった場合、配偶者の法定相続分は1億円、子の法定相続分は5,000万円ずつになります。
法定相続分は、相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるものです。ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。
相続税における基礎控除の概要と計算方法
相続税は、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生し、場合によっては相続税額が発生することもあります。相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
たとえば、法定相続人が配偶者と子供1人の場合は4,200万円、配偶者と子供2人の場合は4,800万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。
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相続税の申告方法と申告期限
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書は、税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。
相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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配偶者控除で配偶者分の相続税負担を軽減
相続税における配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人と法律上の結婚関係にある
- 遺産分割が完了している
- 相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出する
たとえば、被相続人が配偶者と子供2人を残して亡くなり、相続財産の合計が2億円の場合、配偶者の法定相続分は1億円です。このとき配偶者控除を適用することで、配偶者分の相続税は0円になります。
ただし、のちに配偶者が亡くなって配偶者の財産を子供が相続するときに、相続税負担が増える可能性があるため注意が必要です。そのため、相続税を節税するための最善策を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。
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『配偶者と子供による骨董品・美術品の相続』に関するよくある質問
骨董品・美術品は相続税の対象になりますか?
骨董品や美術品は、相続税の対象となる財産です。そのため、相続した場合は評価額の算定を行う必要があります。
骨董品・美術品の相続税評価額はいくらですか?
骨董品や美術品は、同様の商品の市場価格、美術商などによる鑑定価格などをもとに評価します。ただし、骨董品や美術品は価値が大きく変動しやすいことから、専門家に鑑定を依頼し、適切な評価額を算定してもらうことをおすすめします。
相続した骨董品・美術品を売却したら相続税はかかりますか?
骨董品・美術品を売却し、利益が出た場合は相続税ではなく譲渡所得税と住民税がかかる可能性があります。
相続税の納税期限はいつまでですか?
相続税の納税期限は、申告期限と同じく被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。
骨董品・美術品を寄付すると相続税はどうなりますか?
高価な骨董品や美術品を相続し、相続税負担が大きくなる場合は、美術館などに寄付することで負担を減らす方法もあります。寄付にすると、相続財産の非課税財産となります。ただし、寄付による相続税の非課税は寄付先が公益法人などに限定されているので、寄付を検討する際は、寄付先に相続税の非課税控除が受けられるか確認しましょう。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士