財産目録の書き方|相続で必要な場面や注意点も解説【記載例付き】

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財産目録とは、亡くなった方が所有していた全ての財産を種類ごとに整理した一覧表です。作成しておくことで、相続人同士のトラブル防止や、相続税申告・遺産分割協議をスムーズに進められます。

相続税申告では、財産目録を独立した書類として作成する義務はありません

ただし、限定承認をする場合は家庭裁判所への提出が必要です。遺産分割調停でも、財産目録などの提出を求められることがあります。

この記事では、財産目録を作成するメリットや書き方、注意点を記載例付きで解説します。これから作成する方は、ぜひ参考にしてください。

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財産目録とは

被相続人の財産を一覧にしたもの|具体的な内容は?

財産目録とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた全ての財産の内容が一覧でわかるようにまとめたものです。遺産目録とも呼びます。

現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も書く必要があります。

財産目録に記載する財産

  • プラスの財産
    預貯金、有価証券、保険、不動産、自動車 など
  • マイナスの財産
    ローン、クレジットカード、借入金 など

作成は義務ではないが作ることが多い|役立つ場面

財産目録の作成は基本的には義務ではありません。

しかし、遺産相続では相続財産の正確な把握が必要となる場面が多いため、実務上は財産目録を作成し、それをもとにさまざまな手続きを進めることが多いです。

財産目録が特に役に立つ場面としては、以下が挙げられます。

  • 遺言書の作成
  • 遺産分割協議
  • 相続税申告

遺産分割協議とは、法定相続分や遺言による分割をしない場合に、相続人全員で遺産の分割について話し合うことです。

司法統計によると、令和7年に家庭裁判所で認容・調停成立した遺産分割事件のうち、遺産総額5,000万円以下のケースが約78%を占めています(最高裁判所「令和7年 司法統計年報 家事編」)。

遺産分割をめぐるトラブルは、遺産額が多い場合に限って起こるものではありません。遺産額にかかわらず、財産目録を作成しておくと、相続財産の把握や遺産分割の話し合いに役立ちます。

なお、限定承認をする場合は、相続財産の目録を作成して家庭裁判所へ提出する必要があります。遺産分割調停を申し立てる場合も、裁判所の案内に従って遺産目録などを提出します。

財産目録を作成する目的・メリット

先述の通り、基本的に財産目録の作成は義務ではありません。しかし、作成しておくと以下のようなメリットがあります。

  • 相続発生後の手続きを円滑に進める
  • 効率的な相続税対策を行う
  • 相続税の申告漏れを防ぐ

ひとつずつ解説していきます。

相続発生後の手続きを円滑に進める

財産目録があると、相続放棄をするかの判断や、相続人同士で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議に役立ちます。

相続発生後は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・相続放棄・限定承認のいずれを選ぶか判断する必要があります。

財産目録を作成しておけば、相続財産の全体像を把握しやすくなり、遺産分割協議や相続税申告などの手続きを進めやすくなります。反対に、財産目録がなければ、まず相続財産を調査したうえで、相続放棄や遺産分割について検討しなければなりません。

限られた期間で相続手続きを進めるためにも、あらかじめ財産目録を作成しておくとよいでしょう。

効率的な相続税対策を行う

被相続人が生前に財産目録を作成しておくと、相続財産の全体像を把握しやすくなり、相続税がかかる可能性や必要な対策を検討しやすくなります。

相続税は、非課税財産や債務・葬式費用を差し引き、一定の贈与財産を加算して求めた正味の遺産額が、基礎控除額を超える場合にかかります。基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で計算します。

財産目録があれば、正味の遺産額が基礎控除額をどの程度上回るかを確認しやすくなります。そのうえで、生前贈与などの方法を検討すれば、将来の相続税負担を抑えられる場合があります。

相続税の申告漏れを防ぐ

財産に見落としがある状態で相続税申告をしてしまうと、あとから修正申告などの手続きが必要になることがあります。

追加納税が発生した場合には、延滞税や過少申告加算税が課される可能性もあるため、余裕をもって適切に相続税申告を行うためにも、財産目録は重要です。

関連記事

財産目録に記載する財産を漏れなく確認する方法

財産目録を作成する際にはまず、財産を漏れなく確認する必要があります。
しかし、被相続人自身でも詳細を覚えていない財産や、存在自体を忘れている財産がある可能性は否定できません。

相続人が財産目録を作るならなおさら、財産の見落としのリスクがあります。

以下の方法も参考にして、どのような財産があるか確認してみましょう。

財産確認方法
預貯金・金融機関に残高照会をかける
・メールや郵便物を確認する
・通帳の引き落とし履歴を確認する
株式・証券保管振替機構(ほふり)に開示請求をする
・証券会社や信託銀行等からの取引報告書を確認する
不動産・名寄帳を取得する
※不動産があると思われる市区町村ごとに取得が必要
生命保険・生命保険契約照会制度を利用する
・メールや郵便物を確認する
借入金・保証債務・信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)に照会する
・郵便物や契約書を確認する

相続税の対象となる財産については、関連記事『相続税の課税対象が一覧でわかる!課税対象外の財産も解説』にて詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。

【記載例付き】財産目録の書き方

財産目録は、作成方法や様式などが法律で決められているわけではありません。

そのため、手書きをしても構いませんし、パソコンで作成しても問題ありません。

しかし、相続手続きを円滑に進めるために、一般的に用いられている財産目録と同じように作成することが望ましいといえます。

ここでは、裁判所のホームページで公開されている遺産分割調停用の目録様式を参考に、財産目録の書き方を解説します。目録様式はこちらからダウンロードできます。

預貯金・現金の財産目録

現金・預貯金の財産目録

預貯金は、口座ごとに金融機関名・支店名・口座種別・口座番号などを記載します。

口座に預けていない現金がある場合は、保管場所もあわせて記載しましょう。また、通帳のないネットバンキングの預貯金も忘れずに記載してください。

財産目録をスムーズに作成するために、金融機関から残高証明書を取得しておくことをおすすめします。残高証明書について詳しくは、関連記事『相続税申告に残高証明書は必要?通帳ではダメな理由と取得方法』をお読みください。

名義預金も要記載

名義預金とは、口座の名義は家族等になっていても、実質的には被相続人の財産と判断される預金のことです。

単に名義人と入金者が異なるだけで名義預金になるわけではなく、贈与が成立していたかどうか(通帳・印鑑の管理状況、贈与契約の有無など)を踏まえて実質的な帰属が判断されます。

典型的なのは、母親が息子名義の口座に入金していても、実際には母親が管理を続けており贈与が成立していなかったケースです。

このように実質的に被相続人の財産と認められる場合は、名義預金として相続税の課税対象になります。

被相続人名義以外の預貯金口座がある場合も、名義預金に該当する可能性がないか確認し、該当する場合は財産目録に記載して遺産分割協議の対象に含めるようにしましょう。

関連記事

名義預金は贈与税・相続税がかかる?名義預金の認定の回避策も解説

有価証券等の財産目録

遺産分割調停用の目録様式では、預貯金と同じ「現金,預貯金,株式等遺産目録」に株式や投資信託もあわせて記載します。

上場株式や上場投資信託の評価額はインターネットで調べられます。しかし、非上場株式(自社株)がある場合は評価が難しくなるため、専門家に相談したほうが良いでしょう。

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生命保険等の財産目録

生命保険の死亡保険金は、原則として受取人固有の財産です。そのため、遺産分割の対象にはならず、遺産分割調停用の目録様式にも生命保険の記載欄はありません。

一方、死亡保険金は契約内容によって相続税・所得税・贈与税の対象になる場合があります。税務上の確認用として、財産目録とは別に整理しておくとよいでしょう。

詳しくは関連記事『生命保険の死亡保険金に相続税はかかる?非課税枠や税金の計算を解説』をご覧ください。

不動産(土地・建物)の財産目録

土地の財産目録

不動産の評価額は、土地と建物でわけて算出します。

土地の評価額は、国税庁が定めた路線価を用いて算出する路線価方式と、路線価がない地域で使用する倍率方式のどちらかで求めます。

自宅など自分で使用している建物は、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。

一方、貸家は、固定資産税評価額から借家権割合と賃貸割合に応じた金額を差し引いて評価します。固定資産税評価額は、固定資産税課税明細書などで確認できます。

不動産の評価額の計算方法や、貸し出しているとどのくらい減額されるのか知りたい方は、関連記事をお読みください。

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その他の財産目録

預貯金や不動産、有価証券などに当てはまらない財産(自動車、貴金属、骨董品など)も整理しておきましょう。

遺産分割調停用の目録様式は裁判所によって異なるため、該当する記載欄がない場合は、任意の様式で品目や評価額、保管場所などをまとめておくと、遺産分割協議や相続税申告の際に役立ちます。

その他の財産目録

負債の財産目録

マイナスの財産がある場合は、借入金などの負債も財産目録に整理しておきましょう。

負債として記載する主な項目は、以下のとおりです。

  • 借金、買掛金
  • 住宅ローンの残額
  • 未払い家賃、滞納税、クレジットカード利用代金など

借入金については、残高や返済状況も整理しておくと、相続放棄を検討する際に役立ちます。

なお、葬儀費用は被相続人の債務ではありませんが、一定のものは相続税の計算上、相続財産から控除できます。

詳しくは関連記事『納骨費用・葬式費用は相続税で控除できる!対象範囲や計算方法を解説』をお読みください。

財産目録を作成・確認するときの注意点

財産目録を作成・確認する際には以下の点に注意しましょう。

  • 特定の事情を記載する
  • いつの時点での評価額かを明記する
  • 生前に作成したものは相続時に見直す

それぞれについて詳しく解説します。

特定の事情を記載する

財産目録を作成する際は、単に財産名や金額を記載するだけでなく、相続に関係する特別な事情も記載しておくことが重要です。

たとえば、不動産が共有名義である場合や、預貯金口座が実質的には被相続人の財産である「名義預金」に該当する可能性がある場合などは、その旨を補足しておくと後のトラブル防止につながります。

また、借入金について連帯保証人がいる場合や、返済状況に注意点がある場合も、あわせて記載しておくとよいでしょう。

財産の背景事情まで整理しておくことで、遺産分割協議や相続税申告をスムーズに進めやすくなります。

いつの時点での評価額かを明記する

株式や投資信託などの有価証券、不動産などは時期によって価額が変動します。評価時点が不明確だと後から混乱が生じる可能性があるので、いつ時点の金額か明記しておきましょう。

また、固定資産税評価額や路線価など、どの基準で評価した金額なのかもあわせて記載しておくと、確認や見直しがしやすくなります。

生前に作成したものは相続時に見直す

被相続人が生前に財産目録を作成していた場合でも、その内容をそのまま相続時に使用できるとは限りません。

預貯金残高や保有株式、不動産の状況などは時間の経過とともに変化するため、相続発生時には最新の内容に更新する必要があります。

また、生前には把握していなかった借入金や未払い費用が見つかるケースや、財産目録作成後に新たに取得した財産が存在するケースもあります。

古い情報のまま遺産分割や相続税申告を進めると、財産の漏れや申告ミスにつながる可能性があるため注意が必要です。

生前作成の財産目録がある場合でも、相続開始後に通帳や証券会社の取引報告書、不動産資料などを確認し、最新の内容へ見直しましょう。

相続税の財産目録についてよくある質問

Q. 財産目録は税務署に提出する必要がありますか?

財産目録自体を税務署へ提出する法的義務はありません。

ただし、相続税の申告書には財産の明細を記載する必要があり、財産目録はその作成資料として役立ちます。

Q. 財産目録の作成は遺産が少ない家庭でも必要ですか?

遺産が少ない場合でも、財産目録を作成しておくとよいでしょう。

司法統計によると、令和7年に家庭裁判所で認容・調停成立した遺産分割事件のうち、遺産総額5,000万円以下のケースが約78%を占めています(最高裁判所「令和7年 司法統計年報 家事編」)。

Q. 生前に財産目録を作成した場合、法的な効力はありますか?

生前に作成した財産目録自体に法的な効力はありません。

ただし、遺言書に添付する場合は、法律で定められた形式に従って作成する必要があります。

Q. 財産目録に記載漏れがあった場合はどうなりますか?

記載漏れが見つかった場合は、判明した財産を財産目録に追加します。

すでに相続税を申告しており、記載漏れによって相続税額が増える場合は、修正申告が必要になることがあります。

財産目録の作成に不安がある方は税理士に相談

財産目録の作成自体は難しいものではありません。

しかし、問題なのは財産目録に書く情報の収集です。たとえば、不動産や有価証券の評価額は算出方法が複雑なケースも多いです。

もし財産目録の内容が間違っていると、遺産分割協議や相続税申告にも影響が出てしまいます。

現金の保管場所や複数の口座、生命保険契約などは見落としが起きやすいポイントです。財産目録を作成する方は、一度相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。

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高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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