パワーカップルの離婚で注意すべきポイント|有利に離婚するためには
パワーカップルは、一般的な夫婦と比べて多くの共有財産をもち、住宅やマンションをペアローンで購入している方も多いです。
離婚する際、共有財産は財産分与によって分配できますが、分与額が高額になることから財産分与の割合で揉めてなかなか離婚に応じてくれないケースもみられます。
また、ペアローンの住宅・マンションに離婚後も住み続けるには原則として単独名義の変更が必要であり、ローン額によっては名義変更が認められないこともあります。
今回は、一般的な離婚にはない、パワーカップル離婚の特徴、財産分与やペアローン住宅の処分において問題になりやすい争点、注意すべきポイントについて解説していきます。
目次
パワーカップルの離婚の特徴
パワーカップルの定義|パワー夫婦とは
パワーカップルとは夫婦ともに高収入である男女を指します。
パワーカップルに明確な定義はありませんが、三菱総合研究所の調査(2018年)では、以下のように定められています。
- 夫婦共働きであること
- 夫の年収が600万円以上であり、妻が400万円以上であること
- 世帯年収が1000万円以上の夫婦であること
国税庁の令和4年分民間給与実態統計調査では男性の平均給与が563万円、女性が314万円となっています。
夫年収600万円、妻年収400万円以上の夫婦は一般的な夫婦よりも高収入といえるでしょう。
パワーカップルの離婚率
そもそもパワーカップルの定義自体が明確に定まっていないため、パワーカップルの離婚率を示す公的なデータはありません。
しかし、パワーカップルは他の夫婦と比べて、以下のような離婚を決断する方向に働く事情があります。
- お互いに仕事にかける情熱が強すぎるあまり家庭生活がおろそかになる
- 夫婦共に仕事が忙しくコミュニケーション不足になりがち
- 時間がないため家事や育児の分担がトラブルの元になりやすい
- お互いに上昇志向が強いため子どもの教育方針で意見が衝突しやすい
- 離婚をしてもひとりで生活できる経済力がある
パワーカップルの離婚は財産分与額が大きくなる
パワーカップルは、一般的な夫婦と比べて財産分与額が大きくなる傾向があります。
財産分与は、婚姻期間中の夫婦の共有財産を対象に分配をします。
パワーカップルは、一般的な夫婦と比べて共有財産が多かったり、高価な不動産を購入していることもあることから、その分、財産分与額が大きくなりやすいです。
離婚するにあたって相手に請求できる金額が大きくなるのはパワーカップルの離婚の強みですが、それが逆に相手がなかなか離婚に応じてくれない原因にもなります。
相手が財産分与の金額や割合が不満で離婚に応じてくれない場合、相手と協議離婚ができないため、スムーズに離婚できないことが考えられます。
パワーカップルの財産分与
独身時代の貯金も財産分与される?
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を公平に分配することです。
「共有財産」は、現金や預貯金のほかに、不動産や車、積立型の生命保険の解約返戻金なども含まれます。
ただし、結婚前に持っていた財産は、「夫婦で協力して築いた財産」ではないので、その人の「特有財産」となり、分与の対象になりません。
パワーカップルの場合、結婚する前から夫婦それぞれが働いていたことも多いですが、独身時代に働いて得た貯金などは財産分与の対象にはなりません。
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パワーカップルだと財産分与の割合が変更される?
財産割合の原則は2分の1ずつ
財産分与の割合は、原則として2分の1ですが、場合によっては割合が変更されることがあります。
財産分与は、2分の1ずつ、夫婦が半分に分けるのが原則です。
妻が専業主婦だとしても、妻が家事に専念することで夫は仕事に集中でき、その結果、収入が得られたことから半分に分けられます。
ましてやパワーカップルは、夫婦両方ともに働いて共有財産を築いているので、夫婦で公平に分けるよう求めやすいです。
例外として割合が変更されることも
しかし、どちらかが医師や弁護士などの特別な資格をもっており、その努力や才能によって多大な財産を築いたような場合には、財産割合の変更が認められます。
パワーカップルの中には医師や弁護士などの専門職や、スポーツ選手やアーティストなどの特殊な技能を要する職業の人もいるので、財産分与の割合はトラブルになりやすいです。
相手が特殊な職業の場合には、自分の才能や努力が財産形成に大きく貢献したとして、半分以上の財産を分けるよう求めてくることが考えられます。
逆に、自分が専門職や特殊な職業に就いている場合、特殊な能力や努力があったことを証明してより有利な金額で財産分与ができるよう主張や立証をしていくことになります。
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ペアローンの住宅・マンションの財産分与
ペアローンの住宅・マンションをめぐるトラブル
パワーカップルが離婚する際、ペアローンの住宅・マンションをめぐるトラブルに巻き込まれるおそれがあります。
パワーカップルのなかには、夫や妻の単独名義ではなく、ペアローンを組み、夫婦の共同名義で住宅を購入された人もいるでしょう。
単独名義でローンを組むよりも、ペアローンを組んだ方が夫婦で返済の負担を分け合うことができるため、借入金額を増額し、より高価な住宅を購入することができます。
しかし、ペアローンにすると夫婦の一方の意思だけで売却ができなかったり、離婚をしてもローン返済が滞ったときには家を出た人も返済の責任を負わなければいけません。
ペアローンを組むことができるパワーカップルだからこそ、離婚後の住宅の処分やローン返済のトラブルを防ぐため対策は考えておく必要があります。
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パワーカップルに多いペアローンとは?
ペアローンとは、夫婦それぞれが契約者としてローンを組む方法です。
ペアローンの場合は、互いが連帯保証人になります。
ペアローンを組んだ夫婦が離婚をしても、ローンの契約内容に変更はなく、離婚後も2人でペアローンを返済し続けることになります。
金融機関はペアローンを組む際、夫婦が協力してローンを返済する能力があるかあらかじめ審査したうえで融資をしています。
住宅ローンは夫婦両方で返済することができると評価した以上、夫婦がたとえ離婚をしたとしても自動的に単独名義に変更されるわけではありません。
ペアローンのままにするとローン滞納のおそれも
ペアローンのまま離婚するとローンを滞納し、最悪の場合、家が競売にかけられ、生活拠点を失うおそれがあります。
ペアローンを組む際、夫婦が互いの連帯保証人になっています。
連帯保証とは、お金を借りた債務者と連帯して債務を負担することを保証することです。
保証とは、債務者がお金を返さないときに代わりにお金を返すということです。
また、連帯とは債務者と同じ法律関係に立つということで、通常の保証人が債権者に「まず債務者に支払うよう求めて」といえる催告や検索の抗弁が認められません。
ペアローンの場合、相手がローンを滞納したら連帯保証人である自分が相手の分まで全額返済する必要があります。
離婚後に家を出る人にとっては既に自分は住んでいない家だからローンを支払いたくないとして、ローンを滞納され、最悪、返済できず、家が競売されるおそれがあります。
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ペアローンのままでは家を自由に売却できない
ペアローンのまま離婚してしまうと、家を自由に売却できません。
夫婦の共有財産の中でも、家やマンションは最も高価であり、現金に変えやすい財産でもあるため、売却すれば財産分与をスムーズに進めることができます。
しかし、ペアローンを組んでいるということは、不動産の名義も共有名義になっているということです。
不動産の名義人は所有者として家を自由に売却できますが、共有名義になっている場合、他の名義人の同意を得なければ売却することができません。
単独名義変更やローンの借り換えでローンの一本化
単独名義変更やローンの借り換えでローンの一本化をすれば、離婚後も安心して家に住み続けることができ、必要であれば自由に家を売却できます。
単独名義変更をする方法
免責的債務引受を利用して住宅ローンを共有名義から単独名義に変更してローンを一本化することができます。
免責的債務引受とは、債務者が複数いる場合、一方の債務者だけが債務を免れてもう一方の債務者だけが債務を負担する方法です。
たとえば、ペアローンを組んだ夫婦が離婚して夫が家を出る場合、免責的債務引受によってローンの債務者である夫だけが債務を免れて妻を名義人にすることができます。
ただし、免責的債務引受は夫婦だけでは行えず、債権者である金融機関の承諾が必要となります。
金融機関にとっては夫婦2人で返済できる分としてローンを組んでいることから、妻の収入だけでは夫婦2人分の返済能力がないと判断して承諾してくれないことも考えらえます。
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借り換えをする方法
住宅ローンの借り換えをすることによって、ローンの名義人を変更して一本化することができます。
住宅ローンの借り換えとは、別の金融機関で新たな住宅ローンを組んで、いま組んでいる住宅ローンを一括返済することです。
新しくローンを組むことになるので、実質的に住宅ローンの名義人を変更できます。
しかし、住宅ローンを組むには妻だけで返済ができるか、金融機関の審査を受ける必要があるため、残りのローンを妻一人だけで返済できないと判断されると借り換えはできません。
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ペアローンの住宅・マンションを売却する
離婚後も住宅やマンションに住み続けるのが難しい場合、家を売却して、売却代金をローン返済に充ててペアローンを解消する方法があります。
いま住んでいる家には住めなくなりますが、家の名義をめぐるトラブルに巻き込まれる心配はなくなり、現金化することによって夫婦間の財産の清算をしやすくなる利点があります。
不動産の評価額がローン残高を上回る場合(アンダーローン)、家を売却したお金でローンの残債務を完済し、余ったお金を夫婦間で公平に分配することができます。
ローン残高が不動産の評価額を上回る場合(オーバーローン)、家を売却したお金をローンの返済に充てた上で残ったローンを預貯金などで返済をすることになります。
預貯金を充てても完済できない場合は、家を売却せず名義人がそのままローンを払い続けるのが一般的です。
パワーカップルの離婚は弁護士にご相談を
パワーカップルの離婚は、離婚の際に請求できる金額も大きく、離婚後も妻1人で生活できるだけの経済力もあるため、メリットも多いです。
しかし、パワーカップルだからこそ、財産分与の割合やペアローンの問題など、他の夫婦の離婚にはみられないような特殊なトラブルに巻き込まれるおそれがあります。
パワーカップルの離婚にお悩みの際は、弁護士にご相談ください。
多くの離婚案件に携わってきた弁護士であれば、パワーカップルならではの離婚問題についても適切なアドバイスを提供することができます。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了