離婚調停を拒否された・拒否したい場合はどうすべき?

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離婚を決意して離婚調停を申し立てたものの、相手方が欠席したり断固として離婚を拒否するケースは少なくありません。

反対に、配偶者から離婚調停を申し立てられたものの、様々な理由から離婚を拒否したい方もおられるでしょう。その場合、感情だけに任せて離婚を拒否し続けると、後に予想外の影響を受ける可能性があります。

どちらの場合も、実現したいゴールを明確にした上で冷静に対処することが重要です。

この記事では、離婚調停を相手に拒否された場合の対処法と、自分が拒否する場合の影響について詳しく解説します。

離婚問題に冷静に対処するための情報をわかりやすくご説明しますので、ぜひお役立てください。

相手方に離婚調停を拒否されたらどうなる?

離婚調停の基本的な流れ

離婚調停とは、夫婦間の話し合いで離婚の合意ができなかった場合に、裁判所の調停委員会の関与のもとで解決を図る手続です。

離婚調停の基本的な流れは以下のとおりです。

離婚調停の流れ

  1. 家庭裁判所に申立書を提出
  2. 裁判所から呼出状が届く
  3. 第1回の調停期日が開かれる
  4. 調停を何度か繰り返す
  5. 調停終了

調停離婚の一般的な審理期間は3カ月から1年程度です。

離婚について合意できない場合は、調停不成立になって終了します。実務では、3回程度期日を重ねても合意できない場合は、不成立となるケースが多いです。

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相手方はなぜ離婚を拒否するの?

相手方が離婚調停を欠席したり、離婚を拒否している場合、離婚を拒否している真の理由を明らかにすることが重要です。離婚を拒否している理由によって、その後とるべき対処法が変わってくるからです。

例えば、実務でよくある離婚拒否の理由は、以下のものです。

離婚を拒否する理由

  • 自分は悪くないと思っている
  • 婚姻関係は破綻していないと思っている
  • 本心では離婚しても良いと思っているものの、申立人への対抗心から拒否している(離婚に応じると、申立人に負けたことになると思っている)
  • 離婚には応じて良いと思っているが、離婚条件に納得できない(親権、養育費、財産分与、慰謝料、面会交流など)

相手方が離婚を拒否する理由がわからないままだと、調停を進めることはできません。

次の項で説明するように、まずは調停委員を通じて拒否の理由を探り、そこから具体的な話し合いに入っていきましょう。

相手方が離婚調停を拒否した場合の対応

①相手方が欠席した場合は裁判所から働きかけてもらう

相手方が調停期日を欠席した場合は、裁判所の書記官や家庭裁判所調査官を通じて次回期日には出頭するよう連絡してもらいましょう。

相手方が、次回期日にも出頭しないことが明らかな場合は、1回目の調停で不成立となるケースもあります。

②相手方が離婚を拒否している理由を調停委員に理由を聞いてもらう

相手方が離婚調停に出席している場合は、調停委員を通じて離婚を拒否している理由を聞いてもらいましょう。

上述した離婚を拒否する理由ごとに対策をまとめると、以下のとおりとなります。

自分は悪くない、婚姻関係は破綻していないと思っている場合

この場合は、調停委員を通じて、あなた(申立人)の離婚意思が固いことを相手方に伝えてもらうことが第一歩になります。

それでも離婚の合意が難しそうなら、調停期日を重ねても意味がないため、3回程度で不成立にしてもらうのが良いでしょう。

特に法定離婚事由(民法770条1項)がある事案であれば、離婚調停は早期に終了して、離婚訴訟を提起する方が早期に離婚を実現できる可能性があります。法定離婚事由に当たるのは、不貞行為やDV、長期の別居などです。詳しくは関連記事をご覧ください。

他方、法定離婚事由が認められるか微妙な事案(性格の不一致など)では、調停を不成立にしたり取下げをした上で別居期間を重ねるのが良いでしょう。別居を3年程度続ければ、離婚裁判で離婚が認められやすくなります。

別居を続ける場合のポイントは、相手方からきちんと婚姻費用を支払ってもらうことです。別居期間が長くなるほど、相手方にとって婚姻費用の負担が大きくなるため、離婚に応じる気持ちに変化する可能性があります。婚姻費用の計算方法や相場について、詳しくは関連記事をご覧ください。

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本心では離婚しても良いと思っているものの、対抗心から拒否している場合

この場合、ある程度時間をかけて相手方を説得すると良いでしょう。

本心では離婚して良いと思っている場合、相手方が調停委員に自分の主張を聞いてもらううちに気持ちの整理がつき、離婚に応じるようになる可能性があります。

また、離婚調停と同時に婚姻費用分担請求調停を申し立てた上で、後者を先に成立させて婚姻費用を支払ってもらう方法も早期の離婚につながりやすくなります。

婚姻費用の支払義務は婚姻関係が続く限り発生します。つまり、相手方が離婚を拒否している限り、婚姻費用を支払わなければならないのです。その負担が重荷になり、相手方が離婚に同意するようになる可能性があります。

③自分が離婚したい理由を調停委員に具体的に説明する

相手方が離婚調停を拒否している場合、あなた(申立人)が離婚を望む理由を調停委員に具体的に伝えることも重要です。

ポイントは、離婚訴訟を意識して法定離婚事由に当たる事実を主張することです

不貞行為、DVなど典型的な離婚理由は主張しやすいでしょう。できれば、写真やメール、診断書などの客観的な証拠があると説得力が増します。

一方で、性格の不一致や、家事育児への非協力などは「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するといえるような具体的な事実の主張が必要です。

感情的に話すのではなく、別居を決意した決定的なエピソードなど、婚姻関係の破綻に大きく影響する事実を中心に説明するのが大切です。

離婚調停の場で口頭で伝えるのが難しければ、夫への手紙を書いて調停委員に渡してもらう方法も考えられます。

離婚を決意した理由を主張書面にまとめて裁判所に提出するのもよくとられる方法です。主張書面の作成は、弁護士に依頼した方がより説得的な内容になるでしょう。

これらの主張を通じ、調停委員が法定離婚原因ありとの心証を持てば、離婚に応じるよう相手方を説得してくれやすくなります。

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④お互いの主張があまりに食い違う場合は3回程度で不成立にする

離婚原因や離婚条件について、お互いの主張があまりに食い違う場合は、調停期日を重ねても合意に至る可能性は少ないでしょう。

このような場合は、期日を3回程度重ねた時点で、「不成立にしてほしい」旨を調停委員に伝えるのが良いと考えられます。調停委員は、裁判官との評議の上、歩み寄りの余地がなさそうだと判断すれば調停を不成立とするでしょう。

その後の対応は、法定離婚事由の有無と証拠の内容によって、離婚訴訟を提起するかどうか検討することになります。

離婚調停を申し立てられたら離婚を拒否できる?

離婚調停の相手方になったら離婚を拒否できる?

あなたが「離婚をしたくない」と考えている場合、たとえ配偶者から離婚調停を起こされても、こちらが離婚を拒否する限り調停が成立することはありません。

離婚調停と聞くと、身構えてしまう方も多いと思いますが、当事者の話合いで離婚を目指す手続きである点は協議離婚と変わらないのです。

ただし、離婚を拒否したいとしても調停を無断で欠席するのは避けましょう。

正当な理由なく欠席し続けると調停不成立となって、結局は離婚訴訟を提起されるおそれがあるからです。離婚訴訟にも欠席し続けると、あなたに不利な離婚条件で離婚が認められてしまうおそれがあります。

離婚を拒否したいと考えるなら、その理由を調停の場できちんと説明しましょう。もし夫婦関係の修復を望むのであれば、調停をきっかけにその可能性が見えてくるケースもあり得ます。

仕事の都合などで、どうしても調停期日に出頭できない場合は、早めに裁判所に連絡すれば不利益になることはありません。

相手が勝手に離婚届を提出してしまうことが不安な場合は、役所の戸籍係に離婚届の不受理申出をしておきましょう。離婚届の不受理申出の手続きについて、詳しくは『離婚届不受理申出とは|離婚届を勝手に出させない!』をご覧ください。

離婚訴訟を起こされても離婚を拒否できる?

調停不成立となり、相手が離婚訴訟を提起した場合でも離婚を拒否することはできます。

ただし、裁判の場合、法定離婚事由があると認められれば、たとえあなた(被告)が離婚を拒否していても、強制的に離婚が認められてしまいます。

あなたが不貞行為をしたなど法定離婚事由があることが明らかであれば、離婚訴訟で離婚請求が認められる可能性が高いです。

その場合、離婚訴訟を起こされることによる時間的・経済的な負担を考えると、調停段階で離婚に応じた方が結果的にメリットが大きくなると言えるでしょう。

一方、法定離婚事由がない、または、相手が有責配偶者に当たるなら、離婚訴訟でその事実を主張立証すれば離婚は認められない可能性が高くなります。

離婚訴訟で離婚請求が認められなかった場合、別居を続けることになるでしょう。その間、離婚を拒否して婚姻費用をもらい続けたいと考える方もおられると思います。それは可能ですが、別居期間が長くなればいつかは離婚が認められる時期がやってきます。

その時期に備えて、離婚後の生活を見据えた準備をしておくことが大切です。

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離婚調停を拒否された・拒否したい場合は弁護士に相談

相手が離婚を拒否しているとき適切に対応できる

相手方が離婚調停を拒否している場合、自分だけで説得するのは至難の業です。

そのような場合は、ぜひ弁護士への相談をおすすめします。

弁護士は、相手が離婚に応じやすくなるような主張のアドバイス、調停委員へのわかりやすい説明、説得的な主張書面の作成などを通じ、離婚の実現を全力でサポートします。

相手が条件次第では離婚に応じると主張する場合、弁護士は、どこまで譲歩すべきかを依頼者の立場になって法的観点からアドバイスします。

調停不成立後は、すぐに訴訟提起すべきか、別居を続けるべきか、豊富な実務経験や裁判実務をもとに助言します。

自分が離婚を拒否したい場合に適切なアドバイスが得られる

ご自分が離婚を拒否したい立場の場合、訴訟提起されるリスクも考慮した上で対応を決める必要があります。

弁護士は、訴訟提起のリスクや、予想される訴訟の結果も十分考慮した上で、離婚調停での主張の仕方をアドバイスします。

離婚を拒否されている・拒否したいなら弁護士に相談!

いずれの立場でも、専門家である弁護士への相談がおすすめです。自分ひとりで対応するとどうしても感情的な主張をしてしまい、事態がますます悪化してしまう可能性が高くなります。

弁護士が関与することで、冷静な交渉と、訴訟を見越した適切な対応が可能になります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了