離婚と子どもの法律知識|子どもがいる離婚のチェックリスト
子どもがいる家庭では、夫婦のみの家庭と比べて、離婚する際に子どもに関する様々なことを決めておかなければいけません。
子どもがいる夫婦の離婚では、親権以外にも養育費、面会交流などの離婚条件について話し合っておいた方がいいでしょう。
また、離婚後に子どものためにやっておかなければならない手続き、ひとり親家庭になることで受けられる経済的支援を知ることも重要です。
今回は、子どもがいる離婚について、親権や養育費などの離婚と子どもに関する法律知識、子どものために知っておきたい手続きや支援などを解説していきます。
目次
離婚したい!子どものために知っておくべきこと
子どもがいる離婚の特徴
夫婦だけで離婚するケースと比べて、子どもがいる夫婦が離婚するケースは様々なことを決め、準備しなければいけません。
離婚後の法律トラブルに巻き込まれないためにも親権や養育費、面会交流についてはあらかじめ話し合っておく必要があります。
離婚後に子どもを育てる環境を整えるためにも、行政サービスや公的な手続きについてあらかじめ調べておかなければいけません。
自分だけでなく、子どもの将来にも関わる問題です。
子どもにとって本当に幸せなことはなにか、悩んだり不安に感じてしまう場面は少なくないでしょう。
子どものために離婚しない選択肢
両方の親がそばにいることが、子どもにとって最も幸せなことなのか。
そう感じて離婚に踏み切れない人も少なくありません。
離婚は、いっしょに暮らしていた子どもの人生に多大な影響を与えることになります。
しかし、もう夫との生活に耐えられないと悩みながら無理をして結婚生活を続けることが、子どもにとって幸せであるとは限りません。
子どもを守るためにも離婚をするべき状況もあります。
たとえ今すぐに離婚をするわけでなくとも、何が起きるか分からない将来のための準備として離婚について知っておくことは悪いことではありません。
子どもを置いて離婚する
離婚条件によっては、子どもを置いて離婚することも考えられます。
自分にとって子どもは、譲りたくないたからものと考えるのであれば、親権や面会交流について知っておいて損はありません。
子どもの将来のために養育費や経済的支援について調べたことが、将来の自分や子どもをきっと助けてくれます。
弁護士であれば、子どもがいる離婚について適切な知識とアドバイスを提供できます。
子どもがいる離婚の法律知識を得るためにも、ぜひ弁護士に相談してみましょう。
離婚が子どもに与える影響
離婚は自分のせいと思ってひとりで背負いこんでしまう
両親が離婚したのは、子どもである自分のせいであると思い、ひとりで問題を抱え込んでしまうおそれがあります。
子どものせいで離婚したわけではないことを伝えるためにも、離婚理由や経緯について、できるかぎり子どもにも話しておきましょう。
この際、たとえ離婚の責任が相手にあるからといって子どもの前では相手の悪口をいうのは控えましょう。
子どもにとっては離婚しても自分の親であり、自分への愛情を失ったわけではないと思ってもらうためには相手の性格や人格を否定する言動はするべきではありません。
また、どんなに相手が悪くても相手の悪口をいう親の姿はあまり見ていて気持ちのいいものではありません。
事実は事実として伝え、その上で自分が離婚したいと思った気持ちを伝えれば、子どもも離婚を受け入れやすくなります。
片親と離れ離れになることで孤独に感じてしまう
両親の離婚は、子どもにつらい思いを抱かせ、そのことから精神面や感情が不安定になるおそれがあります。
父母にとってはお互いを結婚相手に選んだ上で家族となったのであって、同棲や結婚前は配偶者といっしょに暮らしてきたわけではありません。
しかし、子どもにとっては、生まれてからずっと両親と過ごしてきたこともあり、突然、片親と別々に暮らさなければいけない環境に置かれることになります。
物理的にも心理的にもすぐ隣にいた親と離れ離れになることによる喪失感や寂しさ、孤独感が子どもに与える影響は軽くはありません。
面会交流で離れて暮らす父親と会う機会を設けたり、父親は離婚してもその子の家族であることを真摯に伝えるなど心理的なサポートは不可欠です。
ふたり親世帯と自分を比較して劣等感を抱いてしまう
学校に通う前後に離婚したことで、友人やクラスメイトの家庭環境と自分を比較して、劣等感や孤独感を感じるおそれがあります。
子どもにとっては、自分が通っている学校やクラブ活動が自分にとっての「世界」です。
片親家庭は決してめずらしいことではありませんが、両親がいる友人が周りにいることで、自分の家庭だけ「変」「特殊」と感じてしまうかもしれません。
特に小中学校では、入学式や卒業式などの式典、授業参観や運動会などの学校行事など、親が参加する機会は多いです。
そういう場で両親ともに行事に参加している家庭を見た際、劣等感や孤独感を感じてしまうおそれがあります。
自分に自信がもてるよう、他の子と比べて劣っているわけではないこと、両親がいる家庭に負けないくらいの愛情をもって育てていることを伝えてあげましょう。
学習環境や生活環境が低下するおそれがある
離婚をすることで子どもへの教育費や生活費、交際費にかける余裕がなくなり、学習環境や生活環境が低下するおそれがあります。
離婚前は両親から金銭的なサポートを受けられましたが、離婚後は離れて暮らす父親から十分な経済的支援を受けられないケースは少なくありません。
子どもの将来を守るためにも、離婚前にあらかじめ養育費についてしっかり取り決めておく必要があります。
約束が守られず養育費が支払われないような事態を防ぐためにも、取り決めた内容は強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくことも重要です。
親権者:離婚したら子どもはだれが育てるのか
離婚後の子どもの親権は必ず決めなければならない条件
親権は、必ず決めなければならない離婚条件です。
離婚は、夫婦が離婚に同意し、離婚届を提出することで成立します(協議離婚)。
協議離婚をする際、慰謝料や財産分与、養育費といったお金に関することは決めていなくても法的には離婚することができます。
しかし、未成年の子どもの親権については決めておく必要があります。
現行法では、離婚後は単独親権しか選べませんが、2024年5月に離婚後の「共同親権」を認める民法改正が成立しました。今後、公布から2年以内に施行されることになります。
改正後は、単独親権か共同親権か、単独親権にするならどちらを親権者とするか決めなければいけません。
(離婚又は認知の場合の親権者)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
第八百十九条
親権とは離婚後に子どもを育てる権利と義務
親権とは、未成年の子を監護し、教育し、財産を管理する権利であって義務です。
親権は、身上監護権と財産管理権に分けられます。
身上監護は、子どもを監督・保護し、教育することです。
財産管理は、子どもが財産を得たときに財産管理をしたり、子の財産上の法律行為について代理や同意をすることです。
共同親権の導入:離婚しても子どもを両親で育てる制度
現行法では、父母が婚姻している間は、父母が共同して親権(共同親権)を有し、離婚したら父母のどちらかが親権を有することになっています。
未成年の子どもがいる夫婦は、離婚の際にどちらを親権者とするか決めなければいけません。
しかし、民法改正により、改正法施行後は単独親権だけでなく、共同親権を選べるようになります。
施行後は、改正前に離婚した夫婦も共同親権を選べるようになります。
共同親権を選択した場合、幼稚園や学校の選択や転居先の決定などについて両親の同意が必要となります。
ただし、期限の迫った入学手続きや緊急の手術などの急迫の事情や子どもの食事や習い事の選択などの日常の行為は、どちらかの親が単独で判断できます。
共同親権にするかどうかは父母の協議によって決め、合意ができない場合は家庭裁判所が判断することになります。
また、DVや子どもへの虐待のおそれがある場合は、単独親権にしなければいけません。
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養育費:離婚後の子どもの生活と将来のための費用
養育費の内容は合意すれば自由
養育費は、両親が離婚した場合に、子どもが成長するために必要な金銭で、衣食住にかかる費用や教育費、医療費などを含みます。
離婚をしても、親は子どもを扶養する義務を負っているため、子どもが親と同程度の生活ができるよう費用を負担しなければいけません。
養育費の払い方、金額、払い終わりの時期などは、父母が合意すれば自由に決められます。
協議で決める場合、養育費を確実に支払ってもらうためにも、公正証書にしておくことをおすすめします。
養育費を支払ってくれなくなっても、強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、強制執行(差し押さえ)を行って、強制的に養育費の支払いを実現させることができます。
養育費で揉めたら調停
養育費や慰謝料などの離婚条件で揉めて離婚に合意できない場合、家庭裁判所に対し、離婚調停を申し立てて離婚条件についても話し合うことができます。
また、養育費だけを決めてもらいたい場合は、家庭裁判所に対して養育費請求調停を申し立てることができます。
調停は双方が合意すれば成立し、養育費を請求することになります。
話し合いが進まない場合には、家庭裁判所が作成した算定表が参考にされることが多いです。
アトム法律事務所の婚姻費用・養育費計算機を使えば、婚姻費用や養育費の目安を知ることができます。
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・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
面会交流:離婚した親が子どもと会い、連絡を取る機会
離婚した親が子どもに会ったり連絡する面会交流
面会交流とは、離婚や別居で子どもと離れて暮らす親が、定期的に子どもと会ったり、電話や手紙、メールなどで連絡を取ることです。
面会交流は、離れて暮らす親のためだけでなく子どものための制度でもあります。
面会交流の協議については、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされています。
面会交流の決め方
面会交流は、父母が協議して決め、合意ができなかった場合は面会交流調停や離婚調停で話し合って決めます。
離婚調停では、離婚すべきかという点以外にも、面会交流や慰謝料、養育費などの離婚条件について話し合うことができます。
また、面会交流だけを決めてもらいたい場合は、面会交流調停を申立てて話し合うことができます。
面会交流は、面会交流を認めるか、月にどのくらい行うか、宿泊を認めるか、監護親が同席するか、子どもにお小遣いやプレゼントを渡してもよいかといった条件を決めます。
離婚した親と子どもの面会交流は原則拒めない
面会交流は、原則として拒否できません。
面会交流は、あくまで子どものための制度であり、子どもの利益を最も優先して考慮したうえで決められるものです。
単に子どもに会わせるのが嫌だという理由で拒むことはできません。
しかし、子どもが明確に拒否している、相手が子どもを虐待したり連れ去るおそれがある場合には、拒否することができるケースもあります。
離婚後のトラブルを未然に防ぐためにも、何より子どもの健全な成長のためにも、面会交流の可否や内容についてあらかじめ決めておいた方がいいでしょう。
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離婚後の子どもに関する手続きも忘れずに
離婚後の子どもの氏の変更・入籍届
自分の子どもの戸籍に子どもを移すためには、子どもの氏を自分と同じ氏に変更しなければいけません。
離婚によって苗字が旧姓に戻った人は、結婚時の戸籍から抜け、新しい戸籍が作られます。
しかし、たとえ苗字が変わった人が親権者になっても子どもの苗字が自動的に変わるわけでなく、戸籍もそのままです。
新しい戸籍に子どもを入れるためには、まず家庭裁判所に子どもの苗字の変更許可を申し立て、許可が下りたら入籍届を提出する必要があります。
児童手当の受け取り先の変更
離婚後、子どもといっしょに暮らす場合、自分が児童手当を受給するために受給者を変更する必要があります。
児童手当の受給者の変更は、離婚日から15日以内に市町村役場に受給事由消滅届と認定請求書を提出します。
提出が遅れると、手当が受けられない月が生じたり、手当を返還しなければならなくなるおそれもありますので、早めに準備しましょう。
健康保険・年金などの手続
専業主婦や配偶者の扶養内で働いている人は、離婚の日から5日以内に元配偶者の勤務先に国民年金第3号被保険者関係届と健康保険被扶養者(異動)届を提出する必要があります。
また、離婚後も就職しない、または自営業やフリーランスとして開業する場合は、離婚後14日以内に子どもを国民健康保険と公民年金に加入させる手続きをする必要があります。
なお、離婚後に正社員やアルバイト・パートで勤務することになり勤務先で社会保険に加入する場合、手続きは勤務先で行い、子どもを扶養に入れることができます。
ひとり親家庭が受けられる支援
児童扶養手当や医療費助成、ひとり親控除などのひとり親家庭が受けられる経済的支援、行政サービスを調べておきましょう。
ひとり親になる家庭が受けられるサービスには、以下のようなものがあります。
- 児童扶養手当:ひとり親家庭の子どもに支給される手当。
- 就学援助制度:世帯の所得が一定以下の場合に学用品や給食、修学旅行などの費用援助を受けられる制度。
- 医療費助成:ひとり親家庭が医療費の助成を受けられる制度。
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金制度:事業の開始や就学、転居などの目的で自治体から資金を貸し付けてもらえる制度。
- 寡婦控除:一定の金額を所得から控除し、納税額を少なくすることができる制度。
この他にも各自治体でひとり親家庭を支援する制度が用意されています。
支給条件や支給時期が異なりますので、あらかじめ調べておき、早めに申請するようにしましょう。
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子どもがいて離婚する際は弁護士に相談
親権者を誰にするのかという点だけ決めれば離婚することはできます。
しかし、養育費や面会交流などの離婚条件もあらかじめ話し合っておかないと離婚後に思わぬトラブルに巻き込まれるおそれがあります。
また、離婚後に忘れてはいけない公的な手続きや行政サービスの申請は期限が決められていることもあり、離婚前からあらかじめ準備しておく必要があります。
自分だけでなく、子どもの将来にもかかわる大事な問題でもありますので、子どもがいる離婚はぜひ弁護士にご相談ください。
法律の専門家である弁護士であれば、相手との親権や養育費の交渉、進めておくべき各種手続についてのアドバイスをすることができます。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了