夫のEDで離婚したい!離婚理由になる?妻だけEDの場合は?

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夫がED

夫のEDだけを理由に離婚を成立させるのは、法的には容易ではありません。

しかし、「EDが原因で1年以上のセックスレスにある」「治療を求めても拒否され、改善の努力が見られない」といった事情があれば、裁判でも離婚が認められる可能性が高まります。

夫がEDで性的不能(性機能障害により、性交渉ができない状態)であっても、受診やカウンセリングなどの改善の努力がない場合は、婚姻を継続しがたい重大な事由とみなされるためです。

今回は、夫のEDで離婚が認められる具体的な境界線や、慰謝料請求を有利に進めるための証拠、さらに妻だけEDだった場合の注意点について、弁護士が実務的な観点から解説します。

旦那のEDで離婚できる・できないの境界線

単に「夫がEDだから」という理由だけでは、離婚裁判で離婚が認められる可能性は低いです。

裁判所が離婚を認めるかどうかの境界線は、EDそのものの症状ではなく、夫婦生活が修復不可能なほど壊れているか、および改善に向けた協力があるかという点にあります。

EDが理由で離婚が認められるかどうかの判断基準

以下の表で、現在の状況がどこに当たるかを確認してください。

状況離婚成立の可能性
1年以上のセックスレス高い
夫がED治療を拒絶する高い
性的不能を隠して結婚高い
夫が外で不倫している非常に高い
夫が治療に励んでいる低い

具体的にどのようなケースで離婚が認められる可能性が高まるのか、それぞれの詳しい判断基準や実務上のポイントについて見ていきましょう。

EDの治療を拒否されるなどして、セックスレスになっている

「妊活をしたいため、EDを治療してほしい」などと相手に伝えても、相手が要求をつっぱねて治療せず、結果としてセックスレスになっているという場合は、離婚が認められる可能性があります。

子どもを望んでいて、相手にEDの治療をすすめたにもかかわらず、治療を拒否して結果としてセックスレスになったり、夫婦生活を続けるのが困難になってしまったりした場合には、離婚が認められる可能性が高いです。

なお、一般的にセックスレスで離婚が認められる目安は、1年以上性交渉がない場合と考えていいでしょう。

子どもがほしいのに、相手がEDであることを隠して結婚した

「子どもがほしいと前から言っており、相手も承諾していたにもかかわらず、結婚後に実はEDだったと相手に言われた」という方もいるかもしれません。

妊娠したいという気持ちが強いということを認識していたにもかかわらず、相手がEDであることを隠していたという場合は、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性があります。

妻だけEDの夫が不貞行為に及んでいる

なかには、心理的な要因によって妻にだけED状態になってしまうという方もいらっしゃるようです(妻だけED)。

「妻だけED」が離婚に直結するというわけではありません。ただし、妻ではなく、ほかの女性と浮気や不倫といった不貞行為に及んでいるという場合があります。

その場合は、法定離婚事由の一つである「不貞行為」に該当しますので、離婚が認められる可能性があります。

なお、法定離婚事由である「不貞行為」については、性交渉や性交類似行為(手淫、口淫、前戯、裸で抱き合うなどといった行為)が該当します。

「妻だけED」であったとしても、場合によっては不貞行為に及んでいるおそれがあります。また、ED治療薬を飲んで不貞行為をしているということもありますので、治療中であるという場合は持ち物をチェックしてみるのも重要です。

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相手がEDで離婚することに合意している

相手がEDで離婚することに合意している場合は、協議離婚というかたちで、夫のEDを理由として離婚することができます。

協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。当事者が合意さえすればどんな理由でも離婚をすることができるところが特徴です。

話し合いがまとまらず離婚調停に進んだ場合でも、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができるので覚えておきましょう。

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EDのほかに法定離婚事由がある

EDのほかに法定離婚事由があるという場合も、離婚することができます。

たとえば、「EDを治療するかどうかといったことで口論になり、その後夫からDVやモラハラなどの行為を受けるようになった」といったケースが該当します。

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夫のEDで離婚するときの離婚条件

夫のEDが理由での慰謝料請求は難しい

単に「夫がEDだから」という理由だけで離婚することが難しいように、単に「EDだから」というだけで慰謝料請求が認められる可能性は低いです。

ただし、夫のEDによるセックスレスが長期間に及んでいたり、治療をすすめてみても拒否されたりして婚姻関係が破綻したと認められれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。

また、「妻だけED」で夫が不貞行為に及び、そのまま離婚してしまったという場合は、不貞行為による慰謝料も請求することができます。

「EDを原因とするセックスレスの期間が短い」「相手がED治療について真剣に取り組んでいる」といった場合は、慰謝料請求が認められにくいので注意しましょう。

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夫の性的不全で離婚や慰謝料が認められた判例

「実際にEDや性的不能を原因とした離婚で慰謝料が認められたことはあるのか?」と考える方もいらっしゃるでしょう。

EDや性的不能を隠していたことを理由に、裁判所が妻から夫への離婚や慰謝料請求を認めた例があります。

夫が性的不能であることを妻に隠して結婚し、同居期間が約3年半に及んだものの、一度も性交渉がおこなわれず、妻が離婚と慰謝料請求を求めた事件です(京都地判 昭62.5.12)。

裁判所は「婚姻生活における性関係の重要性や、性交不能という状態が子どもをもうけることができないという重要な結果に直結することを考えると、婚姻後長年にわたって性交渉がないことは、原則として婚姻を継続しがたい重大な事由になる。」

「また、婚姻に際して相手方に対し自己が性的不能であることを告知しないということは、信義則に照らして違法であり、不法行為を構成する」などとして、夫に200万円の支払いを命じ、離婚を認めました。

こちらの判例では「性的不能という事実を隠して結婚したか」といったことが重視されている点が特徴です。

EDで離婚するときの注意点

夫がEDを否定する場合の対策

協議や調停の場では、夫がプライドからEDを否定し、反対に「妻が拒絶した」と主張してくるケースが少なくありません。

客観的な証拠がないと、単なる性格の不一致として処理される恐れがあるため、以下の記録を揃えておくことが有利な交渉に繋がります。

  • 受診の打診と拒絶の記録
    病院への同行を提案した際のメールやLINE履歴は夫婦の協力義務を果たしていない証拠となり得ます。
  • ED治療薬の所持や購入履歴
    夫が妻以外の相手と不貞行為をしている可能性を示す間接証拠となり得ます。
  • 妊活アプリやカレンダーの記録
    性交渉の打診を断られた日付や、その際の具体的な言動を記録した内容は婚姻関係が破綻していることを示す有力な材料になり得ます。

有利な離婚条件を引き出すための証拠集め

EDを理由に離婚したい場合は、EDによって長年セックスレスの状態にあったり、EDの治療をすすめても拒否されたりといったことを示す証拠が重要になります。証拠を集めることができれば、慰謝料請求も認められやすくなるでしょう。

配偶者がEDの状態で、セックスレスに陥っているという場合は、プライベートな問題になりますので、夫婦がセックスレスの状態にあったということを客観的に示すには難しい場合があります。

証拠を複数組み合わせることで有効な主張ができる場合がありますので、以下のような証拠をできるだけ多く、長期間にわたって集めることが大切です。

EDを理由に離婚するのに重要な証拠

  • 夫婦の生活スケジュールがわかる表
  • EDによるセックスレスで悩んでいることを記した日記やメール
  • EDによるセックスレスについて夫婦で話したときの録音
  • EDの治療履歴・通院履歴・診断書
  • ED治療をすすめたときの録音、会話、反応を記した日記 など

不貞行為を疑う場合は、浮気や不倫の証拠も集めておく

先述のとおり、「妻だけED」状態にある夫が、ほかの女性と不貞行為に及んでいるというケースがあります。

その場合は、夫が不貞行為をしていることを明らかにするような証拠を集めておくことが重要です。不貞行為を証明するのに有効な証拠は、以下の通りです。

不貞行為を証明するのに有効な証拠

  • 不貞行為を撮影した写真や動画
  • 肉体関係があったと推測できるSNSやLINE
  • 浮気中の会話の録音データ
  • 浮気中に行ったお店の領収書
  • 身に覚えのない避妊具や性交渉に使う道具
  • 浮気相手の家に行っているという履歴がわかるもの
  • 浮気相手と関係のある手紙やプレゼント
  • 浮気をしたと認める自認書
  • 浮気についての第三者の証言
  • 探偵事務所の調査報告書 など

また、ED治療中であるという場合は、不貞行為をするときに、夫がED治療薬を飲んでいるということがあります。ED治療薬が減っていれば、ほかの証拠と組み合わせることで、不貞行為がおこなわれたことを立証できる可能性もありますのでよく調べてみることをお勧めします。

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うつ病によってEDになることも

うつ病や、うつ病の薬の副作用を原因として、EDになることもあるようです。

もしうつ病の夫と裁判で離婚を争うという場合は、法定離婚事由の一つである「回復の見込みのない強度の精神病」を理由に離婚できるかが争点になると考えられます。とくに、以下の3つの条件が重要になります。

うつ病を理由に離婚する条件

  1. 回復の見込みがないと医学的に判断された
  2. うつ病の夫の回復のためサポートをしてきた
  3. 離婚後も夫が問題なく生活できる

なお、法定離婚事由としての「回復の見込みのない強度の精神病」については、2年以内におこなわれる予定の民法改正で削除されることになっています。

「回復の見込みのない強度の精神病」という項目が削除されたのちは、同じく法定離婚事由のひとつである「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に照らし合わせて離婚ができるかどうかを判断していくことになるでしょう。

うつ病の夫と離婚する方法についてくわしく知りたいという方は、『うつ病の夫と離婚したい!離婚理由になる?慰謝料は取れる?』をご覧ください。

結婚してすぐEDになったら?

なかには、結婚してすぐEDの状態になってしまったり、結婚後すぐのときに相手がEDと判明したりすることもあるようです。

EDのためすぐに離婚したいと思っても、相手の同意がない場合は、結婚してすぐに離婚することは難しいです。

すぐに離婚をしたいと思った場合は、まず別居をしてみることをおすすめします。別居をすることで、お互い距離をとって冷静に考えを整理できるかもしれません。

また、同居期間に比べて別居期間のほうが長ければ、婚姻関係が破綻していると裁判所に判断してもらえて、裁判離婚ができる可能性があります。

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離婚を迷っている場合はカウンセリングも検討

「夫がEDでセックスレスが続いているけれど、離婚するかどうか迷っている」という場合は、離婚カウンセラーなどの第三者に話を聞いてもらうのもよいでしょう。

場合によっては、関係を修復できたり、次にどのような行動を取ればよいかがわかったりすることもあると思います。

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夫のEDと離婚に関するよくある質問

Q.妻だけEDで夫が非協力的なら離婚できる?

認められる可能性があります。
夫が受診やカウンセリングを一方的に拒否し、1年以上のセックスレスが続いている場合は婚姻を継続しがたい重大な事由とみなされやすいためです。

ただし、離婚が必ず認められるわけではなく、最終的には個別事情を総合的に判断されます。
セックスレスの状況や夫の非協力的な態度が継続していること、改善の努力が見られないことなどを、客観的な証拠に基づいて主張・立証することが重要です。

Q.夫のEDを記録した日記は離婚の証拠になる?

性交渉を拒否された日付や、治療を求めた際の夫の対応を継続的に記録しておくことは、婚姻関係が破綻している状況の継続性や具体性を示す重要な資料となります。

さらに、メールやLINEのやり取り、医師の診断書、第三者の証言など、日記の記録と内容が一致する間接的な証拠があれば、全体として証拠の信用性が高まります。

Q.夫がED治療薬を隠し持っていたらどうすべき?

夫が自分との性交渉には消極的なのにED治療薬を持っている場合、外で不倫(不貞行為)をしている有力な手がかりになります。

ED治療薬の所持は不貞行為の直接証拠ではありませんが、他の状況証拠とあわせて不貞行為を推認する材料となり得ます。
不貞が判明すれば、ED かどうかに関係なく、離婚や慰謝料請求に直ちに踏み切ることが可能です。

旦那のEDを理由に離婚するときは弁護士に相談!

夫のEDで長期間セックスレスになっていたり、子どもがほしいのに夫がEDの治療をしてくれなかったりといった事情がある場合は、離婚が認められる可能性があります。

夫のEDを理由に離婚したいと考えている方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、現在の状況から離婚が認められるかどうかを判断してくれるほか、調停や裁判に移行した際もスムーズに対応してくれます。

夫のEDが原因で長期間セックスレスになったことや、夫が妻だけEDの状態で不貞行為をしているといったことを主張するのにどのような証拠を集めればよいか、慰謝料請求はできそうかなどを、法的な観点からアドバイスしてくれるというメリットもあります。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了