一方的に離婚させられる?離婚が認められる条件と対処法

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夫婦関係はうまく行っていると思っていたのに、急に夫から離婚を切り出されたら、まずはどうしますか?

条件次第では離婚に応じてもよいというケースも、絶対に離婚したくないケースもあるでしょう。

相手が強く望んでいる場合、離婚は避けられないのでしょうか。

この記事では、一方的に離婚させられることはあるのか、一方的に離婚を求められたらどうすればよいかについて解説します。

一方的に離婚できる?

原則的に一方的な離婚はできない

日本では、原則として夫婦の合意がなければ離婚することはできません

離婚したい時はまず夫婦間の話し合い(協議)から始め、話し合いがまとまらなければ離婚調停を起こして家庭裁判所での話し合いを行います。

協議でも調停でも、夫婦の双方が離婚に同意しなければ離婚は成立しません。

したがって、協議や調停の段階では離婚を拒否することができます

しかし例外として、裁判で離婚が命じられた場合には、同意がなくとも離婚が決定します。

一方的に離婚できるのはどんなとき?

協議離婚や調停離婚と異なり、裁判離婚では裁判官が認めれば一方的に離婚することができてしまいます

ただし、どんな理由でも裁判離婚が認められるわけではありません。裁判で離婚するには、婚姻関係が破綻していることと、法定離婚事由があることの2つの条件を満たす必要があります。

法定離婚事由とは、民法で定められた離婚の理由で、以下の5つうち少なくとも1つが存在しなければ、離婚は認められません。

法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

離婚を請求される側が不貞行為・悪意の遺棄を行っていた場合や、3年以上行方不明であり生死が分からない場合、強度の精神病で回復の見込みもない場合には、相手方が裁判を起こせば離婚が認められます。

その他婚姻を継続しがたい重大な事由の代表例としては、離婚を請求される側のDVやモラハラなどの行為のほか、2人がある程度の長期間別居していることなどが挙げられます。

有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない

法定離婚事由に該当する場合でも、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。これは、相手を傷つけた責任があるにもかかわらず、一方的に離婚を要求するのは信義に反すると考えられているからです。

有責配偶者とは、有責行為を行って夫婦関係の破綻の原因となった方の配偶者のことをいいます。

有責行為の典型例は、不貞行為(不倫、浮気)、DV、モラハラ、悪意の遺棄などです。

ただし、有責配偶者からの離婚請求であっても、客観的に見て夫婦関係が破綻しているならば裁判離婚が認められるケースがあります。

夫婦の状態が以下の3つの要件を満たす場合は、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があります。

  1. 別居が相応の長期間に及んでいること
  2. 未成熟子が存在しないこと
  3. 相手方が離婚によって極めて苛烈な状態におかれないこと

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性格の不一致が理由で離婚できる?

性格の不一致は、離婚調停の申し立て理由でも1位を占める、最もメジャーな離婚理由です。性格の不一致を理由に、配偶者が離婚を求めてくるケースは多いと考えられます。

双方の合意さえあれば、性格の不一致が理由で離婚することは可能です。

しかし、性格の不一致だけを理由に離婚を求められても、一方的に離婚させられることはないといえます。

性格の不一致の場合、どちらにも同じくらい責任があるといえるため、どちらも有責配偶者にはあたりません。

相当な長期間別居しているなど、客観的に見て婚姻関係が破綻している状態でなければ、裁判で離婚が認められる可能性は低いでしょう。

一方的に離婚を突きつけられたらすべきこと

突然離婚を言い渡されたら、応じるにしても応じないにしても、話し合いを有利に進めるための対処法があります。

離婚届不受理申出を行う

相手が離婚を強く望んでいる場合は、勝手に離婚届を出されてしまわないように、役所で離婚届不受理申出の手続きを行いましょう。

この手続きをしておくと、こちらが申出を取り下げない限りは離婚届が受理されなくなります。

離婚したくない場合はもちろんですが、いずれ離婚に応じるつもりの方にとっても、離婚届不受理申出をしておくことは重要です。

離婚届を提出する前に、離婚条件や離婚後のことについて決めておいた方がよいからです。

特に親権争いがあるケースでは、相手が勝手に親権者を自分にして離婚届を出してしまう可能性に注意が必要です。離婚届に書かれた親権者を、後から変更するのは簡単ではありません。

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相手が有責である証拠を集める

原則として、有責配偶者からの離婚請求は、裁判では認められません

裁判の中で、相手が有責配偶者であることを、証拠を用いて証明しなければなりません。

したがって、離婚したくない方は、相手が有責配偶者である証拠を集めるとよいでしょう。有責配偶者であることを立証できれば、離婚を拒否する根拠になります。

また、離婚に応じる場合の交渉でも、有責の立場にある配偶者は強く出られません。裁判で勝てない以上、なんとかして離婚に同意してもらわなければならないからです。

さらに、有責行為に対する慰謝料請求が認められる可能性もあります。

このように、相手が有責である証拠は、離婚を拒否するためにも有利な条件で離婚するためにも役立ちます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

一方的に離婚を求めてくるケースの中には、相手が不倫を隠していた場合がよくあります。不倫を見抜いて相手が有責配偶者であることを証明すれば、離婚交渉を有利に進めることができるでしょう。

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相手の財産・収入を調べる

離婚の話し合いの前に、相手の財産や収入についての情報を集めておきましょう。

離婚することになったら、財産分与について考えなければいけません。公平に財産分与を行うには、相手が財産を隠していないかを確かめることが重要です。

話し合いや調停、裁判の場で隠し財産の存在を認めさせるには、財産の証拠が必要です。預貯金通帳や不動産の登記事項証明書、有価証券証書などがあるとよいでしょう。

また、別居中に請求する生活費(婚姻費用)や離婚後の養育費の計算には、夫婦双方の年収を用います。相手が収入を低く申告してきたら、受け取れる婚姻費用や養育費が少なくなってしまいます。

そのため、相手の収入額の証拠を確保しておきましょう。源泉徴収票や課税証明書、確定申告書の控えなどがあると役立ちます。

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弁護士に相談する

一方的に離婚を求められたら、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

弁護士は、専門的な知識や経験に基づき、離婚を回避する方法や有利に離婚する方法をご提案できます。

具体的な離婚手続きの見通しや、証拠集めのアドバイスを聞くこともできるでしょう。

話し合いの中で不用意に離婚に応じるような発言をすると、後の調停や裁判で不利になる可能性もあるため、まずは何をどのように話すか、弁護士に相談することをおすすめします。

一方的な離婚、離婚条件はどうなる?

慰謝料を請求できる?

配偶者に有責行為があった場合は、離婚慰謝料を請求することができます。

慰謝料請求の対象となる有責行為には、不貞行為やDV、モラハラ、悪意の遺棄などがあります。

一方的な別居も、悪意の遺棄にあたり慰謝料請求の理由になり得ます。

ただし、一方的に離婚を突きつけられたことのみを理由に慰謝料を請求するのは難しいといえます。

この場合でも、慰謝料ではなく解決金という名目でお金を受け取ることはできるかもしれません。

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解決金をもらえる?

離婚の解決金とは、離婚時に夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金です。

離婚慰謝料を請求するには不法行為の事実が必要ですが、解決金の請求には特別な要件がなく、どんな理由でいくら支払うかは自由です。いわば、「お金を払ってでも離婚してほしい」という時に支払うものです。

したがって、一方的に離婚を突きつけられたことによる精神的苦痛を理由に、解決金の支払いを求めることも可能です。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

ただし、解決金には慰謝料のように法的な支払い義務があるわけではなく、任意で支払うもののため、裁判で請求することができません。当事者間の交渉で同意を得る必要があります。

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財産分与に影響する?

財産分与は、夫婦の財産を寄与割合に応じて分け合うものです。そして、寄与割合は原則として2分の1ずつです。

割合の修正を主張してくるケースもありますが、調停や裁判ではほとんどの場合、2分の1ずつという結論になります。

寄与割合を修正する際には、財産形成への貢献度や、特別な資格や能力によって財産が築かれたかなどが考慮されますが、離婚原因は割合に影響を与えないのが通常です。

つまり、一方的に離婚を求められたからといって、財産分与の寄与割合が変わるわけではありません

もっとも、当事者間の合意によって寄与割合や渡す財産の内容を調整し、慰謝料や解決金のような役割を持たせることも可能です。

例えば、「持ち家を渡してくれるなら離婚してもいい」などといった交渉ができるでしょう。

養育費はいくらもらえる?

離婚した夫婦の間に未成熟子がいる場合は、子どもを引き取らなかった方の親から養育費を支払います。

養育費の金額の計算には、裁判所が公開する養育費算定表がよく用いられます。これは、夫婦双方の収入や職業、子どもの人数・年齢からひと月あたりの金額を算出する計算方法で、離婚の理由は養育費の金額に影響を与えません

もっとも、交渉次第で金額を増減することは可能です。

なお、離婚を求めた側が子どもを引き取ったとしても、もう一方の養育費を支払う義務はなくなりません。

養育費を支払う側としては、一方的に離婚を求められた上に養育費まで請求されて、理不尽に感じるかもしれません。

しかし、離婚理由がどのようなものであっても、子どもの親であるという事実は変わらないため、子どもを扶養し続けなければならないのです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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