一方的に離婚させられる?離婚が認められる条件と対処法

配偶者から一方的に離婚を求められても、協議・調停の段階では双方の同意が必要なため、一方的に離婚させられることはありません。
ただし、法定離婚事由(民法第770条1項)が認められる場合には、裁判によって相手の同意なく離婚が成立することがあります。
この記事では、一方的な離婚が認められる法的条件と、一方的な離婚を求められたときの具体的な対処法を解説します。
一方的に離婚できる?
原則的に一方的な離婚はできない
日本では、原則として夫婦の合意がなければ離婚することはできません。
離婚したい時はまず夫婦間の話し合い(協議)から始め、話し合いがまとまらなければ離婚調停を申し立てて家庭裁判所での話し合いを行います。
協議でも調停でも、夫婦の双方が離婚に同意しなければ離婚は成立しません。
したがって、協議や調停の段階では離婚を拒否することができます。
しかし例外として、裁判で離婚が命じられた場合には、同意がなくとも離婚が決定します。
一方的に離婚できるのはどんなとき?
協議離婚や調停離婚と異なり、裁判離婚では裁判所が離婚を認めた場合には、相手の同意がなくても離婚が成立します。
ただし、どんな理由でも裁判離婚が認められるわけではありません。裁判では、民法770条の法定離婚事由の有無を前提に、婚姻関係が破綻しているかが判断されます。
法定離婚事由とは、民法で定められた離婚の理由で、以下のうち少なくとも1つが存在しなければ、離婚は認められません。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
※2026年4月1日の民法改正で、回復の見込みのない強度の精神病は法定離婚事由から削除されます。
離婚を請求される側が不貞行為・悪意の遺棄を行っていた場合や、3年以上行方不明であり生死が分からない場合など、裁判において離婚が認められる可能性が高くなります。
その他婚姻を継続しがたい重大な事由の代表例としては、離婚を請求される側のDVやモラハラなどの行為のほか、2人がある程度の長期間別居していることなどが挙げられます。
有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない
法定離婚事由に該当する場合でも、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。これは、相手を傷つけた責任があるにもかかわらず、一方的に離婚を要求するのは信義に反すると考えられているからです(昭和62年大法廷判決)。
有責配偶者とは、夫婦関係の破綻の原因となる有責行為を行った配偶者をいいます。
有責行為の典型例は、不貞行為(不倫、浮気)、DV、モラハラ、悪意の遺棄などです。
有責配偶者からの離婚請求が認められなかった事例として、夫が生活費(婚姻費用)の支払いを一方的に停止したうえ、妻子が住む自宅について賃料名目で金銭の支払いを求める訴訟を起こすなど経済的に追い詰めたケースがあります(東京家判令4・4・28)。裁判所は「婚姻関係の修復を困難たらしめた」として夫の離婚請求を棄却しました。
ただし、有責配偶者からの離婚請求であっても、客観的に見て夫婦関係がすでに破綻している場合には、例外的に認められることがあります。特に、以下の3つの要件を満たしていると、その可能性が高まります。
- 相当の長期間の別居
夫婦の別居が相応の長期間に及んでいること - 未成熟子の不存在
夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと - 苛酷状態の不存在
相手方が離婚によって著しく不利な状況におかれないこと
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性格の不一致が理由で離婚できる?
性格の不一致は、夫婦関係がうまくいかなくなる原因として最も多く挙げられる理由です。法務省の「協議離婚に関する実態調査(令和2年度)」でも、夫の69.6%、妻の57.6%が、婚姻破綻の原因として性格の不一致を挙げています。
双方の合意さえあれば、性格の不一致が理由で離婚することは可能です。
しかし、性格の不一致だけを理由に離婚を求められても、一方的に離婚させられることはないといえます。
性格の不一致の場合、どちらにも同じくらい責任があるといえるため、どちらも有責配偶者にはあたりません。
相当な長期間別居しているなど、客観的に見て婚姻関係が破綻している状態でなければ、裁判で離婚が認められる可能性は低いでしょう。
一方的に離婚を突きつけられたらすべきこと
突然離婚を言い渡されたら、応じるにしても応じないにしても、話し合いを有利に進めるための対処法があります。
離婚届不受理申出を行う
相手が離婚を強く望んでいる場合は、勝手に離婚届を出されてしまわないように、役所で離婚届不受理申出の手続きを行いましょう。
この手続きをしておくと、こちらが申出を取り下げない限りは離婚届が受理されなくなります。
離婚したくない場合はもちろんですが、いずれ離婚に応じるつもりの方にとっても、離婚届不受理申出をしておくことは重要です。
離婚届を提出する前に、離婚条件や離婚後のことについて決めておいた方がよいからです。
特に親権争いがあるケースでは、相手が勝手に親権者を自分にして離婚届を出してしまう可能性に注意が必要です。離婚届に書かれた親権者を、後から変更するのは簡単ではありません。
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相手が有責である証拠を集める
原則として、有責配偶者からの離婚請求は、裁判では認められません。
裁判の中で、相手が有責配偶者であることを、証拠を用いて証明しなければなりません。
したがって、離婚したくない方は、相手が有責配偶者である証拠を集めるとよいでしょう。有責配偶者であることを立証できれば、離婚を拒否する根拠になります。
また、離婚に応じる場合の交渉でも、有責の立場にある配偶者は強く出られません。裁判で勝てない以上、なんとかして離婚に同意してもらわなければならないからです。
さらに、有責行為に対する慰謝料請求が認められる可能性もあります。
このように、相手が有責である証拠は、離婚を拒否するためにも有利な条件で離婚するためにも役立ちます。
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相手の財産・収入を調べる
離婚の話し合いの前に、相手の財産や収入についての情報を集めておきましょう。
離婚することになったら、財産分与について考えなければいけません。公平に財産分与を行うには、相手が財産を隠していないかを確かめることが重要です。
話し合いや調停、裁判の場で隠し財産の存在を認めさせるには、財産の証拠が必要です。預貯金通帳や不動産の登記事項証明書、有価証券証書などがあるとよいでしょう。
また、別居中に請求する生活費(婚姻費用)や離婚後の養育費の計算には、夫婦双方の年収を用います。相手が収入を低く申告してきたら、受け取れる婚姻費用や養育費が少なくなってしまいます。
そのため、相手の収入額の証拠を確保しておきましょう。源泉徴収票や課税証明書、確定申告書の控えなどがあると役立ちます。
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弁護士に相談する
一方的に離婚を求められたら、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
弁護士は、専門的な知識や経験に基づき、離婚を回避する方法や有利に離婚する方法をご提案できます。
具体的な離婚手続きの見通しや、証拠集めのアドバイスを聞くこともできるでしょう。
話し合いの中で不用意に離婚に応じるような発言をすると、後の調停や裁判で不利になる可能性もあるため、まずは何をどのように話すか、弁護士に相談することをおすすめします。
一方的な離婚、離婚条件はどうなる?
慰謝料を請求できる?
配偶者に有責行為があった場合は、離婚慰謝料を請求することができます。
慰謝料請求の対象となる有責行為には、不貞行為やDV、モラハラ、悪意の遺棄などがあります。
一方的な別居も、悪意の遺棄にあたり慰謝料請求の理由になり得ます。
ただし、一方的に離婚を突きつけられたことのみを理由に慰謝料を請求するのは難しいといえます。
この場合でも、慰謝料ではなく解決金という名目でお金を受け取ることはできるかもしれません。
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・離婚慰謝料の相場は?慰謝料がもらえるケース・種類・条件を弁護士が解説
解決金をもらえる?
離婚の解決金とは、離婚時に夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金です。
離婚慰謝料を請求するには不法行為の事実が必要ですが、解決金の請求には特別な要件がなく、どんな理由でいくら支払うかは自由です。いわば、「お金を払ってでも離婚してほしい」という時に支払うものです。
したがって、一方的に離婚を突きつけられたことによる精神的苦痛を理由に、解決金の支払いを求めることも可能です。

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ただし、解決金には慰謝料のように法的な支払い義務があるわけではなく、任意で支払うもののため、裁判で請求することができません。当事者間の交渉で同意を得る必要があります。
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財産分与に影響する?
財産分与は、夫婦の財産を寄与割合に応じて分け合うものです。そして、寄与割合は原則として2分の1ずつです。
割合の修正を主張してくるケースもありますが、調停や裁判ではほとんどの場合、2分の1ずつという結論になります。
寄与割合を修正する際には、財産形成への貢献度や、特別な資格や能力によって財産が築かれたかなどが考慮されますが、離婚原因は割合に影響を与えないのが通常です。
つまり、一方的に離婚を求められたからといって、財産分与の寄与割合が変わるわけではありません。
もっとも、当事者間の合意によって寄与割合や渡す財産の内容を調整し、慰謝料や解決金のような役割を持たせることも可能です。
例えば、「持ち家を渡してくれるなら離婚してもいい」などといった交渉ができるでしょう。
養育費はいくらもらえる?
離婚した夫婦の間に未成熟子がいる場合は、子どもを引き取らなかった方の親から養育費を支払います。
養育費の金額の計算には、裁判所が公開する養育費算定表がよく用いられます。これは、夫婦双方の収入や職業、子どもの人数・年齢からひと月あたりの金額を算出する計算方法で、離婚の理由は養育費の金額に影響を与えません。
もっとも、交渉次第で金額を増減することは可能です。
なお、離婚を求めた側が子どもを引き取ったとしても、もう一方の養育費を支払う義務はなくなりません。
養育費を支払う側としては、一方的に離婚を求められた上に養育費まで請求されて、理不尽に感じるかもしれません。
しかし、離婚理由がどのようなものであっても、子どもの親であるという事実は変わらないため、子どもを扶養し続けなければならないのです。
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・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
一方的な離婚請求に関するよくある質問
Q. 一方的に離婚届を出されたらどうなる?
あらかじめ離婚届の不受理申出をしておけば、相手が無断で提出しても受理されることはありません。申請は本籍地または住所地の市区町村役場で行えます。
すでに受理されてしまった場合でも、協議離婚無効確認の調停を申し立てることで、戸籍の訂正を求めることが可能です。
Q. 有責配偶者から離婚を求められても断れる?
原則として、断ることが可能です。最高裁判所は、有責配偶者からの離婚請求は信義誠実の原則に反するとして、基本的に認めない立場を示しています(昭和62年大法廷判決)。
ただし、長期間の別居が続いていること、未成熟の子どもがいないこと、離婚によって相手が著しく不利な状況に置かれないことの3つを満たす場合には、例外的に認められることがあります。
Q. 性格の不一致だけで一方的に離婚させられる?
性格の不一致だけを理由に一方的に離婚させられることはありません。民法第770条1項が定める法定離婚事由に該当せず、どちらも有責配偶者とは言えないため、裁判で離婚判決が出る可能性は低いです。相当な長期間の別居など客観的な婚姻破綻の事実がない限り、同意なく離婚は成立しません。
Q. 一方的に離婚を求められた場合、慰謝料はもらえる?
配偶者に不貞行為やDV・モラハラ・悪意の遺棄などの有責行為がある場合は慰謝料を請求できます(民法第709条)。一方的に離婚を告げられた事実のみでは請求は困難ですが、相手の有責行為が証明できれば調停・裁判での請求が可能です。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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一方的に離婚を求めてくるケースの中には、相手が不倫を隠していた場合がよくあります。不倫を見抜いて相手が有責配偶者であることを証明すれば、離婚交渉を有利に進めることができるでしょう。