第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。
「刑事事件弁護士アトム」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。
被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。
アトムは夜間土日も受け付けの相談窓口で刑事事件のお悩みにスピーディーに対応いたします。
盗撮未遂は処罰される?盗撮の刑罰や解決のポイントを解説
2023年7月13日以降の事件は「撮影罪」に問われます。
- エスカレーターで盗撮しようとしたら、私服警官に見つかった
- 電車の中で盗撮が見つかったけれども、盗撮できていなかった
- 盗撮が見つかっても、データを削除すれば処罰されない?
盗撮しようとしたけれども撮影に至らなかった場合や、撮影データがない場合、盗撮未遂罪として処罰されるのでしょうか。
この記事では、盗撮が未遂に終わったときの流れや、盗撮事件の刑罰・解決ポイントなどについて、弁護士が解説します。
刑事事件でお困りの方へ
ご希望される方はこちら
目次
「盗撮未遂罪」はある?
そもそも未遂とは?
未遂とは、犯罪行為を開始したものの、結果が発生せずに犯罪を遂げなかった場合のことをいいます。
未遂犯は、法律に未遂を処罰するとの規定がない限り処罰されることはない、とされています(刑法44条)。
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
刑法44条
盗撮未遂罪は存在する?
盗撮は、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律において「性的姿態等撮影罪」として処罰される犯罪です(2条1項1号)。
そのため、盗撮未遂が処罰されるかどうかは、同法の中に、未遂を処罰するとの規定があるかどうかを確認する必要があります。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条2項
撮影罪には、上記のような未遂を処罰する規定があります。
つまり「盗撮未遂罪」は存在します。
盗撮未遂で処罰される行為とは?
盗撮の未遂は「撮影未遂罪」?
撮影罪の未遂として処罰される行為としては、たとえばカメラを差し向ける行為、カメラを設置する行為、カメラを利用するなどしてのぞき見る行為などがあげられるでしょう。
これらの行為に着手すれば、「盗撮」という犯罪の達成が現実味を帯びることになるからです。
まえは盗撮未遂は処罰されていなかった?
迷惑防止条例違反とは?
令和5年7月12日以前の「盗撮」には、撮影罪の適用がありません。
だからとって、「令和5年7月12日以前の盗撮」が、まったく法の規制を受けない訳ではなく、各都道府県が定める「迷惑防止条例」によって規制されていました。
盗撮未遂が処罰されるかどうかは、迷惑防止条例の中に、未遂を処罰するとの規定があるかどうかを確認する必要があります。
なお東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)の場合、「未遂を処罰する」との規定はありません。
処罰対象だった盗撮未遂の行為とは?
盗撮未遂と思われるけれども、処罰対象として迷惑防止条例に規定されている行為について、具体的にお伝えします。
Point
- カメラ等を差し向ける行為
- カメラ等を設置する行為
- のぞき見る行為
※これらの行為は実際に撮影が成功したかどうかと関係なく犯罪が成立し、処罰の対象となります。
1.「差し向ける」行為
迷惑防止条例では、多くの都道府県で、下着や通常は衣服で隠されている身体の部位を盗撮するために、スマホやカメラを「差し向ける」行為それ自体が禁止されています。
通常は衣服を着用していない場所(風呂、トイレ、更衣室など)や、不特定多数が使用する公共の場所(ホテルの客室、学校の教室、会社の事務室など)にスマホやカメラを差し向ける行為も、同じく犯罪となります。
したがって、盗撮しようとしてこれらの場所にスマホやカメラを差し向けた時点で、実際に撮影したかどうかに関係なく、犯罪が成立して処罰されるということになります。
2.カメラ等を「設置する」行為
多くの都道府県で、スマホやカメラを「設置する」ことも、差し向ける行為と同様に扱われます。
たとえば設置する行為としては、ホテルの客室やトイレ、浴場などに、無人の間にスマホやカメラを設置することなどが考えられます。
盗撮目的でこれらの行為を行えば、差し向けた場合と同じく、実際に撮影したかどうかに関係なく、犯罪となります。
3.「のぞき見る」行為
他人の住居、風呂、更衣室、トイレなどの通常衣服をつけないような場所を「のぞき見る」行為も、犯罪が成立します(軽犯罪法1条23号)。
肉眼でのぞき見る行為のほか、スマホやカメラの望遠機能を利用してのぞき見る行為も、犯罪が成立して処罰の対象となる可能性があります。
このように、一般的に盗撮未遂と考えられるような行為は、そのほとんどが処罰の対象となっていました。
今後は、「令和5年7月13日以降の撮影」については、これらの行為が「撮影罪」の未遂罪として処罰されることになるでしょう。
また、これらに該当しない行為であっても、盗撮行為に着手したと評価できる行為をした場合、撮影罪の未遂罪として処罰される可能性があるので、より広範囲の規制となるでしょう。
盗撮の刑罰は?
盗撮の刑罰の内容は?
撮影罪の刑罰
盗撮が撮影罪に問われる場合、「3年以下の懲役刑又は300万円以下の罰金」になります。
(性的姿態等撮影)第二条
1 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項1号
撮影罪の未遂の場合は、刑の任意的減軽あるいは必要的減免が認められます。
(未遂減免)第四十三条
刑法43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
迷惑防止条例違反の刑罰
令和5年7月12日以前、実際に撮影し盗撮を行った場合、盗撮目的で差し向けや設置を行った場合などの盗撮の刑罰について、迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。
東京都の迷惑防止条例違反が適用される場合、刑罰は以下のとおりです。
行為 | 刑罰 |
---|---|
盗撮(撮影まで行っている場合) | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
盗撮(常習) | 2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
差し向けや設置 | 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
差し向けや設置(常習) | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
軽犯罪法違反・住居侵入罪の刑罰
また盗撮行為は、迷惑防止条例違反だけでなく、軽犯罪法違反や刑法130条の住居侵入罪にも問われ得ます。
行為 | 刑罰 |
---|---|
のぞき見る行為(軽犯罪法違反) | 拘留(1日以上30日未満身体拘束) または科料(1000円以上1万円未満のお金を納付) |
盗撮目的で邸宅などに侵入(住居侵入罪) | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
どの刑に問われるかは犯罪の情況などによって変わります。
実務上は、令和5年7月13日以降の盗撮については、撮影罪がおもに適用されることになるでしょう。
一方、令和5年7月12日以前の盗撮については、まず迷惑防止条例違反に規定される各罪に問えるかが検討され、迷惑防止条例違反の要件を満たさないものについては軽犯罪法違反か住居侵入罪に問われるという場合が多いです。
前科を付けずに済む可能性はある?
実際に盗撮をしてしまった場合であっても、不起訴処分を獲得できれば刑罰を受けずに済みます。
不起訴処分というのは検察官の判断のもと、罪に問う必要はないとして事件終了となる手続きのことです。
実務上は、初犯で犯行態様が悪質ではなく、被害者の方と示談が済んでいる場合には不起訴になる可能性は高いです。
罰金で済む可能性や相場は?
罰金で済む可能性
従来の盗撮処罰の傾向からすると、仮に起訴された場合であっても、被害者との間で示談が成立している場合や常習性が認められない場合、差し向けや設置にとどまる場合などには、罰金で済む可能性が高くなります。
たとえば、従来の盗撮の刑罰のなかで、いちばん厳しい刑事罰を規定しているのが条例でした。
そこで、条例による刑事罰の相場を見てみると、東京都の場合、罰金は最大100万円と定められていますが、相場としては、30万円前後となるケースが多く見受けられました。
ただし、今後、撮影罪の適用が増えていくなかで、罰金刑の相場金額が変遷することもあり得るでしょう。
過去、アトム法律事務所が実際にとり扱った事例でも、相場金額は約30万円となっています。
執行猶予になる可能性
また、これらの場合には、たとえ正式起訴されて懲役刑が選択されたとしても、執行猶予付きの判決となる可能性も高く、多くのケースで刑務所に入ることは回避できるといえます。
盗撮事件では、初犯の場合や示談が成立していて罰金刑が見込まれる場合、略式起訴となることが多いといえます。
略式起訴で罰金となれば、書面審理だけで済みますので、平日の日中に裁判を受けに行く負担もなくなりますし、刑務所に入るリスクも回避することができます。
他方、盗撮の前科があったり、常習性が認められるような場合には、正式起訴されて懲役刑を受けるという可能性が高まります。
盗撮事件の解決のポイントは?
不起訴や刑を軽くするためには示談が重要?
不起訴となったり刑を軽くしたりするためには、被害者との示談を成立させて、被害届を取り下げてもらうことが効果的です。
示談とは、民事上の賠償責任について当人同士の話し合いで解決する手続きです。
示談を成立させるためには、事案に応じた適切な示談金を提示するなど、誠実かつ粘り強い示談交渉が大切です。
身柄を拘束されている場合には、スピードも重要となります。
また、示談書を作成する段階では、刑事責任を許すこと、被害届の取下げを約束すること、示談をもってすべてを解決することなどを盛り込んだ、法律的に意味のある内容の書面を作成しなければなりません。
盗撮事件は弁護士への相談するべき?
盗撮事件の被疑者として検挙された場合、速やかに弁護士に相談することをお勧めします。
実際に盗撮をした場合には、少しでも早く被害者との示談交渉を開始し、示談を成立させなければなりません。
しかし被疑者が被害者と直接連絡をとって示談交渉をすることは、極めて困難です。実務上、被害者の連絡先すら知ることができないケースも少なくありません。
弁護士が第三者として介入してはじめて示談交渉が可能になるケースが大半なのです。
示談が成立すれば、不起訴とすべきであることを主張した「意見書」という書面を弁護士が作成し、これらに示談書などを添付して、検察官に提出します。
また逮捕された直後は、弁護士以外とは連絡や面会をすることができません。
弁護士であれば、夜間であっても面会が可能です。
盗撮事件の被疑者の立場に置かれた場合には、刑事事件に精通した弁護士への依頼が望ましいといえます。
アトム法律事務所の相談窓口は?
アトム法律事務所は刑事事件専門の弁護士事務所として設立された沿革があり、盗撮事件についても経験豊富です。
警察沙汰になった事件については初回30分無料の対面相談を実施しています。
まずは24時間365日繋がる対面相談の予約窓口にお電話ください。なるべく早めのお電話がお悩み解決の糸口になります。
刑事事件でお困りの方へ
ご希望される方はこちら
監修者
アトム法律事務所
所属弁護士
迷惑防止条例は、各都道府県によって若干内容が異なります。東京都の場合、未遂を処罰するとの規定がありませんので、盗撮未遂は犯罪ではなく処罰されません。
しかし、盗撮未遂といえる一部の行為態様については明文で規定されており、実質的にみれば盗撮未遂の処罰規定が存在すると言えるでしょう。
なお、撮影罪が施行される「令和5年7月12日以前の盗撮」については、時効を迎えるまでは、従前の法律で処罰されることになります。