学校で子どもが怪我|損害賠償請求の方法と着目すべき要点を解説
更新日:
子どものすることに多少の怪我は仕方ないと分かっていても、「怪我をさせられた」と聞くと、家族としては不安になるものです。
子ども本人から話を聞くうちに、「今回の怪我について損害賠償請求をしたい」と考える人もいるでしょう。
この記事では、子どもが学校で怪我をさせられて損害賠償請求を考えている方に向けて、損害賠償請求の方法、学校生活におけるシーン別に損害賠償請求のポイントを解説します。
目次
損害賠償請求の方法|うまく進めるための対応と要点
損害賠償請求をうまく進めるにあたって、損害賠償請求の基本事項をおさえておきましょう。
誰に損害賠償請求できるのか
子どもが学校で怪我をした場合には、次のような相手が損害賠償請求相手となりえます。
- 教師
- 学校
- 加害生徒
たとえば、他の子どもが廊下を走っていてぶつかってきて怪我をした場合、加害生徒は損害賠償請求の相手となることは容易に想像できるでしょう。それだけではなく、教師や学校に対しても損害賠償請求できる可能性があります。
仮に加害生徒が常日頃から廊下を走っていて、教師がそのことを知っていながら十分に指導しなかった場合には、教師の過失に当たる可能性があるのです。そして、教師の責任が認められた場合には、雇用者である学校にも責任を問えます。
損害賠償請求相手の整理はとても大切です。ご家族だけで判断せず、法律の専門家である弁護士に見解を尋ねることも有効でしょう。
学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説
いつ損害賠償請求をするのか
損害賠償請求は、原則すべての損害について金額の算定が可能となってから進めます。子どもの怪我の程度によって異なりますので、以下の表をご覧ください。
怪我の結果 | 損害の算定時期 |
---|---|
完治した | 怪我の治療終了後 |
後遺症が残った | 後遺障害等級認定後 |
死亡した | 葬儀・法要の後 |
「子どもの治療費が家計を圧迫している」、「少しでも早く賠償金を受け取りたい」と考えて、納得のいかないまま損害賠償請求を進めたり、安易に示談に応じるのは早計です。ひとまず「災害共済給付」を受けることをおすすめします。
災害共済給付は学校事故の損害を補償してくれる共済です。病院の窓口で支払った医療費(保険診療に限る)に少し上乗せされた金額を受けとることができます。
損害賠償請求額はどうやって決めるのか
実費を請求するものと一定の計算方法や相場に基づいて請求するものがあります。損害賠償請求の項目の一例と算定方法は以下の表の通りです。
請求項目 | 算定方法 |
---|---|
治療費 | 実費 |
通院交通費 | 実費 |
慰謝料 | 治療期間の長さ、後遺障害の程度などを考慮 |
逸失利益 | 後遺障害の程度、想定される将来の年収などを考慮 |
表はあくまで一例にすぎません。弁護士であれば一つひとつの怪我について損害賠償額の請求項目を明らかにし、いくら請求できるのかを見積もることができます。
なお、災害共済給付からの給付金との二重取りは認められません。災害共済給付の給付を受けた場合は、その金額を差し引いたものが最終的な損害賠償金となります。
慰謝料も損害賠償請求項目のひとつ
損害賠償請求といえば「慰謝料」を思い浮かべる人は多いでしょう。
慰謝料は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。
たとえば子どもが怪我をさせられて打撲で1ヶ月通院した場合、慰謝料の相場は19万円です。骨折などの重傷時はもっと相場が高くなりますし、入院期間が生じたり、通院が長引けば慰謝料が高額化するでしょう。
学校事故の慰謝料相場と請求先!ケガ・後遺障害・死亡の計算方法とは?
損害賠償請求の方法のひとつに裁判がある
損害賠償請求をすると聞くと「裁判」を想起する人は多いでしょう。
損害賠償請求の方法は裁判だけではなく、むしろ裁判は最終的な手段として採られることが多いです。
学校で子どもが怪我をさせられた場合、まずは学校側や加害生徒との話し合い(示談交渉)から始めることになります。
話し合いをしても双方納得のいく内容が決まらなかった場合に、ADRや裁判という第三者を介した方法へと移っていくのが基本です。
学校事故の訴訟事例|裁判で損害賠償請求する流れやその他の解決方法
学校での怪我は損害賠償請求できる?目のつけどころを解説
学校での怪我について、加害生徒がいる場合には、その生徒に対する損害賠償請求が可能です。損害賠償請求額はどちらがどれだけ悪いのかを割合で決めて、最終的に金額確定となります。
また、学校側にも損害賠償請求ができる可能性があります。
ただし、怪我の原因について、学校側になんらかの責任がある場合のみです。
- 先生が故意に怪我をさせたケース
- 先生の過失で怪我をしたケース
- 学校の管理する施設や設備に安全上の不具合があったケース
損害賠償請求のポイントに絞ってみていきましょう。
部活で子どもが怪我をさせられた
部活中の怪我について、加害生徒がいる場合には、その生徒への損害賠償請求は可能です。
学校側への損害賠償請求が認められるかどうかは、先生が怪我をどの程度予測できていたのか、予測してきちんと対応したのかが重要です。
たとえば、部員の熟練度・練習の難易度に合わせた適切な指導方法がとられていたのか、先生は練習に立ち会っていたのか、安全面に問題のない環境で部活動が行われていたのかなどは争点となりやすいでしょう。
部活動中の事故|損害賠償請求の流れは?部活事故の責任と請求内容
授業中に子どもが怪我をさせられた
授業中に他の生徒から危害を加えられて怪我をした場合には、その生徒への損害賠償請求は可能です。
学校に損害賠償請求ができるかどうかは、先生が怪我の危険性を予測しえたのかや、授業の進め方が争点となるでしょう。
たとえば、授業中に子ども同士のけんかで怪我をしたとします。
学校側への責任を問えるかどうかは、けんかのいきさつ次第です。極めて突発的だったり偶発的に起こったけんかの場合、先生にも予測は難しいと判断され、学校への損害賠償請求は認められない可能性があります。
授業中の怪我としては、理科の授業による実験指導もリスクが高いです。
生徒は習う立場ですから、高度な知識や技術を持っていないことを前提にして、先生は十分注意して指導することが求められます。指導内容は適切であったのか、実験器具に不具合はなかったのかなどを検討して、学校側に責任を問える可能性はあるでしょう。
学校における体育の事故で怪我をした場合の責任追及と保険の利用
理科の授業中に事故!怪我の補償と学校側の責任を解説
水泳で子どもが怪我をさせられた
水泳・プール授業の怪我について、加害生徒がいる場合には、その生徒への損害賠償請求は可能です。
学校側への損害賠償請求については、先生がどのくらい怪我を予測できたのか、学校側がプール設備を適切に管理していたのかがポイントといえるでしょう。
たとえば、監視体制は十分であったかということはポイントです。飛び込みや潜水は危険性の高い行為であるため十分な安全対策が必要で、先生にも相応の対応が求められます。
また、飛び込み台の高さや排水溝の溝蓋などプール設備の安全性に問題があった場合には、設置者である学校の責任を問えます。
登下校中に子どもが怪我をさせられた
登下校中に他の子どもとトラブルになり怪我させられた場合、トラブル相手に対する損害賠償請求は可能です。
ただし、学校側に責任を問えるかどうかは別です。加害生徒による行為が学校内でも行われており、先生が登下校中のトラブル発生を予測しえたと判断された場合には、先生の過失が認められる可能性はあるでしょう。
もしも突発的に喧嘩が起こった場合には、先生の予測の範囲を超えているために未然に防ぐことは難しく、損害賠償請求は認められない可能性があります。
登下校中の事故については、災害共済給付の補償範囲となる可能性があります。損害賠償請求が難しくても給付を受けられるので、利用を検討してください。
なお、登下校中の怪我で多い「交通事故」については、交通事故の相手の自動車保険から補償を受けることになるため、災害共済給付との調整が図られます。
修学旅行中に子どもが怪我をさせられた
加害生徒がいる場合には、その生徒に対する損害賠償請求は可能です。
また、学校側にも落ち度があると認められた場合には、損害賠償請求が可能でしょう。たとえば、修学旅行を安全に行うための下見や事前準備が足りていなかった場合や、引率が必要な場合に引率していなかったケースが該当します。
修学旅行中の怪我は、移動中や宿泊先など様々な場面で起こりえます。学校が管理できる範囲には限界があるものとして、怪我の責任を問えないことも十分あるでしょう。
遠足中に子どもが怪我をさせられた
加害生徒がいる場合には、その生徒への損害賠償請求は可能です。
また、学校側も安全配慮に欠けていたと認められた場合には、損害賠償請求できます。たとえば、遠足は子どもの体力に合わせた計画を立てなくてはなりません。遠足が無理な工程ではなかったのか、体験学習をする際には十分に事前指導を受けて行われたのかも検討すべきでしょう。
いずれにせよ、怪我のリスクを予測して回避するための対策を十分に行っていたのかが学校を相手取った損害賠償請求のポイントです。
運動会で子どもが怪我をさせられた
運動会に向けた練習や、運動会当日に子どもが怪我をさせられた場合には、損害賠償請求が可能なケースがあります。
まず、加害生徒に対しては、損害賠償請求が可能です。
学校側に損害賠償請求する際のポイントは、学校側が怪我の発生を予想できたか、予想して適切な対策を取っていたのかが分かれ目になるでしょう。
たとえば運動会の種目のひとつである組体操ですが、怪我の発生リスクが非常に高く、指導する先生にも高度な危機管理能力が求められます。
組体操で事故の被害者になったら利用できる制度|賠償責任は学校に問える?
学校事故の損害賠償請求!相談は弁護士へ
学校事故でお子さまに大きな後遺障害が残ったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。法律相談の予約は24時間・365日体制で受け付け中です。
無料法律相談ご希望される方はこちら
アトム法律事務所 岡野武志弁護士
損害賠償請求をすることで得られるメリットは、一人ひとり異なります。
まずは損害賠償請求額を弁護士に見積もってもらい、それから損害賠償請求を行うのかを検討してみるのも一つの方法です。
損害賠償請求は相手方との話し合いから始まります。
弁護士に依頼することで、相手方の提案にどう対応したらよいかのアドバイスが受けられます。
また、いっそ相手方との連絡窓口を弁護士に一本化してしまえば、保護者やお子さんは日常生活への復帰がしやすくなるでしょう。
学校事故で、お子さまに大きな後遺障害が残ったり亡くなられてしまい、損害賠償請求を検討されている場合は、ぜひ弁護士への相談から始めてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了