遠足での事故事例と救済制度を解説|損害賠償請求は可能?
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遠足でお子さんが事故に遭った場合、保護者は誰にどのような請求ができるのでしょうか。
今回は、このような疑問を解決できるように、遠足事故の法的な問題について解説していきます。
目次
実際に起こった遠足での事故事例を紹介
まずは、学校事故として実際に起こった遠足での事故事例を解説します。
学校事故には遠足での事故も含まれる
一般的に「学校事故」とは、学校の内外を問わず、学校の管理下において児童・生徒が巻き込まれる学校災害のことを指します。
この学校事故には、授業中の怪我の他にも「遠足」中に発生する事故も考えられます。
ここでは、遠足に関連して発生した学校事故について具体的な事例を死亡事案・負傷事案に分けて紹介していきましょう。
遠足事故での死亡ケース
まず、遠足事故で児童・生徒が死亡してしまったような事案について紹介します。
遠足中に持病が悪化して死亡したケース
この事案は高校3年生の女子生徒が亡くなってしまった事例です。この女子生徒は持病として喘息を患っていました。
遠足で学校を出発し約1時間かけて目的地である公園に到着しました。公園で写真撮影が終わった際に、この女子生徒は体調が悪い旨を申告しています。
この生徒からの申出を受けてすぐに救急車を要請し、彼女は病院に搬送されましたが、数日後に死亡しました。
生徒の死亡原因は、大血管系突然死であると結論付けられています。
遠足先で意識不明になりその後死亡したケース
この事案では小学校5年生の女子児童が遠足中に亡くなった事案です。
バスでの遠足で公園に到着し、全体指導があったのち、グループ行動が開始されました。この女子児童を含む児童たちのグループはネットで遊んだり、滑り台を滑ったりして遊んでいる姿を巡回中の教員により確認されていました。
そして、午前10時ころに付近のベンチでこの女子児童が座っているのを他の教員がみつけ声かけをしたところ、「頭が痛い。気持ちが悪い。」などと訴えました。
数分座っていましたが、顔を横にし、ややうつ伏せの状態にして足を伸ばして横にして休ませることにしました。しかし、そのうち鼻水をすするような寝息を立てはじめたため、教員が起きるように声をかけましたが反応はなく、顔色も悪い状態でした。
そこで、教員は救急車を要請し、救急車の到着までは心肺蘇生を試みました。AEDも使用されましたが、「電気ショックの必要なし」の様態でした。
女子児童は病院に搬送され治療を受けましたが、意識を回復することなく約1か月後に亡くなってしまいました。
この女子児童の死亡原因は、中枢神経系突然死であると考えられています。
遠足事故での負傷ケース
次に、遠足中に起こった児童・生徒の負傷事例を紹介していきます。
遠足中の落下事故により足を切断する大事故になったケース
この事案は小学4年生の男子児童が遠足中に大ケガを負ったケースです。
遠足で行われたオリエンテーリング中に、この男子児童が指定されたポイントを探している時、重ねてある岩に登ってしまいまいした。
この児童が登った岩が崩れ、約2メートル下へ転落して、負傷してしまいました。
この事故により、この男子児童は下肢切断・機能障害という大ケガを負ってしまいました。
遠足での調理中の事故により目立つ箇所に火傷を負ったケース
この事案は、中学校2年生の女子生徒が熱傷を負ってしまった事案です。
コース別選択での遠足において、この女子生徒は「炊飯コース」を選択して遠足に参加していました。
このコースでは、石を積み上げた釜戸を使用してフライパンに揚油を入れフライドポテトを作っていましたが、調理中に釜戸の石が割れ、フライパンがその勢いで持ち上がり、女子生徒の方向に倒れてきました。
フライパンが倒れたことで、高温の油が女子生徒の左手首と右太ももにかかり熱傷を負ったのです。
この事故によって、女子生徒は外貌・露出部分の醜状障害を負うに至りました。
遠足での事故における学校側の責任
安全配慮義務違反があるなら責任あり
遠足での事故が、担当教員の過失によって生じたといえる場合には、学校側に責任があるとして損害賠償請求を行うことが可能です。
学校の教員は、生徒の安全を確保するという安全配慮義務を負っています。
この安全配慮義務に違反があったのであれば教員に過失が認められるため、損害賠償請求が可能となるのです。
安全配慮義務違反の有無については、活動の危険性や子どもたちの発達段階、現場の状況等に応じた判断が必要になります。
遠足における学校の安全配慮義務とは
ここでは、遠足や修学旅行における一般的な安全配慮義務について解説しましょう。
以下で述べるような安全配慮が欠けている場合には、安全配慮義務違反が認められる可能性が高いといえます。
安全教育や安全指導
児童生徒に対する安全に対する基礎的な事項を理解させ、状況に応じた適切な判断をできるように指導しておくことが求めらます。
たとえば、遠足や修学旅行で登山や川原での体験学習を行う際には、危険を回避するための具体的な訓練を実施したり、水の中に転落した場合の適切な対処法などを指導しておくことが必要でしょう。
また、緊急事態を目の当たりにした生徒に対して、担当教員に対する速やかな連絡を実現するための指導も実施しておくべきでしょう。
対人管理や施設管理
児童生徒の体力や運動能力を把握して、子どもに応じた適切な指導計画の策定が必要です。児童生徒の健康管理を個別的に把握できる体制の構築が求めらます。
さらに事故に備えた医療機関との連絡体制や、保護者との連絡体制を整備しておくことも重要でしょう。
このような対策をいずれも怠っていたような場合には学校の安全配慮義務違反が認められる可能性が高いです。
学校側に法的責任があるなら損害賠償請求を
教員の安全配慮義務違反が認められる場合は、学校側に対する損害賠償請求を行いましょう。
治療に関係する費用や、慰謝料などについて請求を行うことが可能です。
具体的に請求可能な内容について知りたい方は『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』の記事をご覧ください。
遠足中の事故でも利用できる保険がある
ここでは、遠足事故でも利用できる保険制度を紹介します。
学校事故には災害共済給付制度が利用できる
「災害共済給付制度」とは独立行政法人日本スポーツ振興センターが行っている制度です。
学校の管理下で、児童・生徒が怪我をした場合に保護者に対して給付金(災害共済給付)が支払われます。
給付を受けとるために、保護者は災害が発生した際には直ちに医療機関で適切な治療を受けさせ、医療機関等で医療費の証明を受け学校に提出しましょう。
学校側は、怪我の発生状況の報告書と医療費の証明を学校設置者に提出し、学校設置者を通して日本スポーツ振興センターに提出されます。
給付金の申請から実際に保護者に支払いが完了するまでには約3か月程度かかるでしょう。
遠足事故も「学校の管理下」の範囲に含まれる
災害共済給付の対象となるのは、「学校の管理下」での負傷・疾病・障害等です。
学校の管理下といえる場合とは、学校が編成した教育課程にもとづく授業を受けている場合や、学校の教育計画にもとづく課外指導を受けている場合に認められます。
教育課程にもとづく授業には、各教科・道徳・総合的な学習の時間等のほかに、「特別活動」というものも含まれます。
遠足や修学旅行などはこの特別活動に含まれているため、遠足中の事故であっても災害共済給付を受けることができるのです。
なお、遠足や修学旅行などの際における休憩時間については、それぞれの教育活動の一環と考えられています。
ただし、学校の指揮下を著しく離れた場合には学校の管理下には含まれませんので注意が必要です。
災害共済給付金の内容や手続きに関しては『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事をご覧ください。
もっとも、学校事故で子どもが被った損害のすべてが災害共済給付により補てんされるわけではありません。
学校側の安全配慮義務違反によって損害を受けた場合、給付金の支給額を超える損害は、別途、損害賠償請求を行うことで補てんしましょう。
遠足での事故については弁護士に相談
弁護士に相談して適切な請求を行おう
学校側に落ち度があったことで遠足中に事故が起こった場合、学校側への損害賠償請求が可能です。そして、損害賠償請求を検討する際には弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士ならば、法律の専門家という立場から損害賠償請求するべきか、損害賠償請求するならいくらかといったアドバイスやサポートが可能です。
こちらの関連記事『学校事故は弁護士に相談・依頼!メリットと無料法律相談の窓口を紹介』では、学校事故を弁護士に相談することで得られるメリットなどについて詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了