体罰を受けたら弁護士に相談すべき|教師が負う3つの責任と体罰の定義 | アトム法律事務所弁護士法人

体罰を受けたら弁護士に相談すべき|教師が負う3つの責任と体罰の定義

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体罰を受けたら弁護士に相談すべき|教師が負う3つの責任と体罰の定義

子どもに対する体罰は法律で禁止された行為です。
もし、学校で子どもが体罰にあったと思われる場合、どのような対応を取ればよいのでしょうか。

本記事では、どのような行為が体罰にあたるのか整理してから、体罰に関して教師が負う責任や体罰の問題を弁護士に相談するメリットを解説していきます。

どこからが体罰といえる行為か

体罰は法律で禁止されている違法行為ですが、教育に必要な懲戒は認められています。それでは、体罰とはどのような行為をさすのでしょうか。

体罰とは?体罰の具体例

大まかにいうと、体罰とは殴る・蹴るなどといった身体を侵害する行為や、正座の体勢をとらせ続けるなどの肉体的苦痛を与える行為をいいます。

学校教育法第11条において、体罰は禁止されている行為です。条文を確認しておきましょう。

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

学校教育法 第十一条

教師は児童生徒の指導にあたり、いかなる場合も体罰を行ってはいけないと規定されているのです。

それでは、もう少し具体的に体罰にあたる行為はどのようなものなのかみておきたいと思います。

身体を侵害する行為

  • 授業中に危険な行為をしたとして児童生徒の背中を足で踏みつけた
  • クラスルーム中の態度が悪いとして児童生徒をつき飛ばして転倒させた
  • 授業の態度を口頭注意したが無視して着席しないとして児童生徒の頬をつねって着席させた
  • 授業態度を注意したが反抗的な態度をとったため児童生徒の頬を平手打ちした
  • 生徒指導から逃れようとする生徒の腕を引いたが生徒が腕を振り払ったため生徒の頭を平手でたたいた
  • 教室でふざけないよう口頭注意したが、無視するので生徒児童に対して持っていたボールペンを投げつけ生徒にあてた
  • 部活動で顧問の指示に従わないため生徒児童の頬を殴打した

肉体的苦痛を与える行為

  • 放課後、児童を教室で居残りをさせ、当該児童がトイレに行きたいと訴えたが教室から出ることを許さなかった
  • 個別指導のために生徒を長く別室に留め置き一切室外に出ることを許さなかった
  • 宿題を忘れた児童に対して教室のうしろで正座して授業を受けさせ苦痛を訴える児童に姿勢の維持をさせた

体罰に当たりうる行為について、文部科学省は参考事例として以上のような行為を例示しています。

懲戒と体罰の区別

体罰が禁止される一方、教師などには児童生徒に対して懲戒を行う権限があります。

懲戒とは、学校教育法施行規則に定める退学・停学・訓告のほか、児童生徒に肉体的苦痛を与えるものでない限り通常懲戒権の範囲内と判断されるものは許容されています。

具体的に懲戒として許容されると考えられているのは、以下のような行為です。

  • 宿題や掃除当番を当該児童生徒に担当させる
  • 授業終了後も生徒児童を教室内で居残りをさせる
  • 授業中に児童生徒を教室内で起立させたままにする
  • 授業中に無断で離席する児童生徒を注意して着席させる
  • 部活動で遅れてきた児童生徒をペナルティとして試合に出場させない

許される懲戒行為と許されていない体罰行為の境界線は、場合によって曖昧なものです。当該児童生徒の年齢・健康・心身の発達状況、行為の場所的・時間的環境、懲戒の態様などさまざまな考慮要素を総合判断して、懲戒と体罰を区別する必要があります。

また、懲戒は児童の親が持つ権利を教師が代わりに行使できるという意味でもありません。たとえ、児童の親に許可をもらっていたとしても、児童の親の懲戒権が教師に託されたことにはならないのです。

体罰の例外|正当行為・正当防衛として許容される行為

原則として、有形力の行使は体罰にあたるため許されません。もっとも、正当行為や正当防衛にあたる場合には、例外的に許容される行為もあります。

正当行為・正当防衛として許容される行為は、以下のとおりです。

  • 児童生徒が教師の指導に反抗して教師の足を蹴ったため児童生徒の背後に回り身体をきつく押さえつけた
  • 児童生徒が休み時間に廊下で他の児童生徒を押さえて殴っていたため当該児童の両肩をつかんで引き離した
  • 全校集会中に大声を出して集会を妨害する行為をした児童生徒に対して、冷静にさせ別の場所で指導するため移動させようとしたが依然として大声を出し続けて抵抗するため、腕を引っ張り移動させた
  • 試合中に相手方チームの選手とトラブルになり殴りかかろうとしている生徒を止めるために押さえつけた

教師に対して追及できる体罰に関する3つの責任

教師が許されない体罰を行った場合、どのような法的な責任が発生しうるのでしょうか。教師の体罰には、民事責任・行政責任・刑事責任の3つの責任が考えられます。

(1)民事責任|訴訟や示談で損害賠償請求

体罰は民法上の不法行為に該当する可能性があります。不法行為とは、故意・過失によって児童生徒の権利や法律上保護された利益を侵害した場合にはこれによって生じた損害を賠償する義務を負います。(民法第709条)

公立学校の場合、国家賠償法に基づき公務員である教師が故意・過失によって違法に他人に損害を加えたのであれば、国または公共団体に直接の損害賠償責任が発生します。
したがって、公立学校の場合には体罰を行った教師個人に対して直接の損害賠償請求をすることはできません。

私立学校の場合、教師は公務員ではありませんので国家賠償法の適用はありません。そのため、私立学校であれば体罰を行った教師個人に対して不法行為に基づく損害賠償請求が可能です。

もっとも、教師を雇用する学校に対しても、使用者責任にもとづく損害賠償請求が可能になるケースが多くなっています。

損害賠償の請求相手
公立学校 国または公共団体
私立学校教師個人または学校

裁判で訴えたり、示談で話し合って解決を図る

損害賠償請求する方法としては、裁判で学校や教師を訴えたり、示談で教師や学校と話し合うなどの方法があげられます。

損害賠償請求というと、裁判のイメージが強い方も多いでしょう。もっとも、民事責任を解決するにあたって用いられる最初の請求方法としては示談が多いです。

関連記事『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』では、教師や学校に対する損害賠償請求について詳しく解説しています。

(2)行政責任|教師の免職や停職など

行政上の責任としては、体罰を行った教職員に非違行為があるとしてその任命権者が当該教職員に対して行う懲戒処分があげられます。

懲戒は、その処分が重い順に以下のような種類があります。

処分内容
免職公務員としての職を失わせる処分
停職公務員としての身分を保持しつつ一定期間その職務に従事させない処分
減給公務員としての俸給の支給額を減額する処分
戒告対象公務員に対して戒める旨の申し渡しをする処分

このほかに、実務上は訓告や厳重注意などがあります。

ここで紹介した処分は公務員である教師についての規律です。もっとも、私立学校であっても内部規律として上記と同様な処分が予定されている場合も多いでしょう。

(3)刑事責任|暴行罪や傷害罪

体罰により児童生徒が負傷した場合には、教師の行った行為は刑事罰の対象となる犯罪行為に該当する可能性もあるでしょう。

違法な有形力の行使は刑法第208条の「暴行罪」にあたり、暴行によって児童生徒が負傷した場合には刑法第204条の「傷害罪」にあたります。

体罰に関する主な相談先一覧

子どもが体罰を受けた場合、どこに相談すればよいのでしょうか。主な相談先を紹介します。

各都道府県ごとの教育委員会

各都道府県の教育委員会において、体罰に関する相談窓口を設置している場合があります。
お住まいの地域、学校が所在する地域の教育委員会の相談窓口を探してみましょう。

子供のSOS相談窓口(文部科学省)

体罰については、文部科学省が「子供のSOSの相談窓口」という窓口として設置しています。体罰やいじめに関する相談をはじめ、子どもたちが抱える悩みについて総合的に相談できる窓口となっているようです。(参考:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm)

弁護士による法律相談

体罰については弁護士に相談することもできます。教育委員会などは文部科学省に属する機関なので、調査・監督・指導に第三者性が担保されていません。

学校側の対応が遅く、事実調査の公平性について不安な場合には弁護士に相談すべきでしょう。

ご自身の受けた行為が許されない体罰にあたるのか、懲戒にすぎないのか明らかでない場合も、専門家である弁護士に相談することで適切に判断できる場合があります。

体罰を弁護士に相談するメリット

弁護士に相談するメリットとしては以下のようなものが考えられます。

学校や教育委員会と任意の話し合いを行う

弁護士が被害生徒側の代理人となり学校や教育委員会に直接対応を要請することができます。

学校の対応が不適切な場合には、上位機関に対して意見書や抗議文を提出することもできますので、学校側も迅速に対応することが期待できるでしょう。

慰謝料などの適正な金額の賠償金を算定する

怪我などを負って損害賠償請求する前には、体罰によってどのような損害を被ったのか金銭的に換算しておく必要があります。損害賠償項目の中でも特に、精神的苦痛に対する補償である慰謝料に関しては法律知識がないと正しい金額を算定するのがむずかしいでしょう。

弁護士であれば、慰謝料の正しい計算方法や適切な相場を把握しています。弁護士に相談して、妥当な慰謝料の金額を確認しておきましょう。

請求可能な慰謝料や計算方法などについては、関連記事『学校事故による慰謝料の相場・請求先は?軽傷・重傷・後遺障害・死亡の慰謝料を解説』で詳しく解説しています。

教師や学校に損害賠償請求する

体罰が原因で子どもが肉体的な苦痛や精神的な苦痛を負った場合には、学校側に対して慰謝料などの損害賠償請求をしていきます。

まずは任意での支払いを交渉していきますが、満足いく解決になるためには訴訟を提起して解決を図ることになるでしょう。

すべての手続を通して弁護士は被害者の利益が最大化するように和解交渉してくれるため、示談で終わったとしても満足いく解決となる場合があります。

弁護士に相談するメリットについては、こちらの関連記事『学校事故に遭ったら弁護士に相談しよう|メリットや無料法律相談を紹介』もあわせてご確認ください。

まとめ

教師による児童への体罰は法律で禁止された行為です。体罰を行った教師は、民事責任・行政責任・刑事責任という3つの責任を負うことになります。

もっとも、教育上必要があると認める場合、教師には児童への懲戒が認められています。体罰と懲戒の区別は、さまざまな状況を考慮して総合的に判断されるものなので注意が必要です。

体罰に関してお悩みの場合は、教育委員会・文部科学省の相談窓口・弁護士などに相談してみましょう。

体罰など学校で生じた事故によって、お子さまに大きな障害が残ったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。無料相談の予約受付は24時間365日対応中です。気軽にお問い合わせください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了