遊具を原因とする事故の法的責任は?治療費などの補償と損害賠償請求 | 事故弁護士解決ナビ

遊具を原因とする事故の法的責任は?治療費などの補償と損害賠償請求

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遊具が原因の事故|法的責任について解説

学校や幼稚園で子どもが遊具で遊んでいて怪我をしてしまったような場合、保護者は誰にどのような請求ができるのでしょうか。

この記事では、工作物責任・営造物責任の「瑕疵」等について解説していきます。

遊具に関する事故の現状と事例

遊具が原因で発生する事故にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは消費者庁が公表しているデータに基づき遊具事故の概要を解説していきます。

遊具を原因とする事故の危険性

消費者庁が公表したデータによると、平成21年から平成27年までの間に「遊具」による子どもの事故については1,500件以上報告されているそうです。

怪我の程度については、「軽傷」が最も多く1,063件報告されています。もっとも、入院が必要となる負傷や治療期間が3週間以上となる中等症の事故・重症・死亡の発生件数は全体の30%を占めており、決して少ない数字ではありません。

また、遊具を原因とする事故で負傷した部位としては多い順に以下の通りとなっています。

部位件数
頭部872件(95件)
腕部304件(206件)
脚部95件

※()内の件数は中等症以上の事故

事故全体でみると「頭部」を負傷する割合が6割近く占めており、遊具が原因で発生する事故の危険性がわかります。

遊具の事故は「幼稚園児」「転落事故」が最多

遊具が原因となる事故について年齢別では6歳以下の幼児が1,000件近くと全体の約7割を占めています。

そして、受傷のきっかけとして(理由が分かっているものに関しては)「転落」の割合が最も多く全体の6割を占めています。

事故が起こる遊具の種類については、事故が多い順に以下の通りです。

種類件数
滑り台440件
ブランコ233件
鉄棒141件
ジャングルジム120件
雲てい95件

どの遊具も校庭や公園でよく設置されているもので、遊具による事故が身近なものであると感じられます。

遊具を原因とする事故の具体的な事例

遊具が原因となって発生した事故の事例について、いくつか発生状況・負傷状況を紹介します。

(1)滑り台が原因となった重症事故事例

  • 滑り台での入院事故事例
    1歳の女児が滑り台の一番上に登って遊んでいたところ発生した転落事故です。親が上の子の動向に気を取られた際、その子は滑り台から転落し、頭部打撲と顔面出血により約1週間の入院を要する怪我を負ってしまいました。
  • 滑り台での死亡事故事例
    女児が滑り台の手すりの「つっぱり部分」に着ていたポンチョを引っ掛けてしまい、首が絞めつけらてしまった事故事例です。この事故によりこの女児は病院に緊急搬送されましたが後日死亡してしまいました。
  • 滑り台に欠陥があった事故事例
    5歳の女児が滑り台を滑っていたところ、滑り台の腐食した部分の金属片が指にささり、入院が必要となる中等症の怪我を負いました。

(2)ジャングルジムが原因となった重傷事故事例

以下はいずれもジャングルジムからの幼児の転落事例です。

  • 2歳の男児が約3mのジャングルジムの一番上から後ろ向きに地面に転落した事例です。転落した地面は人工芝でしたが、男児の後頭部には数cmの血種ができ、約1週間の入院が必要な負傷を負ってしまいました。
  • 4歳の男児が高さ2m60cmのジャングルジムの上に立った状態から転落した事例です。男児は頭部を打撲した結果、頭がい骨骨折・急性硬膜外血種の重症を負い入院が必要となりました。

学校や幼稚園の遊具で怪我をしたときの治療費は?

学校・幼稚園の遊具で怪我をしたときの治療費として、災害共済給付から医療費の給付を受けられる可能性があります。

災害共済給付とは、独立行政法人日本スポーツ振興センターによる共済制度のことで、学校や幼稚園などで起こった事故の補償が受けられます。ただし、次の2点に注意が必要です。

  • 学校や幼稚園に災害共済給付制度への加入状況を確かめる
  • 病院の窓口では一時的に保護者が治療費を支払う

災害共済給付制度の利用方法と給付額を説明していきます。

災害共済給付の利用方法

災害共済給付を利用するには、まず学校または幼稚園に共済利用の旨を伝え、所定の用紙をもらってください。そして、治療を受けた病院に用紙を提出して「医療費の証明」を受け取りましょう。

病院から「医療費の証明」の用紙を受け取ったら、学校または幼稚園に提出してください。申請から3ヶ月後を目安に医療費の給付を受けられる見込みです。

災害共済給付の金額

災害共済給付から給付される項目は、医療費、障害見舞金、死亡見舞金の3つで、それぞれの金額は以下の表のとおり規定されています。

災害共済給付による給付内容

給付項目補償額
医療費※治療費の4割
障害見舞金88万円~4,000万円
死亡見舞金3,000万円

※初診から治癒までの医療費総額が5,000円以上となること(3割負担で1,500円以上)

遊具事故の治療費について

災害共済給付からは治療費の4割が給付されます。保護者は、病院の窓口で健康保険を利用して医療費の3割を負担していますが、治療にかかる諸費用(例:通院交通費)を考慮して少し多めの給付を受けられるのです。

ただし、治療費の算定は健康保険による保険治療を原則としています。自費診療を受けた場合には、あらためて算定しなおした金額での支給となる点に留意しましょう。

遊具事故の障害見舞金について

災害共済給付からは後遺障害に対して88万円~4,000万円が給付されます。

金額は障害等級によって異なるため、後遺障害等級認定をきちんと受けることが大切です。

なお、「治癒または症状固定日の属する月」の翌月11日から起算して2年間請求を行わないと、請求権が失われてしまいます。

遊具事故の死亡見舞金について

災害共済給付からは、死亡見舞金として3,000万円が給付されます。

死亡した日の翌日から起算して2年間請求を行わないと、請求権を失ってしまうので、時効には注意が必要です。

災害共済給付の概要についてもっと詳しく知りたい方は、関連記事『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』も参考にしてください。

災害共済給付の補償だけでは足りないこともある

災害共済給付は、学校や幼稚園で起こった不慮の事故について一定の補償をしてくれる共済制度ですが、怪我の程度によっては災害共済給付だけでは不十分な恐れがあります。

災害共済給付は被害額の全てに対応してくれる制度ではありません。災害共済給付を受けてなお損害が補てんされない場合には、学校や幼稚園といった遊具の所有者に対する損害賠償請求を検討すべきです。

学校や幼稚園に事故の責任があると認められた場合には、損害賠償請求が通る可能性があります。

学校や幼稚園が所有する遊具について、どんな責任を負っているのかをみていきましょう。

まとめ

  • 学校や幼稚園での遊具事故については災害共済給付を受けられる可能性がある
  • 災害共済給付の受給までは一定期間かかるので、一時的に保護者が窓口で治療費を支払う
  • 災害共済給付の給付額では損害がカバーされない場合、損害賠償請求も視野に入れる必要がある

学校や幼稚園に責任は問える?営造物責任と工作物責任

遊具に関する事故の中には、遊具が劣化していたり、破損したことで子どもが怪我を負ってしまうケースも報告されています。

このような場合には、工作物責任・営造物責任にもとづく損害賠償請求をできる場合があります。

工作物責任とは何か

幼稚園や学校の遊具が原因で子どもが怪我を負ったような場合には「工作物責任」として損害賠償請求をできる可能性があります。

工作物責任とは、「土地の工作物又は保存に瑕疵」があることによって損害が発生した場合には「工作物の占有者」は被害者に対して損害賠償義務を負います。(民法第717条1項参照)

占有者とは物権法上の占有者のことをいい、工作物を事実上支配する者のことで、所有者ではない間接占有者である「賃貸人」も占有者にあたります。

もっとも、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、「所有者」がその損害を賠償しなければなりません。(民法第717条1項但書き)

所有者の賠償責任については無過失責任であると考えられていますので、過失が無かったとしても賠償義務を負うことになります。

営造物責任とは何か

営造物責任とは、国家賠償法第2条1項にもとづく賠償責任です。

「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」と規定されています。

「公の営造物」は、国や公共団体が所有・管理する有体物で公の目的に供用されるものを広く含みます。民法の「工作物」よりも広い概念で、建物や土地の定着物に限られません。一時的なものや借り入れているものも営造物です。

営造物・工作物の瑕疵とは何か

営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が「通常有すべき安全性を欠いていること」です。(最高裁昭和45年8月20日判決)

瑕疵については、営造物の「構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的に判断すべき」であるとされています。

遊具であれば、通常の利用態様によって耐えうる構造や強度を有していることが必要となるでしょう。

損害賠償請求のスタートは話し合い

学校や幼稚園の遊具に瑕疵があり、工作物責任や営造物責任を巡る損害賠償請求をする際にも、いきなり裁判から始まるわけではありません。

学校や幼稚園で起こった事故については、原則として話し合い(示談交渉)からスタートします。双方で話し合いをした結果、まとまらない場合には、裁判所での調停や訴訟へと進んでいく流れが一般的です。

学校側への対応は、損害賠償請求額の見積もりから示談交渉まで一任できるので、弁護士に依頼することも選択肢のひとつです。

遊具や設備の事故|損害賠償請求の判例

最後に、遊具や設備の事故について、工作物・営造物が裁判所で争いになった損害賠償の事例を解説していきます。

瑕疵は本来の用法を前提として判断される

この事案では幼児が校庭にあるテニスの審判台に登り、背当ての鉄パイプを両手で握って後部から降りようとしたところ審判台が転倒し下敷きになり死亡してしまいました。

裁判ではテニスの審判台の瑕疵が問題となりましたが、裁判所は、以下のような「本来の用法」に従った使用を前提として危険性が判断されました。

  • テニスの審判台は審判者がコート面より高い位置から競技を見守るための設備であること
  • 昇り降りは設置された階段を使う

なぜなら幼児が予想外の行動に出たような場合にも設置管理者に事故の責任を負わせると、彼らの義務は再現なく拡大し不能を強いることになってしまうからです。(最高裁判所第3小法廷 昭和61年(オ)第315号 損害賠償請求事件 平成5年3月30日)

そして遊具の事故の場合にも同様、子どもが「本来的な用法」ではなく危険な方法で遊んでいた場合、たとえ事故が発生しても「遊具に瑕疵があった」とは判断されない可能性が高いでしょう。

シーソーが原因の怪我で瑕疵がみとめられた事案

この事案はシーソーで遊んでいた男児が、シーソーのストッパーと支柱との間に右手を挟まれ負傷した事件です。

このケースで問題となったシーソーは同種の構造のシーソーと異なり、ストッパーが支柱に直接接触する構造となっており、接触による衝撃を緩和する装置が何も設置されていなかったことが問題になりました。

このような事案で裁判所は、「学校遊具である本件回旋シーソーはそのストッパーと支柱間の緩衝装置が設置されていない点において通常有すべき安全性に欠けていたといわなければならない」と判断しました。

あわせて、学校側がシーソーの正しい遊び方を具体的に指導した形跡がないという点も認定され「設置の瑕疵」が認められています。(福岡地裁小倉支部昭和58年8月26判決参照)

学校や幼稚園での遊具事故|損害賠償請求は弁護士に相談

遊具を原因とする事故で工作物責任や営造物責任を追及する場合には、遊具の設置または管理の瑕疵を立証する必要があります。

瑕疵にあたる可能性については個別具体的な検討が必要になるため、法律の専門家である弁護士の見解をたずねてみることをおすすめします。

弁護士依頼に関心のある方へ|無料法律相談のご案内

アトム法律事務所では、無料の法律相談を実施しています。

  • 学校側から提示された示談金が適切かわからない
  • 子どもに重い後遺障害が残ってしまい損害賠償請求を検討している
  • 死亡事故が起こってしまい、何から対応していいか途方に暮れている

例えばこういったお悩みについて、無料の法律相談が役に立てる可能性があります。正式に弁護士依頼をするかどうかは、法律相談後にご検討いただければ十分です。弁護士から無理に契約を迫ることはありませんので、安心してください。

無料法律相談の受付は年中無休です。法律相談をご希望される方は、以下のフォームにて電話またはLINEからご連絡ください。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点