学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説 | 事故慰謝料解決ナビ

学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説

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学校事故における損害賠償請求の相手と請求内容

学校事故が起きた場合には、被害を受けた生徒が損害賠償請求を行うことになります。

しかし、学校事故の場合には、「誰に、どのような根拠で、いくらの損害賠償請求が可能なのか」が簡単に判断できない場合もあるでしょう。

そこで、本記事では、学校事故が起きた際の損害賠償請求を適切に行うために必要な情報を解説しております。

学校事故における損害賠償請求の相手

学校事故とは

学校事故とは正確な定義はありませんが、以下のような事故をいいます。

  1. 学校の教育活動に伴って発生した事故や災害
    いじめ、体罰、体育で運動中の事故など
  2. 学校の施設や設備を使用することで発生した事故や災害
    実験器具の故障による怪我、転落防止の柵が壊れていたことによる転落事故など

以上のような学校事故によって生徒が怪我を負ったり、死亡した場合には、誰がどのような責任を負うことになるのかが問題となります。

教師に対する損害賠償請求

教師に対する損害賠償請求については、教師が不法行為を行った、または、債務不履行を行ったことを原因として可能となります。

不法行為を原因とする損害賠償請求

教師の故意や過失が原因で学校事故が発生し、生徒に損害が生じたのであれば、教師の不法行為を原因とした損害賠償請求(民法709条)が可能です。

教師の故意による不法行為とは、体罰により生徒が負傷した場合などをいいます。

教師の過失とは、学校事故が生じる可能性を予見していながら、学校事故の発生を回避するために適切な対策を取らなかった場合に認められます。
教師には生徒が怪我をしないように注意するという義務があるため、この義務違反があると認められた場合には過失があると判断されるのです。

教師の過失が認められる事例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 危険性の高い実験や運動を行う前に適切な指導を行わなかった
  • 生徒が危険な行動をしていることを知りながら注意を怠った
  • 生徒が怪我をした後に適切な処置を取らなかったため怪我が悪化した

債務不履行を原因とする損害賠償請求

教師は生徒に対して、生徒が学校生活においてその生命や身体を侵害されないように適切な安全対策を行うという安全配慮義務を負っています。

そのため、生徒に対して危険が生じることが予見可能であり、危険を回避するために適切な対応を取ることを怠った場合には安全配慮義務違反が認められます。安全配慮義務違反という債務不履行を原因として、損害賠償請求が可能となるのです(民法415条)。

不法行為を原因とするのか、債務不履行を原因とするのかで、主張すべき内容や時効の期間が異なってくるため、どちらを根拠とすべきかについては、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

ただし、国公立学校では国家賠償法1条にもとづいて、公務員である教師が損害賠償責任を負う場合には、国や地方公共団体が代わりに責任を負うため、教師に損害賠償請求を行うことはできません。

なお、教師がいじめを見過ごしたり放置して生徒が損害を被ったとき、学校側の安全配慮義務違反の有無が争点となるでしょう。いじめの被害について、弁護士にはできることが多数あります。詳細は関連記事をお読みください。

学校に対する損害賠償請求

国公立学校の場合

学校の施設や設備に瑕疵があることが原因で学校事故が発生し、生徒に損害が生じたのであれば、国家賠償法2条にもとづいて、学校の設置者である国や地方公共団体が責任を負います。

私立学校の場合

教師の故意や過失が原因である場合には、教師を雇っている学校に対しても損害賠償請求を行うことが可能です。
これは、教師を雇っていることで利益を得ている学校にも同様の法的責任を負担させるべきというものであり、使用者責任といいます。

教師個人では、損害賠償金を支払う資力を有していない恐れがあるため、学校に請求可能な場合は、学校に対して請求を行うべきでしょう。

また、学校の施設や設備の不備が原因の場合にも工作物責任を負う学校に対して請求を行うことが可能です。

加害生徒に対する損害賠償請求

加害生徒に対して損害賠償請求を行う場合には、加害生徒が責任能力を有さない責任無能力者であるかどうかにより請求根拠が異なってきます。

責任無能力者に対する請求

民法では、責任能力を有さない「責任無能力者」といえるものが不法行為を行った場合、「責任無能力者」を監督する義務を負うものに対して損害賠償請求を行うことが可能となっています。

責任能力とは、その行為の責任を弁識するに足るべき知能といい、おおよそ12歳程度で身につくと考えられています。

したがって、加害生徒がその年齢から責任無能力者といえる場合には、監督義務を負う保護者に対して損害賠償請求を行うことになるのです。

責任無能力者でない場合の請求

加害生徒が「責任無能力者」に該当しない場合は、加害生徒に対する損害賠償請求を行うことになります。
しかし、通常、仕事をしていない未成年者である加害生徒に請求を行っても、支払いは期待できません。

この場合でも、監督義務者である保護者への請求を行うことが可能です。

監督義務者である保護者は、子どもが他人を害さないように注意するという義務があります。
加害生徒の行為により損害が発生した場合の多くは、保護者に注意義務違反があるために過失が認められ、保護者に対して不法行為を原因とした損害賠償請求を行うことが可能となるのです。

学校事故における損害賠償請求の内容

学校事故で請求できる慰謝料とは

学校事故において請求できる慰謝料には、以下の3つがあります。

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

慰謝料ごとに請求できる場面や金額の算定方法が異なります。

入通院慰謝料について

入通院慰謝料とは、怪我の治療のために入院や通院を行ったことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料をいいます。

入院期間や通院期間に応じて請求できる金額が異なります。

具体的な入通院慰謝料の額は、入通院の期間や怪我の部位・程度などを基に以下の計算表により算出してください。

入通院慰謝料の計算表(重傷)

0月1月2月3月4月5月6月
0月053101145184217244
1月2877122162199228252
2月5298139177210236260
3月73115154188218244267
4月90130165196226251273
5月105141173204233257278
6月116149181211239262282
7月124157188217244266286
8月132164194222248270290
9月139170199226252274292
10月145175203230256276294
11月150179207234258278296
12月154183211236260280298

※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間

たとえば、入院期間が1ヶ月通院期間が4ヶ月とした場合には、入通院慰謝料は130万円となります。

ただし、怪我の内容がむちうちや、軽い打撲などの軽傷である場合には、以下の計算表を利用してください。

入通院慰謝料の計算表(軽傷)

0月1月2月3月4月5月6月
0月0256692116135152
1月195283106128145160
2月366997118138153166
3月5383109128146159172
4月6795119136152165176
5月79105127142158169180
6月89113133148162173182
7月97119139152166175183
8月103125143156168176184
9月109129147158169177185
10月113133149159170178186
11月117135150160171179187
12月119136151161172180188

※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間

1ヶ月を30日として、端数が生じた場合には日割りで計算を行います。

後遺障害慰謝料について

後遺障害慰謝料とは、被害者の怪我が完治せず後遺障害が残った場合に生じる精神的苦痛に対する慰謝料をいいます。

後遺障害慰謝料を請求するためには、怪我が完治せず後遺症が残り、後遺症の症状が後遺障害に該当するということを証明しなくてはなりません。

そして、後遺障害に該当するという認定を受けた場合には、症状の程度に応じて等級が定められます。この等級の程度に応じて後遺障害慰謝料の金額が決められるのです。

等級ごとの具体的な相場額は以下のようになります。

後遺障害慰謝料の金額
第1級2800万円
第2級2370万円
第3級1990万円
第4級1670万円
第5級1400万円
第6級1180万円
第7級1000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

学校事故により後遺障害が生じた場合に行うべきことについては『学校の怪我で後遺症|慰謝料や逸失利益の計算と相場は?相手への請求方法も解説』の記事で確認可能です。

死亡慰謝料について

死亡慰謝料とは、死亡したことにより生じる精神的苦痛に対する慰謝料となります。被害者は死亡しているため、実際に請求を行うのは相続人である家族となるでしょう。

また、被害者の慰謝料とは別に、被害者の家族が固有の慰謝料を請求することも可能です。請求できる家族は、法律上では両親、配偶者、子どもになりますが、兄弟姉妹や祖父母も請求できる可能性があります。

死亡慰謝料は、被害者の年齢や家族構成などを基に算定されますが、およその相場は、2,000~2,500万円程度です。
この金額の中には、被害者の家族が固有に請求できる慰謝料も含まれています。

死亡事故においてどのような請求が可能となるのかについては『学校における死亡事故では誰に請求が可能なのか|相場額も紹介』の記事で確認可能です。

学校事故で慰謝料以外に請求できるもの

慰謝料とは、被害者に生じた精神的苦痛を金銭化したものです。
そのため、学校事故によって生じた金銭的な損害については、慰謝料とは別に請求することができます。

慰謝料以外に請求できるものは、以下の通りです。

  • 治療費
    投薬費用、手術費用、入院代など治療に必要となった費用
  • 入通院交通費
    入院や通院のために必要となった交通費
    原則として、公共交通機関の利用料金となる
  • 入通院付添費用
    入院や通院の際に付添が必要な場合に生じる費用
    被害者が子どもの場合は両親の付添が必要であったと判断されやすい
  • 入院雑費
    入院中に必要となる日用雑貨や通信費などの雑費全般
  • 後遺障害逸失利益
    被害者が後遺障害を負ったために、将来得られたはずの収入が得られなくなったという損害
  • 死亡逸失利益
    被害者が死亡したために、将来得られたはずの収入が得られなくなったという損害
  • 葬儀費用
    被害者の葬儀を行うために必要となった費用
  • 物的損害
    事故により壊れた物の修理費用など

損害賠償請求を行う際の注意点

損害賠償請求を行う場合に注意すべきポイントを紹介します。

被害者に過失があると減額になる

損害発生の原因として被害者の過失行為がある場合には、被害者の過失の程度に応じて請求できる金額が減少します。

このような減額を過失相殺といい、どの程度の減額を行うのかについて問題となりやすいのです。

なぜなら、減額の程度に関しては法律で具体的に決まっていないため、類似する過去の裁判例や事故当時の状況などから判断するためです。

どのような事情を減額の根拠とできるのか、減額の根拠にできるとしてどの程度の減額が可能であるのかを適切に検討したいのであれば、専門家である弁護士に相談すべきでしょう。

損害賠償請求を行うなら時効に注意

損害賠償請求権は、一定の期間を経過すると時効となってしまいます。
時効になってしまうと請求を行うことができなくなるため注意が必要です。

時効期間は基本的に、物的損害が3年、人的損害が5年となります。
これは、加害者側に不法行為責任があると主張する場合になります。

一方、加害者との間に契約関係があり、契約によって生じた義務に違反があったことを根拠とする場合は、物的損害も人的損害も5年とすることが可能です。
学校を相手に請求した場合は、学校との間で子どもに教育を行うという契約があることから、このような主張を行いやすいでしょう。

学校事故の損害賠償請求は示談からはじめよう

損害賠償請求の第一歩は示談交渉から

学校事故による損害賠償請求を行う際は、請求の相手方との示談交渉により支払いを求めるという方法によるのが一般的でしょう。

請求の相手方に対して、金額を提示し、話し合いのうえで金額を決定することになります。

示談交渉がまとまった場合は、決定した内容について書面にまとめておくと、後々のトラブルを防止することができるでしょう。

災害共済給付を利用している場合は注意が必要

学校事故において損害が発生したのであれば、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度を利用することが可能な場合があります。災害給付制度とは、加入契約を行っている学校の管理下で発生した事故により生徒が怪我をした場合に、給付金の支給を行うというものです。

怪我をした場合だけでなく、後遺障害を負ったり、死亡した場合にも給付が行われます。

加入契約に同意し、保険料を負担している保護者の子どもが対象となります。
「学校の管理下」とは、授業中、休憩時間中、部活動中、課外授業中、通学中などです。

災害給付制度を利用すると、医療費の一部や、見舞金の支給を受けることができます。

ただし、災害共済給付を利用した場合は注意が必要です。
災害給付制度によって給付を受けた部分と同視できる部分については損害賠償請求を行うことができません

災害給付制度の利用方法については『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事をご覧ください。

示談交渉がうまくいかない場合の請求方法

相手方との意見が一致せず、示談交渉による解決が困難である場合は、以下のような制度を活用しましょう。

  • ADR機関の利用
  • 裁判所への訴訟提起

ADR機関の利用

ADR機関とは、話し合いを円滑に進めるための仲介人を紹介し、話し合いの場を提供してくれる機関といいます。

学校事故に関しては、学校事故を中心に扱っているADR機関や、都道府県ごとに存在する弁護士会などが取り扱いを行っています。

学校事故の法律問題に詳しい弁護士などが仲介人となってくれるため、納得のいく和解案を提案してくれる可能性が高いでしょう。

ただし、当事者間の合意がなければ解決とはならないので、互いの主張内容に大きな違いがある場合には、ADR機関の利用による解決は難しいことに注意してください。

裁判所への訴訟提起

当事者の合意による解決が困難である場合には、裁判所に訴訟提起を行いましょう。

裁判であれば、当事者の合意がなくても判決により請求の可否や金額が決められるため、強制的に解決を行うことが可能です。

ただし、裁判手続きは非常に複雑であるため、法律知識が不十分な人が行うと納得のいかない結果となる危険性が非常に高いといえます。
そのため、専門家である弁護士に依頼を行うことをおすすめします。

裁判手続きに関しては『学校事故の訴訟|学校相手に裁判する時の流れ、裁判以外の解決方法』の記事をご覧ください。

損害賠償請求を行うなら弁護士に依頼

学校事故に関して損害賠償請求を行うのであれば、弁護士に依頼すべきでしょう。
弁護士に依頼することで生じるメリットや、依頼するために行うべきことについて紹介します。

損害賠償請求を弁護士に依頼するメリット

正確な損害賠償金額を請求できる

学校事故において生じた損害を請求する際には、慰謝料や治療費用などさまざまな損害を計算して、請求金額を明らかにする必要があります。

そのため、法律に関する理解が不十分であると、計算を誤ったり請求できる損害を見落としてしまう恐れがあるのです。

弁護士に依頼を行えば、正確な請求金額を計算したうえで請求を行うことができます。

適切な証拠を用意できる

損害賠償請求を行うためには、相手方の行為が原因でどのような損害が発生したのかについて証拠をもとに証明する必要があります。
証拠が不十分な状態で追及を行っても、相手方は支払いを認めてくれないでしょう。

弁護士に依頼を行えば、必要な証拠がどのようなものか、どのようにすれば集めることができるのかを教えてもらえます。
また、証拠の収集作業を弁護士が手伝ってくれます。

代わりに請求を行ってくれる

損害賠償請求を行うにしても、慣れない示談交渉を行うことは非常に大変です。
また、怪我を負った子どものケアを考えると、示談交渉ばかりを行うわけにもいきません。

弁護士に依頼すれば、請求のために必要な交渉や手続きを代わりに行ってくれます。
そのため、子どものケアなどのほかに必要な行為に専念することが可能です。

弁護士に依頼するメリットについては、関連記事『学校事故に遭った場合には弁護士に相談しよう|メリットを詳しく紹介』でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

まずは弁護士に相談しよう

上記のメリットから、弁護士に依頼することが望ましいですが、依頼による費用というリスクがることから、依頼することを躊躇する方は多いのではないでしょうか。

弁護士に依頼すべきかどうかについては、弁護士に相談したうえで決定すべきでしょう。
費用を含めた気になる点について質問を行い、質問への対応が信頼できると感じたのであれば、依頼を行うべきです。

アトム法律事務所では、無料法律相談を行っています。
法律相談の予約受付は24時間体制で行って行っているので、一度気軽にご連絡ください。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点