保育園事故の裁判例|保育園側が負う法的責任と園児に対する損害賠償 | 事故慰謝料解決ナビ

保育園事故の裁判例|保育園側が負う法的責任と園児に対する損害賠償

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保育園や保育所で子どもが怪我した場合など、保育園側にはどのような法的責任が発生するのでしょうか。

保育園事故では、保育園側に債務不履行や不法行為などが認められる場合、保育園側に対して損害賠償請求できる可能性があるでしょう。

実際にあった裁判例も紹介しながら、保育園事故で生じる責任について解説していきます。

保育園の事故に関する3つの法的責任

保育園で事故が起こった場合、保育園にはどのような法的責任が発生するのでしょうか。

保育園の事故では、民事責任・刑事責任・行政責任という3つの法的責任が生じる可能性があります。以下でそれぞれの責任について解説していきます。

(1)民事責任

保育園の事故では、民事上の責任が発生する可能性があります。

民事上の責任を検討するにあたっては、「債務不履行」と「不法行為」がポイントになってきます。

債務不履行にもとづく損害賠償責任

保育園に預けている園児が事故で負傷した場合、保育園に対して債務不履行にもとづく損害賠償責任を追及できる可能性があるのです。

子どもの保護者は、保育園との間で子どもの保育を委託する契約を締結しています。
この委託契約にもとづき保育園側は子どもを安全な環境で保育するという債務を履行し、保護者はそのようなサービスを受ける対価として入園料や月額利用料などを支払っているのです。

そして、保育園側は委託を受けた子どもに対して安全配慮義務を負っていると考えられます。

この安全配慮義務とは、ある法律関係にもとづいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において当該法律関係の付随義務として成立する民事上の義務のことです。したがって、保育園のスタッフは、子どもの生命および健康などを危険から保護するように配慮すべき義務を負っています。

安全配慮義務違反の判断基準などについて、さらに詳しくは関連記事『学校事故における安全配慮義務とは?』をご確認ください。

不法行為にもとづく損害賠償責任

保育園の遊具や施設が原因で子どもが怪我を負った場合には、不法行為にもとづく損害賠償責任を追及できる可能性があります。

これは工作物責任といわれ、「土地の工作物又は保存に瑕疵」があることによって子どもが負傷するなどの損害が発生した場合には、その「工作物の占有者」が被害者に対して損害を賠償しなければならないという民事上の責任です。(民法第717条1項参照)

この工作物の「占有者」とは物権法上の占有者を指し、工作物を事実上支配する者を言います。そのため、工作物の所有者ではない賃貸人などの間接占有者も該当します。

ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは「所有者」が損害賠償責任を負うのです。(同条項但書参照)

「占有者」は無過失を立証できれば損害賠償の責任を負うことはありませんが、「所有者」にはそのような規定がありませんので無過失責任であると考えられています。つまり、所有者には過失がなかったとしても、事故による損害を賠償する責任があるのです。

遊具事故の事例や責任の所在については関連記事『遊具を原因とする事故の法的責任は?』でもさらに詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

(2)刑事責任

保育園の施設に問題があったり、保育の仕方に問題があって預けている子どもが怪我や死亡した場合には、刑事罰の対象となる犯罪となる可能性もあります。

そのような場合には、「業務上過失致死傷罪」の成立が問題となります。業務上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合には「5年以下の懲役若しくは禁固」または「100万円以下の罰金」が課せられるのです。(刑法第211条参照)

業務上過失があったか否かは、子どもの負傷という結果を予見することができ、その結果を回避することができたか否かという点が問題となります。

(3)行政責任

事故が起こった保育園に対しては、行政上の責任が成立する可能性もあります。

施設の設備や運営に関する基準が一定の基準を満たさず、繰り返し是正措置を採るように指示がなされているにもかかわらず改善されない場合には行政処分がなされる可能性があります。

具体的には、以下のような行政処分がなされるでしょう。

行政処分基準
改善勧告必要とされる運営基準を満たさない場合
改善命令改善勧告に応じず児童福祉に有害とされる場合
事業停止命令基準を満たさず児童福祉に著しく有害と認められる場合
認可取り消し運営基準などに違反した場合

保育園での怪我や死亡に対する慰謝料等の損害

保育園で子どもが負傷・死亡したような事故ではどのような損害を賠償請求することができるのでしょうか。

不法行為にもとづく損害については、「財産的損害」と「精神的損害」に分けて考えることができます。

事故で子どもに生じうる財産的損害

財産的損害については「積極的損害」と「消極的損害(逸失利益)」に分けられますので解説していきます。

積極的損害

積極的損害とは物の滅失・毀損、金銭の支出など被害者に現存した財産的利益が減少したことによる損害のことです。

保育園の事故については、子どもが負傷して病院に入院したり通院の費用や治療費、退院後の看護費用など現実に支出した費用が積極的損害にあたります。

消極的損害(逸失利益)

消極的損害は「逸失利益」や「得べかりし利益」ともいわれ、被害者が本来ならば得られるはずであったのに不法行為により得られなかった財産的利益のことをいいます。就労できずに受領できなかった給料などのことです。

子どもの場合には将来得られる利益の算定には不確定な要素が多いため、平均的な基準をベースに算定することになります。

事故で子どもに生じうる精神的損害

精神的損害とは「慰謝料」のことを指します。慰謝料とは、保育園で事故を負ったことによる精神的苦痛を填補するために支払われる金銭のことです。

子どもが事故により、病院に入院や通院をせざるを得なくなったことに対する精神的苦痛を慰謝する目的で支払われる金銭を入通院慰謝料といいます。

これに対して、事故によって後遺障害が残った場合の精神的苦痛を慰謝するため後遺障害等級に応じて支払われる慰謝料のことを後遺障害慰謝料といいます。

さらに、事故により子どもが死亡してしまった場合の精神的苦痛を慰謝する目的で支払われる金銭が死亡慰謝料です。

保育園事故では誰に損害賠償責任が生じるのか

損害賠償責任が生じる可能性があるのは、保育士などの個々の従業員または保育園・保育所などの法人があげられます。

保育園の保育士などの個々の従業員

保育園の事故では、子どもの保育にあたっている保育士や園長などの個々のスタッフの過失を主張して損害賠償請求することができます。

保育園・保育所などの法人

法人の雇用する従業員が加害者として第三者に損害を加えた場合には、使用者も賠償責任を負う可能性があります。

これは使用者責任とよばれています。(民法第715条参照)

保育園の事故に関する裁判例について

ここでは保育園で園児が死亡した事件の裁判例を紹介します。

遊具が原因で子どもが死亡した事案

ここで紹介する事案は、園児が保育所に設置されていた遊具が原因で死亡してしまったケースです。(高松地方裁判所令和2年1月28日判決)

当該園児が保育所の園庭に設置されていた雲梯(うんてい)で遊んでいた際の事故です。園児が雲梯の補助板に左足をかけ、梯子部分の横板に右手をかけて上体を持ち上げ、上部の横木の間に身体を入れようとしたところ頭部が梯子部分の横板と頬杖に挟まれて抜け出せなくなりました。自分の体重により頸部が圧迫される状態となってしまうことになります。

その後、10分程度して保育士が園児の異変に気づき声をかけるも反応がなく同園児は窒息による心肺停止の状態となっていました。意識不明の状態で病院に緊急搬送されましたが、回復することなく亡くなってしまいます。

本事案で、裁判所は以下のような判断を示しています。

裁判所の判断|園長の責任について

保育の専門的知識をもった保育士で本件保育所の園長先生についての責任については、「できる限り事故の危険性を具体的に予見し、その予見にもとづいて当該事故の発生を未然に防止すべく、遊具の安全性を確認して、認識し得た危険を除去し、あるいは、不測の事態に備えて、監視体制を構築するなどして、本件保育所における園児の生命身体を保護すべき注意義務」を有していたと判示しています。

そのうえで、本件事故が保育所の園長に就任してからわずか12日目に発生したものである点、遊具の安全管理についてその危険性を一見しただけでは園児の挟み込まれる危険性があると認識することは容易でなく、またそのような報告も受けていなかったことから、危険を認識することは著しく困難であったとして園長の過失は否定されました。

裁判所の判断|社会福祉法人の責任について

被告法人や以前の園長は本件雲梯が園児の身体が挟みこまれる危険性を有するものであることを認識することができたというべきであり、それにもかかわらず本件雲梯を事故発生まで放置した点について、組織体として過失があると認定しています。

本件事案では、社会福祉法人に対して不法行為にもとづく損害賠償請求が認められています。

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岡野武志

監修者


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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点