学校事故による慰謝料の相場・請求先は?軽傷・重傷・後遺障害・死亡の慰謝料を解説
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学校事故により被害を受けた場合、被害を受けた生徒はもちろんのこと、その両親なども精神的にダメージを受けることになります。
このような場合に加害者側に請求できるのが「慰謝料」です。
もっとも、慰謝料を請求する際には、請求先となる相手や請求する具体的な金額など、押さえておくべきポイントがいくつもあります。これらのポイントをしっかりと押さえていないと、不満の残る結果に終わる可能性もあるため、注意が必要です。
今回は、学校事故による慰謝料について、請求先となる相手や慰謝料の相場をわかりやすく解説します。
目次
学校事故による慰謝料とは
学校生活において、授業中に怪我をしたり、部活動で練習をしている最中に怪我をしたりすることは珍しくありません。
ですが、怪我の程度によっては、病院での治療が必要になったり入院しなければならないこともあり、最悪の場合は死に至るケースもあります。
このような場合、被害に遭った生徒やその両親はどのような請求をすることができるのでしょうか。
慰謝料が請求できるケースとは?
慰謝料とは、被害者が被った精神的苦痛を受けたことに対する賠償金のことをいいます。
学校事故により怪我や障害を負ってしまった場合、また、死亡してしまった場合、被害に遭った生徒やその両親などは精神的に大きなダメージを受けることがほとんどです。
このような精神的ダメージを和らげるために、加害者から被害者に支払われる金銭が慰謝料となります。
慰謝料以外にも請求できるものがある
慰謝料は被害者の精神的苦痛を金銭化したものであることから、学校事故により実際に発生した財産的な損害については、慰謝料とは別に請求することが可能です。
被害者が請求できる財産的な損害は、積極損害と消極損害に分かれています。
「積極損害」とは、学校事故により、被害者が実際に支出せざるを得なかった費用のことをいい、典型例は治療費や入通院交通費です。
これに対し、「消極損害」とは、学校事故が発生しなければ得られたはずのものが、学校事故が発生したことにより得られなくなったものをいいます。
たとえば、事故により将来にわたって得られなくなった収入のことを逸失利益といいますが、逸失利益は消極損害のひとつです。
損害賠償請求できる内容や要点をわかりやすく解説している関連記事も併せてお役立てください。
学校事故による慰謝料の相場
学校事故において被害者が受ける損害の程度はさまざまです。
軽い怪我で済む場合もあれば、大怪我を負い後遺症が残ってしまう場合や死に至るケースもあります。
そのため、慰謝料の額は、被害者が受けた損害の程度によって異なってくるのです。
学校事故により怪我を負った場合
学校事故により負った怪我を治療するために入院や通院が必要となった場合、被害者は入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、入通院を余儀なくされたことにより被った精神的苦痛への賠償です。具体的な入通院慰謝料の額は、入通院の期間や怪我の部位・程度などをもとに計算表により算出できます。
表には重傷用と軽傷用の2パターンあり、まずは重傷の表からみていきましょう。
重傷時の慰謝料相場
重傷時の慰謝料計算表は、骨折などの大きな怪我を負った時に用いられます。
入通院慰謝料の計算表(重傷)
0月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0月 | 0 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 |
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 |
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 |
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 |
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 |
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 |
※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間/月は30日単位
2ヶ月入院、4ヶ月通院の場合を例に表の見方を確認しておきましょう。
表の見方
横のラインが入院期間を示すため、横のライン「2月」のところをみてください。
次に、縦のラインで通院期間「4月」を確認したら、横のライン「2月」と交わるところを確認してみましょう。入通院慰謝料の相場は165万円だとわかります。
なお、入院日数や通院日数を示す「月」は暦に左右されず、30日を単位とします。例えば通院62日となった場合には「2月と2日」というように計算に用い、端数の「2日」を「2月分」に上乗せする考え方があります。
軽傷時の慰謝料相場
むちうちや、軽い打撲や挫傷などの軽傷である場合には、軽傷用の慰謝料計算表を利用してください。
入通院慰謝料の計算表(軽傷)
0月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0月 | 0 | 25 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 |
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 |
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 |
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 |
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 |
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 |
※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間 /月は30日単位
入院なし、2ヶ月通院の場合を例に表の見方を確認しておきましょう。
表の見方
横のラインが入院期間を示します。入院なしのため、横のライン「0月」のところをみてください。
次に、縦のラインで通院期間「2月」を確認したら、横のライン「0月」と交わるところを確認してみましょう。入通院慰謝料の相場は36万円だとわかります。
1月を30日として、端数が生じた場合には日割りで計算を行います。
入通院慰謝料の相場について
入通院慰謝料の計算表でわかる金額はあくまで相場です。たとえば、何度も手術を繰り返したり、生命が危ぶまれるほどの状況になるなど、被害者が被った精神的苦痛に応じて金額は増額される可能性があります。
また、逆に軽傷時の通院頻度が少ない場合には相場よりも慰謝料減額となることも十分あるでしょう。
学校事故の慰謝料は、弁護士に金額を見積もってもらうことをおすすめします。最終的な金額は学校側との話し合いや裁判などで決まるものですが、目指すべき適正な金額がつかめるでしょう。
学校事故により障害が残った場合
学校事故により後遺障害が残った場合、被害者は後遺障害慰謝料を請求することが可能です。
後遺障害慰謝料を請求する場合には、治療によって完治せずに残った後遺症の症状が、後遺障害に該当するという認定を受ける必要があります。
認定される後遺障害等級は、症状の程度に応じて第1級から第14級までに分かれており、最も重度となる等級は第1級です。
等級ごとに後遺障害慰謝料の金額が異なり、具体的な相場額は以下のようになります
後遺障害慰謝料の相場額
後遺障害慰謝料の相場額 | |
---|---|
第1級 | 2800万円 |
第2級 | 2370万円 |
第3級 | 1990万円 |
第4級 | 1670万円 |
第5級 | 1400万円 |
第6級 | 1180万円 |
第7級 | 1000万円 |
第8級 | 830万円 |
第9級 | 690万円 |
第10級 | 550万円 |
第11級 | 420万円 |
第12級 | 290万円 |
第13級 | 180万円 |
第14級 | 110万円 |
最も等級の低い14級であっても100万円以上の慰謝料請求が相場となっていることから、後遺障害等級認定を欠かさず受けるべきでしょう。
関連記事では、部活動で重い後遺障害が残った場合の事例や、慰謝料以外に請求すべき「逸失利益」という金銭についても詳しく解説しています。部活動で起こった事故の責任を学校側に問うポイントを知りたい方は、あわせてお読みください。
学校事故により死亡した場合
学校事故により死亡してしまった場合、被害者の遺族は死亡慰謝料を請求できます。
死亡慰謝料は、被害者の年齢や家族構成などを元に金額が決められることが多く、およその相場は、2,000万円~2,500万円です。
この金額の中には、死亡した児童本人への慰謝料のほか、被害者の家族が個別に請求できる慰謝料も含まれます。
関連記事は、学校での部活動や給食中の窒息事故について解説した記事です。事故の背景によっては、学校側への慰謝料請求も認められています。死亡事故の事例とあわせて、責任の所在をどのように検討するのかがわかる記事になっているので、あわせてお読みください。
学校事故による慰謝料は誰に請求する?
学校事故により生じた怪我を原因とする損害賠償請求は、誰に対して行うべきでしょうか。
誰を請求の相手方とするのかは、学校が公立であるのか私立であるのかや、どのような行為を原因とするのかで異なります。
公立学校の場合
公立学校で起こった学校事故の場合、適用される法律は「国家賠償法」です。
国家賠償法において、事故につき教職員に責任がある場合は、教職員に代わって国や地方公共団体である都道府県や市区町村などが責任を負うこととされています。
そのため、教職員に対して直接、慰謝料を請求することはできません。
また、公立学校の施設や設備に欠陥があり、それが原因となって学校事故が発生した場合には、施設や設備の所有者・管理者に損害賠償責任が発生します。
公立学校の施設や設備については、一般的に国や地方公共団体が所有者・管理者であることがほとんどであるため、この場合も国や地方公共団体に対して、慰謝料を請求することが可能です。
さらに、他生徒の故意や過失により怪我を負った場合には、加害者の生徒またはその親に対し、民法上の不法行為に基づき慰謝料を請求できます。
私立学校の場合
私立学校における学校事故の場合、適用される法律は「民法」です。
たとえば、教職員の故意や過失によって学校事故が発生した場合、公立学校の場合とは異なり、直接教職員に対して慰謝料を請求することができます。
また、学校は教職員の使用者として使用者責任を負うため、学校が教職員の選任や校務について相当の注意を払っていた場合や相当の注意を払っていても事故を避けられなかったような場合をのぞき、被害者に対して慰謝料を支払う義務を負うことになるのです。
さらに、他生徒の故意や過失により怪我を負った場合には、公立学校のときと同じように、加害者の生徒またはその親に対して慰謝料を請求することができます。
学校事故における法的根拠・法的責任を詳しく知りたい方は関連記事もお役立てください。
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慰謝料の請求方法
まずは示談交渉から始めよう
公立学校、私立学校であるとを問わず、学校事故によって被った慰謝料の請求方法は、個別のケースによって異なります。
基本的にまず示談交渉を行い、双方が一定程度譲歩するなどして、話し合いで解決することになるでしょう。
この場合は、当事者の話し合いで合意した慰謝料が加害者から被害者に支払われることになります。
しかし、互いの希望する金額に大きな差があったり、当事者双方または一方が争う姿勢を明確にしている場合には、示談交渉により解決に至らないケースが多いです。
この場合は、訴訟を提起することにより、裁判所に判断を委ねるほかありません。
学校事故の裁判に関する記事
災害共済給付制度を利用しよう
学校事故により怪我を負った場合には、災害共済給付制度を利用できる場合があります。
学校が日本スポーツ振興センターとの間で災害共済給付契約を締結しており、保護者が掛金を負担しているのであれば、学校の管理下の事故により生じた損害について給付金の支給を受けることが可能です。
支給の対象や、支給内容などについては『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事をご覧ください。
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慰謝料の算定と請求には法律知識が不可欠
慰謝料を含めた損害賠償請求を行うには、誰に対してどのような請求が可能であるのかをしっかりと理解しなければなりません。
しかし、法律知識が不十分な方が適切に理解することは難しく、特に裁判による解決が必要となると、複雑な裁判手続きまで行わなくてはなりません。
そのため、学校事故により生じた損害について請求を行う場合には、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士


高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了