学校事故の慰謝料相場と請求先!ケガ・後遺障害・死亡の計算方法とは? | アトム法律事務所弁護士法人

学校事故の慰謝料相場と請求先!ケガ・後遺障害・死亡の計算方法とは?

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学校事故の慰謝料

学校事故により被害を受けた場合、生徒本人はもちろんのこと、その家族も精神的にダメージを受けることになります。

このような精神的な苦痛を緩和するために請求するのが「慰謝料」です。

もっとも、学校で起こったすべての事故に対して慰謝料を請求できるわけではありません。

たとえば学校側が安全配慮義務義務に違反していることや、加害者の故意・過失による損害であることなどを立証する必要があります。

この記事では学校事故で慰謝料を請求しうるケースや慰謝料相場を解説しますので、慰謝料請求を検討している方は参考にしてみてください。

学校事故は原因次第で慰謝料を請求できる

学校側に重大な安全配慮義務違反があったり、教師や加害生徒の故意・過失などが認められたりすると慰謝料を請求できる場合があります。

もっとも授業中や部活動中のケガは珍しいことではありません。学校で起こったすべての事故について慰謝料請求をできるわけではないことは大原則です。

とはいえ、学校で起こった事故のなかには学校側に事故発生の原因があり、慰謝料を請求できるケースもあります。学校事故を取り扱う弁護士への相談も検討してみましょう。

学校事故による慰謝料の相場

学校事故における慰謝料相場は、被害者が受けた損害の程度や治療にかかった期間、後遺症の有無などの要因で変わるものです。

学校事故の慰謝料は以下の3つで、それぞれ事故によって受けた損害によって請求できる慰謝料が変わります。

学校事故の慰謝料

  1. 入通院慰謝料
  2. 後遺障害慰謝料
  3. 死亡慰謝料

学校事故の入通院慰謝料相場

学校事故によるケガを治療するために入院や通院が必要となった場合、被害者は入通院慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料とは、入通院を余儀なくされたことにより被った精神的苦痛への賠償です。具体的な入通院慰謝料の額は、入通院の期間やケガの部位・程度などをもとに計算表により算出できます。

表には重傷用と軽傷用の2パターンありますので、まずは重傷の慰謝料算定表からみていきましょう。

重傷時の慰謝料相場

重傷時の慰謝料計算表は、骨折などの大きなケガを負った時に用いられます。

入通院慰謝料の計算表(重傷)

0月1月2月3月
0月053101145
1月2877122162
2月5298139177
3月73115154188
4月90130165196
5月105141173204
6月116149181211

※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間/月は30日単位

2ヶ月入院、4ヶ月通院の場合を例に表の見方を確認しておきましょう。

表の見方

横のラインが入院期間を示すため、横のライン「2月」のところをみてください。
次に、縦のラインで通院期間「4月」を確認したら、横のライン「2月」と交わるところを確認してみましょう。入通院慰謝料の相場は165万円だとわかります。

なお、入院日数や通院日数を示す「月」は暦に左右されず、30日を単位とします。例えば通院62日となった場合には「2月と2日」というように計算に用い、端数の「2日」を「2月分」に上乗せする考え方があります。

軽傷時の慰謝料相場

むちうちや軽い打撲、挫傷などの軽傷である場合には、軽傷用の慰謝料計算表を利用して算定します。

入通院慰謝料の計算表(軽傷)

0月1月2月3月
0月0256692
1月195283106
2月366997118
3月5383109128
4月6795119136
5月79105127142
6月89113133148

※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間 /月は30日単位

入院なし、2ヶ月通院の場合を例に表の見方を説明します。

表の見方

横のラインが入院期間を示します。入院なしのため、横のライン「0月」のところをみてください。
次に、縦のラインで通院期間「2月」を確認したら、横のライン「0月」と交わるところを確認してみましょう。入通院慰謝料の相場は36万円だとわかります。

治療期間の端数計算

1月は30日とみなし、端数が生じた場合には日割りで計算を行います。具体的には、通院期間が35日だった場合は30日と5日に分けて、1ヶ月の入通院慰謝料に5日分を加える計算方法です。

入通院慰謝料が増額・減額されるケースもある

入通院慰謝料の計算表でわかる金額はあくまで相場です。

たとえば、何度も手術を繰り返したり、生命が危ぶまれるほどの状況になったりと、被害者が被った精神的苦痛に応じて金額は増額される可能性があります。

また、逆に軽傷時の通院頻度が少ない場合には相場からの減額も起こる場合があります。

学校事故の慰謝料を請求する際には、学校事故やケガの慰謝料請求にくわしい弁護士に相談して、慰謝料の見積もりを依頼しましょう。

最終的な金額は学校側との話し合いや裁判などで決まるものですが、目指すべき適正な金額がつかめるでしょう。

学校事故の後遺障害慰謝料相場

後遺障害慰謝料の相場は110万円から2,800万円で、認定された後遺障害等級によっておおよその金額が決まっています。

後遺障害慰謝料を請求する場合には、治療によって完治せずに残った後遺症の症状が、後遺障害に該当するという認定を受ける必要があります。

認定される後遺障害等級は、症状の程度に応じて第1級から第14級までに分かれており、最も重度となる等級は第1級です。等級ごとに後遺障害慰謝料の金額が異なり、具体的な相場額は以下のようになります。

後遺障害慰謝料の相場額

後遺障害慰謝料の相場額
第1級2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

最も等級の低い14級であっても100万円以上の慰謝料請求が相場となっていることから、後遺障害等級認定を欠かさず受けるべきでしょう。

なお、等級認定された場合には治療中の精神的苦痛に対する入通院慰謝料も別途請求できます。等級認定を受けられなかった場合には原則入通院慰謝料のみの請求となる見通しです。

後遺障害等級認定を受ける方法

学校事故で後遺障害が残ってしまった場合、独立行政法人日本スポーツ振興センター後遺障害等級の認定を申請しましょう。

日本スポーツ振興センターが、提出された書類に基づいて審査をおこない、後遺症が後遺障害の基準を満たすかどうかを判断します。

あるいは裁判所に学校や加害児童に対する損害賠償請求の訴訟提起をすることで、裁判所が後遺障害に該当するのか、該当するなら等級はどれくらいかを判断してくれます。

いずれにせよ、後遺障害に関する補償は後遺障害等級によって決まる部分が大きいので、後遺症に見合った適切な等級で認定を受けることが大切です。

学校事故で後遺症が残ったときには、後遺障害等級認定を適切に受けること、そして後遺障害等級にもとづく請求を検討しましょう。関連記事では、後遺症が残った場合の補償について解説しているので参考にしてみてください。

学校事故の死亡慰謝料相場

学校事故による死亡慰謝料の相場は2,000万円~2,500万円です。被害者の年齢や家族構成などを元にして、個別の金額が決まります。

この金額には、死亡した児童本人への慰謝料のほか、被害者の家族が個別に請求できる慰謝料も含まれます。

関連記事は、死亡事故の事例とあわせて、責任の所在をどのように検討するのかがわかる記事になっているので、あわせてお読みください。

慰謝料以外にも請求できるものがある

慰謝料は被害者の精神的苦痛を緩和するための金銭であって、学校事故により実際に発生した財産的な損害については、慰謝料と別に請求することが可能です。

具体的には、ケガの治療費や治療にかかった入通院交通費、子の年齢や容態次第では親が入通院に付き添った費用、逸失利益、葬儀費用など事故内容によります。

保護者にとっても急転直下の事故ですから、どのように算定すればいいのか、そもそも何を請求すべきかは想像しづらいものです。

損害賠償請求できる内容や要点をわかりやすく解説している関連記事も併せてお役立てください。

学校事故による慰謝料は誰に請求する?

学校事故により生じたケガを原因とする損害賠償請求において、誰を請求の相手方とするのかは、学校が公立であるのか私立であるのかや、どのような行為を原因とするのかで異なります。

公立学校の場合

公立学校で起こった学校事故の場合、適用される法律は「国家賠償法」です。

国家賠償法において、事故につき教職員に責任がある場合は、教職員に代わって国や地方公共団体である都道府県や市区町村などが責任を負うこととされています。

そのため、教職員に対して直接、慰謝料を請求することはできません。

また、公立学校の施設や設備に欠陥があり、それが原因となって学校事故が発生した場合には、施設や設備の所有者・管理者に損害賠償責任が発生します。

公立学校の施設や設備については、一般的に国や地方公共団体が所有者・管理者であることがほとんどであるため、この場合も国や地方公共団体に対して、慰謝料を請求することが可能です。

さらに、他生徒の故意や過失によりケガを負った場合には、加害者の生徒またはその親に対し、民法上の不法行為に基づき慰謝料を請求できます。

私立学校の場合

私立学校における学校事故の場合、適用される法律は「民法」です。

たとえば、教職員の故意や過失によって学校事故が発生した場合、公立学校の場合とは異なり、直接教職員に対して慰謝料を請求することができます。

また、学校は教職員の使用者として使用者責任を負うため、学校が教職員の選任や校務について相当の注意を払っていた場合や相当の注意を払っていても事故を避けられなかったような場合をのぞき、被害者に対して慰謝料を支払う義務を負うことになるのです。

さらに、他生徒の故意や過失によりケガを負った場合には、公立学校のときと同じように、加害者の生徒またはその親に対して慰謝料を請求することができます。

学校事故における法的根拠・法的責任を詳しく知りたい方は関連記事もお役立てください。

慰謝料の請求方法|示談交渉から始める

公立学校、私立学校であるとを問わず、学校事故によって被った慰謝料の請求方法は、個別のケースによって異なります。

基本的にまず示談交渉を行い、双方が一定程度譲歩するなどして、話し合いで解決することになるでしょう。

この場合は、当事者の話し合いで合意した慰謝料が加害者から被害者に支払われることになります。

示談交渉がうまくいかないときは?

しかし、互いの希望する金額に大きな差があったり、当事者双方または一方が争う姿勢を明確にしていたりすると示談交渉により解決に至らないケースが多いです。

この場合は、訴訟を提起することにより、裁判所に判断を委ねるほかありません。

もっとも、裁判になっても被害者側に有利な判決が出るとは限りませんし、解決までにかかる期間も長期化する恐れがあります。

まずは交渉ノウハウを多く持つ弁護士に依頼をして、相手の態度から裁判に発展する可能性や示談交渉でどこまで目指すのかなどを打ち合わせおくと、被害者としても見通しがわかって安心です。

【コラム】災害共済給付制度|学校事故の保険も検討しよう

学校事故によりケガを負った場合には、災害共済給付制度を利用できる場合があります。

学校が日本スポーツ振興センターとの間で災害共済給付契約を締結しており、保護者が掛金を負担しているのであれば、学校の管理下の事故により生じた損害について給付金の支給を受けることが可能です。

災害共済給付制度の給付内容に慰謝料は含まれませんが、ケガの治療費や障害が残った時の一定の見舞金など給付内容は幅広いといえます。

慰謝料を請求したいわけではなくケガの補償を受けられると助かるという方は、一度災害共済給付制度を活用できるかどうか学校に問い合わせてみてください。

くわしい支給の対象や支給内容などについては『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事をご覧ください。

学校事故の慰謝料について無料相談をしてみませんか

慰謝料の算定と請求には法律知識が不可欠

慰謝料を含めた損害賠償請求を行うには、誰に対してどのような請求が可能であるのかをしっかりと理解しなければなりません。

しかし、法律知識が不十分な方が適切に理解することは難しく、特に裁判による解決が必要となると、複雑な裁判手続きまで行わなくてはなりません。

そのため、学校事故により生じた損害について請求を行う場合には、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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学校事故でお子さまに大きな後遺障害が残ってしまったりお子さまを亡くされたりした場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。

弁護士であれば慰謝料請求に関して次のようなサポートが可能です。

  • 適正な慰謝料相場を見積もります
  • 学校側との交渉を弁護士に一任すればご家族の負担も減ります
  • 示談交渉がうまくいかない場合の裁判対応も任せられます

無料相談後に正式契約するかどうかを考えて頂ければ十分なので、「今は弁護士に依頼すると決めていない」という場合も、安心してご利用ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了