水泳事故が学校で起きたら損害賠償責任は誰が負う?判例とともに解説 | アトム法律事務所弁護士法人

水泳事故が学校で起きたら損害賠償責任は誰が負う?判例とともに解説

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水泳事故損害賠償責任は誰が負う?

水泳事故は、大怪我を負う可能性があることはもちろんのこと、最悪の場合、死に至る危険性もあります。
水泳事故が発生する原因はさまざまですが、学校における水泳事故では、一定の場合に、担当教師や学校への損害賠償責任を追及することが可能です。

今回は、学校で生じる水泳事故による損害賠償責任の所在を中心に、関連する判例にも触れながら解説します。

水泳事故の事例

水泳事故は、一般的に、学校や県営・市営などのプールや海・川で発生します。もっとも、水泳事故が発生するタイミングや発生原因など、水泳事故はさまざまな点で違いがあるのです。

水泳事故が発生するタイミング

真っ先に考えられるのが、学校で実施される保健体育の授業です。学校によって違いはありますが、夏季になると保健体育の授業の一環として、水泳を実施する学校が多いといえます。学校によっては泳力測定を実施しているところもあるでしょう。

また、夏休みになると、プールが開放されたり海水浴に出かけたり、課外授業の一環で水泳が実施されたりすることもあります。

さらに、中学校・高等学校ともなると部活動として水泳部があるところもあり、水泳部に入部すると年間を通して水泳事故に遭うリスクを負うことになるのです。

水泳事故の発生原因

水泳事故が発生する原因もさまざまです。

一般的に、水泳事故と聞くと水中で溺れることを想像しますが、そのほかにも持病による発作、水中での衝突、飛び込みなどが原因となることもあります。

たとえば、心臓に持病をもっている場合、水泳をすること自体大変危険な行為です。この場合、持病が原因となって水泳事故が発生する可能性は十分にありえます。

また、水泳事故の発生原因として多いとされているのが「飛び込み」です。
ある程度深さのあるプールであればこのような事故は起きにくいといえますが、さほど深さのないプールで飛び込みを行ってしまうと、プールの底で頭部を打ちつける危険性があります。

飛び込みは大変危険な行為であり、実際に、飛び込みにより頸椎を骨折したり、下半身不随の障害を負ったりするケースも存在するのです。

学校における水泳事故の判例

学校で発生した水泳事故に関する判例を2つご紹介したいと思います。

担当教師の指導に過失があったと認定された事例

本件は、水泳の授業中に逆飛び込みスタートをした高等学校1年生の生徒が、プールの底に頭部を打ちつけて死亡した事例です。 

この事例では、「事故が発生した本件プールの設置に欠陥(瑕疵)があったかどうか」、また、「担当教師に過失があったかどうか」という2点が争点となりました。

まず、「事故が発生した本件プールの設置に欠陥(瑕疵)があったかどうか」について、裁判所は学校のプールにおいて「通常有すべき安全性」を確保するためには、プールの構造だけでなく、担当教師が適切な指導を行うこともその方法として許されると解しています。

そのうえで、仮に担当教師によって適切な指導が行われていたとしても、本件プールの水深やスタート台の構造から本件事故が発生する危険性があったとは認められないとして、本件プールの設置に欠陥があったとはいえないと判示しました。

次に「担当教師に過失があったかどうか」について、裁判所は担当教師には生徒を保護する義務があるとしています。ここでいう「保護義務」とは、逆飛び込みには危険性があることを事前に生徒に説明するとともに、安全な飛び込み方法を指導するなどして、事故の発生から生徒を保護しなければならないということです。

にもかかわらず、担当教師は、このような危険性を一切説明しておらず、自らが危険性の高い飛び込み方を生徒に示しました。

裁判所は、このような担当教師による一連の行為には、保護義務を怠った過失があるとして、担当教師は損害賠償責任を負うべきものと判示したのです。

プールの設置・管理に瑕疵があったと認定された事例

本件は、体育の授業で飛び込みを練習していた高等学校3年生の生徒が、プールの底に頭部を打ちつけて死亡した事例です。
この事例では、本件プールに設置・管理の瑕疵があったかどうかが争点となりました。

裁判所は、学校の施設や設備における「通常有すべき安全性」について、通常想定される限度を超える利用によって危険が生じる可能性がある場合には、そのような利用に供される限りで通常有すべき安全性を欠いており、設置・管理の瑕疵が認められると解しています。

そのうえで、本件プールは通常、想定される限度、すなわち、泳法の授業に利用されているかぎりでは水泳事故が発生する危険性は低いと認定しました。

ですが、飛び込みをする場合には、水泳事故が発生する危険性が高くなり、実際にそのような使い方をしていた本件プールは通常有すべき安全性を欠いていたものとして、設置・管理の瑕疵が認められると判示しました。

学校の水泳事故による損害賠償責任

水泳事故の発生にはさまざまな原因がありますが、学校の水泳事故で怪我をした場合や障害を負った場合、どのようなケースなら学校や教師に対してその責任を追及することができるのでしょうか。

教師の指導や監督が原因である場合

教師の指導や監督行為に故意または過失が認められ、それが原因となって水泳事故が発生した場合、教師や学校に対して、損害賠償責任を追及することが可能です。

この点、生徒が在籍する学校が公立か私立かで、損害賠償責任の発生根拠が異なります。

公立の場合、水泳事故に対する損害賠償責任を負うのは、学校を設置する地方公共団体(都道府県や市区町村)です。教師個人は責任を負いません。

一方で、私立の場合に損害賠償責任を負うのは、学校や教師ということになります。

特に問題となりやすいのは、水泳事故の発生につき、教師に過失が認められるかどうかという点です。

ここでいう「過失」とは、水泳事故が発生することを予見でき、かつ、その発生を回避できたにもかかわらず、不注意により事故の発生を予見しなかった、または、その発生を回避しなかったことを意味します。

具体的には、以下のような事実があると過失が認められやすいでしょう。

  • 事故の危険性がある練習をさせる際に危険性について説明を行わなかった
  • 事故防止のために必要な指導を行わずに危険な練習をさせた
  • 事故防止のために必要な監視体制がとられていない状態であった
    ※事故の危険性が高い練習としては、飛び込みや潜水などが考えられます

損害賠償請求にもとづいて請求できる内容については『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』の記事をご覧ください。

学校の施設や設備が原因である場合

学校の施設や設備に欠陥(瑕疵)があったことが原因となって、水泳事故が発生した場合、公立の場合は学校を設置する地方公共団体に、私立の場合は学校に損害賠償責任を追及することができます。

ここでいう「欠陥(瑕疵)」とは、その物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。

たとえば、飛び込みスタートを行うスタート台の高さが基準よりも高い場合には、通常有すべき安全性を欠いていると判断され、設備に欠陥(瑕疵)があったと認められる可能性があるのです。

学校の施設や設備に欠陥(瑕疵)が認められた場合、教師に過失があったどうかに関わらず、地方公共団体や学校は損害賠償責任を負うことになります(無過失責任)。

また、損害賠償請求とは別に、保険制度を利用することで治療費や慰謝料を得ることも可能です。
詳しく知りたい方は『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事をご覧ください。

水泳事故が起きたら弁護士相談がおすすめ

学校の水泳事故を原因とする損害賠償請求を行うのであれば、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

損害賠償請求を行うなら弁護士に相談しよう

損害賠償請求を行うには、法律上の要件を満たすことを明らかにすることが必要です。そのためには適切な証拠を収集しなければならず、法律の知識が不十分であれば、納得のいく損害賠償金を得られない恐れがあるといえます。

そのため、弁護士に相談し、損害賠償請求を行うために必要な証拠の収集方法や、請求の方法などについてアドバイスを受けることが必要となるのです。

また、弁護士に依頼すれば、学校との交渉を弁護士に任せることができます。損害賠償請求に必要な手続きの負担を軽くし、水泳事故に遭った子供のケアに専念することが可能です。
さらに、学校との交渉がうまくいかず裁判となった場合でも、安心して裁判手続きを任せることができます。

以上のようなメリットを受けるためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。

アトム法律事務所の無料相談

水泳事故で、お子さまに大きな障害が残ったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。相談費用が気になっている方でも気軽に相談することが可能です。

水泳事故による損害賠償請求を検討している方は、一度、弁護士の考えを聞いてみてはどうでしょうか。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了