部活動中の事故|損害賠償請求の流れは?部活事故の責任と請求内容 | アトム法律事務所弁護士法人

部活動中の事故|損害賠償請求の流れは?部活事故の責任と請求内容

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部活動中の事故|賠償請求

学校の部活動中の事故により子どもが怪我を負った場合、誰に対してどのような損害賠償請求を行えるのでしょうか。

本記事では、部活動中の事故により生じる法的責任の内容や、損害賠償金の請求の流れについて説明していきます。

部活動中の事故の法的責任

部活動中の事故で生徒が負傷してしまった場合、誰にどのような法的責任が生じるのかを解説していきます。

公立校なら国家賠償請求

公立校では、公務員である教員の故意や過失により部活動中の事故が発生し、生徒が損害を負った場合に、国家賠償法にもとづいて、学校の設置者である都道府県や市などに損害賠償請求を行うことが可能です。

部活動中の事故について、事故の発生を具体的に予見することができ、結果の発生を回避することができたにもかかわらず、必要な結果回避措置を講じなかった場合には、教員に注意義務違反があるため「過失」が認められます。

怪我をする危険性の高い練習を行う際に、事前の指導がなかったり、十分な監視を行わなかったといった事情がある場合には、過失が認められやすいでしょう。

私立校なら不法行為や債務不履行の請求

私立校の場合は、民法にもとづいて損害賠償請求を行うことになります。具体的には、不法行為または債務不履行があったことを根拠とした請求になるでしょう。

不法行為責任

不法行為責任とは、故意または過失によって、生徒の身体・生命に侵害した者が、それによって生じた損害を賠償しなければならないという責任です。(民法第709条

過失の判断については、国家賠償法にもとづく場合と同様になります。

このような不法行為責任は、事故を引き起こした加害生徒や、部活動を指導監督する地位にある教員に成立する可能性があります。

加害生徒に対して、不法行為にもとづく損害賠償請求する場合には、その親権者である保護者に対しても一緒に請求するのが一般的です。
なぜなら、通常、子供である加害生徒には賠償金を支払う能力がないからです。

教員に対して請求する場合には、教員を雇用することで利益を得ている学校にも使用者責任があることを理由に請求を行うことが可能です。教員よりも学校の方が支払能力を有しているので、学校への請求を行うべきでしょう。

債務不履行責任

債務不履行責任とは、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないことによって債権者に損害が生じた場合に、債務者にこの損害を賠償する責任が生じることです。(民法第415条1項

学校や、部活動を指導監督する教員およびコーチは、契約上の義務として「安全配慮義務」を負っています。

安全配慮義務とは、部員の生命および健康などを危険から保護するように配慮する義務です。安全配慮義務違反を原因として生徒が損害を負った場合は、債務不履行があったとして損害賠償請求を行うことが可能となります。

安全配慮義務違反の判断については、教員の過失の有無と同様に考えます。

刑事責任もありうる

指導教員やコーチが業務上、必要な注意を怠ったことにより生徒を死傷させたといえる場合には、業務上過失致死傷罪が成立する可能性もあります。(刑法第211条

業務上過失致死傷罪になると、5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金刑が科せられます。

部活動の事故発生から損害賠償までの流れ

部活動中の事故に関する損害賠償請求の流れについて、事故発生時の対応から順番に説明します。

事故後は学校に報告し、適切に治療に専念しよう

部活動中の事故の場合には、すぐに病院で適切な診断を受けましょう。なぜなら、負傷から一定の時間が経過してしまうと事故と症状との間の因果関係に疑いが生じてきてしまうからです。

そのため、すぐに医師の診断を受けなければ、医療費や慰謝料を請求することがむずかしくなってきます。

そして、部活動中に事故があった場合にはすみやかに学校に報告するようにしてください。学校は、課外活動中に生徒が負傷したような場合には教育委員会に災害報告書を提出します。

この災害報告書は事故発生事実の公的な証明にもなりますし、日本スポーツ振興センターから「災害共済給付」を受けられるようになります。事故の事実は必ず学校にすみやかに報告してください。

災害共済給付とは?

学校の管理下で起こった事故を補償する給付金。学校と保護者で共済金を支払っているもの。学校によっては未加入の場合もある。

災害共済給付の申請方法や補償内容については関連記事『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』をご覧ください。

怪我が完治したら損害賠償請求額を算定します。加害者や学校側との交渉準備を始めましょう。

また、関連記事『子どもが部活で怪我!親としてすべきことと学校への対応がわかる』では、子どもが部活で怪我をした場合に親がすべき対応や学校への対応の流れを解説しています。

部活動の事故で後遺症が残った場合にすべきこと

怪我が完治せずに後遺症が残ったのであれば、担当の医師に障害診断書を作成してもらいましょう。この診断書には病症名、障害の部位や程度全般が記載されます。

後遺症が残ってしまった場合には、日本スポーツ振興センターに障害等級認定を申請します。
後遺症の症状が後遺障害に該当するという認定を受けることができれば、後遺障害慰謝料を請求することが可能です。

弁護士のサポートが有効

後遺障害が残ったことを認定してもらうためには、診断書や医学的な資料のほかに、弁護士の意見書を添付して申請することが効果的な場合もあります。

また、後遺障害等級認定の結果に納得がいかない場合には不服審査請求も可能です。

ただし、不服審査請求は障害等級認定の事実を知った日の翌日から60日以内に行う必要があるので注意しておきましょう。

後遺障害等級認定の申請や不服申立ての手続きは、専門的な資料が必要であることから、弁護士に対応してもらうことをおすすめします。

加害者や学校との示談交渉・民事訴訟

治療が終了した、または、後遺障害等級が確定したのであれば、損害賠償額を算定します。

請求金額が決まったら、加害生徒の自宅や学校に対して内容証明郵便などの書面で請求していくことが一般的でしょう。

学校と示談交渉する場合には、解決までに時間がかかることが想定されます。特に公立学校の場合、損害賠償は公費から賄われるため、組織として決裁が必要となるのです。学校側もそのような手続に慣れているわけではありませんので、どうしても一つひとつの回答に時間を要する可能性が高くなります。

長期間、事件が解決しないことは被害者にとってデメリットです。
そこで、学校側の責任が明らかな事案や被害者に有利な事案については訴訟を前提として回答期限を設けていた方がよいでしょう。

加害者や学校との示談交渉が成立しなかった場合には、訴訟を提起して裁判により請求していくことになります。訴訟手続に移行した場合には相手方にも代理人弁護士が就任するのが通常ですので、相互に主張・反論を証拠にもとづいて厳格に行っていくことになります。

部活動の事故|損害賠償請求の内容と慰謝料の金額

部活動中の事故で怪我を負った場合、損害賠償請求によりどのような請求を、どの程度の金額で請求できるのでしょうか。

損害賠償請求の内容

部活動の事故で怪我を負った場合に、損害賠償請求として支払いを求めることができるのは、以下のような内容となります。

  • 入通院慰謝料
    怪我の治療をするために入院や通院を行ったことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
    後遺障害を負ったという精神的苦痛に対する慰謝料
  • 治療費
    治療のために必要となった費用
  • 入通院交通費
    入院や通院のために生じた交通費
  • 入通院付添費
    入院や通院の際に付添が必要な場合の費用
  • 入院雑費
    入院中の雑貨や通信費などの雑費全般
  • 後遺障害逸失利益
    後遺障害により将来得られたはずの収入が得られないという損害

請求可能である項目の合計金額を算出し、損害賠償請求を行いましょう。
取り損ないを防止するためも、項目ごとの確認をしっかりと行って下さい。

慰謝料額の目安

入通院慰謝料の目安

入通院慰謝料の相場額は、入院期間や通院期間によって決まります。
この慰謝料の金額については、法律上規定されているわけではありません。
以下に示すのは、過去の裁判例をもとにした目安です。

具体的には、以下の計算表から算出してください。

入通院慰謝料の計算表(重傷)

0月1月2月3月4月5月6月
0月053101145184217244
1月2877122162199228252
2月5298139177210236260
3月73115154188218244267
4月90130165196226251273
5月105141173204233257278
6月116149181211239262282
7月124157188217244266286
8月132164194222248270290
9月139170199226252274292
10月145175203230256276294
11月150179207234258278296
12月154183211236260280298

※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間

たとえば、入院期間が2ヶ月で通院期間が4ヶ月の場合には、入通院慰謝料は165万円となります。

ただし、怪我の内容がむちうちや、軽い打撲や挫傷などの軽傷である場合には、以下の計算表を利用してください。

入通院慰謝料の計算表(軽傷)

0月1月2月3月4月5月6月
0月0256692116135152
1月195283106128145160
2月366997118138153166
3月5383109128146159172
4月6795119136152165176
5月79105127142158169180
6月89113133148162173182
7月97119139152166175183
8月103125143156168176184
9月109129147158169177185
10月113133149159170178186
11月117135150160171179187
12月119136151161172180188

※単位は万円
※縦のラインが通院期間、横のラインが入院期間

1ヶ月を30日として、入院日数や通院日数の端数は日割りで計算を行います。

後遺障害慰謝料の目安

後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級に応じて決まります。
以下の金額は、入通院慰謝料と同様に過去の裁判例をもとにしたものです。

表:後遺障害慰謝料の金額

後遺障害慰謝料の金額
第1級2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

なお、後遺障害等級認定を受けた場合、後遺障害慰謝料以外に「逸失利益」という損害についても請求可能です。逸失利益は、事故にあわなければ将来働いて得られたはずの収入が失われたという損害をさします。

後遺症が残った場合の損害賠償請求金額や請求の流れについては、関連記事『学校の怪我で後遺症|慰謝料や逸失利益の計算と相場は?相手への請求方法も解説』も併せてお役立てください。

部活動の事故については弁護士に相談しましょう

部活における事故の損害賠償請求は、どんな法的責任を求めるのかいくら請求するのかなどの検討が非常に複雑です。

特に、重い後遺症が残ってしまった場合やお子さまが死亡してしまった場合には、ご自身だけでは判断が難しいことも多いでしょう。
そこで、法律の専門家である弁護士に当初から相談しておくことで、手続きをスムーズに進められます。

部活動の事故で、お子さまに重い後遺症が残ってしまったり、お子さまを亡くされた場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。
法律相談の予約受付は24時間体制で行っているので、気になることがあれば気軽にご連絡ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了