子どもが部活で怪我!親としてすべきことと学校への対応がわかる
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「お子さんが部活中に怪我をしてしまいました!」という連絡が入ったら、親としてどのように対応するべきなのでしょうか。
対応としては、まず子どもの治療をすすめることが大事です。次に、学校との話し合いが必要になってきます。そして、怪我の状況や学校との話し合いの結果によっては、学校側への損害賠償請求を検討すべきケースもあるでしょう。
この記事を読めば、子どもが部活で怪我をしたときに親が取るべき対応がわかります。具体的な対応がわかることで「この先いったいどうすればいいのだろう」という漠然とした不安も和らぐでしょう。
目次
部活動での事故は「学校事故」として対応
部活動中に負傷した場合、それは「学校事故」のひとつといえます。
学校事故とは、法律ではっきりと定義づけされているわけではありませんが、学校の管理下で起こった事故・災害の全般をさす言葉と考えてください。
部活で怪我をした時の対応
- 部活動での怪我であることを学校に報告
子どもに怪我の治療を受けさせる - 学校側から事故のいきさつなどを説明してもらう
- 治療の進捗を見ながら学校側との話し合いを進める
損害賠償請求が視野に入ることもある
また、学校の管理下とは単に学校の敷地内という意味ではなく、部活へ参加するための通学中や遠征・合宿先も含みます。
誰が子どもの治療費を支払うのか
学校事故については「災害共済給付」を受けられる可能性があるので、まずは災害共済給付の利用を検討しましょう。
ただし災害共済給付の受け取りまでは申請から3ヶ月程度かかるため、給付を受けるまでは、病院の窓口で健康保険を使って治療費を支払うことになります。
災害共済給付の申請が認められれば、健康保険を使って支払った治療費(3割負担)よりも少し上乗せされた金額が医療費として給付されます。
部活での怪我は災害共済給付を申請しよう
災害共済給付は独立行政法人日本スポーツ振興センターの共済制度です。災害共済給付からは、医療費、障害見舞金、死亡見舞金といった費目について、一定の補償を受けられます。
以下の表は、災害共済給付の給付額を示したものです。
項目 | 給付額 |
---|---|
医療費※ | 総医療費の4割 |
障害見舞金 | 88万円~4,000万円 (44万円~2,000万円) |
死亡見舞金 | 3,000万円(1,500万円) |
()内の金額は通学時の事故に適用
※初診から治癒までの医療費総額が5,000円以上(3割負担で1,500円以上)
なお、災害共済給付については学校ごとに加入状況が異なります。利用前に加入の有無を学校に確かめましょう。
学校や先生にも怪我の責任を問いたい
部活動にある程度の怪我はつきものと考えていても、事故当時のいきさつを聞くうちに、「学校や先生にも責任を問えないのだろうか」と疑問を持つ場合もあるでしょう。
学校側への損害賠償請求は認められる可能性があります。
しかし、それは学校側に事故発生の責任が認められる場合のみです。
学校や先生に責任を問える3つのケース
子どもが部活で怪我をした場合に、その怪我の原因が学校側にあると判断されるケースがあります。学校側に責任が認められるケースは次の3つです。
学校側の責任を問えるケース
- 先生の故意により事故が起こった
- 先生の過失により事故が起こった
- 学校の施設や設備の安全性に問題があり事故が起こった
先生の故意とは、先生が意図的に生徒を傷つけるものをいいます。指導の域を超えた体罰による負傷も、先生の故意に該当する可能性があるでしょう。
先生の過失とは、事故の発生を予見できたはずなのに回避行動をとらなかったり、適切な対応をしなかった場合です。これは「安全配慮義務」に違反したものと見なされます。
先生の故意や過失が認められれば、先生を雇用する学校に責任を問えます。
また、学校の施設や設備は、生徒の安全な学生生活を脅かすものではいけません。部活動をするグラウンドや体育館などは適切に設置・保全されるべきです。学校が管理すべき施設や設備の安全性が不十分であれば、学校に責任を問えます。
学校側に責任を求めることに抵抗を感じるかもしれませんが、国家賠償法や民法といった根拠をもとにした損害賠償請求は、権利に基づいた正当な対応となります。
子どもが部活で怪我!損害賠償請求の基本を確認
学校側に事故の責任がある場合には、損害賠償請求が認められます。
ただし、災害共済給付との二重取りは認められません。つまり、災害共済給付から支払われる金額が十分でない場合に、その不足分を請求できるのです。
損害賠償請求をするうえで大切なポイントを押さえていきましょう。
損害賠償請求するまでの流れ
事故発生から損害賠償請求にいたるまでの流れは次の通りです。
損害賠償請求までの流れ
- 治療して完治を目指す
- 後遺症が残ったら後遺障害等級認定を受ける
- 学校側との交渉・損害賠償請求を始める
損害賠償請求は、事故の全損害を算定できるタイミングで行います。
トータルでかかった治療費や通院交通費などを算定するため、怪我の治療中に損害賠償請求することは適切ではありません。怪我が完治してから損害賠償請求を検討しましょう。
もし完治せずに後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を受けることがポイントです。後遺障害等級認定を受けることで損害を客観的に示し、根拠のある金額算定ができます。後遺障害等級の認定を受け、認定内容に納得がいった段階で損害賠償請求を検討しましょう。
部活動中の事故|損害賠償請求の流れは?部活事故の責任と請求内容
損害賠償請求の手段は裁判以外にもある
損害賠償請求というと「裁判」をイメージする人は多いですが、裁判は損害賠償請求をする方法のひとつです。
まずは学校との話し合い(示談交渉)で解決を試み、それでもこじれた場合には、紛争処理センターや裁判所での調停、最終手段として裁判が選択されることが多いです。
学校事故の訴訟事例|裁判で損害賠償請求する流れやその他の解決方法
損害賠償請求できるもの
ここでは基本的な損害賠償請求の内容を紹介します。
費目 | 内容 |
---|---|
治療費 | 治療にかかった費用 |
入通院付添費・雑費 | 親が付き添うためにかかった費用 入院中の日用品・通信費などの雑費 |
慰謝料 | 子どもが事故で被った精神的苦痛への補償 |
逸失利益 | 将来得られたはずの収入が失われたという損害 |
損害賠償請求の中身は、事故の損害によって千差万別です。
たとえば「逸失利益」は、後遺障害等級認定を受けた場合に認められるため、怪我が完治した場合は基本的に請求できません。
また、誰に請求するかもポイントです。学校の先生に請求するのか、学校に請求するのか、加害生徒に請求するのかも検討しましょう。
学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説
部活の怪我で慰謝料はもらえるのか
慰謝料とは、その被害を受けた人の精神的苦痛を金銭価値に置き換えたもので、損害賠償請求項目のひとつです。
入院・通院していれば入通院慰謝料、後遺障害等級認定を受けていれば後遺障害慰謝料、死亡事故ならば死亡慰謝料を請求できます。
たとえば、部活中に骨折をして入院1ヶ月、通院3ヶ月かかったとしましょう。その場合の入通院慰謝料の相場は115万円です。
さらに腕にしびれが残ってしまい、後遺障害14級に認定されたなら後遺障害慰謝料の相場は110万円となり、入通院慰謝料とは別に請求できます。
損害賠償請求といえば「慰謝料」を思い浮かべる人は多いでしょう。一人ひとりが感じる精神的苦痛には差があるため、慰謝料にはいわゆる相場が存在します。社会通念上認められない金額を請求しても認められません。
学校事故の慰謝料相場と請求先!ケガ・後遺障害・死亡の計算方法とは?
部活の怪我で損害賠償請求はするべき?
損害額が、災害共済給付の給付額を超えているなら、損害賠償請求も視野に入れるべきです。
損害賠償請求するべきかをご家族だけで話し合うのではなく、まずは弁護士に相談して損害額の見積もりを依頼してみましょう。
損害賠償請求するべきかの相談は弁護士に!
子どもが部活で怪我をしたことで損害賠償請求するのは、大げさかもしれない、クレーマーだと思われないか、大ごとにしたいわけではない…、と心配かもしれません。
しかし、学校側にも何らかの責任があると疑念を抱きながら、損害に対する補てんが不十分な状態で泣き寝入りするのは良い選択とは言えません。
弁護士に依頼すれば、次のようなメリットがあります。
- 学校側との連絡窓口を弁護士に一本化できる
- 適切な損害賠償額を算定できる
- 書類の作成や証拠の収集を一任できる
学校側とのやり取りを弁護士に任せてしまえば、直接学校と関わる機会を減らせるので、精神的なストレスから解放されます。お子さんが学校生活に復帰する際にも、心情的なしこりをできるだけ減らしていけるでしょう。
最後に
学校側への損害賠償請求が認められるのは、学校側に事故発生の責任がある場合のみです。また、損害賠償請求額については、災害共済給付を受けている場合は給付金額を差し引いた額となります。まず「損害賠償請求ができるのか」という見通しを弁護士に相談してみることをおすすめします。
子どもが部活で怪我を負ったことで、重篤な後遺障害が残ったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の弁護士による無料の法律相談をご活用ください。法律相談後、強引に契約を迫ることは決してありません。法律相談のご利用後に正式契約するかどうかをご検討ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了