学校事故とは。種類や責任の所在、押さえておきたい給付金制度を解説
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学校事故とは、学校での活動中に発生した事故や災害もしくは、学校施設の使用に伴った事故や災害のことをいいます。近年、学校事故は多発しており、学校内外で生徒を守る意識は高まってきています。
しかしながら、実際に自分の子どもが学校事故の被害者になった場合、どのような行動を取ればいいのでしょうか。
本記事では、学校事故について押さえておくべき知識について解説します。
目次
学校事故とは?種類や類型等について
学校事故とは、法律に明確な定義付けをされているわけではありません。そのため、いわゆる学校事故といってもその種類はさまざまあります。
まずは、学校事故がどのようなものか解説します。
学校事故の種類
学校事故の種類は多種多様です。
たとえば、代表的な学校事故の例として以下のようなものがあげられます。
- 授業中にはさみで指を切る
- 休憩時間に階段から滑って転落する
- 通学中に車に轢かれる
- 遠足や移動教室の途中で転んでしまった
- 学校給食などによる食中毒など
また、幼稚園・保育園、小学校、中学校などの学校の種類によっても、事故の態様は異なる傾向にあります。
学校事故が起こりやすい場面とは
小学校から高校のいずれの学校においても、学校事故は体育の授業や部活動などの運動活動の際に起こりやすいとされています。また、小学生は、休憩時間に遊んでいる時等にも怪我をすることが多いようです。
さらに、学校事故には死亡事故もあり、その多くは登下校中の交通事故によるものといえます。
登下校中の交通事故に関する記事
学校事故の被害で利用できる災害共済給付制度
学校事故が発生した場合、多くは災害共済給付制度を利用できます。災害共済給付は、事故の責任の所在を問わず、すみやかに救済が受けられる制度です。
ここでは、災害共済給付制度の概要を説明し、具体的にどのような給付を受けることができるのか解説します。
災害共済給付制度の概要
災害共済給付制度とは、独立行政法人日本スポーツ振興センターが行っている共済制度のことです。学校や幼稚園等の管理下での災害に対して、災害共済給付を受けられます。
災害共済給付からは、医療費のほか、障害見舞金や死亡見舞金が支給されます。
給付対象の範囲について
給付の対象となる災害は、いくつか定められております。なお、責任の所在については問われていません。
- 負傷
その原因である事由が学校の管理下で生じたもので療養に要する費用の額が5000円以上のものが対象になります。 - 疾病
原因である事由が学校の管理下で生じたもので、療養に要する費用の額が5000円以上のもののうち、文部科学省令で定められたものが対象となります。具体的には、学校給食等による中毒、熱中症、溺水、負傷による疾病などが対象です。 - 障害
学校の管理下の負傷等により障害が残った場合も対象です。障害は1級から14級まで区分され、障害等級に応じた見舞金が支払われます。
支払の対象となるには、障害が発生したことを独立行政法人日本スポーツ振興センターが認定することが必要です。 - 死亡
学校の管理下において発生した事故に起因する死亡等が対象となります。
給付金額について
給付金額については、原則として、医療費の総額の10分の4が給付金として支払われると規定されています。
障害が生じた場合は障害等級に従って最大で4000万円の障害見舞金が支払われ、死亡した場合は3000万円の死亡見舞金の支給があります。
給付金額 | |
---|---|
医療費 | 医療費の総額10分の4 |
障害見舞金 | 最大4000万円 |
死亡見舞金 | 3000万円 |
給付金の支払請求について
給付金の支払請求は、学校の設置者がセンターに対して行い、学校を経由して児童生徒等の保護者に支払われるという運用です。
災害が発生したら「医療費等の状況」という所定の紙に病院から記載してもらい、学校に提出することになります。
必要な書面は、独立行政法人日本スポーツ振興センターホームページ「給付金の請求に係る申請書類」からダウンロードを行いましょう。
学校事故の責任は?誰に対して損害賠償請求できるのか
次に学校事故において生徒が怪我をした際に、その損害の責任を誰が負うのか、法的な内容について解説を行います。
災害共済給付の給付金額を超える損害が生じた場合、損害賠償責任を追及していかなければ補償を獲得できません。
相手方に対する責任追及について
学校事故で、自分の子どもが怪我をした場合、子どもに怪我をさせた加害者に対して責任を追及することが考えられます。加害者に対しては、民法の不法行為により損害賠償請求が可能になるのです(民法709条)。
しかしながら、未成年者は責任能力が認められない場合、不法行為の損害賠償責任を負わないとの規定があります(民法712条)。この責任能力については、判例上は13歳程度から認められると考えられていますので、それ以下の年齢の未成年者に責任追及をすることはむずかしいでしょう。
責任能力を有さないため損害賠償請求が行えない加害者の場合は、監督義務者である保護者に対して請求を行うことが可能です(民法714条1項)。
また、加害者に責任能力がある場合は、未成年者に対して民法709条の不法行為責任を追及し、同時に保護者に対しても同様に民法709条で不法行為責任を追及することが考えられます。
加害者が加害行為を行わないように監督する義務について過失があったことを証明することで、保護者に対する請求が可能となるのです。
この場合は、民法714条1項の責任追及に比べて立証のハードルは高くなるため注意が必要となるでしょう。
学校に対する責任追及について
教師の故意または過失により事故が発生した場合は、学校および教師にも責任追及することが考えられるでしょう。
しかし、国公立学校の場合は、国家賠償法1条により責任追及することになるので、相手方は地方公共団体になります。したがって、国公立学校で起きた事故においては、学校や教師に直接、請求することはできません。
一方で、私立学校の場合は民法715条により、学校に対して請求をすることになります。
不法行為を行った教師を使用している私立学校は使用者責任により損害賠償請求の対象となるのです。
また、不法行為を行った教師にも直接、請求をすることができます。その場合の根拠条文は、民法709条となります。
こちらの関連記事『学校事故の法的責任|民事上の損害賠償請求と法的根拠』でも学校事故で被害者が追及できる法的責任について詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
学校施設や設備の欠陥による事故の責任
学校施設や設備に欠陥があったことで事故が発生した場合は、学校に責任追及することが考えられます。
国公立学校の場合は、国家賠償法2条により責任追及することになるので、相手方は地方公共団体になります。
私立学校の場合は民法717条により、学校に対して請求することになります。
学校事故の判例を紹介
実際に発生した学校事故をいくつか紹介します。
(1)部活動での事故
県立高校の硬式野球部部員であった生徒が、シートノックの練習中に、守備位置に戻ろうとしたところ、ノックした打球が右後頭部を直撃し、急性硬膜下血腫等の障害を負った事故において、教師の安全配慮義務違反があったと認定した判例があります(徳島地判平成26年3月24日)。
この判例では、教師が具体的に生徒の怪我を予見することが出来たか、注意義務を怠ったといえるかが争点になりました。また、生徒にも一部過失があったとし、1割の過失相殺が認められております。
(2)授業中での事故
公立小学校6年生の授業中に児童Aが手に持って振った鉛筆が別の児童Bの目に刺さった事故において、児童Aの両親に、民法714条の責任が認められた一方で、学校に対する国家賠償請求は否定された判例があります(千葉地判平成24年11月16日)。
この判例では、児童Aの加害行為が、わずか10秒足らずであったこと、物音も立っていなかったことから、教師がこの加害行為を未然に防ぐことは不可能であったとして学校および教師の過失は否定されております。
(3)休み時間の事故
中学1年生であるAが休み時間に、高さ155センチメートルの掲揚台が落下して死亡した事故について、私立学校および担任の教師に対して損害賠償請求が認められた判例があります(水戸地判平成24年2月10日)。
この事案では、掲揚台に柵を設置するなどの事故防止措置をとらなかったとして学校に対する不法行為責任が認められました。
学校事故のお悩みは弁護士に相談
学校事故が起きた時、学校側と一人で対応していくのには限界があるでしょう。弁護士に相談することで、納得のいく結果につながりやすくなります。
弁護士に今後の対応を相談しよう
学校事故が起きた後、学校側の対応に不満があってもどう動いたらいいのかわからないという方は多いです。
- 学校側の説明に納得できない
- 学校に対して責任を追及したい
- 災害共済給付を超える部分の損害を請求したい
学校事故に関するお悩みをお持ちの方は、弁護士相談をおすすめします。
学校に対する責任の追及や、災害共済給付の利用を行うには、法的知識が必要です。
弁護士に相談することで、請求のために今後どのような対応をとっていけばいいのかアドバイスがもらえます。
また、弁護士に依頼すれば、請求のために必要な証拠の収集や、学校との交渉などを代わりに行ってくれます。被害に遭った子供のケアを行いながら必要な手続きや交渉を行うことは大変であるため、これらの負担を減らすことができるのは大きな利点といえるでしょう。
さらに、学校との交渉がうまくいかずに裁判による解決が必要となった場合でも、弁護士が裁判手続きを代わりに行ってくれるのであれば安心です。
こちらの関連記事『学校事故は弁護士に相談・依頼!メリットと無料法律相談の窓口を紹介』では、弁護士に相談することで得られるメリットなどを解説しています。あわせてご確認ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了