不動産の相続税はいくら?土地・建物の相続税計算や税率を解説

親や配偶者が亡くなり、自宅の土地や建物といった不動産を引き継ぐことになったとき、「相続税はどれくらいかかるんだろう?」と不安になる方は多いはずです。
不動産の相続税は「市場価格(売買価格)」そのままで計算されるわけではなく、独自のルールで算出した「評価額」をもとに計算されます。また、相続税はほかの財産とも合わせたうえで計算されます。
この記事では、不動産(土地建物)の相続税について、計算方法や税率、注意点などを解説していきます。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
不動産(土地・建物)があると相続税はどうなる?
ほかの財産も合わせて基礎控除を超えると相続税がかかる
不動産を相続した場合、ほかの相続財産と合わせた正味の遺産額が基礎控除を超えると相続税がかかります。
相続税の基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 養子がいる場合、実子がいれば1人まで、いなければ2人まで法定相続人の数に含められます
正味の遺産額とは、「預貯金や株などのプラスの財産」や「死亡保険金や死亡退職金などのみなし相続財産」、「生前贈与した財産のうち相続税の対象になるもの」から「債務や葬式費用などのマイナスの財産」を引いたものです。
生前贈与した財産のうち相続税の対象になるものとしては、暦年課税で生前贈与加算の対象になる財産、相続時精算課税で贈与した財産(基礎控除分を除く)が挙げられます。
詳しくは関連記事『生前贈与をわかりやすく解説!メリットや手続き、相続税の対象になるかがわかる』で解説しています。
不動産の相続税は「評価額」で計算される
相続税評価額とは、相続税の計算においてその財産をいくらとするかを示したものです。
その財産を購入した時の価格や、相続発生時の時価とは違い、例えば土地の相続税評価額は一般的に、市場価格より低くなる傾向があります。
不動産の場合、相続税評価額の算出方法は以下のようになっています。
| 不動産の種類 | 評価の考え方 |
|---|---|
| 土地 | 路線価方式または倍率方式で計算 |
| 建物 | 固定資産税評価額をそのまま使用 |
| マンション(区分所有) | 土地や建物の評価額に補正率を乗じて計算することがある |
| 賃貸用不動産 | 土地や建物の評価額から一定割合が差し引かれる |
評価額の詳しい算出方法は、以下の関連記事にて解説しています。
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不動産相続税の計算方法と税率
相続税を計算する流れ
不動産の相続税は、ほかの相続財産と合わせて計算していきます。具体的な流れを4ステップに分けて確認していきましょう。
ステップ1:すべての財産の相続税評価額を合計し、債務等を差し引く
土地・建物・現金・預貯金など、引き継いだすべての財産を相続税評価額で換算して合計します。
さらに、被相続人の借入金などの債務や葬式費用を差し引いて「正味の遺産額」を算出します。
どのような財産が相続税の対象になるのかについては、関連記事『相続税の課税対象が一覧でわかる!課税対象外の財産も解説』をご覧ください。
ステップ2:基礎控除を差し引く
続いて、正味の遺産額から基礎控除を引きます。
基礎控除の計算式は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。
相続放棄した人も法定相続人の数に含めます。また、養子がいる場合は実子がいれば1人まで、いなければ2人まで法定相続人の数に含めましょう。
正味の遺産額が基礎控除額を下回る場合は相続税はゼロで、相続税の申告も不要です。
なお、正味の遺産額が基礎控除を超えていても、特例やその他の控除によって相続税がゼロになることもあります。しかし、この場合は相続税の申告が必要な場合があるので、よく確認しておきましょう。
ステップ3:課税遺産総額を法定相続分で按分し、税率をかける
基礎控除を差し引いた残り(課税遺産総額)を、いったん法定相続分に応じて各相続人に按分します。そのうえで各人の按分額に税率を適用して税額を計算し、合算したものが「相続税の総額」となります。

税率は課税金額が大きいほど高くなる「超過累進課税」の仕組みです。詳しくは後ほど解説します。
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法定相続分の割合と計算方法は?遺留分との違いや節税のコツを解説
ステップ4:各相続人の税額を計算し、税額控除を適用する
ステップ3で算出した相続税の総額を、実際の遺産取得割合に応じて各相続人に割り振ります。その後、配偶者の税額軽減などの各種税額控除を適用して、最終的な各人の納税額が決まります。
計算の各ステップの詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
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相続税の計算方法をわかりやすく解説!概算の早見表や節税できる制度も
不動産にかかる相続税の税率一覧
相続税の税率は一律ではなく、法定相続分に応じた各人の取得金額の大きさに応じて変わります。これを「超過累進税率」といいます。
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | ― |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
なお、この税率は課税遺産総額に直接かけるのではなく、課税遺産総額を法定相続分で按分した各人の金額に適用します。そのため、相続人の人数や法定相続分の割合によって、適用される税率が変わる場合があります。
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不動産の相続税を抑えられる特例・控除
不動産の相続税を抑える特例としては、「小規模宅地等の特例」があります。
例えば自宅の土地(特定居住用宅地等)について、一定の要件を満たしこの特例を適用すれば、相続税評価額を限度面積330㎡までの部分について最大80%減額できます。

ただし、この特例には「誰が引き継ぐか」「相続後に住み続けるか」など、細かい適用要件があります。詳細な要件については専門家への確認をおすすめします。
また、この特例を使う場合は、たとえ相続税がゼロになっても相続税申告が必要です。さらに、原則として期限までに遺産分割が完了していることも求められます。
相続税を抑える特例・控除としては、不動産に特化した特例・控除ではありませんが、ほかにも「配偶者の税額軽減」「未成年者控除」「障害者控除」といったものがあります。
これらについても、適用においては相続税申告が必須となる場合があります。
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不動産の相続税額はいくら?目安と計算機
「では実際どのくらいの税額になるの?」というのが、多くの方が一番気になる点でしょう。ここでは典型的なケースをもとに、ざっくりしたイメージをお伝えします。
ケース例(1)郊外の自宅(土地建物)を子ども2人で相続
- 土地の相続税評価額:2,000万円
- 建物の相続税評価額:500万円
- 現金・預貯金:300万円
- 正味の遺産額:2,800万円
- 基礎控除(相続人2人):4,200万円
この場合、正味の遺産額が基礎控除よりも低いため、そもそも相続税はかかりません。
ケース例(2)都市部の自宅を子ども1人で相続
- 土地の相続税評価額:4,000万円
- 建物の相続税評価額:800万円
- 現金・預貯金:500万円
- 正味の遺産額:5,300万円
- 基礎控除(相続人1人):3,600万円
- 課税遺産総額:5,300万円 − 3,600万円 = 1,700万円
相続人が子1人の場合、課税遺産総額をそのまま1人が取得するものとして税率15%・控除額50万円を適用すると、1,700万円 × 15% – 50万円=205万円の相続税が発生する可能性あります。
ただし、上記はあくまでモデルケースです。実際には各種控除(配偶者控除など)や小規模宅地等の特例の適用によって、税額が大幅に変わる場合があります。
不動産の相続税の目安が分かる計算機
相続税計算シミュレーションでは、自分のケースにおける相続税の目安を確認できます。
ただし、厳密な相続税額については税理士などの専門家に問い合わせることがおすすめです。
不動産の相続で注意しておきたいポイント
申告期限は「10ヶ月以内」
相続税の申告・納付の期限は、相続の開始があったことを知った日(多くの場合は死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。この期限を過ぎると、延滞税や加算税が発生する場合があります。
不動産の評価は専門的な作業が必要なため、早めに動き出すことが大切です。
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相続税の申告期限はいつまで?10か月の計算方法と遅れた際のリスク
現金がないと「納税できない」ことも
相続税は原則として期限までに金銭で一括納付することが求められます。
不動産を相続したものの現金が少ない場合、「不動産は手に入ったのに税金が払えない」という事態になりかねません。
納税資金の確保や、延納・物納といった対応策についても、早めに検討しておきましょう。ただし、延納や物納には要件があり、必ずしも延納・物納で対応できるとは限りません。
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土地建物の相続登記が義務化された
不動産を相続した際の相続登記(不動産の名義変更)は、2024年4月1日より義務化されています。
相続や遺贈によって土地や家などの不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
遺産分割によって不動産を取得することが決まった場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をすることが必要です。
なお、2024年4月1日前に相続された土地建物についても、2027年3月31日までに相続登記しなければなりません。
正当な理由なく相続登記をしなかった場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。
なお、相続登記では登録免許税がかかります。登録免許税について詳しくは、関連記事『相続登記の登録免許税|計算方法や免税措置は?必要書類や手続きも解説』をお読みください。
まとめ|不動産の相続税のポイント
不動産の相続税は、土地や建物の「相続税評価額」をもとに計算されます。
評価額は市場価格と異なることが多く、土地は路線価方式・倍率方式、建物は固定資産税評価額で算出します。また、不動産だけでなく預貯金や保険金なども含めた正味の遺産額が基礎控除を超えると、相続税が発生します。
一方で、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などを活用すれば、税負担を抑えられる可能性があります。ただし、不動産の評価や特例の適用判断は複雑で、納税資金の確保や相続登記への対応も必要です。
アトム相続税理士事務所では、相続税申告に関するご相談を承っています。まずはお気軽にご相談ください。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
