配偶者と子供で預貯金を相続する際に知っておきたいこと
被相続人が亡くなって配偶者と子供で相続する場合、預貯金の相続が発生するケースも多いでしょう。預貯金口座は被相続人が亡くなるとすぐに凍結されるため、あらかじめ全体像を理解し、早めに手続きを進めることが重要です。この記事では、配偶者と子供で預貯金を相続する際に知っておきたいことを、わかりやすく解説します。
『配偶者と子供による預貯金の相続』に関する基本事項
預貯金を相続するときの手続きの流れ
被相続人名義の預貯金を配偶者と子供が相続する場合は、以下の流れで手続きを行います。
1. 被相続人が亡くなった旨を金融機関に連絡する
金融機関に被相続人が亡くなったことを連絡します。これにより、被相続人の預貯金口座は凍結されます。
2. 遺言書の有無を確認する
次に、遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って遺産を分配します。
3. 相続人全員で遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、相続財産をどのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てをします。
4. 金融機関で相続手続きを行う
遺産分割協議がまとまったら、金融機関で相続手続きを行います。金融機関によって手続きの流れが異なるため、事前の確認が必要です。
5. 必要に応じて相続税の申告・納税を行う
相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、必要に応じて納税も行います。
相続手続きは時間と手間がかかるため、早めに準備を進めるようにしましょう。
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預貯金の相続手続きに必要な書類
預貯金を相続するためには、以下の書類が必要です。
遺言書がある場合
- 被相続人の預貯金口座通帳・キャッシュカードなど
- 被相続人の戸籍謄本(死亡までのもの)
- 遺言執行者または受遺者の実印
- 受遺者の印鑑登録証明書(受遺者が申請する場合)
- 遺言書、遺言書情報証明書、遺言書謄本のいずれか
- 検認済証明書(自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合)
- 遺言執行者選任審判書謄本(家庭裁判所で遺言執行者が選任されている場合)
- 金融機関への申請書類
遺産分割協議書がある場合
- 被相続人の預貯金口座通帳・キャッシュカードなど
- 被相続人の戸籍謄本(死亡までのもの)
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の戸籍謄本と印鑑登録証明書
- 預貯金を相続する人の実印
- 金融機関への申請書類
遺言書や遺産分割協議書がない場合
- 被相続人の預貯金口座通帳・キャッシュカードなど
- 被相続人の戸籍謄本(死亡までのもの)
- 相続人全員の戸籍謄本と印鑑登録証明書
- 申請者の実印
- 金融機関への申請書類
ただし、必要書類は金融機関によって異なる場合があるため、事前に確認してみてください。
預貯金の相続税評価額を計算する方法
預貯金は大きく普通預貯金と定期預貯金に分けられます。それぞれの評価額の計算方法は以下のとおりです。
普通預貯金の評価方法
普通預貯金の場合は、被相続人が亡くなった日の預貯金残高が相続税評価額になります。
定期預貯金の評価方法
定期預貯金の場合は、被相続人が亡くなった日に口座を解約したものとみなし、預貯金の残高と解約時に支払われる利息(既経過利子)との合計が評価額となります。
定期預貯金の評価額=被相続人が亡くなった日の残高+既経過利子
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法定相続分による相続割合【配偶者と子供で相続する場合】
配偶者と子供の法定相続分は2分の1ずつです。子供が複数人いる場合は、遺産の2分の1を子供の人数で均等に分割します。
法定相続人 | 相続割合 |
---|---|
配偶者+子1人 | 配偶者:1/2 子:1/2 |
配偶者+子2人 | 配偶者:1/2 子:1人あたり1/4 |
配偶者+子3人 | 配偶者:1/2 子:1人あたり1/6 |
被相続人が亡くなって2億円の相続が発生し、配偶者と子供2人が相続人となった場合、配偶者の法定相続分は1億円、子供の法定相続分は5,000万円ずつになります。
法定相続分は、相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるものです。ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。
相続税における基礎控除の概要と計算方法
相続税は、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生し、場合によっては相続税額が発生することもあります。相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
たとえば、法定相続人が配偶者と子供1人の場合は4,200万円、配偶者と子供2人の場合は4,800万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。
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相続税の申告方法と申告期限
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書は、税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。
相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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配偶者控除で配偶者分の相続税負担を軽減
相続税における配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人と法律上の結婚関係にある
- 遺産分割が完了している
- 相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出する
たとえば、被相続人が配偶者と子供2人を残して亡くなり、相続財産の合計が2億円の場合、配偶者の法定相続分は1億円です。このとき配偶者控除を適用することで、配偶者分の相続税は0円になります。
ただし、のちに配偶者が亡くなって配偶者の財産を子供が相続するときに、相続税負担が増える可能性があるため注意が必要です。そのため、相続税を節税するための最善策を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。
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預貯金を相続するときの注意点
預貯金の相続手続きをするには、戸籍謄本などの必要書類の取得準備や金融機関での手続きなどが必要になります。これらの手続きには、時間がかかる場合があるので、早めに手続きを進めましょう。
『配偶者と子供による預貯金の相続』に関するよくある質問
預貯金の名義変更はいつまでに行えばよいですか?
預貯金の名義変更手続きに期限はありませんが、早めに行ったほうがいいでしょう。また、被相続人の口座で公共料金などの引き落としを行っていた場合、口座が凍結されて引き落としがされなくなるため注意が必要です。
預貯金の名義変更はどのように行いますか?
金融機関によって名義変更手続きの方法は異なりますが、被相続人と相続人の戸籍謄本やキャッシュカードなどを、申請書類とともに窓口または郵送で提出するのが一般的です。くわしくは、金融機関に問い合わせをしてみてください。
相続税の申告が必要かどうかをどのように判断すればよいですか?
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。遺産総額は、預貯金のほか、不動産や株式などの遺産をすべて合計した金額で算出します。
相続税の申告期限はいつですか?
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。申告期限を過ぎると、ペナルティが科せられる可能性があります。
相続放棄や限定承認とはどのようなものですか?
相続放棄は、相続財産をすべて放棄する方法です。一方、限定承認は、プラスの相続財産の範囲内で債務などのマイナスの財産も引き受ける方法です。そのため、限定承認はプラスの財産よりも債務のほうが多い場合に、相続人に不利益が生じないことがメリットとなります。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士