離婚後でも間に合う!財産分与はいつまで請求できる?
離婚後、時間が経ってから「やはり財産分与をしておくべきだった」と後悔する方は少なくありません。しかし、離婚後2年間は財産分与の請求が可能です。
本記事では、離婚後の財産分与に関する基本的な知識から、具体的な請求方法、そして損をしないためのポイントまでを、弁護士の視点から詳しく解説します。
離婚時に財産分与を行わなかった方、十分な分与を受けられなかったと感じている方、また離婚後の生活に不安を感じている方にとって、貴重な情報源となるでしょう。
法的な知識と実践的なアドバイスを通じて、あなたの権利を守り、公平な財産分与を実現するためのサポートをいたします。
目次
離婚してからでも財産分与を請求できる
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた共有財産を離婚時に公平に分配することです。
原則として、夫婦はそれぞれ2分の1ずつ財産を分け合うことになっており、離婚をする際、配偶者に自分の取り分を請求することができます。
(財産分与)
民法第768条
- 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
- 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
- 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
財産分与の内容を決めなくても離婚自体はできますが、財産分与は離婚理由を問わず、夫婦のどちらからでも請求できる権利です。
離婚した後からであっても、婚姻中に形成された財産について分与を請求する権利が認められています。
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離婚後に財産分与を請求できるのはいつまで?
離婚後の財産分与請求には、2年の時効(除斥期間)が設けられています。
〇除斥期間とは
除斥期間とは、法律で定められた一定の期間内に権利を行使しないと、その権利が当然に消滅する制度です。
この除斥期間は、離婚の日から起算されます。例えば、2024年4月1日に離婚が成立した場合、財産分与の請求権は2026年3月31日までとなります。
この2年という期間は決して長くありません。特に、以下のような場合には、時効までの期間が実質的に短くなる可能性があるため、注意が必要です。
- 財産の調査に時間がかかる場合
- 証拠の収集に手間取る場合
- 交渉が難航する場合
このため、離婚後に財産分与を考えている場合は、できるだけ早い段階で行動を起こすことが重要です。
2024年5月に、民法等の一部を改正する法律が可決されました。この改正により、2026年までに財産分与の除斥期間が2年間から5年間に延長されます。
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離婚後の財産分与が必要となるケース
離婚後の財産分与が必要となるケースは、主に以下のような状況が考えられます。
- 離婚時に財産分与の協議が行われなかった場合
- 離婚時の財産分与が不十分だった場合
- 離婚後に新たな財産が発見された場合
- 離婚時に隠し財産があったことが判明した場合
離婚後の生活にかかわる大きな問題ですので、こういったケースでは離婚後であっても財産分与を請求するか検討してみましょう。ただし、時効の問題があるため、できるだけ早い段階で行動を起こすことが重要です。
離婚時と離婚後の財産分与の違い
離婚時と離婚後の財産分与には、いくつかの重要な違いがあります。
- 請求のタイミング
離婚後の財産分与請求には2年間の請求期限があるので注意が必要です。 - 手続きの複雑さ
離婚時の財産分与は、通常の離婚手続きの一環として行われるため、比較的スムーズに進行することが多いです。一方、離婚後の財産分与は、別途手続きを行う必要があり、より複雑になる傾向があります。 - 証拠の収集
離婚時は、双方の財産状況を把握しやすい状況にありますが、離婚後は時間が経過しているため、証拠の収集がより困難になる可能性があります。 - 心理的な障壁
離婚後は元配偶者との関係が希薄になっていることが多く、交渉を再開することへの心理的な抵抗が大きくなる場合があります。
項目 | 離婚時の財産分与 | 離婚後の財産分与 |
---|---|---|
請求のタイミング | 離婚協議中または離婚直後 | 離婚成立後、2年以内 |
手続きの複雑さ | 比較的スムーズ | より複雑 |
証拠収集の難易度 | 比較的容易 | より困難 |
心理的負担 | 通常の離婚手続きの一環 | 再交渉への抵抗感あり |
離婚後の財産分与の交渉と調停の進め方
離婚後の財産分与請求の進め方には、主に3つの方法があります。
- 当事者間の直接交渉
- 弁護士を介した交渉
- 家庭裁判所での調停・審判
それぞれの特徴は以下の通りです。
当事者間の直接交渉
- メリット:費用が抑えられる、柔軟な解決が可能
- デメリット:感情的になりやすい、専門知識の不足による不利益
弁護士を介した交渉
- メリット:専門的なアドバイスが得られる、客観的な立場での交渉が可能
- デメリット:弁護士費用が発生する
家庭裁判所での調停・審判
- メリット:中立的な第三者の関与、法的拘束力のある解決
- デメリット:時間と費用がかかる、柔軟性に欠ける場合がある
一般的には、まず当事者間で交渉を試み、それが難しい場合に弁護士を介した交渉に移行し、それでも解決しない場合に家庭裁判所での調停・審判に進むというステップを踏むことが多いです。
交渉を進める際は、次のポイントに注意しましょう。
財産分与の交渉のポイント
- 感情的にならず、冷静に対応する
- 相手の立場や事情も考慮しつつ、自分の権利は主張する
- 具体的な数字や根拠を示しながら交渉する
- 妥協点を見出す柔軟性を持つ
- 必要に応じて専門家のアドバイスを受ける
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離婚後の財産分与で損をしないためのポイント
適切な財産評価
離婚後の財産分与で公平な結果を得るためには、財産の適切な評価が不可欠です。特に注意が必要な点は以下の通りです。
- 不動産の評価
公示価格や路線価だけでなく、実際の取引価格も考慮する
必要に応じて不動産鑑定士の評価を受ける - 事業用資産の評価
帳簿上の価値だけでなく、営業権(のれん)も考慮する
税理士や公認会計士のアドバイスを受ける - 金融資産の評価
株式や投資信託は、評価時点の時価を使用する
為替変動の影響を受ける外貨預金は、適切なレートで換算する - 年金の評価
厚生年金の分割制度を考慮する
企業年金や個人年金も対象に含める
適切な評価を行うことで、公平な分与額の算定が可能になります。専門家の助言を受けることで、より正確な評価を行うことができるでしょう。
隠し財産の発見と対処法
離婚後の財産分与では、元配偶者が財産を隠している可能性も考慮する必要があります。
隠し財産の発見と対処には、金融機関の調査(過去の税金申告書や預金通帳の確認、金融機関への情報開示請求)、不動産登記簿の調査(本人名義だけでなく、親族名義の不動産も確認)、会社や取引先の調査(役員報酬や配当金の確認、架空の経費計上がないかチェック)、SNSや生活状況の確認(高額な買い物や旅行の痕跡を探る)などの方法があります。
隠し財産が発見された場合は、証拠を収集し、交渉や調停の場で提示することが重要です。ただし、違法な手段で情報を入手することは避けてください。
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財産分与に伴う税金や諸費用も考慮する
財産分与を行う際には、基本的に贈与税はかかりません。しかし、一部の税金や諸費用については考慮しておく必要があります。
たとえば、譲渡所得税(不動産や株式などの財産を分与する場合に発生する可能性あり)、不動産取得税(不動産を取得した場合に課税される可能性あり)、登記費用(不動産の名義変更に伴う登記費用)、弁護士費用などがあります。
これらの税金や費用を事前に把握し、財産分与の金額に反映させることで、予期せぬ出費を避けることができます。
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財産分与は専門家のサポートを活用する
弁護士への相談のタイミングと選び方
離婚後の財産分与で適切な結果を得るためには、弁護士への相談が有効です。以下のようなタイミングで弁護士に相談することをお勧めします。
- 財産分与の必要性を感じた時点
- 元配偶者との交渉が難航した場合
- 複雑な資産構成がある場合
- 隠し財産の存在が疑われる場合
弁護士を選ぶ際は、離婚・財産分与の専門性、コミュニケーション能力、費用の透明性、相性などを考慮しましょう。
初回相談での説明の分かりやすさや質問への対応の丁寧さを観察し、スムーズにコミュニケーションが取れるかを確認してください。費用面では、料金体系の明確さや追加費用の有無、条件を事前に確認することが大切です。
そして弁護士と信頼関係を築けるかどうかは、長期的な協力関係を築く上で非常に重要です。
あなたにとって最適な弁護士を選ぶことで、より円滑で効果的な財産分与の実現につながります。複数の弁護士に相談し、比較検討することもおすすめです。
財産調査や評価における専門家の役割
離婚後の財産分与では、弁護士以外にも様々な専門家のサポートが有効です。主な専門家とその役割は以下の通りです。
- 弁護士:法的アドバイスと交渉のサポート
- 税理士・公認会計士:財産評価と税金対策
- 不動産鑑定士:不動産の適正価格算定
- ファイナンシャルプランナー:総合的な資産管理アドバイス
- カウンセラー・臨床心理士:メンタルケアのサポート
財産分与は複雑で専門的な知識が必要な場合が多いため、不安な点があれば早めに専門家に相談することをお勧めします。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了