離婚後も住宅ローンのある家に妻が住む5つの方法とは?注意点も解説!

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離婚後の住宅ローン
  • 離婚後、住宅ローンの残る家に妻が住むことはできる?
  • 住宅ローンの借り換えなど、離婚後、妻が家に住む方法は?

「離婚しても子どもを転校させたくない」との理由から、離婚後も妻が同じ家に住むことを希望するケースは、意外と多いものです。

「こだわって建てた注文住宅。住宅ローンが残っていても、離婚後、この家に住み続けたい」と考える妻もいるでしょう。

この場合、問題になるのが住宅ローンです。

離婚後も住宅ローンが残ってた家に妻が住む方法としては、まずは、現在の自宅を財産分与してもらうなどの方法が考えられます。しかし、離婚後、その不動産が夫名義のままでは、夫がローン返済ができなくなったとき、妻が代わりに返済義務を負うリスクが残ります。

この記事では、住宅ローンが残った夫名義の自宅に、離婚後も妻が住み続けるための方法をわかりやすく解説します。

住宅ローンをかかえながら、離婚を検討中の方など、ぜひ最後までご覧ください。

離婚後に住宅ローンが残った自宅に妻が住む方法

ここでは、自宅の名義は夫の単独名義、住宅ローンの債務者は夫であることを前提に、離婚後に妻が自宅に住み続ける方法を解説します。

ペアローンを組んでいる方は『ペアローンは離婚したらどうなる?住宅ローンを一本化する方法』の記事も参考にしてください。

 離婚後に住宅ローン付きの自宅に妻が住む方法<5つ>

離婚後に住宅ローンが残った自宅に妻が住み続ける方法は、以下の4つです。

5つの方法

  • ①妻に名義変更して、妻が住宅ローンを支払っていく
  • ②妻が住宅ローンの借り換えをして、返済しながら住む
  • ③住宅ローンの債務者は夫のままで、妻が夫に家賃を支払う
  • ④離婚後も夫が住宅ローンを支払っていく
  • ⑤住宅ローンを一括返済する
家の名義住む人支払い
夫→妻
夫→妻
夫(妻)

以下、離婚後に住宅ローン付きの家に妻が住む方法について、それぞれの方法の内容、メリット・デメリットをご説明します。

①妻に名義変更して、妻が住宅ローンを支払って住む

離婚後に住宅ローン付きの家に妻が住む方法として、まず考えられるのは、財産分与として自宅の名義を妻に変更し、住宅ローンも妻に名義変更したうえで、妻が家に住むという方法です。

なお、財産分与として自宅を取得しても、偽装離婚などでない限り、贈与税はかかりません。

住宅ローンの債務者を夫から妻に変更するには、金融機関の承認が必要です。実務では、銀行などの金融機関が債務者の変更に応じるケースは少ないでしょう。

この方法で妻が住むメリット

住宅ローンにかかる法律関係を簡明にでき、元夫とのかかわりも極力なくすことができます。

この方法で妻が住むデメリット

金融機関も債務者の変更を認めてくれない場合も、少なくありません。

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②妻がローンの借り換えをして、返済しながら住む

金融機関が住宅ローンの債務者の変更を認めてくれない場合、「妻が、別の金融機関において住宅ローンの借り換えをおこない、従来の金融機関での借入金を返済し、家の名義変更をおこなうなどして、家に住む」という方法を検討します。

この方法で妻が住むメリット

後述するように、住宅ローンの債務者が自宅に住んでいない状態だと契約違反に当たり、金融機関から住宅ローンの残債の一括返済を請求されるおそれがあります。

しかし、妻が借り換えをして住宅ローンの債務者となった上で自宅に住めば、契約違反となるリスクはなくなります。

したがって、この方法のメリットは、一括返済のリスクに怯えることなく安心して自宅に住み続けることができることです。

この方法で妻が住むデメリット

この方法のデメリットは、妻の収入が低いと借り換えの審査に通らない可能性が高い点です。専業主婦やパート勤務の場合、住宅ローンの審査は難しいかもしれません。

自分の息子が働いている場合などは、子どもが住宅ローンの借り換えをおこない、子どもに返済しながら、家に住むという方法もありうるでしょう。

たしかに、妻の事情を理解してくれる我が子は、協力してくれるかもしれません。しかし、子どものこれからの人生設計におよぼす経済的な影響や、親の住宅ローンを背負わせることのリスクは大きいものです。

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③住宅ローンの債務者は夫のままで、妻が夫に家賃を支払う

離婚後に住宅ローン付きの家に妻が住む方法として、住宅ローンの債務者は夫のままで、妻が夫に家賃を支払う形で住宅ローンの返済に協力する方法もあります。

離婚した夫が、子どもと元妻が住む家の住宅ローンを支払い、その一部を養育費と相殺する場合もあります。

この方法で妻が住むメリット

財産分与で自宅全部の取得が難しい場合でも、家賃を支払うことで現在の環境を変えずに生活を続けられます。

子どもにとっても転校などの負担をかけずに済みます。

この方法で妻が住むデメリット

住宅ローンの債務者が自宅に住んでいない状態だと契約違反に当たり、金融機関から住宅ローンの一括返済を請求されるおそれがあります。

そのため、この方法をとる場合は、事前に金融機関の承諾を得ておく必要があります。金融機関の承諾を得られ、夫婦間でも合意できれば、離婚後も住宅ローン返済を続け、妻は家に住むことが可能です。

ただし、夫に毎月家賃を渡すためには、離婚後も定期的に夫と連絡を取り合う必要が出てきます。離婚した元夫との連絡に抵抗がある場合は、大きな精神的負担となる可能性があります。

また、妻が家賃を支払っても、夫の経済状態が悪化して金融機関への支払を滞納すれば、最悪の場合、抵当権が実行されて自宅が競売にかけられてしまうおそれがあります。
典型的には、夫が再婚して生活費が増加したために住宅ローンが払えなくなる場合です。

さらに、夫が名義人であり続けることで、夫の判断のみで自宅を売却されてしまうおそれがあります。また、住宅ローンの完済後に、夫から自宅を明け渡すよう強制されるリスクもあります。

そのため、住宅ローンの債務者は夫のまま、妻が家賃を支払う方法をとる場合、完済後に自宅の所有者名義を妻にする旨を公正証書などで合意しておく必要があります。

使用貸借契約

夫婦間で合意できれば、使用貸借権の設定も可能です。使用貸借契約の場合、妻は自宅に無償で住み続けることができます。

実務上認容された数は少ないものの、離婚後の扶養的財産分与として、妻と子どもが居住する建物について、使用貸借契約の設定が認められた裁判例も存在します(名古屋高等裁判所決定平成18年5月31日月報59-2-134)。

この裁判では、妻と子どもたちが無償で居住できる期間を、離婚から第3子が小学校を卒業するまでの間とする使用貸借契約の設定が認められました。

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④離婚後も夫が住宅ローンを支払っていく

離婚後に住宅ローン付きの家に妻が住む方法として、夫名義の住宅ローンについて、離婚後も住宅ローンの債務者は夫としたままで、夫がローンを支払い、妻が住むという方法もあります。

これは、夫が養育費や慰謝料の一部を住宅ローンとして支払っていく方法となります。

この方法で妻が住むメリット

夫名義のまま夫が住宅ローンを支払っていく方法には、妻が経済的負担を負うことなく、現在の住環境を維持できるというメリットがあります。

この方法で妻が住むデメリット

この方法のデメリットは、上記②の妻が家賃を支払う場合と同様です。

すなわち、この方法のデメリットは、住宅ローンの債務者である夫が自宅に住んでいないため住宅ローンの残額について、一括返済を請求されるおそれがある点です。

また、この方法には、夫が住宅ローンを支払わなければ、最終的に抵当権が実行され、自宅は競売にかけられ強制退去になるデメリットも考えられます。

夫の単独名義である以上、自宅から出ていくよう強制されるトラブルや、勝手に売却されるリスクもあります。

⑤離婚にともない、住宅ローンを一括返済

離婚後に住宅ローン付きの家に妻が住む方法として、住宅ローンの残額を一括返済する方法もあります。

資金が足りない場合は、夫や妻の親族から援助を得て一括返済するケースも少なくありません。

この方法で妻が住むメリット

この方法のメリットとしては、住宅ローンがなくなれば、抵当権は抹消される点です。そのため、いつ競売にかかるかわからない不安は解消され、妻と子どもは安心して自宅に住み続けられます。

この方法で妻が住むデメリット

この方法のデメリットとしては、まとまった金額が必要になるので、資金の準備が簡単にはいかないケースも多い点です。

親族に事情を説明し、十分に納得を得た上で協力してもらうことが重要です。

離婚時、住宅ローンのある自宅は妻が住む以外に、売却も検討?

自宅を売却できれば将来のトラブル防止につながる

夫名義の自宅に妻が住み続ける場合、住宅ローンの不払いによる競売などのリスクを否定できません。

そのため、離婚の話し合いの際、自宅の売却についても検討することをおすすめします。

自宅を売却できれば、将来のトラブルの可能性を少なくすることができます。

自宅の売却を検討する場合、まずは不動産の評価額とローン残高を確認しましょう。

評価額は、不動産販売会社の無料査定などを参考にします。

住宅ローンの残高は、金融機関に問い合わせたり、所定の手続きを経て残高証明書を発行してもらうことが可能です。

自宅を売却した場合、その後の処理方法はローン残高がどれだけあるかによって変わってきます。

以下では、不動産の評価額がローン残高を上回る場合(アンダーローン)と、ローン残高が不動産の評価額を上回る場合(オーバーローン)とに分けて清算方法を解説します。

なお、自宅を売却してもそのまま同じ家に住み続けたい場合は、リースバックという方法もあります。

リースバックは、不動産会社などに家を買い取ってもらった上で賃貸借契約を結ぶ方法です。

不動産の評価額がローン残高を上回る場合(アンダーローン)

この場合、売却代金からローン残高を差し引いた金額を2人で分け合います。分与の割合は、基本的に2分の1です。

例えば、自宅の評価額が3,000万円、住宅ローンの残高が1,000万円の場合、3,000万円-1,000万円=2,000万円を2人で分け合います。

したがって、妻は1,000万円を取得することになります。

ローン残高が不動産の評価額を上回る場合(オーバーローン)

この場合でも、金融機関の合意を得られれば自宅を任意売却できます。

任意売却はローンの滞納が前提となるため、信用情報に傷がつく点に注意してください。

売却後に残ったローンは、預貯金など他の共有財産で弁済することになります。

自宅以外に他の共有財産がなく、残った住宅ローンを完済できない場合は、売却せずに現在の債務者が住宅ローンを払っていくのが一般的です。

離婚後に住宅ローン付きの自宅に妻が住む場合の注意点

離婚時、公正証書や調停調書を作成しておく

住宅ローンが残った夫名義の自宅に離婚後も妻が住み続ける場合、一番不安な点は、夫の不払いによって競売にかけられてしまうリスクがあることです。

この問題に対処するためには、公正証書調停調書を作成しておくと良いでしょう。

公正証書は、公証役場で作成します。調停調書は、調停離婚が成立したとき、作成してもらえる書面です。

これらの書面を作成しておけば、夫が義務を果たさなかった場合、強制執行することが可能になります。

どのような内容にすれば良いかは、事案の内容によって慎重に検討する必要があります。

公正証書や調停調書の文言に少しでも不備があると強制執行できません。

公正証書等を作成したいとお考えの方は、書面の内容について弁護士に事前に相談することをおすすめします。

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離婚時に公正証書を作成するメリットは?どうやって作成する?

離婚時、管理費等の支払者も決めておく

妻が離婚後に夫名義のマンションに住む場合、住宅ローンの返済方法に加え、その他の費用の支払についても細かく決めておく必要があります。

具体的には、マンションの場合、管理費補修積立金などの費用がかかります。

離婚後にこれらの費用負担について話し合うのは困難であるため、誰がどのように支払うのか、離婚前にしっかりと話し合っておきましょう。

妻が連帯保証人になっている場合は必ず外れておく

持ち家を購入する際、妻が住宅ローンの連帯保証人になっているケースも少なくありません。

離婚する場合、連帯保証人から外れておかないと、夫の不払いによって妻に住宅ローンの返済の請求がやってきます。

妻の返済が困難な場合、最終的に抵当権が実行され自宅は競売にかけられてしまいます。そうしたら、妻が家に住むことはできなくなります。

そのため、離婚の際には、住宅ローンの連帯保証人から必ず外れておくことが大切です。

妻が連帯保証人から外れるには、主に以下の方法があります。

①連帯保証人を変更する
②住宅ローンを借り換える
③住宅ローンの残債を一括返済する

離婚時に連帯保証人から外れる手続きについて気になる方は、関連記事をぜひご覧ください。

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離婚後の住宅ローンなどのお悩みは弁護士へ

離婚の際、住宅ローンが残っていると離婚条件の話し合いは複雑化します。

その自宅に妻が住み続けたいという希望を持っていると、協議はさらに難航するでしょう。

住宅ローンの話し合いを早期に解決するには、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士は、ご相談者様のご希望を丁寧に聴き取った上で、最適な解決策をご提案します。

相手との交渉も弁護士が行いますので、どうぞご安心ください。

ご相談者様が、離婚後に平穏な生活を送るため、弁護士がしっかりとサポートいたします。

離婚後の住宅ローンについてお悩みの方は、いつでもお気軽に弁護士にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了