離婚届は先に書いた方が不利になる!?離婚届を書く前にすべきこと
協議離婚の場合、離婚届には夫婦の双方が自筆で署名しなければなりません。
夫婦が同時に離婚届に記入することもあれば、どちらかが先に記入し、郵送などで受け渡しをすることもあります。相手から「あなたが先に書いて」と言われて、渋々書いたという人もいるでしょう。
自分が先に離婚届を書いたことで、不利な方向に進んでしまわないかと不安に感じるかもしれませんが、離婚届を先に書いたとしても、不利になることは基本的にはありません。
ただし、勝手に離婚届を提出されてしまうリスクを考えると、離婚条件について十分に話し合っていない状態で離婚届に記入することは避けた方がよいでしょう。
この記事では、離婚届を先に書くとどうなるのか、離婚届を出す前に何をすべきかを解説します。
目次
離婚届は先に書いた方が不利になる?
離婚届に相手より先に署名しても、基本的に離婚条件の面で不利になることはありません。
ただし、本心では離婚したくないのに離婚届を書いたり、離婚条件が決まっていないのに署名したりすると、不利益を被る可能性があります。
離婚届を書く順番は関係ない
離婚届には、どちらが先に書いたかによって、離婚の条件が有利になる・不利になるといった影響はありません。
ただし、離婚届を書く前に離婚条件の話し合いを終わらせることを強くおすすめします。とりあえず離婚届を提出し、諸々の条件は後から決めればいいと考える方もいますが、それはおすすめできません。
離婚届を提出した後では、相手と話し合いをするのが難しくなってしまうおそれがあるからです。また、財産分与や年金分割、慰謝料の請求などには、離婚の成立から何年といった期限が存在するため、あまり先延ばしにすることはできません。
なお、話し合いもなしに記入済みの離婚届をいきなり相手に突きつけるのは、相手の心証が悪くなったり、今後の話し合いが進みづらくなる可能性があるため、注意したほうがよいでしょう。
勢いで離婚届を書くのはNG
夫婦喧嘩の勢いや、売り言葉に買い言葉で離婚届を書いてしまうのは避けましょう。
もしその時に記入した離婚届を相手が役所に提出したら、こちらの意思に反して離婚が成立してしまいます。
離婚届は、提出時に双方に離婚の意思がなければ無効と考えられています。しかし、提出時に役所の窓口で離婚の意思を確認されることはありません。
したがって、提出時に離婚の意思がなかったとしても、離婚届が正しく書かれてさえいれば、離婚届は受理されてしまいます。
自分の意に反して離婚が成立してしまった場合は、協議離婚無効確認調停や離婚無効確認訴訟を起こせば、離婚を無効にできる可能性があります。
また、離婚届を書いたときには本気で離婚をしたいと思っていたけど、提出までの間に気が変わったという場合も、同様に調停や裁判で争うことができます。
調停や裁判では、離婚届の提出時に離婚の意思がなかったことを証拠をもって主張・立証する必要がありますが、一度離婚届を書いてしまった事実があると、離婚の意思があったと判断される可能性があります。
こういった手続きには手間も時間もかかりますし、必ずしも認められるとは限りません。
このように、離婚の意思が固まっていない状態で離婚届を書くのは、不利な結果に繋がるおそれがあるといえます。
離婚届を勝手に出されるリスクに注意
離婚届を先に書いて渡してしまうと、離婚条件に合意ができていないにも関わらず相手が勝手に離婚届を提出してしまう可能性があります。
勝手に離婚届を提出されたときに特に問題になりやすいのが、子どもの親権者についてです。親権争いがあるケースでは、配偶者が勝手に自分を親権者とする離婚届を提出してしまうリスクに注意が必要です。
離婚届には、必ず未成年の子どもの親権者を誰にするかを記入します。未成年の子どもがいるのに親権者の欄が空欄になっていると、離婚届は受理されません。
当事者同士が同意していなくても、離婚届さえ正しく書かれていれば、親権者は定められてしまいます。
あとから親権者を決めなおすための調停や裁判を起こすことができますが、必ずしも認められるとは限りません。
これを防ぐためには、親権者についての合意ができるまで離婚届を書かないことが重要です。また、後述の離婚届不受理申出という手続きも有効です。
離婚届はどこまで書いて渡す?
協議離婚の場合、離婚届には当事者双方と証人の自筆の署名が必要です。逆に言うと、署名以外の部分は代筆でもよいということです。
したがって、相手の署名以外は全て記入した状態で離婚届を渡して、署名と提出を任せることもできます。
「相手が勝手に親権者を書き換えてしまったらどうしよう」と不安に思われるかもしれませんが、親権者の欄を修正するためには、夫婦双方の訂正印または署名が必要とされています。
欄外に捨印や捨て署名があっても足りず、親権者の欄に直接署名・押印してあることが必要です。
したがって、相手が訂正印や署名まで偽造しない限り、親権者を書き換えた離婚届は受理されない可能性が高いです。
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離婚届を書く前にすべきこと
離婚条件を話し合って決める
離婚条件は、離婚届を出す前に話し合って決めておきましょう。離婚条件とは例えば以下のようなものです。
- 親権者
- 養育費
- 面会交流
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
親権者以外の条件については、決めていない状態でも離婚届を提出すること自体はできます。
しかし、離婚が成立した後では、相手が話し合いに応じてくれなかったり、連絡が取れなくなってしまう可能性もあるため、離婚前に話し合いを行うことを強くおすすめします。
離婚協議書・公正証書を作る
離婚条件が決まったら、離婚協議書や公正証書を作成することをおすすめします。
離婚協議書とは、離婚の方法や条件について合意した内容をまとめた、契約書のような書面です。夫婦が自分たちで作成することができ、離婚後に約束が守られなかった時には、合意の証拠として効力を発揮します。
公正証書とは、公証人に依頼して作成する公文書です。離婚協議書と同様に離婚条件に関する合意内容を書きますが、離婚協議書よりもさらに強い法的効力を持っています。
養育費など金銭のやりとりの取り決めをする場合は、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくと、支払いが履行されなかった時に、裁判を経ずに強制執行(差し押さえ)を行うことができます。
このように、合意の内容を書面にしておくことは、言った言わないのトラブルを防ぎ、離婚時の約束を確実に実現させるために有効です。
通常、離婚協議書や公正証書は、離婚届の提出よりも先に作成します。どうしても早く離婚したい場合などには離婚した後で作成することも考えられますが、離婚成立後に問題なく話し合いや署名・捺印ができるとは限りません。
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・離婚時に公正証書を作成するメリットは?どうやって作成する?
勝手に出されないように離婚届不受理申出
離婚の意思がないのに離婚届を書いてしまった場合や、親権者が決まっていないのに署名済みの離婚届を渡してしまった場合は、勝手に離婚届を提出されてしまうと不都合が生じるおそれがあるため、対処が必要かもしれません。
こういった場合は、相手が離婚届を出してしまう前に、役所に離婚届不受理申出(りこんとどけふじゅりもうしで)をしておきましょう。そうすれば、申出をした本人が取り下げない限りは離婚届が受理されなくなります。
離婚届不受理申出の手続きは、役所に申出書を提出するだけで済みます。相手が離婚届を勝手に提出してしまうのを防ぎたい方は、念のため手続きしておくことをおすすめします。
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話し合いが不安なら弁護士に相談!
離婚後の生活を守るためには、離婚届を書く前に、離婚条件についてしっかりと話し合って取り決めをしておくことが重要です。
離婚の話し合いに不安がある場合や、相手が話し合いに応じてくれない場合は、弁護士に交渉を任せるという選択肢もあります。
弁護士は、あなたの代理人となって相手方との交渉や手続きを行います。
協議離婚のお悩みは、一度弁護士にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
なお、調停離婚や裁判離婚の場合は、一方が署名も含めすべて記入して提出することができ、証人も必要ありません。