離婚後の再婚|再婚禁止期間の廃止で女性の再婚への影響は?
厚生労働省の人口動態統計によると、2022年には婚姻件数のうち25.2%が、夫婦のどちらかまたは両方が再婚だったそうです。
離婚経験のある方をターゲットとしたマッチングアプリや結婚相談所なども増えており、離婚した方の再婚のハードルは下がってきているといえます。
とはいえ、特に子どもがいる方は、再婚時に抱えるリスクも多いため、慎重な検討が必要です。
また、再婚を視野に入れて離婚する場合は、離婚時にも気を付けなければならないことがあります。
この記事では、再婚禁止期間の廃止や離婚して再婚するためのポイントなど、再婚で幸せを掴むために知っておきたい法律知識を解説します。
目次
2024年4月から再婚禁止期間が廃止に
これまで、女性には離婚後100日間は再婚が認められていませんでした。女性が再婚できない期間のことを再婚禁止期間といい、民法733条で定められています。
女性にのみ再婚禁止期間が設けられていた理由は、離婚後すぐに再婚した人が子どもを産んだ場合に、前の夫と新しい夫と両方の子どもだと推定されるのを防ぐためです。
夫婦が婚姻している期間に懐胎した子は、生まれたのが離婚後であっても戸籍上は元夫の子どもであると推定されます。これを嫡出推定といいます。
現行法上、婚姻中の懐胎と推定される(嫡出推定が及ぶ)のは、「婚姻の成立の日から200日を経過した後、または婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子」です。
この決まりにより、離婚後100日以内に母親が再婚していると、元夫も新しい夫も父親であると推定されるケースが出てきてしまいます。
子どもの父親が確定しないと、戸籍や養育費などの面で子どもが不利益を被ってしまいます。これを避けるために、女性には再婚禁止期間が設けられていました。
しかし、2024年4月1日の民法改正で、嫡出推定の制度が見直されるとともに、女性の再婚禁止期間が撤廃されます。この日以降に離婚した女性は、離婚後すぐに再婚することができるようになります。
また、離婚後300日以内に子どもが生まれた場合でも、母親が前の夫以外の男性と結婚した後に生まれた子については、再婚後の夫の子どもであると認められるようになりました。
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離婚してから再婚までの期間の平均は?
厚生労働省の人口動態統計によると、離婚から再婚までの期間は、男女ともに10年以上の割合が最も高くなっています。次に1年未満が多く、以降は徐々に減少します。
3年未満で再婚する人の割合は、男女両方で30%以上となっており、およそ3人に1人が3年未満で再婚という選択肢を選んでいることになります。
また、女性は男性に比べると再婚までの期間が長い傾向があるようです。これは、子育てが終わってから再婚するケースが多いことが一因であると考えられます。
離婚して再婚したい!再婚するために離婚できる?
再婚したいことを理由に離婚できる?
再婚したいということだけを理由に離婚することはできるのでしょうか。
その答えは、どの離婚方法をとるかによって異なります。離婚方法には、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあります。
協議離婚や調停離婚は、夫婦間の合意によって離婚する方法です。したがって、相手が離婚に同意してくれるのであれば、離婚の理由は問われません。
「再婚したい」という理由でも、配偶者が認めれば離婚できるということです。
問題は、相手がそれを認めなかった場合です。協議や調停を行っても相手が離婚に応じなかった場合は、離婚裁判を起こして離婚を争うことになります。
離婚裁判では、民法に定める法定離婚事由が存在しなければ、離婚が認められません。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
「再婚したい」というのは、法定離婚事由にはあたりません。したがって、別の法定離婚事由がなければ、裁判離婚はできません。
法定離婚事由が見当たらない場合でも、ある程度の長期間別居をしていれば「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められる可能性があります。
裁判で離婚が認められる別居期間に明確な基準はありませんが、3~5年程度がひとつの目安と考えられています。
なお、これは不倫はしていないが好きな人がいる、好きな人はいないが誰かしらと再婚したいという方の場合です。
現在の不倫相手と再婚するために離婚したい場合は、問題はさらに複雑になります。
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不倫相手と再婚するために離婚できる?
いま現在不倫中であり、不倫相手と再婚するために離婚したいと考えている方は注意してください。
この場合、あなたは有責配偶者にあたるおそれがあります。有責配偶者とは、不貞行為(不倫)などの行為によって、婚姻生活を破綻させる原因を作った方の配偶者のことをいいます。
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話し合いや調停で夫婦が離婚に合意できるのであれば、有責配偶者からの求めで離婚することは可能です。しかし、裁判では、基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められません。
自ら夫婦関係を破綻させる原因を作っておきながら、離婚まで求めるのは信義則に反すると考えられているからです。
したがって、不倫相手と再婚するために離婚を求めても、相手がそれに同意しないのであれば離婚できる可能性はかなり低いでしょう。
どうしても離婚して不倫相手と再婚したいのであれば、不倫の事実を隠し通すか、他に法定離婚事由を見つけて裁判離婚を目指すことになるでしょう。
ある程度の長期間別居をしていれば、婚姻関係が破綻しているとして裁判離婚が認められる可能性が高まります。ただし、有責配偶者からの離婚請求の場合、求められる別居期間がかなり長く、10年くらいが目安といわれています。
なお、ここでいう「不貞行為」とは、配偶者以外の異性との性交渉を指すため、離婚前から好きな人や付き合っている人がいたとしても、性交渉をしていなければ有責配偶者にはあたらないということになります。
したがって、確実に離婚したいのであれば、離婚成立前に不倫相手との性交渉はしないことをおすすめします。
ここまで、不倫相手と再婚するために気を付けておくべきことについて解説してきました。しかし、離婚後すぐに不倫相手と結婚した場合、周囲の理解が得られなかったり、社会的な信用を失ってしまったりするリスクもあるでしょう。
勢いで離婚に踏み切ってしまう前に、「周囲の理解が得られないリスクを十分理解しているか」「離婚してすぐ再婚してまで一緒になりたい相手かどうか」について考えておくことが大切です。
離婚後に再婚させない取り決めは無効!
もし離婚時に配偶者から「離婚後に再婚してはならない」「不倫相手と再婚したら慰謝料を支払う」などと約束させられたり、そのような誓約書や離婚協議書にサインしてしまったとしても、その取り決めは無効であると考えられています。
こうした誓約書や離婚協議書に書かれた条項は、当事者同士の合意があれば基本的には有効なのですが、それが強行法規や公序良俗に反する場合は無効となります。
憲法24条は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し…」と規定しています。つまり、誰と結婚するかは本人の自由であるということです。
したがって、第三者である元配偶者が離婚後にまで相手の行為を強く制限するような条項は、公序良俗に反し無効となります。約束を破って不倫相手と再婚したとしても、訴えられたり慰謝料を請求される心配はないといえます。
ただし、再婚したことが元配偶者にバレてしまうと、嫌がらせやストーカー化など、裁判外のトラブルに発展するリスクは捨てきれません。
そもそも不倫をしないのが一番ですが、不倫相手と再婚するときは、時期を空けるなどして、相手を刺激しないように気を付けた方がよいでしょう。
離婚してすぐの再婚は周囲の目が気になることも
女性の再婚禁止期間が撤廃されたことで、離婚後すぐに再婚できるようになりましたが、離婚後すぐの再婚は、周囲の目が気になってしまうこともあるでしょう。
離婚後すぐの再婚には、以下のようなリスクがあるといえます。
- 家族に再婚を反対されてしまう
- 離婚の原因が浮気や不倫だったのではと探られる
- 周囲からの目が気になる など
すぐに再婚に踏み切るのではなく、ある程度期間をおいてから再婚するというのも一つの手です。新しく幸せをつかむためにも、十分に考えたうえで行動することをお勧めします。
離婚後に再婚したときの養育費や親権などへの影響は?
再婚は子どもにどう影響する?
親の再婚は、子どもに大きな影響を与えます。再婚すると、子どもの両親が揃うことになり、以下のようなメリットがあります。
- 子どもが父母の両方から愛情を受けられる
- 収入が増えて金銭的に安定する
一方、再婚した親子は、以下のような悩みを抱えることがあります。
- 相手の連れ子に愛情を持てない
- 新しい父親との間に信頼関係が築けない
- 相手の連れ子の世話をしたくない
- 再婚相手との子どもが生まれると、実子と連れ子の間に愛情の差ができる
離婚によって子どもの置かれる環境が悪くなることは、避けなければなりません。もし子連れでの再婚を考えているならば、子どもの意見に耳を傾けるとともに、再婚相手とよく相談しておく必要があるでしょう。
元夫が再婚したら養育費は減らされる?
養育費を支払っている父親が再婚しても、母子が受け取る養育費がただちに減額されることはありません。再婚したとしても、子どもを扶養する義務はなくならないからです。
養育費が減額される可能性があるのは、以下のようなケースです。
- 再婚相手の連れ子と養子縁組をした
- 再婚相手との間に子どもが生まれた
再婚相手に連れ子がいたとしても、養子縁組をしない限りは連れ子の扶養義務を負うことはありません。したがって、元夫が養子縁組をしていなければ、養育費の額に直接的な影響はありません。
しかし、連れ子と養子縁組をしたり、再婚相手との間に子どもが生まれたりした場合は、扶養義務を負う対象が増えるため、養育費の減額の理由になります。
自分が再婚したら養育費は減らされる?
子どもを育てている母親が再婚しても、受け取れる養育費がただちに減額されるわけではありません。
養育費が減額される可能性があるのは、再婚相手と自分の子どもが養子縁組をしたケースです。
再婚相手と自分の子どもが養子縁組をすると、再婚相手にも子どもを扶養する義務が発生します。したがって、実の父親が負担すべき養育費は、減額もしくはゼロになります。
再婚は親権に影響する?
自分が再婚したからといって、元夫に親権を奪われることはありません。
また、離婚時に「親権者である妻が再婚したら、親権者を夫に変更する」というような取り決めをすることはできません。当事者間でこういった約束をしていたとしても、その約束だけを理由に裁判所が親権者の変更を認めることはないでしょう。
親権者は、子どもの利益に直結する事項ですので、父母が自由に変更することはできません。
離婚後に親権者を変更するには、家庭裁判所で親権者変更調停・審判を行わなければいけませんが、親権者から虐待やネグレクトを受けているなどといった、よほどの事情がない限りは変更は認められないでしょう。
なお、子どもを連れて再婚しても、新しい配偶者がただちに親権者になるわけではありません。新しい配偶者と子どもとが養子縁組をすると、初めて新しい配偶者も親権者となります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了