介護に疲れて離婚したい!介護離婚の現状と離婚できるケースを解説

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介護離婚

「義理の親の介護に夫が協力せず、離婚したい」
「寝たきりの旦那を介護している。疲れたので離婚したい」

義両親や夫の介護に疲れてしまい、離婚を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

家族の協力もなく自分一人で介護をしていると、精神的にも負担を感じてしまいますよね。

場合によっては、義両親や夫の介護を理由に離婚することができます。ひとりで抱え込まずに、第三者への相談も検討しましょう。

今回は、義両親や夫の介護が離婚に発展するケースや、介護離婚をするときのポイントなどについて解説します。

原則として義両親を介護する義務はない

よく妻が夫の両親を介護するというケースがあります。しかし、法的に見れば、原則として妻が義両親を介護する義務はありません。

民法では、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定しています(民法877条1項)。つまり、介護義務(扶養義務)を負うのは「直系血族と兄弟姉妹」ということになり、介護される本人と直接血のつながりのない妻には、介護義務がないことになります。

ただし、以下のようなケースでは、義両親に対して介護する義務が生じるので注意しましょう。

  • 義親と同居している
  • 義親と養子縁組を結び、直系血族と同じ関係になっている
  • 裁判所が特別な事情があると判断した

介護をしている人の割合はどれくらい?

「実際にどれくらい自分と同じように介護をしている人はいるのか」と考える方もいらっしゃると思います。

要介護者の人からみたときの介護者の属性として、1位を占めているのは同居している配偶者です(22.9%)。5.4%は子どもの配偶者が占めています。

介護の担い手となっているのは、要介護人にとっての配偶者であるケースが多いということになります。

また、同居中の介護者の割合は68.9%となっており、介護を引き受けている人の多くが女性であることがわかります。

出典:厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」2022年

介護が理由で離婚に発展してしまうケース

義両親の介護を理由に離婚に発展するケース

義両親の介護を理由に離婚に発展するケースには、以下のようなものがあります。

義両親の介護が離婚に関係するケース

  • 義両親本人からの感謝がなく、介護が苦痛
  • 夫や夫の親族が非協力的
  • 自分の仕事を犠牲にして介護をしている
  • もともと義両親との仲が良くなかった
  • 介護中に夫が不貞行為に及んでいた など

義両親の介護が精神的なストレスになってしまい、離婚に踏み切るケースが多いです。

夫の介護を理由に離婚に発展するケース

夫の介護を理由に離婚に発展するケースには、以下のようなものがあります。

夫の介護が離婚に関係するケース

  • 介護が必要になる前まで好き放題していた夫を介護するほど意欲がない
  • 介護をしても文句や暴言を吐かれる
  • この先、介護をしていくことについて精神的に不安がある など

夫の介護をしていくうちに、精神的にストレスが溜まってしまうというケースが見受けられます。

介護での別居を理由に離婚に発展するケース

自分の親を介護するために夫と別居し、そのまま夫婦仲の修復が難しくなってしまうケースがあります。

たとえば、「自分は親孝行だと思って実の親の介護をしているが、夫には別居してまで介護をすることについて理解してもらえない」「介護で別居していてすれ違いが生じてしまった」といったケースが該当します。

子どもの介護を理由に離婚に発展するケース

なかには、子どもの介護を理由として離婚に発展するケースもあります。

たとえば、「両親で介護の方法に食い違いが生じる」「夫が子どもの介護に協力してくれない」といったケースが該当します。

義両親の介護を理由とした離婚

「夫の両親の介護をしている。しかし、夫がまったく協力してくれない」といった理由から、離婚を考える方もいらっしゃるでしょう。ここでは、義両親の介護で離婚できるケースについて解説します。

離婚できるケース

相手が離婚に合意している

相手が離婚に合意している場合は、協議離婚というかたちで、義両親の介護を理由として離婚することができます。

協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。当事者が合意さえすればどんな理由でも離婚をすることができるところが特徴です。

話し合いがまとまらず離婚調停に進んだ場合でも、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができるので覚えておきましょう。

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法定離婚事由がある

離婚調停でも話がまとまらず離婚裁判に発展した場合でも、法定離婚事由があれば離婚することができます。法定離婚事由は以下の通りです。

法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

たとえば、「妻が介護している間に、夫が不貞行為に及んでいた」といった事実があれば、離婚が認められることになります。

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介護によって夫婦関係が破綻している

介護によって夫婦関係が破綻しているという場合は、法定離婚事由の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とみなされれば、離婚が認められる可能性が高いです。

夫婦関係が破綻しているとみなされるケースには「介護が原因で別居し、別居が長期間に及んでいる」「妻が協力を求めても、夫がまったく話を聞かず、暴言を吐く」などといった場合が該当します。

離婚が難しいケース

相手が離婚を拒否し、法定離婚事由がない

相手が離婚に同意しておらず、ほかに法定離婚事由もないという場合は、離婚が難しいでしょう。

協議離婚や離婚調停で話がまとまらなかった場合は、離婚裁判に移行することになります。離婚裁判では法定離婚事由の存在が必須になるため、介護以外に法定離婚事由がないという場合は、離婚することは難しくなります。

婚姻関係が破綻した理由が自分にある

婚姻関係が破綻した理由が自分にある場合は、自身が有責配偶者(夫婦関係の破綻の主な原因となる行為をおこなった配偶者)となり、原則として離婚を請求することは認められません。

たとえば、自分が配偶者にDVをおこなったり、不貞行為に及んだりした場合は、たとえ介護を理由に離婚を請求しても認められないでしょう。

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夫の介護を理由とした離婚

「夫の介護をしており、精神的に限界が来てしまった」といった理由から、離婚を考える方もいらっしゃるでしょう。ここでは、夫の介護を理由として離婚できるケースについて解説します。

離婚できるケース

相手が離婚に合意している

義両親の介護を理由に離婚したい場合と同様に、相手が離婚に合意している場合は、協議離婚というかたちで、夫の介護を理由として離婚することができます。

法定離婚事由がある

夫が回復の見込みのないような強度の精神病を抱えている場合には、法定離婚事由に該当するため離婚が認められる可能性が高いです。

身体的な障害があった場合も、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断されれば、離婚が認められることになります。

離婚が難しいケースと注意点

義両親の介護を理由とするときと同様に、相手が離婚を認めずほかに法定離婚事由がない場合や、自分が有責配偶者である場合は離婚が認められません。

また、夫が認知症だったり、脳梗塞などの後遺症によって意思疎通ができなかったりした場合、協議や調停で離婚の手続きを進めていくことはできない点に注意が必要です。

意思疎通が難しい夫と離婚の手続きをする場合は、まず家庭裁判所に成年後見の申し立てをおこない、夫に成年後見人を立ててもらう必要があります。そして、成年後見人を相手に離婚裁判を進めていくことになります。

介護を理由に離婚をすることになったときのポイント

介護だけを理由とした慰謝料請求は難しい

「介護で離婚するとき、夫に慰謝料は請求できるのか」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。介護だけを理由に、慰謝料を獲得することは難しいです。

離婚慰謝料とは、離婚の原因を作った方が、もう一方の精神的苦痛を補償するために支払うお金です。

離婚の慰謝料は、すべての場合で支払われるものではありません。請求できるのは、基本的に相手に不倫などの不法行為がある場合が前提となります。

介護自体は不法行為に該当しないため、介護だけを理由に慰謝料を相手から勝ち取るのは難しいでしょう。

ただし、「介護に対する夫の言動のせいでうつ病を患った」といったケースでは、慰謝料が認められる可能性があります。

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財産分与は基本的に2分の1の割合となる

介護離婚をするときであっても、財産分与(夫婦が婚姻期間中に築いた財産を離婚時に公平に分配すること)がおこなわれます。

財産分与の割合(寄与割合)は、2分の1、つまり半分ずつ分けるのが原則です(2分の1ルール)。

たとえ自分が専業主婦であり、義両親や夫の介護を放棄したとしても、基本的には2分の1ずつ分けるという原則は変わらない点を押さえておきましょう。

また、相手が合意すれば、これまで夫や義両親の介護をしてきたということを鑑みて、分与の割合を変更するといったことも可能です。

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養育費も支払ってもらえる

介護が必要な夫と離婚する場合であっても、夫に収入があれば、養育費を支払ってもらうことができます。

子どもの介護を理由に離婚する場合であっても、養育費を支払う義務は変わりません。

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介護を理由に離婚をしようと思ったら?

カウンセリングを検討する

「介護をしていてつらくなってきた。離婚するかどうか迷っている」という場合は、介護福祉士や離婚カウンセラーなどの第三者に話を聞いてもらうのもよいでしょう。

場合によっては、関係を修復できたり、次にどのような行動を取ればよいかがわかったりすることもあると思います。

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別居を検討する

介護を理由に離婚をしようと考えたときは、別居を検討してみることをおすすめします。

一度介護から距離を置いて冷静になることで、自分の考えを整理することができるかもしれません。

また、別居をすることで、自分が離婚について真剣に考えていると相手に伝えられる可能性が高くなります。

一般的に、別居期間が3~5年と長期に及べば、裁判で離婚請求が認められる可能性が高くなります。

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弁護士に相談する

別居しても考えが変わらず、介護を理由に離婚しようと考えたときには、弁護士に相談することをおすすめします。

協議離婚で話がまとまらない場合は、離婚調停や離婚裁判を検討することになります。弁護士に相談することで、交渉や主張を代理でおこなってもらうことができます。

また、現在の状況から、法定離婚事由に相当する理由があるかどうか、離婚が認められそうかどうかといったことを法的な観点で判断してもらえるというメリットがあります。慰謝料請求や財産分与、養育費等の離婚条件についても的確に主張してもらえるでしょう。

介護を理由に離婚するときは弁護士に相談!

相手が離婚することについて認めていたり、法定離婚事由があったりする場合は、義両親や夫の介護を理由に離婚することができます。

「介護に疲れて離婚したい」という場合は、ひとりで抱え込まずに弁護士などの第三者に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、現在の状況から離婚が認められるかどうかを判断してくれるほか、調停や裁判に移行した際もスムーズに対応してくれます。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了