離婚の話し合いで気をつける6つのポイントと進まないときの対処法
協議離婚では、当事者が話し合いで合意できれば、どんな理由でも、どんな条件でも離婚することができます。また、費用や複雑な手続きが必要ないというメリットもあり、離婚する夫婦の約9割が協議離婚を選んでいます。
一方で、夫婦同士でただ互いの意見をぶつけあっても、話し合いにならずなかなか離婚できなかったり、十分な取り決めをしないまま離婚して、後悔してしまう可能性もあります。
この記事では、離婚の話し合いで気を付けるべきポイントや、話し合いが進まないときの対処法を解説します。
目次
離婚の話し合いで気をつけること6選
離婚したい理由を整理しておく
離婚に納得してもらうためには、話し合いに臨む前に、なぜ離婚したいのか、どんなことが原因なのかをはっきりさせておきましょう。
「あなたが嫌だから離婚したい」と伝えただけでは、なかなか納得してもらえないでしょう。「嫌」という気持ちの裏には、その原因となったこと、例えばモラハラや意見のすれ違いなどがあるはずです。
気持ちを紙に書き出したり、他の人に話を聞いてもらって整理するのも良いかもしれません。
また、離婚以外の選択肢がないことも確認しましょう。それらを根拠にして話せば、こちらが本気で離婚を望んでいることが伝わるはずです。
離婚したい理由が不倫や浮気なら、言い逃れされないように証拠を集めて突きつけるのが良いでしょう。証拠は、離婚を切り出す前に確保しておきましょう。
希望する離婚条件を決めておく
親権や養育費、面会交流、慰謝料、財産分与など、希望する離婚条件をあらかじめ決めておき、こちらから提示すると、ゼロから話し合うよりもスムーズに、有利に進む可能性が高いです。
また、どこが譲れないか、どこまでなら妥協できるかも明確にしておきましょう。譲歩する姿勢を全く見せないと、話し合いが進まなくなってしまいます。
互いが一歩も譲らず話し合いが決裂した場合、離婚調停や離婚裁判で争うことになります。裁判となると、費用も時間もかかってしまいますし、場合によっては話し合いで解決するよりも不利な条件で離婚することになってしまう可能性があります。
離婚条件を漏れなく決める
離婚を成立させる前に、離婚条件は漏れなく決めておきましょう。離婚条件とは、以下のようなものです。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 子どもの戸籍・苗字
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
親権者以外の項目は離婚後に決めることも可能ですが、離婚届を出した後でまともな話し合いができるとは限りません。相手と連絡がつかなくなってしまう可能性もあります。
また、十分に話し合っておかないと、本来受け取れたはずのお金が受け取れないなど、不利な条件での離婚になってしまうリスクがあります。
関連記事
離婚後の生活について考えておく
あらかじめ離婚後の生活の計画を立てておくと、「離婚したら生活していけないだろう」という反論を防ぐことができるでしょう。
経済面の備えとしては、貯金を作っておくことや、仕事を探すこと、副業を始めることなどが挙げられます。
生活面では、離婚後の住居についても検討しておきましょう。実家や友人の家に身を寄せたり、新しく物件を借りるなどの選択肢が考えられます。いずれにしても、あらかじめ目途をつけておく必要があります。
話し合いの録音方法に注意する
離婚の話し合いをする際は、会話を録音しておくことをおすすめします。
録音しておけば、後から「言った言わない」のトラブルを防ぐことができるほか、調停・裁判でも、話し合いの内容や様子を証明する証拠として用いることができます。
また、話し合い中に暴力や暴言があった場合は、DV・モラハラの証拠としても有効です。
ただし、録音の方法が違法にならないように注意しましょう。相手に録音の了承を得るのが理想的です。
話し合いを勝手に録音すること自体は犯罪にはあたりませんが、他人の部屋に忍び込んでボイスレコーダーを設置したり、録音の内容をもとに脅迫した場合は、その行為が犯罪になってしまう可能性があります。
また、録音自体が犯罪でなかったとしても、録音したデータが裁判で有効な証拠になるかは別の問題です。録音の手段・方法が著しく反社会的だった場合は、有効な証拠として扱われない可能性があります。
感情的になりすぎない
話し合いには、冷静な態度で臨むべきです。また、相手の方が明らかに悪かったとしても、相手の気持ちに配慮した言葉選びを心がけましょう。
こちらから一方的に責め立てると、相手の態度が硬化してスムーズに話し合いが進まない可能性があるからです。
もし議論がヒートアップしてしまったら、日を改めて話し合うことも考えてみてください。
離婚の話し合いの進め方
離婚を切り出す
まずは相手に離婚を切り出します。切り出し方や場所は夫婦によって様々です。
同居中の夫婦なら、家にいるときに面と向かって話すのが最もポピュラーな方法です。既に別居している夫婦であれば、電話やメール、内容証明郵便などを使って離婚を切り出すことが多いでしょう。
また、別居開始と同時に離婚を切り出すこともあります。家を出る時に置き手紙などで離婚を告げるといった方法です。
関連記事
離婚の話し合いを行う
離婚を切り出した後は、離婚の話し合いを行う日時や場所、方法を決め、話し合いを行います。
離婚すること自体に同意できている場合でも、離婚条件は互いが納得できるまで根気強く話し合う必要があります。離婚を切り出した日にそのまま離婚届を書いてしまうのは、おすすめできません。
相手と顔を合わせたくなければ、電話やメールなどの手段で話し合うこともできます。しかし、返信を待つのに時間がかかってしまったり、途中で連絡が途切れてしまうリスクがあります。
どうしても相手と会わずに離婚したい場合は、弁護士に交渉を依頼するのがおすすめです。
離婚協議書を作成する
離婚の条件が決まったら、離婚届を出す前に離婚協議書を作成することをおすすめします。離婚協議書には、離婚をする旨や、離婚の条件などを記載します。
離婚協議書は夫婦間で自由に作成することができますが、それだけでは公的書面としての効力は持ちません。
公証役場にて強制執行を認める旨を記載した「公正証書」を作成し、いわば公的なお墨付きを得ることで、慰謝料や財産分与がきちんと支払われなかった場合に直ちに強制執行ができるようになります。
公正証書を作成するには数千~数万円程度の手数料がかかりますが、養育費や財産分与、慰謝料などの支払いを取り決める場合には、作成しておくと安心です。
離婚届を提出する
協議離婚に必要な手続きは、離婚届の提出のみです。離婚届は、役所またはインターネットで入手できます。提出先は、届出人の本籍地または所在地の役所です。
離婚届の「届出人署名」の欄は、自筆でなければなりません。したがって、一緒に記入するか、郵送等で離婚届のやりとりをする必要があります。
なお、協議離婚を届け出る場合は、2名の証人に署名・捺印してもらう必要があります。証人は、成人であれば誰でも問題ありません。
離婚の話し合いが進まないときは?
第三者を挟む
離婚については当事者が2人で話し合うのが基本ですが、話し合い中に感情的になってしまったり、暴力を受ける恐れがあるような場合は、双方の親や友人、同僚などの第三者に同席してもらうという手もあります。
また、親や知人を通して連絡を取り合うケースもあります。
第三者を挟むと、冷静に話し合えるほか、中立的な意見を得ることができるでしょう。
なお、話し合いに親を同席させるのは一長一短があります。自分の味方として親がそばにいてくれたら心強いですし、相手としても親に対して強く出るのは難しいでしょう。
一方で、たとえ離婚の原因を作ったのが相手だったとしても、相手の親は我が子の味方をする可能性が高く、話し合いがこじれる原因になり得ます。
どちらかの友人を同席させるのにも、同様のリスクがあります。話し合いに同席させる人には、なるべく中立的な立場で話ができる人物を選ぶのが良いでしょう。
話し合いの場所を工夫する
場所を工夫することで、話し合いが進みやすくなる可能性があります。
例えばファミレスや喫茶店など、他人の目があるところで話せば、相手も怒鳴ったり暴れたりはできないでしょう。ただし、周りのお客さんの迷惑にならないように気を付けなければいけません。
また、自身の実家や義実家を選べば、話し合いに同席してもらったり、子どもの面倒を見てもらえるというメリットがあります。
弁護士に交渉を依頼する
弁護士に依頼すると、依頼人の代理で話し合いをしてもらうことができます。弁護士は、直接会っての交渉だけでなく、相手との連絡も代わりに行ってくれるため、自分が相手と関わる必要はなくなります。
離婚条件の取り決めに関しても、専門知識をもとに、依頼者のために最大限交渉してくれます。
また、弁護士から連絡が行けば、相手にはこちらが本気で離婚を望んでいることが伝わるでしょう。
別居する
相手が離婚を頑なに拒んでいる場合は、別居をすることも離婚を進めるのに有効な手段です。離れて暮らせば、互いに冷静になって話し合うことができますし、離婚に対する本気度を示すことができます。
さらに、ある程度の長期間別居していると、裁判で離婚が認められる理由になります。具体的な別居期間としては、3~5年が目安といわれており、かなり長い期間が必要です。裁判離婚を考えている場合、少しでも早く別居した方がいいかもしれません。
ただし、別居をする際に黙って出ていくことは避けましょう。正当な理由なく突然家出をして帰ってこないというのは「悪意の遺棄」という不法行為にあたり、むしろ相手から離婚慰謝料を請求されてしまう原因になるほか、こちらからの離婚請求が認められづらくなる可能性があります。
置き手紙やメールなどでも良いので、離婚を前提に別居したい旨を伝えておきましょう。
離婚調停を起こす
話し合いが難しい場合は、離婚調停の申し立てを検討してみてください。離婚調停とは、家庭裁判所の調停委員会が双方から話を聞き、中立的な立場から意見を調整して、夫婦の合意を目指す手続きです。
離婚調停では、離婚の可否だけでなく、親権や慰謝料、養育費、財産分与など、離婚の条件についても話し合うことができます。
調停期日に夫婦が顔を合わせる必要はほぼないため、相手と会うのが怖い場合も安心して利用できます。費用も3,000円程度と安価です。ただし、平日に裁判所に出向く必要があるほか、月に1回程度の調停期日を何度か繰り返すため、離婚成立までに時間がかかってしまうというデメリットもあります。
調停でも合意ができなかった場合は、調停は不成立となり、再度話し合いを行うか、裁判で争うことになります。
関連記事
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
話し合いで離婚条件が決まったら、後のトラブルを防ぐために離婚協議書や公正証書を作成しておくことをおすすめします。