第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。
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刑事事件の時効は何年?公訴時効がなくなった刑事事件は?
刑事事件の時効には3つの種類があります。
- 公訴時効:裁判提起の期限
- 刑の消滅時効:刑罰を執行する期限
- 刑事事件の賠償の期限(民法の時効):被害者が加害者へ請求する期限
刑事事件を起こしてしまった方がいちばん気になるのは、公訴時効でしょう。
公訴時効が完成するまでは、刑事裁判になる可能性があります。公訴時効の年数は犯罪ごとに違い、刑罰が重い犯罪ほど長くなる傾向があります。過去には公訴時効が廃止・延長される法改正もありました。
この記事では、刑事事件の時効の種類、公訴時効の年数などを解説します。刑事事件の時効でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
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目次
刑事事件の公訴時効(裁判提起の期限)
公訴時効は刑事裁判をおこす期限
公訴時効とは、犯罪終了後、一定期間が経過することで、刑事裁判をおこす(起訴する)ことができなくなる制度です。
公訴時効が経過すると、刑事裁判は開かれないので、有罪判決をうけて刑罰を科される可能性もなくなります。
万一、公訴時効が経過した後に、手違いで起訴されてしまった場合には、免訴判決がだされます。
免訴判決が出されると、その時点で訴訟手続が打ち切られることになります。
また、公訴を提起しても免訴判決が出ることから、時効完成後は基本的に逮捕されることもありません。
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刑事事件の公訴時効がある理由
刑事事件に公訴時効がある理由として、ひとつには、時間の経過により、社会的影響・処罰感情が薄れ、刑罰を科す必要性が減少するからという説明をされることも多いです。
しかし、重大な事件であればあるほど、時間の経過により処罰感情が薄らぐとはいえません。
また、時間の経過により、証拠の劣化・散逸がおこり、公正な裁判の実施が困難になるから公訴時効があるとも言われています。
しかし、従前よりも鑑定技術が向上するなど、公正な裁判の実施が困難であるとは必ずしもいえない実情もあります。
そのため、2010年には、多くの犯罪で公訴時効が延長され、殺人など人を死亡させた刑事事件については公訴時効が廃止されました。
また、2023年には、性犯罪の公訴時効が延長される改正もありました。
次の項目では、実際に刑事事件の公訴時効の年数を確認していきましょう。
刑事事件の公訴時効は何年?
時効がなくなった刑事事件(殺人罪など)
人を死亡させた刑事事件で死刑になり得る罪
現在、人を死亡させた刑事事件であって、刑罰に死刑がある罪には、公訴時効がありません。たとえば、殺人罪、強盗致死罪、強盗・不同意性交等致死罪(旧 強盗・強制性交等致死罪)などです。
かつてはこれらの犯罪にも25年の公訴時効がありましたが、重大な犯罪であることから2010年4月27日に公訴時効が撤廃されました。
おもな罪名 | 改正前の時効 | 改正後の時効 |
---|---|---|
殺人罪 | 25年 | なくなった |
強盗致死罪 | 25年 | なくなった |
強盗・不同意性交等致死罪 | 25年 | なくなった |
2024年10月4日現在の情報です。
たとえば、殺人罪を2020年4月27日以後に犯した場合、公訴時効はなく、いつまでも起訴される可能性が続きます。
また、過去に殺人罪を犯し、2020年4月27日の時点で公訴時効が完成していなかった場合も、以降、公訴時効はなくなり、死ぬまで起訴される可能性が残ります。
公訴時効がある刑事事件(わいせつ事件を除く)
公訴時効の期間がある刑事事件について、その年数は以下のとおりです。
なお、性犯罪やわいせつ事件の公訴時効は、次の項目でまとめます。
人を死亡させた罪で禁固以上の刑(死刑を除く)にあたるもの
人を死亡させた刑事事件で、刑罰に死刑が含まれない罪の公訴時効は、以下のとおりです(刑事訴訟法250条1項参照)。
おもな罪名 | 時効 |
---|---|
傷害致死罪、危険運転致死罪 | 20年 |
過失運転致死罪 | 10年 |
2024年10月4日現在の情報です。
上記以外のもの
人を死亡させなかった犯罪や、人を死亡させた罪でも禁錮以上の刑が規定されていない犯罪では、公訴時効は以下のとおりとなります(刑事訴訟法250条2項参照)。
おもな罪名 | 時効 |
---|---|
殺人未遂罪、現住建造物等放火罪 | 25年 |
強盗・不同意性交等罪 | 20年 |
強盗致傷罪 | 15年 |
強盗罪、傷害罪 | 10年 |
窃盗罪、詐欺罪、恐喝罪、業務上横領罪 | 7年 |
過失運転致傷罪 | 5年 |
公務執行妨害罪、名誉毀損罪、器物損壊罪、侮辱罪、住居侵入罪、暴行罪、脅迫罪、撮影罪、過失致死罪 | 3年 |
軽犯罪法違反 | 1年 |
2024年10月4日現在の情報です。
不同意性交・わいせつ事件の公訴時効
不同意性交、不同意わいせつ、盗撮、児童買春などの刑事事件の公訴時効については、以下のとおりです(刑事訴訟法250条1項、同3項参照)。
2023年7月13日の改正により、多くの性犯罪において、公訴時効が長くなりました。
おもな罪名 | 改正前の時効 | 改正後の時効 |
---|---|---|
不同意わいせつ致死罪 不同意性交等致死罪 監護者わいせつ致死罪 監護者性交致死罪 | 30年 | 30年 |
不同意性交等致傷罪 不同意わいせつ致傷罪 監護者性交等致傷罪 監護者わいせつ等致傷罪 強盗・不同意性交等罪 | 15年 | 20年 |
不同意性交等罪 監護者性交等罪 | 10年 | 15年 |
不同意わいせつ罪 監護者わいせつ罪 児童福祉法違反(児童淫行罪) | 7年 | 12年 |
2024年10月4日現在の情報です。
なお、強盗・不同意性交等致死罪については先ほど触れたとおり、公訴時効はすでに廃止されており、起訴の可能性は被疑者が死ぬまでずっと続きます。
公訴時効が延長される例外もある!
不同意わいせつ、不同意性交等の刑事事件では、犯罪行為が終わった時点で、被害者が18歳未満の場合、18歳になるまでの期間が公訴時効の期間に加算されます(刑事訴訟法250条4項)。
たとえば、不同意わいせつ罪の公訴時効は、通常、12年です。
しかし、被害者が17歳の場合、その不同意わいせつ罪の公訴時効は13年となります(通常の公訴時効12年+18歳までの期間1年)。
未成年を理由に時効延長される罪
- 不同意わいせつ致傷罪
- 監護者わいせつ致傷罪
- 強盗・不同意性交等罪
- 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪
- 監護者性交等罪・監護者わいせつ罪
- 児童福祉法違反(児童淫行罪)etc.
2024年10月4日現在の情報です。
刑事事件の公訴時効でよくある質問
Q.公訴時効の完成直前に逮捕されることは?
法律上、公訴時効が完成する直前まで逮捕される可能性はあります。しかし、逮捕後の取り調べや送致の手続きには時間がかかり、検察官が起訴・不起訴を判断するのにも時間がかかります。
公訴時効が完成すると検察は起訴できなくなるため、時効直前に逮捕して数日で捜査を終え、起訴するのは現実的ではありません。したがって、公訴時効直前に逮捕される可能性は低いといえます。
もっとも、被害者が死亡するような悪質な事案や、マスコミに報道されるような有名事件などの場合は、時効完成が目前になると、警察の捜査が活発になります。
過去にあった事件では、時効完成まで残り1か月となった段階で逮捕され、時効完成の直前で起訴された殺人のケースなどが存在します。
Q.公訴時効はいつから起算する?
公訴時効は、「犯罪行為が終わった時」から起算します。
この「犯罪行為」というのは、条文に規定されている犯罪にあたる事実のことを指します。
これは犯罪としての行為と、それから生じた結果を含むと解されています。
窃盗の場合は、他人の財物を自分の支配下におさめた時点が「犯罪が終わった時」になります。
例えば万引きの場合、商品を手を触れた瞬間ではなく、商品を懐に入れるなど自分の支配下におさめた瞬間が起算点になります。
傷害致死の場合は、例えば相手をナイフで誤って刺してしまったような事件の時、ナイフを刺した時ではなく相手が死亡した時が「犯罪が終わった時」に当たります。
Q.公訴時効の停止とは?
時効は一定の条件を満たしたときに停止することがあります。
時効が停止すると、その期間分時効の完成が遅れることになります。
時効が停止するのは、犯人が国外逃亡したり完全に身をくらませたりして起訴状の謄本や略式命令の送付・告知ができない状況になったときです。
刑事事件における公訴時効の停止は、続きから再開されます。
民事事件における時効では、時効の進行が一度停止すると期間がすべてリセットされるものがあります。これを「時効の更新」といいますが、刑事事件にはこのような制度はありません。
刑事事件における時効の停止は、すべてそれまでに経過した時効期間は有効に維持されたままになります。
Q.公訴時効を待つのはよくない?
刑事事件を起こして逃げている場合、公訴時効の完成を待つのはおすすめできません。
なぜなら、時効が完成する前に捕まると、逃げていたことで悪質性が高いと判断されるおそれがあるからです。
また、時効が完成するまでの間、いつ捕まるかわからないという不安を抱えながら生活するのは、精神的に大きな負担となります。
もし刑事事件を起こして逃げてしまった場合でも、自ら警察に出頭することで、逮捕を避けたり刑事処分が軽くなったりする可能性があります。
一度逃げてしまったことで悪い印象を持たれていることは確かですが、犯人が特定されていない場合には、自首が有効に成立することもあります。まずは弁護士に相談してみてください。
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Q.事件の発生後に公訴時効が改正されたら?
刑事事件をおこした後、公訴時効が改正されても、すでに旧法の公訴時効の満了をむかえていた場合は、新法が適用されることはありません。
しかし、刑事事件をおこした後、公訴時効の新法が適用され始める時点で、旧法の公訴時効が満了していなかったケースでは、新法の公訴時効が適用されます。
具体例としては、以下のようなものがあります。
殺人罪の公訴時効
- 旧法の公訴時効
25年 - 新法の公訴時効
2010年4月27日以後、公訴時効はなくなった(廃止) - 新法が適用される場面
2010年4月27日時点で、25年の時効期間が経過していない場合、公訴時効はなくなる - 結果
殺人罪で起訴される可能性は、死ぬまで続く
強制性交等罪の公訴時効
- 旧法の公訴時効
10年 - 新法の公訴時効
2023年7月13日以後、不同意性交等罪に名称が変わり、公訴時効も15年に変わった - 新法が適用される場面
2023年7月13日時点で10年の時効期間が経過していない場合、公訴時効は15年(5年延長)となる - 結果
強制性交等罪で起訴される可能性は、犯罪終了から15年続く
公訴時効は改正されるたびに、時効期間が長くなったり、公訴時効そのものがなくなったりしています。
このような刑事事件の公訴時効の変更は、被疑者や被害者に大きな影響を与える可能性があるため、最新の法改正に注意を払い、必要に応じて法律の専門家に相談することが重要です。
Q.公訴時効と告訴期間の違いは?
刑事事件の公訴時効と告訴期間は、法的に重要な期間ですが性質が異なります。
公訴時効は、犯罪終了後、一定年数が経過すると起訴できなくなる制度で、全ての刑事事件で問題になります。
一方、告訴期間は「親告罪」でのみ問題になります。
親告罪とは、被害者等の告訴(犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示)がなければ、検察官が起訴できない犯罪のことです。
親告罪の告訴期間は、通常、被害者等が犯人を知った日から6か月以内です(刑事訴訟法235条本文)。
親告罪の場合、告訴期間を経過する前に告訴がなかったときは、たとえ刑事事件の公訴時効が経過していなくても、起訴できません。
告訴がないのに起訴された場合は、刑事訴訟の条件を満たさないとして、公訴棄却の判決がだされ、刑罰は科されません。
刑の消滅時効(刑罰を執行する期限)
刑の消滅時効とは?
刑事事件の消滅時効とは、「刑の消滅時効」を指しています。これは刑が確定した後、実際にその刑を執行できる期間を意味します(刑法第32条)。
通常、刑が確定すると速やかに執行が行われるため、刑の消滅時効が適用されることはほとんどありません。
実務上、消滅時効が問題となるのは、勾留されずに在宅起訴され、禁錮以上の刑を受けた者が服役前に逃亡するケースです。
なお、他人を死亡させた死刑に該当する罪については、公訴時効・消滅時効のいずれも適用されません。
刑の消滅時効は何年?
刑の消滅時効が適用されるケースは、非常にまれですが、ここでは刑の消滅時効の年数について紹介します。
刑の消滅時効は、裁判で言い渡された刑(宣告刑)の内容に応じて、変わります(刑法32条)。
宣告刑 | 時効の年数 |
---|---|
無期懲役・禁錮 | 30年 |
10年以上の懲役・禁錮 | 20年 |
3年以上10年未満の懲役・禁錮 | 10年 |
3年未満の懲役・禁錮 | 5年 |
罰金 | 3年 |
拘留・科料・没収 | 1年 |
2024年10月4日現在の情報です。
刑事事件の賠償の期限(民法の時効)
刑事事件で問題になる民法の時効とは?
刑事事件で損害をうけた被害者は、加害者に賠償請求ができますが、期限があります。
この期限のことを民法では、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効といいます。
民法の消滅時効は何年?
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、以下2つのうち、いずれか早い方になります。
- 被害者(やその法定代理人)が損害・加害者を知った時から3年間*
- 不法行為の時から20年間
* 生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、被害者や法定代理人が損害および加害者を知った時から5年間になる。なお、こちらは 2024年10月4日現在の情報です。最新の情報についてはご自身でご確認ください。
刑事事件の加害者としては、民法の時効を待つのではなく、被害者の方との示談交渉のなかで、民事の賠償についても示談を進めることが多いでしょう。
刑事事件の示談については『刑事事件の示談とはどういうもの?示談の方法や流れ、タイミングを解説』の記事でご紹介しています。
刑事事件の時効の不安は弁護士に相談を
さいごに一言
刑事事件の時効では、公訴時効、刑の消滅時効、民事の消滅時効が問題になります。
刑事事件の公訴時効は、検察官が被疑者を起訴する期限です。
公訴時効の有無や年数は、刑事事件の内容(人を死亡させた罪かどうか、一定の性犯罪かどうか)と、法定刑の内容(法律に死刑が規定されているか、禁錮以上の刑が規定されているか)などで決まります。
公訴時効がなくなった刑事事件や、延長された刑事事件もあります。早期解決を目指すなら、刑事事件の弁護経験豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
アトムは24時間ご予約受付中
刑事事件を起こしてしまった場合、早めに弁護士に相談することが重要です。
逮捕・勾留の回避、早期釈放、不起訴獲得などの結果は、弁護士が早く対応すればするほど可能性が高まります。
取り調べに適切に対処するためのアドバイス、捕まっている本人に代わっての示談交渉など、弁護士だけができることはたくさんあります。
逮捕後すぐに釈放されて会社をクビにならずに済んだケース、前科が付かず早期に日常生活に復帰できたケースなど弁護士への早めの相談が功を奏したケースは数多いです。
弁護士相談が問題を早期に解決し、日常生活を守るための最初のステップになります。まずはデメリットなしの無料相談をぜひ試してみてください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了