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刑事事件の有罪率は本当に99.9%なのか?統計からひも解く日本の本当の有罪率
- 日本の刑事事件の有罪率について知りたい!
- 刑事事件の有罪率が99.9%ってホント?実際のところはどうなの?
- 否認事件の有罪率は?
ご覧のページでは刑事事件の有罪率について徹底解説していきます。
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目次
日本の刑事事件の有罪率をひも解く|有罪率99.9%の意味するところとは?
どうやって有罪率を調べる?
「日本の刑事裁判の有罪率は99.9%」。
ワイドショーやテレビドラマなどでよく使われる言葉ですが、実際のところはどうなのでしょうか?
確定裁判の有罪率は〇〇%?
日本の刑事裁判の有罪率は何%なのでしょうか。「刑事裁判の有罪率が99.9%」というのは本当なのでしょうか。
犯罪白書によれば、平成28年の裁判確定人員(28年中に最終的な判決がくだされた人員)は32万488人。
そのうち、無罪確定者は104人。
裁判確定人員総数のうち、無罪となった人員の割合はおよそ0.03%でした。
平成28年の確定裁判の有罪率はおよそ99.97%ということになります。
このデータだけ見ると「日本の刑事裁判の有罪率は99.9%」というのも正しいように思えます。
ただ、これはあくまで確定裁判の有罪率です。
日本の刑事手続においては、裁判が開かれることなく終了した事件の数も多数に上ります。
裁判が開かれることなく終了する事件とは?
刑事事件は、事件発生後、裁判が開かれることなく終了するケースがあります。
具体的には、①警察沙汰にならなかった、②被疑者特定にいたらなかった、③微罪処分になった、④不起訴処分になったというようなケースでは、刑事裁判が開かれることなく事件が終了します。
刑事事件全体から見た有罪率は?┃検察による起訴・不起訴の判断とは?
有罪率の出し方は?
刑事事件のなかには、そもそも①警察沙汰にならない事件、②警察が捜査を行わない(=被害者特定にいたらない等)といった事件もあります。
今回は「有罪率」を調べるという観点から、これら①②の事件については除外します。
今回は、警察が被疑者を特定した事件=検挙された事件について、最終的に何パーセントが有罪となったのかを見ていくことにしましょう。
まずは、③微罪処分、④不起訴処分の件数などを確認していきましょう。
微罪処分とは?件数や確率は?
微罪処分とは?
まず、微罪処分となった事件についてみていきます。
微罪処分となった事件は、裁判が開かれず、刑事罰も科されません。つまりは、微罪処分になれば、罪に問われることはありません。
それでは、その「微罪処分」というのは何なのでしょうか。
まず、被疑者を特定した警察は、原則事件を検察に「送致」します。
「送致」というのは、事件の証拠物や被疑者の身柄などを、検察に引き継ぐ手続きのことです。
「送致」とは?
- 送致とは、事件の証拠物や被疑者の身柄などを検察に引き継ぐ手続きのこと。
- 送致後は、検察官によって起訴・不起訴の判断がされることになる。
被疑者の特定に力を注いだ警察ですが、彼らはこのまま裁判にまで関われるわけではありません。
被疑者の刑事責任を追及することができるのは、原則、検察官だけなのです。
ただ、あらかじめ検察官が指定した犯罪につき、「送致」が行われず、刑事手続き終了となることもあります。
この「送致」が行われないという処分のことを「微罪処分」と言います。
「微罪処分」とは?
- 微罪処分とは、検察官への送致が行われないという処分のこと。
- 検察官送致がなくなるので、検察官によって起訴・不起訴の判断をされる機会がなくなり、裁判にかけられて有罪になる可能性もなくなる。
微罪処分の件数は?
平成29年版犯罪白書では、全刑法犯の検挙人員中、何人が微罪処分となったのかが示されています。
検挙された刑法犯の人員のうち、約3割は微罪処分となっているようです。
微罪処分の割合(H28年)
刑法犯の全検挙人員 | 22万6,376人 |
微罪処分となった人員 | 6万7,340人 |
微罪処分の割合 | 約29.7% |
不起訴処分とは?不起訴率は?
不起訴とは?起訴とは?
検察に送致された事件は、警察官と検察官が共同して捜査します。
最終的には事件担当の検察官が、起訴するのか、不起訴とするのかを決定します。
起訴 | 検察官が、裁判所に対して裁判を開くよう提起すること。 原則、裁判開廷にいたり、裁判所で事件が審理されることになる。 |
不起訴 | 検察官が訴追の必要なしと判断し、そこで刑事手続きを終了させること。 裁判は開かれない。 |
不起訴率は?
こちらも、犯罪白書から刑法犯の起訴件数、不起訴件数を見てみましょう。
検察が把握した全刑法犯のうち、6割近くが不起訴となっています。
刑法犯の不起訴率(H28年)
検察庁終局処理人員* | 19万1,175人 |
起訴人員 | 7万3,060人 |
不起訴人員 | 11万8,115人 |
不起訴率 | 61.8% |
*家裁送致などを除く
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刑事事件全体からみた有罪率は?〇〇%?
これらの事実を踏まえたうえで、刑法犯の有罪率を考察してみましょう。
いままでの情報を整理すると以下のとおりです。
- 微罪処分の割合29.7%
- 不起訴処分の割合61.8%
- 確定裁判の無罪率0.03%
これらの情報を統合すると、有罪率は約26.8%ということになります。
ただ、これは別統計の表を無理やり統合した数値ですから、実測値と比較し揺らぎも想定されます。
また、あくまで刑法犯の有罪率であり、条例違反など刑法犯以外の犯罪や、道交法関連の犯罪は除かれています。
否認事件の有罪率は?
否認事件の有罪率を調べる方法は?
ここまで検討してきたのは、「被疑者、被告人が犯行事実を認めている態様の事件」も含めた有罪率です。
否認事件の有罪率はどれくらいなのでしょうか?
同じく犯罪白書で調べることはできるのでしょうか。
犯罪白書には否認事件の割合などはまとめられていません。
否認事件の有罪率は〇〇%?
裁判所が公開している「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」を参照しながら、否認事件の有罪率を検討していきましょう。
当該資料を用いて刑事第一審訴訟事件の概況等を調べると、第一審の否認率は9.6%であるとの記載があります。
犯罪白書から平成28年に終局した第一審の事件の総数を見てみると5万7,940件です。
そのうち無罪判決は113件でした。
これらを踏まえて検討してみます。そうすると、否認事件の第一審の有罪率はおよそ98%ということになるでしょう。
ただこれはあくまで第一審の否認事件の推定有罪率です。控訴や上告、その他さまざまな事情を考慮していないため、実測値と比較し揺らぎが想定されます。
否認事件の第一審の有罪率(H28年)
第一審終局裁判総数 | 5万7,940件 |
否認率 | 9.6% |
第一審終局裁判想定否認件数 | 約5562件 |
無罪判決 | 113件 |
否認事件の有罪率 | 約98% |
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今回の記事のポイントをおさらいしましょう。
Point
- 裁判での有罪率は噂通りそうとう高いものの、実は裁判開廷以前に手続終了となる事件の数もかなり多い。
たしかに、刑事裁判になった否認事件の有罪率は約98%と相当高いものでした。
ですが、否認事件であっても、刑事裁判にならずに事件終了となるものも多いものでした。微罪処分や不起訴などを含めると、否認事件の有罪率は約26.8%という結果でした。
この記事をお読みになっている方の中で、現在、刑事事件の加害者として捜査・訴追されている方は、「今後、有罪の結論がでてしまうのか」について気になってしまいますよね。
不起訴などを目指すには、なるべく早く弁護士に頼ることが重要です。
弁護士への相談が早ければ早いほど、微罪処分の獲得、不起訴処分の獲得について可能性が高まります。
刑事事件は時間との勝負です。
なにか少しでもお悩みのことがあるのなら、早急に弁護士事務所に相談するべきと言えるでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
法務省は、犯罪情勢と犯罪者処遇の実情を年代ごとに調査し、「犯罪白書」として取りまとめています。
今回は、この「犯罪白書」の平成29年版を参照し、刑事事件有罪率の実際のところを見ていくことにしましょう。