配偶者と子供で金・金地金を相続する際に知っておきたいこと
被相続人が亡くなって相続が発生したとき、相続財産の中に金や金地金(インゴット)が含まれている場合もあります。金を相続する場合、相続の流れや相続税評価額の計算方法を理解しておく必要があります。この記事では、被相続人の配偶者と子供で金や金地金(インゴット)を相続する際に知っておきたい基礎知識について、わかりやすく解説します。
目次
『配偶者と子供による金・金地金の相続』に関する基本事項
相続税の課税対象になる金の種類
貴金属以外に相続税の課税対象となる金には、以下の種類があります。
金地金(インゴット)
金地金(インゴット)とは、金属を固めた塊のことです。金、銀、プラチナなどの貴金属で作られることが多く、重量と純度によって価値が決まります。純度が99.99%以上のものは資産価値が高く、投資用として人気があります。
金貨
資産保全や投資手段として、金貨は世界中で人気があります。特に、ウィーン金貨やメイプルリーフ金貨は国際的に認められた法的通貨であり、どちらも純度99.99%の金で作られています。
純金積立
純金積立とは、毎日一定の金額で金地金を積立購入する金融商品の一種です。少額から始めることができ、受け取りは現金や現物となります。
金を相続するときの手続きの流れ
金や金地金を相続する場合は、以下のような流れで手続きを行います。
1.遺言書の有無を確認する
被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。
2.相続人を確認する
相続人となるのは、被相続人の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹などです。このとき相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認する場合もあります。
3.相続財産を確認する
相続財産調査を行い、金地金や不動産、預貯金など、どのような財産があるのか、評価額はいくらなのかを確認します。
4.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、どのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。
5.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、必要に応じて納税も行います。
関連記事
・遺産未分割で相続税申告する方法とデメリット|遺産分割に期限はある?
金の相続税評価額を計算する方法
金や金地金の相続税評価は、相続税の金額に大きく影響するため、正確に評価することが重要です。金地金の相続税評価額は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)の販売業者の買取価格などに、重量をかけたもので計算します。
評価額 =被相続人が亡くなった日(相続開始日)の買取価格×重量
たとえば、1kgの金地金(インゴット)を2本保有していて買取価格が1gあたり1万円の場合、相続税評価額は2,000万円となります。
金や金地金の評価を鑑定士に依頼すると、地金の重量、品位、種類などを鑑定し、適切に算出してもらえます。また、鑑定士が作成した鑑定書は相続税申告書に添付できるため、スムーズに相続手続きが進められます。
法定相続分による相続割合【配偶者と子供で相続する場合】
配偶者と子供の法定相続分は2分の1ずつです。子供が複数人いる場合は、遺産の2分の1を子供の人数で均等に分割します。
法定相続人 | 相続割合 |
---|---|
配偶者+子1人 | 配偶者:1/2 子:1/2 |
配偶者+子2人 | 配偶者:1/2 子:1人あたり1/4 |
配偶者+子3人 | 配偶者:1/2 子:1人あたり1/6 |
被相続人が亡くなって2億円の相続が発生し、配偶者と子供2人が相続人となった場合、配偶者の法定相続分は1億円、子供の法定相続分は5,000万円ずつになります。
法定相続分は、相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるものです。ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。
相続税における基礎控除の概要と計算方法
相続税は、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生し、場合によっては相続税額が発生することもあります。相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
たとえば、法定相続人が配偶者と子供1人の場合は4,200万円、配偶者と子供2人の場合は4,800万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。
関連記事
・相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説
相続税の申告方法と申告期限
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書は、税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。
相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
関連記事
・【やさしい】相続税申告書の書き方|誰でも簡単に申告書を作成できる!
・相続税の申告はネットで可能!やり方やe-Taxが使えない人も解説
配偶者控除で配偶者分の相続税負担を軽減
相続税における配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人と法律上の結婚関係にある
- 遺産分割が完了している
- 相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出する
たとえば、被相続人が配偶者と子供2人を残して亡くなり、相続財産の合計が2億円の場合、配偶者の法定相続分は1億円です。このとき配偶者控除を適用することで、配偶者分の相続税は0円になります。
ただし、のちに配偶者が亡くなって配偶者の財産を子供が相続するときに、相続税負担が増える可能性があるため注意が必要です。そのため、相続税を節税するための最善策を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。
関連記事
・配偶者の税額軽減は1.6億円以上!デメリットや適用要件も解説
『配偶者と子供による金・金地金の相続』に関するよくある質問
相続税の申告期限はいつまでですか?
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。期限を過ぎた場合は、ペナルティが科せられる可能性があります。
金地金の相続税評価額はいくらですか?
金地金の相続税評価額は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)の買取価格に重量を乗じたものになります。
配偶者控除はいくらになりますか?
配偶者控除の要件を満たし、適用すると、被相続人の配偶者が取得した財産のうち1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が0円となります。
相続税の申告書は自分で作成できますか?
相続税の申告書は、自分で作成することもできます。ただし、相続税の申告書作成や手続きには専門的な知識や経験が必要です。そのため、専門家に依頼することも検討しましょう。
相続した金地金をそのまま保有しつづける場合、何か注意点はありますか?
相続した金地金をそのまま保管する場合は、保管場所の安全性や、盗難や紛失のリスクに注意が必要です。また、金・金地金は価格変動リスクがあるため、価格変動に注意して保管しましょう。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士