数次相続・再転相続とは?相続税の申告義務・期限への影響や代襲相続との違い

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相続手続きの途中で相続人が亡くなると、「数次相続」や「再転相続」が発生することがあります。

数次相続とは、遺産分割が終わる前に相続人が亡くなり、新たな相続が重なることです。一方、再転相続は、相続を承認するか放棄するか決める前に相続人が亡くなり、その選択権が次の相続人へ引き継がれるケースを指します。

いずれの場合も、一次相続と二次相続の手続きを並行して進める必要があり、相続税の申告期限や相続放棄の判断も複雑になりやすいため注意が必要です。

この記事では、数次相続・再転相続の意味や違い、どこまで続くのか、相続税申告の期限・手続きの流れ、相続放棄との関係までわかりやすく解説します。

※本記事の情報は2026年8月時点の民法・税制をもとに作成しています。

数次相続とは?

遺産分割前に相続人が亡くなった場合に発生

数次相続(すうじそうぞく)とは、ある人が亡くなって相続が始まった(一次相続)あと、遺産分割が完了する前に相続人のうちの1人が亡くなり、新たな相続(二次相続)が発生する状況を指します。

二次相続の被相続人が一次相続で持っていた相続人としての地位や、遺産を取得する権利は、その人の相続人へ引き継がれます。

数次相続の具体例

数次相続の具体例を、以下の家族構成に当てはめて考えてみましょう。

  • 長男(配偶者と子2人がいる)
  • 次男

こうしたケースでは、たとえば以下の場合に数次相続が発生します。

  1. 父(一次相続の被相続人)が亡くなり、母・長男・次男が相続人となった
  2. 遺産分割の話し合いが終わらないうちに、長男も亡くなってしまった
    →二次相続(数次相続)の発生

このとき、長男の配偶者と子2人が、長男の相続人(二次相続の相続人)になります。

合わせて、長男が一次相続で取得するはずだった相続権や遺産を取得する権利も、長男の相続人である配偶者と子2人へ引き継がれます。

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数次相続はどこまで続く?

数次相続は、相続が完了するまでに相続人が次々と亡くなれば、理論上は何度でも連鎖する可能性があります。

例えば、以下のようなケースです。

  • 父が亡くなり、母と長男が相続人となる
  • 遺産分割前に長男が亡くなり、長男の子が相続人となる(二次相続)
  • さらに遺産分割前に長男の子が亡くなり、その法定相続人が相続人となる(三次相続)

このように、遺産分割が終わる前に相続人が亡くなるたびに、新たな相続が発生し、数次相続は連鎖していきます。

相続権が引き継がれるのは、亡くなった相続人の法定相続人です。法定相続人は、配偶者がいる場合は常に相続人となり、「子→直系尊属(親・祖父母)→兄弟姉妹」の順に決まります。

なお、相続人や特別縁故者がいない場合は、相続財産は最終的に国庫へ帰属します。

法定相続人の判断方法について詳しくは、関連記事『法定相続人とは?範囲や順位、遺産分割の割合から確定方法までわかりやすく解説』をご覧ください。

再転相続とは?

承認・放棄の選択前に相続人が亡くなった場合に発生

再転相続(さいてんそうぞく)とは、ある相続において、相続人が「相続するか・放棄するかをまだ決めていない状態(承認・放棄の選択権)」のままで死亡し、その選択権ごと次の相続人に引き継がれる状況を指します。

そのため、再転相続人は、二次相続で相続人になるだけでなく、一次相続について承認・放棄から判断する必要があります。

再転相続の具体例

再転相続の具体的な発生場面は、たとえば次のようなケースです。

  • 祖父(祖母は他界)
  • 父(母は他界)
  • 父の子
  • 祖父が亡くなり、父が相続人になった
  • 父はまだ相続するかどうかを決めていないうちに亡くなった
  • 父の子(祖父から見た孫)が、「祖父の相続についての選択権(承認または放棄)」を引き継いだ

このとき、孫は2つの選択権を持つことになります。

  1. 父の相続(二次相続)について承認するか放棄するか
  2. 祖父の相続(一次相続)について承認するか放棄するか(父から引き継いだ権利)

再転相続の最大の特徴は、この「2段階の選択」が必要になる点です。

再転相続はどこまで続く?

再転相続も、選択権を持つ人が相続を決める前に亡くなれば、さらに連鎖します。

連鎖の範囲は数次相続と同様に、民法の定める法定相続人の範囲によって決まります。

数次相続と再転相続の違い|代襲相続の違いも整理

数次相続とは、「相続開始後、遺産分割が終わる前に相続人が亡くなったケース」全般を指します。そのうち、特に相続するか・放棄するかを決める前に相続人が亡くなったケースを再転相続と呼びます。

ポイント

以下の流れにおいて、3で遺産分割が完了する前に相続人が亡くなると数次相続が発生します。

  1. 一次相続が発生する
  2. 熟慮期間(遺産を相続するか、相続放棄するか決める期間)
  3. 遺産分割する
  4. 相続税申告をする

その中でも、2の熟慮期間において、まだ相続放棄するかどうか決める前に、一次相続の相続人が亡くなるケースを再転相続と言います。

なお、相続においては代襲相続が発生することもあります。

代襲相続は、本来相続人になるはずだった人(被代襲者)が、相続が発生する前に亡くなっていた場合などに、その人の子どもが代わりに相続人となる制度です(民法887条2項〔直系卑属の代襲〕、889条2項〔兄弟姉妹の代襲〕)。

ケース
代襲相続被相続人が亡くなる前(または同時)に、本来相続人となる人が死亡していた場合など
数次相続・再転相続被相続人が亡くなった後に相続人が死亡した

たとえば、祖父が亡くなったとき、本来相続するはずだった父がすでに亡くなっていた場合、孫が父の代わりに相続人となります。これが代襲相続です。

代襲相続人が法定相続人になる例

代襲相続について詳しく知りたい方は『代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは?どこまで代襲相続できる?相続順位や割合を解説』の記事をご覧ください。

数次相続・再転相続における相続税申告の期限と流れ

一次相続と二次相続の申告が必要

数次相続や再転相続では、引き継いだ相続人が、一次相続と二次相続の両方について相続税申告を行うことがあります。

これは、相続税の申告義務を負う相続人が、申告期限前に申告書を提出せずに亡くなった場合、その申告義務が亡くなった相続人の相続人へ引き継がれるためです。

例えば、「父の相続中に長男が亡くなった」ケースでは、次のようになります。

  • 父の相続税申告:母・長男・次男のうち、申告義務がある人が行う
  • 長男が父の相続税の申告期限前に、申告書を提出せず亡くなった場合:長男の申告義務は、長男の相続人(配偶者・子)が引き継ぐ
  • 長男自身の相続についても申告義務がある場合:長男の相続人は、父の相続税申告と長男の相続税申告の両方を行う

なお、「包括承継」とは、財産だけでなく権利や義務もまとめて引き継ぐことです。相続税の申告義務も包括承継の対象となるため、相続人が亡くなっても申告義務は消滅しません。

数次相続・再転相続の申告期限

数次相続・再転相続では、それぞれの相続について個別に申告期限が設定されます。

まず、各相続の申告期限は以下のとおりです。

相続の種類申告期限の起算点
第一の相続(たとえば父の相続)父が死亡したことを知った日の翌日から10か月
第二の相続(たとえば長男の相続)長男が死亡したことを知った日の翌日から10か月

ただし、一次相続の申告義務を引き継いだ相続人については、申告期限が次のようになります。

相続申告期限
一次相続(父の相続)一次相続の相続人(=二次相続の被相続人)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内
二次相続(長男の相続)被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内

たとえば、以下のケースで考えてみましょう。

  • 一次相続(父が死亡)
    相続人:母、長男(配偶者がいる)、次男
  • 二次相続(相続中に長男が死亡)
    相続人:長男の配偶者(一次相続の申告義務も受け継ぐ)

この場合、一次相続の相続人である母と次男は、「父が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」に一次相続の相続税申告をしなければなりません。

一方、長男から一次相続の申告義務を受け継いだ配偶者については、「長男が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」が一次相続の申告期限となります。
合わせて、二次相続の申告も、「長男が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」に行う必要があります。

なお、数次相続・再転相続では遺産分割が長期化することがあります。申告期限までに遺産分割がまとまらない場合は、未分割のまま申告し、分割後に更正の請求や修正申告を行うことが可能です。

更正の請求を行う場合は、原則として分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に手続きする必要があります。

また、母や次男など、生存している他の一次相続人の申告期限は、数次相続・再転相続が発生しただけでは延長されません。

申告期限の計算方法や遅れた場合のペナルティについては『相続税の申告期限はいつまで?10か月の計算方法と遅れた際のリスク』の記事で詳しく知ることが可能です。

数次相続・再転相続の手続きの流れ

数次相続・再転相続が発生した場合は、以下の流れで相続税申告をしましょう。

  1. 亡くなった相続人の相続人を確定する
  2. 相続放棄・限定承認をするか検討する
  3. 一次相続・二次相続の遺産分割を行う
  4. 相続税の申告・納税を行う

(1)亡くなった相続人の相続人を確定する

数次相続や再転相続においては、一次相続と二次相続の2つの相続における相続人全員を確定する必要があります。

通常の相続と同じく、被相続人の戸籍(除籍)謄本を取得して2つの相続における相続人を確定し、誰が・どの遺産分割協議に参加するのかを確認しましょう。

(2)相続放棄・限定承認をするか検討する

相続財産より借金が多い場合などは、相続放棄や限定承認を検討します。

ただし、相続放棄については注意点があるため、本記事内で後ほど詳しく解説します。

(3)一次相続・二次相続の遺産分割を行う

数次相続や再転相続の遺産分割協議では、一次相続と二次相続のどちらについても遺産分割協議が必要です。

遺産分割協議書は、一次相続と二次相続で別々に作成することになります。

ただし、一次相続と二次相続で法定相続人が同じ場合には、1通とすることが可能です。

遺産分割協議において、一次相続の法定相続人であり、二次相続の被相続人である人については「相続人兼被相続人」と記載し、二次相続における法定相続人の署名・押印を行いましょう。

(4)相続税の申告・納税を行う

遺産分割がまとまったら、申告期限までに相続税の申告・納税を行います。

申告義務を引き継いだ人は、一次相続・二次相続の両方について申告が必要になる場合があるため、申告漏れがないよう注意しましょう。

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数次相続・再転相続が発生した場合の相続税計算

一次相続の基礎控除額は変わらない

相続税の基礎控除額は以下の計算式で算出されます。

相続税の基礎控除

3,000万円+600万円×法定相続人の数

  • 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
  • 法定相続人の数に含められる養子は、原則として、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです

法定相続人の数が増えると控除額も多くなりますが、数次相続や再転相続の場合は、一次相続が生じた時点の法定相続人の数で計算することから、二次相続が生じたことで法定相続人が増えることはありません。

たとえば一次相続が発生した時点で相続人が配偶者・長男・次男の3人だったとします。
そして相続中に長男が亡くなったとしても、一次相続の基礎控除は法定相続人の数を3人として計算するのです。

相次相続控除が使える場合がある

数次相続や再転相続の場合は、二次相続において相次相続控除を利用できる可能性があります。

相次相続控除とは、10年以内に相続が相次いで発生した際、短期間に何度も相続税が課される負担を軽減するための税額控除制度です。

相次相続控除

具体的には、前回の相続(一次相続)の際に納めた相続税の一部が、今回の相続(二次相続)で生じる相続税額から控除されます。

相次相続控除の要件や控除額を知りたい方は『相次相続控除とは?要件と控除額の計算方法|10年以内に2回相続が発生した場合』の記事をご覧ください。

数次相続・再転相続で相続放棄はできる?

数次相続での相続放棄|二次相続のみ放棄できる

再転相続にあたらない数次相続人は、二次相続についてのみ相続放棄を選択できます。

再転相続ではない数次相続は、一次相続の相続人が遺産を相続する選択をしたのち、実際に遺産分割が決まる前に亡くなったケースで発生します。

よって、一次相続について数次相続人が相続放棄をすることはできません。

なお、二次相続の相続放棄は、熟慮期間(二次相続の相続人であることを知った日から3か月以内)の間に決めなければなりません。

再転相続での相続放棄|二次を放棄すると一次も失う

再転相続人は、一次相続についても二次相続についても、相続放棄の選択ができます。

再転相続の場合、二次相続の被相続人は、一次相続で相続放棄するかどうか決める前に亡くなっています。

よって、再転相続人は一次相続で相続放棄するかどうかについても決められるのです。

ただし、再転相続では、二次相続を放棄すると、一次相続についての選択権も同時に失うため、一次相続を承認することができなくなります(最高裁昭和63年6月21日判決)。

つまり、再転相続人が持ち選択肢は、以下の3パターンです。

  • 一次・二次ともに承認する
  • 一次のみ放棄して二次を承認する
  • 一次・二次ともに放棄する

「二次相続を放棄しながら一次相続のみを承認する」ことはできません(最高裁昭和63年6月21日判決)。

相続放棄の熟慮期間については、民法915条により原則として相続の開始を知った日から3か月以内とされていますが、再転相続の場合は特別な取り扱いがあります。

民法916条により、再転相続人の熟慮期間の起算点は、自己が再転相続人となった事実を知った時とされています(最高裁令和元年8月9日判決)。

【注意】相続放棄しても申告義務が残る場合がある

相続放棄をしても、以下のような場合は例外的に税務上の義務が生じることがあります。

  • 相続放棄をする前に財産の一部を消費・処分するなど「単純承認」したとみなされる行為をしてしまった場合(この時点で単純承認したとみなされ、以降は相続放棄ができなくなる/放棄しても効力が認められなくなる)
  • 生命保険金や退職手当金などみなし相続財産を受け取った場合(相続放棄しても受け取れるが、相続税の申告が必要になることがある)

相続放棄と相続税の関係は複雑なため、放棄を検討している場合は必ず専門家に確認することをおすすめします。

相続放棄を行った場合の相続税に関する影響については『相続放棄で相続税は払わなくていい?ほかの相続人への影響も解説』の記事で詳しく知ることができます。

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数次相続・再転相続が発生したら早めに専門家へ相談を

数次相続・再転相続が発生した場合、複数の相続が重なり合うため、申告義務の範囲・申告期限・放棄の可否など判断すべき事項が一気に増えます。

早期相談が重要な理由

①申告期限は待ってくれない

二次相続の相続人となる人の申告期限は同じ日となりますが、それ以外の各相続の申告期限はそれぞれ独立して進行しています。

「状況を整理してから動こう」と時間をかけすぎると、気づいたときには期限が迫っていたというケースも少なくありません。

②相続放棄の熟慮期間もある

相続放棄を検討している場合、原則として「相続の開始を知った日から3か月以内」という熟慮期間があります(民法915条)。

放棄するかどうかの判断を急ぐ必要がある一方、焦って誤った選択をしないためにも、早めに専門家の助言を受けることが重要です。

特に、再転相続では一次相続についても相続放棄すべきかどうかを判断する必要があるため、適切な判断をするには専門家によるアドバイスが大事といえるでしょう。

③誰が何を申告するかを正確に整理する必要がある

数次相続・再転相続では、「誰がどの相続の申告義務を負っているか」を正確に把握しないと、申告漏れや二重申告のリスクがあります。

相続関係が複雑なほど、専門家によるサポートの価値は高くなるでしょう。

相談先の選び方

数次相続・再転相続に関する相談は、主に以下の専門家が対応しています。

専門家得意分野
税理士相続税の申告義務・申告期限・税額計算
弁護士遺産分割協議・相続放棄の判断・紛争対応
司法書士相続登記・戸籍収集

相続税申告に関することは税理士に、相続放棄の手続きや相続人間のトラブルについては弁護士への相談が適しています。

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まとめ|わからない点は専門家に相談を

数次相続・再転相続は、相続が連続して発生する複雑な状況ですが、ポイントを整理すると理解しやすくなります。

数次相続・再転相続の基本

  • 数次相続:遺産分割前に相続人が亡くなり、相続が重なる状況
  • 再転相続:承認・放棄の選択前に相続人が亡くなり、選択権ごと引き継がれる状況
  • 代襲相続との違い:被相続人より「後」に相続人が亡くなる点が数次・再転相続の特徴(代襲相続は死亡・欠格・廃除が原因)

相続税申告への影響

  • 申告義務は相続人に引き継がれる(包括承継)
  • 各相続の申告期限は独立して計算される(申告義務を承継した相続人に限り、その一次相続分の申告期限が延長される特例あり)
  • 申告期限までに遺産分割が完了しない場合は、未分割のまま法定相続分で申告できる(相続税法55条)
  • 相続放棄すれば原則として申告義務を免れるが、例外的に義務が残る場合もある

数次相続・再転相続が発生した場合は、申告期限を逃さないためにも早めに税理士へ相談することを強くおすすめします。

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高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

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