配偶者の自動車を相続した場合に知っておきたいこと
配偶者が亡くなって自動車を相続する場合、遺産分割協議や名義変更など、いくつかの手続きが必要になります。また、遺産の総額によっては相続税の課税対象となる場合もあるため、相続税を計算する際には注意が必要です。
本記事では、配偶者から自動車の相続をする場合の基本的な知識について解説します。
目次
『配偶者による自動車の相続』に関する基本事項
自動車を相続したときの流れと必要な手続き
自動車の相続は、以下の流れで進めます。
1.名義確認
自動車の名義人は、必ずしも被相続人であるとは限りません。例えばローンで購入した自動車の場合、ローンを組んでいる信販会社やディーラーの名義になっていることもあります。
残債がある場合は、相続人が債務の残金を一括で支払うのが一般的です。一括清算が難しい場合は、新しい所有者(相続人)の名義でローン審査が行われ、組みなおしをします。
2.相続人の確定
遺言書や遺産分割協議などで相続人を決めます。
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3.車庫証明手続き
名義変更手続きにあたっては、車庫証明が必要です。そのため、警察署で車庫証明の申請を行います。
4.名義変更手続き
運輸支局で自動車の名義変更手続きをします。このとき、遺言書または遺産分割協議書も必要になります。
5.保険の引継ぎ
自賠責保険や任意保険の引継ぎを行います。このとき、必要に応じて保険の見直しなども行います。
6.相続税の申告
自動車の評価額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要になります。
相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除とは、相続税の課税対象となる財産額から差し引くことができる金額です。相続税の基礎控除額は、以下のように計算します。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
基礎控除額は、法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円です。なお、遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、申告の義務があり、相続税額が発生する場合があります。
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相続税の申告は10か月以内
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。
申告書の提出方法は持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。
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相続税申告書の概要と記載内容
相続税申告書は、相続税の申告を行う際に必要な書類です。相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。
申告書には、以下の情報などを記載します。
- 被相続人および相続人の氏名、住所、生年月日
- 相続財産の種類、評価額
- 課税遺産の総額、相続税の総額
相続税申告書は、正確に記載することが大切です。誤りがある場合は、税務署から指摘を受ける可能性があります。相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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自動車の相続税評価額の計算方法
相続税における自動車の評価方法は、大きく3つあります。
市場価格による算定
一般的な市場価格から算定する方法です。
精通者意見価格による算定
中古車市場で同じ車種、年式、走行距離などが似ている自動車の買取価格から算定する方法です。
減価償却による算定
市場価格や精通者意見価格による評価が難しい場合に用います。新車当時の価格から経年劣化などの減価償却相当分を差し引き、評価額を算定する方法です。
配偶者控除で相続税の課税負担を大幅に軽減
相続税における配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税が課税されない制度です。配偶者控除の適用により、1億6,000万円または法定相続分以下は、配偶者の相続税額が0円になります。
配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人と法律上の結婚関係にある
- 遺産分割が完了している
- 相続税の申告期限までに申告書を提出すること
遺産が高額になる場合は、配偶者控除の適用も検討しましょう。
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『配偶者による自動車の相続』に関するよくある質問
自動車の相続税はいくらかかるの?
自動車の相続税は、評価額をもとに算定されます。
自動車の相続税評価額はいくらになる?
相続税における自動車の評価方法は大きく3つあります。
- 市場価格から算定する
- 中古車の買い取り価格から算定する
- 新車価格から減価償却分を差し引いて算定する
相続税はいつ払えばいいの?
相続税の納付は、申告期限と同じく被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。なお、相続税は以下の方法で納付できます。
- 税務署窓口
- 金融機関
- コンビニエンスストア
- クレジットカード
相続税を納付できない場合はどうすればいいの?
相続税を一括で納付するのが困難な場合は、延納申請を行うことができます。なお、相続税の延納が認められるのは、以下の要件を満たす場合に限ります。
- 相続税の支払額が10万円を超えている
- 金銭による相続税の一括納付が困難である
- 利子税を含む延納税額相当の担保が用意できる(延納税額が100万円超で延納期間が3年超の場合)
- 期限内に延納申請書と担保提供関係書類を提出できる
ただし、延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は、担保は不要です。
相続税の申告は自分でもできる?
自動車の相続税申告は、自分で行うこともできます。ただし、相続税の申告に誤りがあった場合、税務調査を受ける可能性もあります。リスクを避けるためにも、税理士に相談するのがおすすめです。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士