土地の名義を変更したら相続税がかかる?名義変更と課税条件を解説

土地や不動産を相続した場合、名義変更(不動産登記)の手続きをする必要があります。
しかし、名義変更によって相続税が発生するわけではありません。
相続税は土地や不動産などの財産を相続し、遺産総額が基礎控除を超える場合に発生するものです。
不動産登記では登録免許税が発生します。
この記事では、相続後に必要な土地・不動産の名義変更手続きと登録免許税、どのような場合に相続税の申告・納付が必要なのかを解説します。
目次
土地・不動産の名義変更自体には相続税はかからない
土地や不動産の所有者が亡くなると、相続人がそれらを受け継ぎます。これが相続です。遺産総額が基礎控除を超えるなどの条件を満たすと、相続税が発生します。
一方、相続登記は、相続によって土地や不動産の所有者が変わったことを登記簿に記録する手続きのことです。相続と名義変更は別物であり、相続登記を理由として相続税が発生することはありません。ただし、登録免許税という別の税金が発生します。
ここでは、土地・不動産の名義変更で発生する登録免許税と、土地や不動産の相続で相続税が発生するケースを見ていきましょう。
名義変更で発生するのは登録免許税
土地や建物を相続して名義変更(相続登記)を行う場合は、登録免許税を納める必要があります。
登録免許税は、不動産ごとの固定資産税評価額をもとに計算されます。
登録免許税
固定資産税評価額 × 0.4%
※固定資産税評価証明書や課税明細書に記載された固定資産税評価額を参照します。「固定資産税課税標準額」は関係ありませんのでご注意ください。
例えば、土地の固定資産税評価額が2,000万円、建物が500万円であれば、それぞれの登録免許税は合計10万円です。
- 土地:2,000万円×0.4%=8万円
- 建物:500万円×0.4%=2万円
土地と建物を相続する場合は、それぞれ別の不動産として登記するため、登録免許税も別々に計算します。
なお、登録免許税については、令和9年(2027年)3月31日まで免税措置を適用できる場合があります。
詳しくは関連記事『相続登記にかかる登録免許税の計算方法と免税措置を解説』をご覧ください。
相続税は土地や不動産を相続することで発生する
相続税は、基本的に土地や不動産を含む遺産総額が基礎控除額を超える場合に発生します。
相続で取得した不動産の評価額と、預貯金等の相続財産を合計し、債務等を控除した総額が基礎控除額を超えるかどうかが基準です。
相続税の基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 普通養子については、実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで法定相続人の数に含められます
名義を変更しても遺産総額が基礎控除額を下回っていれば相続税はかかりませんし、名義を変更しなくても、遺産総額が基礎控除額を上回っていれば相続税はかかります。
例えば、相続人が配偶者、長男、長女の3人の場合、基礎控除額は、3,000万円+600万円×3=4,800万円になります。
したがって、この場合、遺産総額が4,800万円を超えれば基本的に相続税がかかります。
相続税の申告・納税が必要かどうか気になる方は、関連記事『相続税の基礎控除とは?控除額の計算式と超えた場合の手続き』を参考に、ご自身の基礎控除額を計算してみてください。
土地の相続手続きと相続税申告・納付までの流れ
土地の相続手続きの主な流れは、以下のとおりです。
【土地・不動産の相続手続き】
- 被相続人が所有していた土地を調査する
- 遺言書がないか確認する
- 遺言書がなければ遺産分割協議を行う
- 相続税の計算・申告・納付を行う(10か月以内)
- 名義変更の手続きをする(3年以内)
以下、それぞれの手続きを解説します。
(1)被相続人が所有していた土地を調査する
被相続人が亡くなると、同人が所有していたすべての不動産が相続の対象になります。
実家の土地建物など分かりやすいものだけでなく、中には相続人がその存在を把握していない不動産もあるかもしれません。
そこで、相続対象になる不動産をすべて調査する必要があります。
具体的には、固定資産税納税通知書、名寄帳等を調べたり、所有不動産記録証明制度を利用したりします。
- 固定資産税納税通知書:毎年4月頃、市区町村から送付されます。
- 名寄帳:被相続人が所有する不動産の所在地の市区町村役場に申請すれば取得できます。
- 所有不動産記録証明制度:窓口(全国どこの法務局・地方法務局でも可)、郵送、オンラインのいずれかで申請します。
なお、特定の市区町村に絞って所有不動産の有無を確認したい場合は名寄帳、全国一括で確認したい場合は所有不動産記録証明制度がおすすめです。
ただし、両方を併用したほうが良いケースもあります。詳しくは関連記事『所有不動産記録証明制度とは?メリットや手数料、必要書類を解説』をご覧ください。
(2)遺言書の有無を確認する
遺言書があれば、遺言内容に従って分割することになります。
遺言書は、自宅の他、公証役場や法務局で保管されている可能性もあります。
公正証書遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
検認が終わった後、土地の名義変更手続きを行うには、遺言書に検認済証明書が付いていなければなりません。
そのため、検認済証明書の申請も忘れずに行うようにしてください。
検認について、詳しくは裁判所ホームページ「遺言書の検認」をご参照ください。
(3)遺言書がなければ遺産分割協議を行う
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、相続人全員が署名・押印しなければなりません。
財産の分け方が決まっていれば、その内容に基づいて相続税を計算・申告します。なお、申告期限までに遺産分割が終わらない場合でも、未分割のまま申告することができます。
後日遺産分割が成立し、特例を適用して払いすぎた税金の還付を受ける(更正の請求を行う)場合、その手続は「分割が行われた日の翌日から4か月以内」に行う必要があります。
遺産分割協議書について詳しくは、関連記事『遺産分割協議書は税理士に依頼できる?条件・費用・専門家ごとの役割』をご覧ください。
(4)相続税の計算・申告・納付をする(10か月以内)
財産の分け方が決まったら、相続税の最終的な計算をし、期限内に申告・納付をします。
相続税の計算をする
相続税計算の流れは以下の通りです。
- 相続人・相続する財産を確認
- 課税遺産総額を計算
- 法定相続分に応じて財産を分配
- 各人の仮の相続税額を計算
- 相続税額の合計を計算
- 実際の相続割合に応じて各人に相続税額を分配
土地や建物は、購入時の価格や相続時の市場価格を相続税の計算に使うのではなく、それぞれ評価額の算定方法が決まっています。
詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
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相続税の申告・納付
相続財産が基礎控除額を超える場合、原則として相続税がかかります。
相続税の申告期限は、相続開始を知った日(通常、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。
詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。
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(5)土地の名義変更手続きを行う(3年以内)
名義変更の期限は、相続により所有権を取得した場合は、その所有権の取得を知った日から3年以内です。
遺産部活によって取得した場合は、遺産分割協議が成立した日から3年以内が期限となります。
期限の点だけで見ると、名義変更は相続税の申告・納付の後でも問題ありませんが、相続税の申告・納付の手続と並行して名義変更するケースもあります。
なお、相続した不動産を売却し、売却代金を相続人で分割する場合は、まず名義変更をしてからでないと売却ができません。
土地・不動産の相続登記は義務化されている
相続登記は義務!期限は?
令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。
相続や遺贈によって土地や家などの不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要があります。
また、遺産分割が成立し、不動産を取得した相続人についても、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
正当な理由がないにもかかわらず、相続登記をしないままでいると、10万円以下の過料が科されるおそれがあります。
なお、義務化以前に取得した土地・不動産については、2027年3月31日までに相続登記しなければなりません。
相続登記手続きの流れ
相続登記を行う前提として、誰が不動産を相続するか決める必要があります。
遺言書があれば、その内容に従います。
遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。
ここでは、誰がどの不動産を相続するか決まった後の流れをご説明します。
- 登記申請書を作成する
- 登記申請書を提出する
- 登記識別情報通知書等を発行してもらう
以下、それぞれの手続きを解説します。
(1)登記申請書を作成する
登記申請書は、法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式」からダウンロードできます。
登記申請書には種類があり、土地や不動産の取得方法によって使うものが異なります。
- 法定相続分に従って取得した場合:所有権移転登記申請書(相続・法定相続)
- 遺産分割協議によって取得した場合:所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)
- 自筆証書遺言によって取得した場合:所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言)
- 公正証書遺言によって取得した場合:所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)
(2)登記申請書を提出する
登記申請書と必要書類は、申請する不動産の所在地を管轄する法務局の窓口に持参するか、または郵送する方法により提出します。
管轄については、法務局ホームページ「管轄のご案内」から検索できます。
また、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を通じたオンライン申請も可能です。
オンライン申請の手順については、法務局ホームページ「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)」をご参照ください。
(3)登記完了証及び登記識別情報通知書を発行してもらう
登記が完了すると、法務局から、登記完了証及び登記識別情報通知書を発行してもらえます。
これらは再発行してもらうことができませんので、受領後は大切に保管するようにしましょう。
相続登記の必要書類
ここでは、相続登記の申請をする際の必要書類をご説明します。
必要書類は、遺言書がある場合と、遺産分割協議を行った場合で異なります。
【共通で必要な書類】
| 必要書類 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 自分で作成 | 法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式」からダウンロード可能。 |
| 相続関係説明図 | 自分で作成 | |
| 収入印紙 | 法務局、郵便局 | |
| 不動産を相続する者の住民票 | 市区町村役場 | |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村役場 | |
| 委任状 | 自分で作成 | 司法書士等に依頼する場合に作成。 |
【遺言書がある場合】
| 必要書類 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍・除籍謄本 | 市区町村役場 | 2024年3月1日から始まった戸籍の広域交付制度により、原則として最寄りの市区町村役場の窓口で全国の戸籍・除籍謄本等をまとめて請求できます(※一部取得できない戸籍があります)。 |
| 被相続人の住民票除票 | 市区町村役場 | |
| 不動産を相続する者の戸籍謄本 | 市区町村役場 | |
| 遺言書 | 被相続人の自宅、公証役場、法務局 | 公正証書遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所の検認済証明書付きのものであることが必要。 |
【遺産分割協議をした場合】
| 必要書類 | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本 | 市区町村役場 | |
| 被相続人の住民票除票 | 市区町村役場 | |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村役場 | |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員で作成 | |
| 相続人全員の印鑑登録証明書 | 市区町村役場 | 遺産分割協議書に押印した実印の印鑑証明書を各1通添付する。 |
不動産の名義変更や相続税申告は期限内に
土地や不動産の名義変更(相続登記)をしたこと自体を理由に相続税が課税されることはありません。相続登記では登録免許税がかかりますが、相続税は土地や建物を含む遺産総額が基礎控除額を超える場合に発生します。
また、不動産の名義変更は令和6年(2024年)4月から義務化されており、相続税の申告・納付にも期限があります。
相続財産が多い場合や、相続税がかかるか判断に迷う場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談しながら、期限内に必要な手続きを済ませましょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
