贈与税の税率が速算表ですぐわかる!贈与税の計算方法や特例も解説
贈与税の税率は、10%から55%の超過累進課税という課税方式です。
超過累進課税とは、贈与額が増えるにつれて、税率も段階的に上がっていく課税方式です。
たとえば、300万円の贈与に対して贈与税がかかる場合、「200万円分には10%の税率をかけ、残りの100万円分には15%の税率をかける」といったイメージです。
ですが、いちいち贈与額を区切り、それぞれに税率をかけて計算するのは大変ですよね。
そこでこの記事では、贈与の課税価格に応じた贈与税の税率と、支払うべき贈与税額が簡単にわかる速算表を紹介します。
また、贈与税計算の具体例や、贈与税が非課税になる特例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
贈与税の税率
贈与税の税率は、課税方式によって異なります。
暦年課税の贈与税の税率は、10%から55%の超過累進課税率です。
また、贈与者と受贈者の関係により、特例贈与財産用の税率(特例税率)と一般贈与財産用の税率(一般税率)に分けられます。
相続時精算課税の贈与税の税率は、非課税枠の累計2,500万円を超えた分に対して一律で20%かかります。
贈与税の特例税率の速算表
特例税率とは、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者が、直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けた場合に適用される税率です。
父母から18歳以上の子への贈与・祖父母から18歳以上の孫への贈与が該当します。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
贈与税の一般税率の速算表
一般税率とは、特例税率が適用できるケース以外の場合に適用される税率です。
夫婦間の贈与・兄弟間の贈与・父母から18歳未満の子への贈与・祖父母から18歳未満の孫への贈与などが該当します。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税の税率の速算表を使った、贈与税の計算方法は『暦年課税の贈与税の計算方法』をお読みください。
贈与税の基礎知識
贈与税が課税される場合とは?
贈与税は、贈与により財産を取得したとき、受贈者に課税される税金です。
ここでいう「贈与」は、贈与者が自己の財産を無償で相手に与える意思表示をし、その相手方が贈与を受けることを承諾することで成立する契約です。
相続税がかかる場合に注意!
相手が贈与の事実を知らないまま一方的に財産を渡しても、贈与は成立しません。
よくあるケースが名義預金です。
名義預金の典型例は、被相続人が贈与税の基礎控除額以下のお金を配偶者や子名義の預金口座に移動させるケースです。
この場合、相続が発生すると、預金は実質的に被相続人の資産とみなされ、相続税がかかる可能性があります。
相続税を回避するためには、贈与ごとに贈与契約書を作成し、印鑑や通帳は名義人本人が管理するのがポイントです。
名義預金について詳しく知りたい方は、関連記事『名義預金は贈与税・相続税がかかる?名義預金の認定の回避策も解説』をお読みください。
贈与税の課税方法
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
暦年課税は、1年間(1月1日〜12月31日まで)に贈与された財産の合計額が、贈与税の課税価格になります。
相続時精算課税は、累計2,500万円の非課税枠(特別控除)があり、この枠内であれば何回贈与をしても贈与税が課されない制度です。
ただし、相続時に贈与財産がすべて相続財産に加算されます。
各制度の違いをまとめると、以下のとおりです。
比較事項 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
---|---|---|
贈与者 | 制限なし | 60歳以上の父母、祖父母 |
受贈者 | 制限なし | 18歳以上の子、孫 |
税率 | 10%~55%の超過累進課税 | 2,500万円を超える部分に一律で20% |
控除額 | 年間110万円 | 累計2,500万円+年間110万円 |
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相続時精算課税制度と暦年贈与は併用できない|違いや選び方も解説
贈与税の申告・納税
受贈者は、贈与者ごとに「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらを適用するのか選択します。併用はできません。
暦年課税の場合、贈与額が基礎控除額(年間110万円)以下であれば申告不要です。
相続時精算課税の場合、令和6年1月1日から基礎控除額が設けられたことにより、暦年贈与と同じく年間110万円までは申告不要となりました。
また、相続時精算課税の適用を受けるためには「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から 3月15日までにしなければなりません。
無申告や過少申告等の場合、ペナルティが科せられますのでご注意ください。ペナルティの詳しい内容は、関連記事をご覧ください。
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暦年課税の贈与税の計算方法
暦年課税の贈与税の計算式
暦年課税の場合、贈与税は以下の計算式で算出します。
①課税価格-基礎控除額110万円=基礎控除後の課税価格
②基礎控除後の課税価格×税率-控除額=贈与税額
贈与税の計算例①父が25歳の子に600万円を贈与した場合
【具体例】
父が25歳の子に600万円を贈与した場合は、特例税率を適用されます。
①600万円-110万円(基礎控除額)=490万円(基礎控除後の課税価格)
②490万円×20%(税率)-30万円(控除額)=68万円(贈与税)
※税率と控除額は、特例税率の贈与税の速算表を参照します。
贈与税の計算例②祖父が12歳の孫に600万円を贈与した場合
【具体例】
祖父が12歳の孫に600万円を贈与した場合は、一般税率が適用されます。
①600万円-110万円(基礎控除額)=490万円(基礎控除後の課税価格)
②490万円×30%(税率)-65万円(控除額)=82万円(贈与税)
※税率と控除額は、一般税率の贈与税の速算表を参照します。
贈与税の計算例③夫と父からそれぞれ贈与された場合
【具体例】
30歳の妻が、夫から200万円、自分の父から300万円の贈与を受けた場合です。
この場合、夫からの贈与200万円は一般贈与財産、父からの贈与300万円は特例贈与財産に当たります。
このようなケースでは、以下の順序で贈与税額を計算します。
①すべての贈与財産を「一般贈与財産」として計算する。その税額のうち、実際に取得した一般贈与財産の割合に応じた贈与税額を計算する。
②すべての贈与財産を「特例贈与財産」として計算する。その税額のうち、実際に取得した特例贈与財産の割合に応じた贈与税額を計算する。
③上記①と②の税額を合計して、最終的な贈与税額を算出する。
それでは、上記【具体例】の贈与税額がいくらになるか計算してみましょう。
①(200万円+300万円)-110万円=390万円
390万円×20%-25万円=53万円(【贈与税の一般税率 速算表】参照)
53万円×200万円/(200万円+300万円)=21.2万円
②(200万円+300万円)-110万円=390万円
390万円×15%-10万円=48.5万円(【贈与税の特例税率 速算表】参照)
48.5万円×300万円/(200万円+300万円)=29.1万円
③21.2万円+29.1万円=50.3万円
よって、贈与税額は50.3万円です。
相続時精算課税の贈与税の計算方法
相続時精算課税の贈与税の計算式
受贈者ごとに以下の計算式で金額を算出し、その合計額が贈与税額になります。
すでに特別控除を適用した場合、その残額を計算式にあてはめます。
{(1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額-110万円)-特別控除額2,500万円}×20%
相続時精算課税の計算例
【具体例】
A(23歳)は2024年1月1日から同年12月31日までの間に、以下の贈与を受けました。
父と母からの贈与には相続時精算課税制度を、祖母からの贈与には暦年課税制度を適用することにしました。
贈与者 | 贈与財産額 | 選択した制度 |
---|---|---|
父 | 3,000万円 | 相続時精算課税制度 |
母 | 1,000万円 | 相続時精算課税制度 |
祖母 | 500万円 | 暦年課税制度 |
●父からの贈与について
{(3,000万円-110万円[基礎控除額])-2,500万円[特別控除額] }×20%=78万円
●母からの贈与について
{(1,000万円-110万円[基礎控除額])-890万円[特別控除額] }=0円
※相続時精算課税制度の特別控除額は、贈与者ごとに適用できます。
したがって、父からの贈与で特別控除を使っても、母からの贈与については別途2,500万円の特別控除枠を適用できます。
●祖母からの贈与について
(600万円-110万円[基礎控除額] )×20%-30万円=68万円
※上記【具体例】は、直系尊属(祖母)から18歳以上の者への贈与なので、特例税率が適用されます。
●納税する贈与税額
78万円+68万円=146万円
贈与税が非課税になる特例とは?
住宅取得等資金の贈与
父母や祖父母などの直系尊属が、18歳以上の子や孫に対し、マイホームの新築、取得または増改築等を行うための資金を贈与する場合、一定額まで非課税になります。
【非課税限度額】
種類 | 非課税限度額 |
---|---|
省エネ住宅耐震住宅バリアフリー住宅 | 1,000万円 |
上記以外の住宅 | 500万円 |
【適用期限】
令和8年(2026年)12月31日
【他の制度との併用について】
●住宅等取得資金の贈与を適用する場合でも、贈与税の基礎控除(年110万円)との併用が可能です。
この場合、最大で「1,000万円+100万円=1100万円」まで贈与税がかかりません。
●住宅取得等資金の贈与は、相続時精算課税制度との併用が可能です。
この場合、最大で「1,000万円+2,500万円=3,500万円」まで贈与税がかかりません。
ただし、相続時精算課税での贈与分は、相続財産に加算される点にご注意ください。
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教育資金の一括贈与
父母や祖父母などの直系尊属が、30歳未満の子や孫に対し、教育資金を一括贈与する場合、一定額まで非課税になります。
【非課税限度額】
1,500万円
【適用期限】
令和8年(2026年)3月31日
【契約終了時の残額の扱い】
受贈者が30歳に達するなどの理由により契約が終了した場合、その時点の残額に対して贈与税がかかります。
【贈与者が死亡した場合の扱い】
贈与者が死亡した場合、残額に相続税がかかります。孫が受贈者の場合、2割加算の対象です。
もっとも、以下のいずれかに該当する場合は、相続税はかかりません。
●受贈者が23歳未満の場合
●受贈者が在学中である場合
●受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
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結婚・子育て資金の一括贈与
父母や祖父母などの直系尊属が、18歳以上50歳未満の子や孫に対し、結婚や子育てで使う資金を贈与する場合、一定額が非課税になります。
【非課税限度額】
1,000万円
【適用期限】
令和7年(2025年)3月31日
【契約終了時の残額の扱い】
受贈者が50歳に達するなどの理由により契約が終了した場合、残額に対し贈与税がかかります。
【贈与者が死亡した場合の扱い】
贈与者が死亡すると、残額に相続税がかかります。孫が受贈者の場合、2割加算の対象です。
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贈与税・相続税のお悩みは税理士へ
生前贈与を活用すれば、贈与税と相続税の両方を減税または非課税にできる可能性があります。
最適な生前贈与を実現するには、複数の案をシミュレーションし、贈与税額と相続税額がいくらになるか具体的に検討するのがおすすめです。
ご自分に合った生前贈与の方法をお知りになりたい方は、ぜひ相続専門の税理士にご相談ください。
税理士は、最適な生前贈与のご提案に加え、将来税務調査を回避するポイントもしっかりとご説明いたします。
生前贈与をお考えの方は、ぜひお気軽に税理士までお問合せください。
監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士