贈与税の申告方法がわかる|手続きの流れや申告書の書き方も解説
「贈与税の申告方法がわからない」
「贈与税を申告するには何が必要?」
「贈与税はいつ、どこに申告すればいいんだろう」
親から財産を贈与された方などは、このような贈与税の申告に関するお悩みを抱えていると思います。
贈与税の申告はそこまで難易度が高くなく、この記事を読んでいただければご自身で申告することも可能です。
この記事では、贈与税の申告が必要になる場合の申告方法について、申告の手続きの流れと、贈与税額の算出、申告書の作成と提出、贈与税の納付などをわかりやすく解説します。
贈与を受けた方だけでなく、贈与をする方にとっても、役に立つ情報をまとめていますので、ぜひご活用ください。
目次
贈与税とは?
贈与税は、個人が個人から財産の贈与を受けた場合に、財産の贈与を受けた受贈者に課せられる国税です。なお、個人が法人から財産の贈与を受けた場合は、所得税の課税対象となります。
通常は1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産が一定の金額を超えた場合などに、受贈者が贈与税を申告して納税を行わなければなりません(これが暦年課税です)
なお、贈与も契約ですから、贈与者の一方的な意思表示だけでなく、受贈者が受諾の意思表示をすることによってはじめて成立することになります。
贈与税の申告方法
それでは贈与税の申告方法を、手続きの流れを追って説明していきます。贈与税申告の手続きは、次の手順で進めていくことになります。
STEP1 納めるべき贈与税額を算出
STEP2 贈与税の申告書を作成
STEP3 申告に必要な添付書類を準備
STEP4 贈与税の申告書と添付書類を提出
STEPごとに解説していきます。なお、贈与税の申告が必要かどうかの判断方法は、この記事の『贈与税の申告が必要なケースとは?』で解説しています。
STEP1 納めるべき贈与税額を算出
まずは1年間で贈与を受けた財産の価額から、納めるべき贈与税の金額を算出します。
暦年課税と相続時精算課税
贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」という2種類の課税方式があり、これによって贈与税額の算出方法が変わります。
相続時精算課税を選択する場合は、申告と同時に、税務署に精算課税を選択する旨の届出書を提出する必要があります。提出しなければ暦年課税となります。
暦年課税と相続時精算課税について詳しくは、関連記事『相続時精算課税制度と暦年贈与の違い|併用はできない?どちらが得する?』をお読みください。
暦年課税と相続時精算課税について、それぞれ次の順序で計算していきます。
暦年課税の贈与税額の算出
①その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産(非課税財産は除く)の価額を合計
贈与税の計算において、贈与税の課税対象となる金銭以外の不動産、株式などの贈与財産の価額は贈与時の時価とされ、財産ごとに評価方法(相続財産の評価方法と共通)が定められています。
②基礎控除後の課税価格を計算
課税価格=その年に贈与を受けた財産の合計価額-基礎控除額(110万円)
③贈与税額を算出
贈与税額=課税価格×税率(10%~55%の超過累進税率)-控除額
なお、贈与税の税率と控除額は、特例贈与財産(18歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産)と一般贈与財産とで異なります。以下の【贈与税の税率と控除額】を参照してください。
相続時精算課税の贈与税額の算出
①相続時精算課税を選択した贈与者ごとに、1年間に贈与を受けた財産(非課税財産は除く)の価額を合計
②贈与者ごとの課税価格から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額は2,500万円)を控除
相続時精算課税には累計2,500万円の特別控除枠があります。また、それとは別に1年で110万円の基礎控除が誕生しました。(令和6年1月1日より)
そのため、毎年110万円を超えた分が、2,500万円の特別控除枠に蓄積されていき、残額が限度額となります。
③特別控除額を控除した金額に、一律20%の税率を乗じて贈与税額を算出
相続税精算課税を選択した場合には、上記の【贈与税の税率と控除額】の税率ではなく、一律で20%の税率を乗じると決められています。
STEP2 贈与税の申告書を作成
贈与税の申告書の入手方法
贈与税の申告書は、税務署または国税庁ホームページからPDFファイルをダウンロードして入手できます。また、国税庁ホームページの「贈与税の申告書等の作成」を利用すると税額が自動計算されて申告書を作成することができ、印刷して税務署に提出できるほか、e-Tax(電子申告)により提出することもできます。
贈与税の申告書をダウンロードする方はこちら
『令和5年分贈与税の申告書等の様式一覧』
ネット上で贈与税の申告書を作成する方はこちら
『国税庁|確定申告書等作成コーナー』
贈与税の申告書について
贈与税の申告に使用する主な申告書の様式としては、贈与税の申告には必ず必要な「第一表」、住宅取得等資金の非課税特例の適用を受けるのに必要な「第一表の二」、相続時精算課税の適用を受けるのに必要な「第二表」などがあります。
そのため、贈与税を申告するには、申告の内容に応じて第一表に加え、第一表の二や第二表などの申告書を作成することになります。
ここでは、第一表、第一表の二、第二表の書き方を中心に解説します。
贈与税の申告書【第一表の書き方】
第一表は、暦年課税分の贈与財産にかかわる明細のほかに、暦年課税分の税額、相続時精算課税分の税額、納付税額を記入する様式で、贈与税を申告する人全員が作成する必要があります。
第一表には、受贈者の情報(氏名や個人番号等)、贈与者の情報(氏名や受贈者との続柄等)、暦年課税を適用する場合の贈与財産の内容と価額などを記入します。また、贈与税の配偶者控除の特例を適用する場合は、その内容を記入します。
以下に、主な記入内容と記入場所、記入例をまとめましたのでご参考ください。
【贈与税の申告書 第一表 記入内容】
【贈与税の申告書 第一表 記入例】
「18歳以上の会社員が、祖父から1,000万円の贈与を受けた場合」の記入例
贈与税の申告書【第一表の二の書き方】
第一表の二は、住宅取得等資金の非課税分の贈与財産にかかわる明細を記入する様式で、住宅取得等資金の非課税の特例を適用する場合に作成が必要となります。
第一表の二には、受贈者の氏名、贈与者の情報(氏名、受贈者との続柄等)、贈与財産の所在場所、住宅取得等資金の金額などを記入します。
【贈与税の申告書 第一表の二 記入内容】
贈与税の申告書【第二表の書き方】
第二表は、相続時精算課税分の贈与財産にかかわる明細を記入する様式で、相続時精算課税を適用する場合に贈与者ごとに作成が必要となるので注意しましょう。
なお、精算課税の適用初年度は「相続時精算課税選択届書」の提出が併せて必要となります。
第二表には、受贈者の氏名、贈与者の情報(氏名、受贈者との続柄等)、贈与財産の内容と価額、過去の相続時精算課税分の贈与税の申告状況などを記入します。
以下に、主な記入内容と記入場所、記入例をまとめましたのでご参考ください。
【贈与税の申告書 第二表 記入内容】
【贈与税の申告書 第二表 記入例】
「祖父から現金1,500万円の贈与を受けた場合」の記入例です。
まだ2,500万円の特別控除額を一度も使っていない想定です。
STEP3 申告に必要な添付書類を準備
贈与税の申告書の添付書類を解説します。
添付書類には、共通して必要な書類と、申告の内容に応じて必要となる書類を準備します。ここでは、主な添付書類について紹介しますので、詳細は『国税庁ホームページ|贈与税の申告のしかた』をご参照ください。
※暦年課税で、特例の適用などもない場合は、共通して必要な添付書類のみの提出で問題ありません。
共通して必要な添付書類
①本人確認書類
マイナンバーカードを持っている場合は、申告の際に提示をすれば、それが本人確認書類となります。郵送で申告書を提出する場合はマイナンバーカードの両面をコピーしたものを添付してください。
マイナンバーカードを持っていない場合は、以下の書類を本人確認書類として添付してください。
・マイナンバーが確認できる書類(住民票、通知カードなど)
・身元を確認できる書類・証明書(免許証、パスポート、保険証など)
上記2つを提示してください。
②財産の評価明細書
土地や株式など、財産評価が必要な財産の贈与を受けた場合には、評価明細書を添付する必要があります。贈与を受けた財産によって変わるので、税務署に確認してください。財産の評価方法などがわからない方は、税理士に相談するのも有効です。
相続時精算課税を選択した場合の添付書類
①相続時精算課税選択届出書
相続税精算課税を選択する意思表示のために提出する資料です。『国税庁のホームページ』からダウンロードできます。
②受贈者と贈与者の戸籍謄本または抄本
贈与者と受贈者の続柄を確認するために提出する資料です。
③贈与者の戸籍の附票の写し
贈与者が60歳になった以後の住所を確認するために提出する資料です。
④受贈者の戸籍の附票の写し
受贈者が18歳以上であることを確認するための資料です。
配偶者控除を適用する場合の添付書類
①受贈者の戸籍謄本または沙本
贈与を受けた日から、10日以降に作成されたものでなければなりません。
②受贈者の戸籍の附票の写し
個性謄本と同じく、贈与を受けた日から、10日以降に作成されたものでなければなりません。
③居住用不動産取得証明書類(登記事項証明書等)
不動産番号などを確認するために提出する書類です。
以下の書類のうち、どれか一つを提出しましょう。
- 登記事項証明書の原本
- 不動産番号などが記入されている書類
- 贈与税の申告書に不動産番号などを記入
住宅取得等資金の非課税の特例措置を適用する場合の添付書類
①受贈者の戸籍謄本
受贈者の氏名や生年月日、 贈与者との続柄を確認するために提出する書類です。
②住宅の契約の相手がわかる書類
売買契約書の写しや、工事請負契約書、登記事項証明書などが該当します。
③所得証明書類
源泉徴収票などが該当します。所得税の確定申告をしている場合は不要です。
④住宅性能などを証明できる書類
建設住宅性能評価書の写しや、耐震基準適合証明書が該当します。
STEP4 贈与税の申告書と添付書類を提出
STEP2、STEP3で準備した申告書や添付書類を税務署に提出することで、贈与税の申告となります。
贈与税の申告書は、原則として、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、受贈者の住所を管轄する税務署に提出しなければなりません。
提出方法は、①税務署の窓口で提出、②郵送で提出、③e-Tax(電子申告)により提出、の3種類があります。
①税務署の窓口で提出
税務署の窓口で提出する場合は、財産の贈与を受けた側である受贈者の住所を管轄する税務署に書類を持参します。管轄の税務署に関しては、『国税庁のホームページ』から調べることができます。
なお、税務署の開庁時間は、平日の午前8時30分から午後の5時までとなっています。また、入場整理券の配布は午後4時までなのに加えて、整理券がすべて配り終わった場合には後日の対応となってしまうこともあるため、申告期限に余裕をもって申告することをおすすめします。
②郵送で提出
受贈者の住所を管轄する税務署に、郵送で贈与税の申告書と添付書類を提出することもできます。
書類の提出日は、その郵便物や信書便物の通信日付印により表示された日となります。
また、申告書控が欲しい場合には、書類を提出する際に切手を貼った返信用の封筒を同封することで、後日収受印の押された控えを返送してもらえます。
③e-Taxで提出
贈与税の申告書を『国税庁 確定申告書等作成コーナー』で作成した場合は、そのままe-Taxで提出できます。詳しくは『e-Tax|個人でご利用の方』をお読みください。
贈与税の納付について
贈与税は原則として、申告書の提出期間と同じく贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、納付すべき税額を現金で一括納付しなければなりません。
納税方法は、申告書の提出先の税務署や金融機関で現金で納付するほかに、電子納税(インターネットバンキング等)も利用することができます。
なお、申告が遅れたり、申告内容に不備などがあった場合には、延滞税や加算税などの追徴課税が課せられることがありますので、注意してください。
贈与税の追徴課税については、関連記事『贈与税の申告漏れは「ばれない?」|ばれるケースやペナルティを解説』をお読みください。
贈与税の申告が必要なケースとは?
ここまで、贈与税の申告方法について解説してきました。
最後に、どのような場合に贈与税の申告が必要となるかを確認していきましょう。
贈与税は、贈与を受けた財産が一定の金額を超えた場合などに、財産の贈与を受けた受贈者が申告をする必要があります。
1年間に110万円を超える贈与を受けた場合
通常の暦年課税を適用する贈与においては、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば贈与税は課税されませんが、合計額が110万円を超える贈与を受けた場合には、贈与税の課税対象となり申告をしなければなりません。
相続時精算課税の適用を受ける場合
相続時精算課税を適用する贈与においては、贈与された財産の累計額が2,500万円までは贈与税は非課税とされ、2,500万円を超えた部分に対して一律20%の税率で贈与税が課税されます。
税制改正により相続時精算課税制度に新たに基礎控除(110万円)が設けられ、2024年(令和6年)1月1日以降は、贈与を受けた財産の金額の合計額が年間110万円以下であれば、贈与税も相続税もかからず、贈与税の申告も不要になりました。
贈与税が非課税となる特例の適用を受ける場合
先に紹介した贈与税が非課税となる特例のうち、「居住用不動産または居住用不動産の取得資金の贈与を受けた場合の配偶者控除」および「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の特例を適用する場合には、その特例を適用して贈与税が0円となるときでも贈与税の申告をしなければなりません。
贈与税の申告を行わなければこれらの特例は適用されませんので、注意してください。
贈与税申告のご相談は税理士へ
贈与税を申告するにあたっては、不動産や株式などの金銭以外の贈与を受けた場合には、財産の価額の評価が必要となり、また、配偶者控除や住宅取得等資金などの非課税の特例、相続時精算課税の適用を受ける場合には、適用の要件を満たしているかの判断も必要になります。
そのため、財産の評価が難しい場合、各種の非課税の特例や相続時精算課税の適用を受けられる場合には、贈与税を適切に申告するためにも、税理士にご相談されることをおすすめいたします。
税理士は、税金の申告など個別具体的な税務相談に応じることができる唯一の専門家です。税理士は贈与税の申告のサポートや代行にとどまらず、節税や相続などについても有効なアドバイスを提供してくれます。
また、贈与を受けたものの税金がいくらかかるかわからないとお困りの方や贈与税の手続きに不安がある方も、お気軽に税理士にお問い合わせください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士