相続税の申告漏れは「ばれる」|なぜ税務署にばれるのか税理士が解説

「相続税を申告しなくても、税務署にはバレないのでは?」
「タンス預金や金の延べ棒なら、税務署にはバレない?」
このように考える方もいるかもしれません。
しかし、相続税の申告漏れや財産の隠匿は、金融機関への照会や不動産登記、支払調書など、さまざまな情報から税務署に把握される可能性があります。そのため、「黙っていればバレない」と考えるのは危険です。
この記事では、税務署は相続をどのように把握しているのか、相続税の申告漏れがバレる理由や、無申告だった場合のペナルティについてわかりやすく解説します。
相続税の申告漏れは何故バレるのか
相続税の申告漏れは、税務署に把握される可能性が高いです。
税務署は金融機関への照会や死亡届、不動産登記などさまざまな情報をもとに相続財産を把握しており、必要に応じて税務調査も行います。
まずは、税務署が相続を把握する仕組みを詳しく見ていきましょう。
税務署はどうやって亡くなった方の財産を把握するのか
一般的な犯罪捜査の場合には、警察などが裁判所に令状を請求してから、関係各所に捜査を開始します。
これに対して、税務署の調査権限は強力で、裁判所を通さずに申告漏れが疑われる案件について、銀行や証券会社に亡くなった方名義の口座を照会することができます。
銀行口座や証券口座を照会すれば、当然に亡くなった時点の残高、財産額がわかり、さらに日々の口座の動きも確認することができるのです。
申告漏れの場合にも税務調査が行われますが、税務署は銀行口座などの基礎資料を押さえたうえで調査に臨みます。
実際、税務調査(実地調査)が行われたケースのうち、申告漏れなどの非違があった割合は、令和5事務年度で84.2%、令和6事務年度で82.3%と8割を上回っています。(「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」国税庁)
このことからもわかるように、税務署はきちんと詳しい事情を把握し、申告漏れを把握した上で税務調査を行っていると考えられるのです。
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金の延べ棒やタンス預金も税務署にバレる可能性がある
被相続人が金の延べ棒やタンス預金を所有しており、それを相続人が申告せずに取得した場合でも、税務署に把握される可能性が高いです。
タンス預金については、税務署が亡くなった方の銀行口座を照会することで、多額の現金引き出しや、通常の生活費を超える不自然な出金を確認できます。
税務調査では、こうした現金の使い道について説明を求められることがあり、合理的な説明ができない場合には、タンス預金として保管していた可能性を疑われることがあります。
また、金の延べ棒については、金の売買業者に一定額以上の取引について税務署へ支払調書を提出する義務があります。支払調書には取引をした人の氏名や住所などが記載されるため、税務署は被相続人が生前に金を取引していた事実を把握できる場合があるのです。
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税務署は人が亡くなったことを把握している
実は、税務署は人が亡くなったことを把握しています。
人が亡くなった場合、戸籍法の規定により、遺族の方は死亡届を亡くなった方の本籍地・亡くなった場所・届出人いずれかの市区町村役場に提出する必要があります。
そして相続税法第58条第1項に基づき、その死亡届の情報は税務当局へ共有される仕組みになっています。
これにより、税務署は人が亡くなった事実を把握しているのです。
税務署はお尋ねを発送する
住所地の市区町村から死亡届が提出された旨の連絡を受けた場合、税務署は亡くなった方のご遺族に「相続についてのお尋ね」という書類を送付することがあります。
このお尋ねは通常亡くなってから6~8か月ほど経って送られてきます。相続税の申告期限が10か月以内ですから、相続税の申告をお忘れなくという趣旨のものです。
しかし、この書類の本当の目的は亡くなった方の財産状況を伺うためのものです。被相続人の職業、相続人の人数、預貯金の額、所有していた不動産など、実質は相続税の申告が必要かどうか判断するためのお尋ねとなっています。
このお尋ねを無視しても罰則などはありませんが、財産を隠す気なのではないか、と税務署に疑われないよう、できる限り回答する方が無難です。
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不動産登記からバレる
税務署は法務局にある不動産登記も確認しています。
相続により不動産を取得した場合には、不動産登記つまり名義変更をしなければなりません。名義変更する場合には、その変更理由を記載する必要があり、そこに「相続」と記載すると相続により財産を取得したとバレるわけです。
以前までは相続により不動産を取得しても登記の義務がありませんでしたが、2024年4月1日からは相続登記が義務化されました。そのため、相続しても名義変更していないという状態はなくなると考えられています。
なお、期限までに不動産登記をしなければ、10万円以下の過料が課される可能性があります。
不動産登記の期限は以下の通りです。
- 原則:不動産取得を知った日または遺産分割が成立した日から3年以内
※その後に遺産分割が成立した場合は、成立日から3年以内に分割内容を反映した登記が必要 - 義務化以前に相続した不動産:2027年3月31日まで
※不動産を相続したことを2024年4月1日以後に知った場合は、その日から3年以内
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税務署の情報管理を甘くみてはいけない
税務署は日本中の税務署に申告、申請されたデータを一括で管理しています。これをKSK(国税総合管理)システムといいます。
このシステムでは納税者ごとに情報が一元管理されており、市区町村役場から、死亡届の情報が来たら、亡くなった方についてすべて検索できるようになっています。
例えば生前の給与、退職金、不動産の収入、その他の収入や有価証券などの保有状況、不動産の売買、保険金の受け取りなど個人のお金に関する情報が記録されています。
給与や収入などの状況は会社が提出する源泉徴収票や本人が提出した確定申告書などから、有価証券や保険金については、証券会社や保険会社から支払調書と呼ばれる資料が税務署に提出されており、不動産の売買については、法務局に登記された情報などから収集しています。
これが常時行われており、人が亡くなった際には、相続税の徴収漏れとならないように万全の準備をしているわけです。
これら万全のシステムがあるため、相続税の申告漏れは税務署には容易にバレてしまうのです。
相続税の無申告がバレた場合のペナルティ
相続税を期限までに申告しなかった場合、事前通知前に自主的に期限後申告したときは原則5%、事前通知後は10%~25%、税務調査後などは15%~30%の無申告加算税が課されます。
なお、申告期限から1か月以内に自主的に申告した場合でも、期限内に税額を全額納付していることなど、一定の要件を満たさなければ無申告加算税は免除されません。
また、意図的な財産隠蔽など悪質と判断された場合には重加算税(原則35%~40%、過去に加算税を受けた場合などは最大50%)が課され、ペナルティとして重い追徴課税を受けることになります。
これらの加算税にさらに加えて、本来の納付期限から遅れたことによる延滞税も同時に徴収されることになります。
相続税の無申告がバレた際のペナルティは負担が大きいです。無申告のペナルティを受けないように十分注意しましょう。
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相続税の申告が必要な場合とは
相続税は、亡くなった方すべてについて申告や納税が必要なわけではありません。
相続税の対象となる財産から債務などを差し引いた金額が「基礎控除」を超えない限り、原則として相続税の申告・納税は不要です。
相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除は、以下の計算式で算出されます。
基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 法定相続人の数に含められる養子は、原則として、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです
例えば父が亡くなり、母と子2人がいる場合には、法定相続人の人数は3人です。そのため基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。
自宅不動産、預貯金などの合計(住宅ローンなど債務がある場合には、債務の金額を差し引きます。)がこの金額を超える場合には相続税の申告が必要になります。
自分に相続税がかかるのか、相続税の計算シミュレーションをするには『相続税計算機』をご利用ください。
また、相続人の組み合わせによる相続税の計算は、以下の計算シートが便利です。
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どれぐらいの方が相続税を申告しているか
一般的に亡くなった方のうちどれぐらいの方が相続税を申告、納税しているのでしょうか。
令和6年分では、1年間に亡くなった方の約160.5万人のうち、相続税額のある申告書に係る被相続人数は約16.7万人で、課税割合は10.4%でした。つまり、亡くなった方のおよそ10人に1人について相続税が課税された計算です。
また、相続税額のない申告書に係る被相続人数も約4万人います。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などにより、納税額が0円でも申告が必要になる場合があるからです。
(「令和6年分相続税の申告事績の概要」国税庁)
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いつまでに納税が必要か
相続税は、申告期限までに納める必要があります。
相続税の申告期限は、被相続人の方が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内となっています。例えば、1月1日に亡くなられた方の相続税申告の場合、11月1日(この期限が土日祝日である場合は、これらの日の翌日)が申告と納税の期限になります。
また、相続税の支払いは原則として現金で行う必要があり、相続により取得した預貯金か、相続人の預貯金を合わせても足りない場合には、売却可能な財産を換金するなどして、納税資金を確保する必要があります。
相続税の申告漏れがバレるか不安な方によくある質問
Q. 相続税がバレないケースはある?
相続税の申告漏れが一時的に発覚しないケースはありますが、税務署にバレないとはいえません。
税務署は、金融機関への照会や税務調査などを通じて継続的に情報を収集しています。そのため、数年後に申告漏れが発覚するケースもあります。
相続税の申告が必要な場合は、期限内に適切な申告・納税を行いましょう。
Q. 相続税は何年前まで調べられる?
相続税の申告期限から5年以内であれば、原則として税務署は更正を行うことができます。
ただし、財産を意図的に隠すなど悪質なケースでは7年まで延長されることがあります。無申告や申告漏れが疑われる場合は、過去の取引や財産の状況について税務調査が行われる可能性があります。
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Q. タンス預金は本当にバレる?
タンス預金そのものを税務署が把握しているわけではありません。
しかし、被相続人の銀行口座の入出金履歴や生活状況などを総合的に確認するため、多額の現金の引き出しがあるにもかかわらず使い道を説明できない場合は、タンス預金を保有していた可能性を疑われることがあります。
バレないことを祈るより、正しく節税しましょう
ここまで解説したとおり、相続税の申告漏れは、金融機関への照会や不動産登記、税務調査などを通じて税務署に把握される可能性が高く、「バレなければ大丈夫」と考えるのは危険です。
一方で、相続税は相続財産のすべてに課税されるわけではありません。控除や特例を適用することで、税負担を大きく軽減できるケースもあります。申告が必要な場合は、申告漏れを心配するのではなく、利用できる制度を確認したうえで適切に申告することが大切です。
相続税の優遇税制
相続税を減額することができる優遇税制には、以下のようなものがあります。
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者の税額軽減
- 生命保険金の非課税枠
- 未成年者控除
- 障害者控除
上記の優遇税制が使えるかどうかはそれぞれ要件が異なったり、遺産の分割方法によって適用できなかったりします。
詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
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相続税の申告が必要か判断に迷う場合や、利用できる控除・特例が分からない場合は、税理士への相談がおすすめです。
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相続税申告を税理士に依頼するときの報酬が気になる方は、関連記事『相続税申告の税理士報酬は?相場と費用の仕組みを解説』をお読みください。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
