土地の生前贈与は相続税対策になる?手続きや相続とどちらが得かも解説

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土地の生前贈与は、相続税対策や認知症(判断能力の低下)に備えた対策として活用される一方で、贈与税や不動産取得税などの負担が生じるため、必ずしも相続より有利になるとは限りません。

「土地は生前贈与と相続のどちらがお得?」「生前贈与すると相続税は安くなる?」「どのような手続きが必要?」と疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では、土地を生前贈与するメリット・デメリットを整理したうえで、生前贈与が向いているケースと相続の方が有利なケースをわかりやすく解説します。あわせて、利用できる制度や手続きの流れ、かかる税金・費用についても紹介します。

目次

土地を生前贈与するメリット

土地の生前贈与は、相続税対策や認知症(判断能力の低下)に備えた対策などで検討されることも多いです。
具体的には以下のようなメリットが得られる可能性があります。

土地を生前贈与するメリット

  • 相続税の課税対象を減らせる
  • 贈与する相手やタイミングを選べる
  • 収益物件の場合は収益が受贈者に入る
  • 認知症(判断能力の低下)に備えた対策になる

それぞれについて詳しく確認していきましょう。

相続税の課税対象を減らせる

生前贈与では、相続で移転するはずの財産を先に移転できるため、相続税の課税対象となる財産を減らせます。生前贈与が相続税対策になるといわれている理由はこれです。

また、今後値上がりが見込まれる土地の場合、相続まで待っていると今よりも高い評価額に対して相続税がかかる可能性があります。
そのため、値上がりする前に生前贈与してしまった方が、安く財産移転できることがあるのです。

土地を贈与する相手やタイミングを選べる

生前贈与では、土地を贈与する相手やタイミングを贈与者が自由に選べることもメリットです。

対して相続はタイミングを自由に選べません。

また、相続する相手は法定相続人が中心となります。遺言で財産を受け継ぐ相手を指定することも可能ですが、相続人全員の合意があれば遺言の内容に従わない選択もできるため、確実に希望の相手に土地を譲れるとは限りません。

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収益物件の場合は収益が受贈者に入る

家賃収入などの収益を生む土地の場合には、生前贈与することで収益が受贈者の収入になります。

生前贈与せずに相続まで収益物件を所有したままだと、蓄積された家賃収入が相続財産として積み重なり、相続税の負担が大きくなってしまいます。

「相続財産を増やさない」という観点からも、収益物件の生前贈与は相続税対策として有効です。

認知症(判断能力の低下)に備えた対策

所有者が認知症になる前に生前贈与を行っておくと、財産の管理や処分がスムーズに行えます。

所有者が認知症などで契約時に意思能力を欠く状態になると、売買契約の有効性が問題となり、契約が無効となる可能性があります。

そのため、土地の所有者の介護費用や施設入居費用などを用意するため土地を売ろうと思っても、難しい場合があるのです。

このような事態を避けるため、元気なうちに土地を生前贈与して所有権を移しておくことは認知症(判断能力の低下)に備えた対策として効果的です。

なお、所有者は変えずに、財産の管理運用の決定権だけを移す「家族信託」という方法もあります。

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信託と相続の関係|家族信託における相続税や相続税対策の効果を解説

土地を生前贈与するデメリット・注意点

相続税対策で土地を生前贈与する場合、次のような点には注意する必要があります。

土地を生前贈与するデメリット

  • 贈与税の税率は相続税の税率よりも高い
  • 不動産取得税と登録免許税が高い
  • 小規模宅地等の特例が使えないことがある
  • 生前贈与した土地に相続税がかかることがある
  • 贈与税の納税資金を用意しておく必要がある
  • 相続時の遺留分が侵害される恐れがある

贈与税の税率は相続税の税率よりも高い

贈与税の税率は、相続税よりも高く設定されています。

最高税率はどちらも55%ですが、贈与税の方が低い金額で税率が上昇していく構造となっているのです。

これは、生前の贈与によって相続税を逃れることを防止し、課税の公平性を維持するためです。

そのため、何も考えずに土地を生前贈与してしまった場合は、相続よりも税負担が重くなってしまうことがあります。

贈与税と相続税の違い

ただし、不動産や株式など価格が変動しやすい財産は、贈与や相続のタイミングによって評価額が変わります。

贈与税のほうが税率が高くても、評価額が上がってしまう前に贈与したほうが税負担が少なく済むケースもあるでしょう。

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土地の贈与税はいくら?評価額の計算方法と税率をわかりやすく解説

不動産取得税と登録免許税が高い

土地の贈与では、「不動産取得税」と「登録免許税」も発生します。

  • 不動産取得税
    不動産を取得したことに対する税金
  • 登録免許税
    「この不動産の所有権は私が持っています」という記録を行う、登記手続きをする際に納める税金

この2つの税金は、相続で土地を取得した場合よりも、生前贈与で土地を取得した場合の方が高くなってしまいます。

以下に、生前贈与と相続、それぞれで取得した場合の税率をまとめました。

生前贈与相続
不動産取得税固定資産税評価額×3%※なし
登録免許税固定資産税評価額×2%固定資産税評価額×0.4%

※原則の税率は4%ですが、土地および住宅用家屋については令和9年3月31日まで3%に軽減されています。また、贈与を受けた土地が宅地である場合、同期間中は固定資産税評価額を1/2にして計算できる特例があります。

そのため、土地を譲る際にかかる費用全体で考えたときに、相続のほうが負担を抑えられる場合があるでしょう。

小規模宅地等の特例が使えない

生前贈与で土地を渡す場合、小規模宅地等の特例が使えません。

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす土地について、相続税評価額を軽減できる特例です。
例えば自宅の土地(特定居住用宅地等)について、一定の要件を満たしこの特例を適用すれば、相続税評価額を限度面積330㎡までの部分について最大80%減額できます。

そのため、相続ではこの特例や基礎控除の適用などで、土地の相続税がゼロになることもあります。(この特例を使う場合は、相続税がゼロでも申告は必須であり、原則として申告期限までに遺産分割が済んでいることも必要)

しかし、生前贈与ではこうした特例がないため、贈与するほうが税負担が重くなることがあります。

小規模宅地等の特例について詳しくは、関連記事『小規模宅地等の特例とは?要件・計算方法をわかりやすく解説【フローチャート付き】』をお読みください。

生前贈与した土地に相続税がかかることがある

生前贈与では、特に手続きをしなければ暦年課税という課税制度が適用されます。

そして暦年課税では、贈与者の死亡前一定期間内の贈与は、相続税の課税対象となります。これが「生前贈与加算」です。
※贈与者の死亡後に相続や遺贈で財産を取得した場合のみ

つまり、土地を暦年課税で生前贈与しても、生前贈与加算の対象となれば相続税がかかってしまうのです。

生前贈与加算の対象期間は以下の通りです。

被相続人の死亡日遡る期間
〜2026年12月31日死亡日前3年間
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日から相続開始日までの間の贈与
2031年1月1日〜死亡日前7年間

ただし、相続開始の日が2027年1月2日以後の場合、延長された4年間(亡くなる3〜7年前)の贈与については、その4年間に行われた贈与額の合計から100万円を差し引いた残額のみが相続財産に加算されます。

また、贈与時すでにその贈与財産についての贈与税を支払っていた場合には、その支払った贈与税額に相当する金額が相続税額から控除されます。

暦年課税における持ち戻し期間のルールについて詳しく知りたい方は『暦年贈与7年ルールとは?廃止されるのはいつから?持ち戻しや経過措置を解説』の記事をご覧ください。

贈与税の納税資金を用意しておく必要がある

土地のような現金以外の財産の贈与では、別途納税資金を用意しておく必要があります。

現金の贈与のように、受け取った財産の一部を納税に充てるということができないからです。

贈与税の申告・納税期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日です。

土地を生前贈与する際には、事前にどのくらい贈与税が発生するのか計算して、受贈者が期限内に問題なく納税できるか確認しておきましょう。

相続時の遺留分が侵害される恐れがある

将来相続人となる人のうち、特定の人だけに高額な生前贈与を行うと、他の相続人の遺留分を侵害するおそれがあります。

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に法律上保障された最低限の遺産の取り分です。

生前贈与や遺言によって財産を誰に渡すかは原則として自由に決められますが、その結果として遺留分が侵害された場合には、遺留分を侵害された相続人から侵害額に相当する金銭の支払い(遺留分侵害額請求)を受ける可能性があります。

生前贈与によるトラブルを防ぐためにも、遺留分への影響を考慮しながら贈与することが大切です。

関連記事

相続税の遺留分とは?もらった場合の相続税や侵害額請求の方法を解説

土地は生前贈与と相続どちらがお得?

土地は、生前贈与と相続のどちらが有利かは一概にはいえません。

生前贈与は、将来の相続財産を減らしたり、財産を渡すタイミングを自由に決められたりする点がメリットです。一方で、贈与税や不動産取得税、登録免許税などの税負担が生じるほか、小規模宅地等の特例を利用できないなどのデメリットもあります。

そのため、土地の評価額や利用状況、家族構成などを踏まえて、生前贈与と相続のどちらが有利かを判断することが重要です。

生前贈与が向いているケース

土地の生前贈与が相続税対策として有効になりやすいケースは以下の通りです。

  • 収益性のある土地を贈与する
  • 将来的に土地の価値が上がると見込まれる
  • 特定の人に土地を譲りたい
  • 相続人同士のトラブルを避けたい
  • 認知症など判断能力の低下が想定される

このようなケースでは、生前に土地を移転することで、相続税対策につながったり、円滑な資産承継を実現できたりする可能性があります。

ただし、生前贈与が有利かどうかは、利用できる税制や土地の評価額などによって異なります。実際に生前贈与を行う前には、税負担をシミュレーションしたうえで判断することが大切です。

相続の方が有利なケース

相続の方が有利になりやすいケースとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 小規模宅地等の特例を利用できる
  • 贈与税や不動産取得税などの負担を避けたい
  • 土地の評価額が大きく変動する見込みがない
  • 相続税の基礎控除内に収まり、相続税がかからない

このようなケースでは、生前贈与を行うよりも相続によって土地を承継した方が、税負担を抑えられることがあります。

どちらが有利かはケースごとに異なるため、判断に迷う場合は税理士へ相談し、生前贈与と相続の税額を比較したうえで選択するとよいでしょう。

【具体例】5,000万円の土地は生前贈与と相続、どちらが得?

5,000万円の土地を生前贈与する場合と相続をする場合で、税負担はどのように違うのか見てみましょう。

なお、生前贈与には暦年課税と相続時精算課税があり、今回はどちらのケースについてもシミュレーションをします。

  • 暦年課税
    毎年1月1日~12月31日までの贈与に対して贈与税がかかる制度。年間110万円の基礎控除までは非課税。
  • 相続時精算課税
    年間110万円の基礎控除(2024年1月1日以降の贈与から適用)と、累計2,500万円の特別控除までは贈与税が非課税になる制度。ただし、贈与者の死亡後、相続税の対象になる。

また、土地の贈与・相続では、不動産取得税や登録免許税もかかる場合があるため、これらも合わせて計算しています。

なお、贈与時の課税制度や税金の種類については、本記事内で後ほど詳しく解説します。

前提条件

65歳の父から35歳の子どもへ、固定資産税評価額が5,000万円の土地を譲るケース。

  • 土地の相続税評価額は固定資産税評価額と同額の5,000万円
  • 贈与・相続するのは5,000万円の土地のみ
  • 贈与時も相続時も土地の価額は変わらず5,000万円
  • 贈与税と相続税の比較をシンプルにするため、控除制度や特例は適用しない
  • 相続人は子ども1人
  • 暦年贈与は生前贈与加算の対象外の時期に行ったものとする

※実際の相続税評価額は路線価方式(公示価格の約80%が目安)または倍率方式で算定されるため、固定資産税評価額とは異なります。本計算例は理解しやすくするために両者を同額と仮定しています。

先にかかる税金の合計を一覧でまとめると、以下の通りです。

譲り方かかる税金の合計
(1)暦年課税で生前贈与2,299万5,000円
(2)相続時精算課税で生前贈与393万5,000円
(3)相続180万円

それぞれの譲り方における税額の計算を見ていきましょう。

(1)土地を暦年課税で生前贈与した場合にかかる税金

贈与税

(5,000万円−110万円[基礎控除額])×55%[税率]−640万円[控除額]= 2,049万5,000円

不動産取得税

5,000万円×3%[税率]=150万円

※宅地(住宅用の土地など)を令和9年3月31日までに取得した場合は、課税標準を固定資産税評価額の2分の1として計算できます。
そのため、同じ評価額5,000万円の宅地であれば、5,000万円×1/2×3%=75万円となります。

登録免許税

5,000万円×2%[税率]=100万円

5,000万円の土地を暦年課税で生前贈与する場合にかかる税金の合計は、2,299万5,000円です。

(2)土地を相続時精算課税で生前贈与した場合にかかる税金

贈与税

(5,000万円-2,500万円-110万円)×20%[税率]=478万円

相続税

4,890万円-3,600万円[基礎控除額]=1,290万円
※令和6年以降の贈与の場合、相続財産に足し戻す金額は、贈与時の価額から基礎控除額(110万円)を差し引いた金額となります。

1,290万円×15%[税率]-50万円=143万5,000円

不動産取得税

5,000万円×3%[税率]=150万円

※宅地(住宅用の土地など)を令和9年3月31日までに取得した場合は、課税標準を固定資産税評価額の2分の1として計算できます。
そのため、同じ評価額5,000万円の宅地であれば、5,000万円×1/2×3%=75万円となります。

登録免許税

5,000万円×2%[税率]=100万円

還付される金額

478万円-143万5000円=334万5,000円

※相続時精算課税制度により贈与税として支払われた分は、相続税の計算の際に足し戻されるため(贈与税と相続税で二重に支払うことを防ぐ必要から)

最終的な金額

478万円+150万円+100万円-334万5,000円=393万5,000円

5,000万円の土地を相続時精算課税で生前贈与する場合にかかる税金の合計は、393万5,000円です。

(3)土地を相続した場合にかかる税金

相続税

5,000万円-3,600万円[基礎控除額]=1,400万円[課税価格]

1,400万円×15%[税率]-50万円=160万円

不動産取得税

相続で不動産を取得した場合、不動産取得税はかかりません。

登録免許税

5,000万円×0.4%[税率]=20万円

5,000万円の土地を相続する場合にかかる税金の合計は、180万円です。

土地の生前贈与で贈与税を減額するための制度

土地を生前贈与する際には、以下のような制度を用いることで贈与税額を減らすことが可能です。

  • 相続時精算課税制度
  • 暦年課税制度
  • 贈与税の配偶者控除

暦年課税制度

暦年課税とは、毎年1月1日~12月31日までの贈与に対して贈与税がかかる課税制度です。
特に手続きをしなければ、基本的には暦年課税での贈与となります。

暦年課税には、受贈者側に対し年間110万円の基礎控除があります。

そのため、毎年110万円以下になるように贈与することで、節税効果を得ることが可能です。

土地の贈与については、110万円以下になるよう土地の持ち分を少しずつ贈与していくという方法が考えられます。

もっとも、土地の価格が高額な場合は非常に長期間となり、生前贈与加算の持ち戻しもあるため、現実的ではないことが多いでしょう。

暦年課税制度について詳しく知りたい方は『暦年贈与(暦年課税)とは?わかりやすく仕組み・やり方・注意点を解説』の記事をご覧ください。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、年間110万円の基礎控除(2024年1月1日以降の贈与に適用)と、累計2,500万円の特別控除までであれば、非課税で贈与ができる課税制度です。
ただし、贈与者が死亡した際、基礎控除分を除いた贈与財産を相続財産に持ち戻して、相続税の課税対象とします。

60歳以上の父母または祖父母から、贈与した年の1月1日時点で18歳以上の推定相続人または孫(直系卑属)に贈与する場合に利用できます。

なお、相続時精算課税制度を利用して贈与した場合、相続財産に足し合わせるときの価額は、贈与時のものとなります。

すなわち、将来的に価値が上がりそうな土地を相続時精算課税制度を利用して生前贈与すると、相続するよりも低い相続税負担で土地の移転が行えるのです。

相続時精算課税制度を適用したい場合は、最初の贈与の翌年2月1日~3月15日の間に、「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
また、一度相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税には戻れません。

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相続時精算課税制度をわかりやすく解説!改正の変更点などもわかる

贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)

贈与税の配偶者控除とは、一定の要件を満たす配偶者への贈与について、最大2,000万円まで贈与税の控除を行うという制度です。

具体的には、以下のような贈与であることが要件となります。

  • 贈与相手が「婚姻期間20年以上の配偶者」である
  • 居住用不動産または居住用不動産を購入するための資金贈与である
  • 贈与を受けた翌年の3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産、または、贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に現実に住んでおり、その後も引き続き居住する見込みである

居住用不動産とは、専ら居住の用に供する土地、もしくは、土地の上に存在する家屋のことをいいます。

家屋と敷地は一括して贈与する必要はなく、居住用家屋のみ、または敷地(土地)のみの贈与でも、一定要件を満たせば配偶者控除を適用できます。土地のみの贈与に配偶者控除を適用するには、夫または妻がその居住用家屋を所有していること等の条件があります。

また、年間110万円の贈与税の基礎控除とも併用できるため、あわせると2,110万円まで非課税で贈与することが可能です。

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土地を生前贈与されるときの手続き|3ステップで解説

贈与税の支払いや贈与にあたっての手続きは、基本的に受贈者(贈与を受けた人)が行います。

生前贈与で土地を取得する場合、受贈者は次の3つの手続きが必要です。

土地を生前贈与したときの手続き

  1. 贈与契約書を作成する
  2. 土地の名義変更をする
  3. 贈与税申告をする

(1)贈与契約書を作成する

土地に限らず、生前贈与する際には贈与契約書の作成が重要です。

贈与に際して「贈与契約書を作成しなければならない」という決まりはなく、口約束のみでも贈与を成立させることは可能です。

しかし贈与契約書は、土地の名義変更手続きで必要となる「登記原因証明情報」としても使用できるため、作成することをおすすめします。

登記原因証明情報とは、土地の名義変更を行う理由を証明するための情報のことです。贈与契約書があれば、「土地の贈与によって名義変更が必要」という証明になります。

贈与契約書に決まったひな型はありませんが、以下の内容を記載するようにしましょう。

なお、贈与契約書には贈与者と受贈者、双方の情報を記入するため、一緒に内容を確認しながら作成すると良いでしょう。

贈与契約書に記載する内容

  • 贈与者と受贈者の氏名
  • 贈与する土地の情報(所在・地番など)
  • 贈与する日付
  • 贈与の条件
  • 贈与の方法
  • 贈与者と受贈者の自筆署名と実印

贈与する土地の情報は、法務局で発行できる登記事項証明書の情報(所在・地番など)を記載します。

(2)土地の名義変更の登記をする

贈与した土地を管轄する法務局で、土地の名義変更の登記を申請します。

名義変更に必要な書類は、以下のようなものとなります。

土地の名義変更の登記に必要な書類

  • 登記申請書
  • 登記識別情報または登記済証(土地の権利書)
  • 土地の固定資産評価証明書
  • 登記原因証明情報(贈与契約書など)
  • 贈与者の印鑑証明書(発行から3か月以内)
  • 受贈者の住民票

固定資産税評価証明書や印鑑証明書は市区町村役場で取得することが可能です。

法務局や市町村役場は平日しか開いていないため、土地の名義変更の登記は司法書士に依頼する方が多いです。

司法書士に依頼すれば、上記の名義変更の登記に必要な書類の収集も、あわせて任せることができます。

(3)贈与税申告をする

贈与税の課税方式には、「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。

通常は暦年課税ですが、「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告時に提出すると、相続時精算課税に切り替えられます。

ただし、一度相続時精算課税を選択すると、選択した贈与者からの贈与については暦年課税には戻せないため注意してください。

暦年課税の場合には、年間の贈与額が基礎控除額の110万円を超えた場合に贈与税申告をします。

相続時精算課税の場合の申告には、以下のようなルールがあります。

  • 令和6年1月1日以降の贈与は年110万円以下の場合は申告不要
  • 令和5年12月31日以前の贈与は金額にかかわらず申告必要
  • ただし、相続時精算課税制度を初めて利用する場合は、申告不要なケースでも相続時精算課税制度選択届出書の提出が必要

贈与税申告は、贈与税申告書を作成して、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、受贈者の住所を管轄する税務署に提出します。

贈与税の申告額を間違えたり、申告・納付が遅れたりすると、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが発生してしまうので、専門家である税理士に手続きを任せることをおすすめします。

贈与税の申告方法について詳しくは、関連記事『贈与税の申告方法|必要書類や申告書の書き方、納付方法を解説』をお読みください。

土地の生前贈与でかかる税金・費用

贈与税

前述したように、贈与税の課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」があり、それぞれ税率が異なります。

暦年課税の贈与税の計算方法

暦年課税の場合の贈与税額は、「(1年の贈与額-基礎控除額110万円)×税率-控除額」で計算します。なお、贈与税の税率は相続税の税率よりも高く設定されています。

贈与税率

暦年課税の計算例

祖父が25歳の孫に、暦年課税で500万円贈与したとします。

この場合は特例税率が適用されるため、「(500万円-110万円)×15%-10万円=48万5,000円」となります。

相続時精算課税の贈与税の計算方法

相続時精算課税を選択した場合は、「贈与額-年間110万円-累計2,500万円の特別控除額」を超えた金額に対して20%の税率で贈与税が課されます(令和6年1月1日以降の贈与について)。

令和6年1月1日以降は、贈与税額が年間110万円を超えた部分に特別控除額による控除が適用されていき、特別控除額が累計で2,500万円を超えた場合には、その部分に贈与税が課されることとなるのです。

110万円の基礎控除部分は1年間でリセットされますが、特別控除額の2,500万円は年を超えた累計金額で計算される点に注意してください。

相続時精算課税方式の贈与においては、1年間に多額の贈与をする場合には、暦年課税に比べて贈与税の負担としては軽くなります。

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得した場合にかかる税金です。

通常、生前贈与を受けたときの不動産取得税の税額は「固定資産税評価額×4%」ですが、特例によって土地と住宅用家屋について令和9年3月31日までに贈与を受けた場合は「固定資産税評価額×3%」となっています。

不動産取得税は地方税なので、都税事務所や県税事務所などから納税通知書が届きます。

登録免許税

登録免許税とは、不動産の所有権を記録するための、登記手続きの際にかかる税金です。

生前贈与で土地を取得した際の、登録免許税の税率は「固定資産税評価額×2%」です。

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土地の生前贈与についてよくある質問

土地の生前贈与は相続税対策になる?

土地の生前贈与は、相続財産を減らせるため、相続税対策として有効な場合があります。

特に、将来的に値上がりが見込まれる土地や収益性のある土地では、生前贈与によるメリットが大きくなることがあります。

ただし、贈与税や不動産取得税などの負担が生じるほか、小規模宅地等の特例が利用できないケースもあるため、相続とどちらが有利かを比較したうえで判断することが大切です。

生前贈与した土地に相続税がかかることはある?

はい、かかる場合があります。

暦年課税の場合、生前贈与加算によって贈与した土地が相続税の対象になることがあります。

また、相続時精算課税制度で贈与された土地も、一定の基礎控除を除き、原則として相続財産に加算されます。

相続税対策で土地の生前贈与を考えている方は税理士へ相談

相続税対策として行う土地の生前贈与には多くのメリットがありますが、同時に注意すべき点も存在します。

より効率的な節税を行うためには、生前贈与による贈与税だけでなく、その後に生じる相続税や、その他の税金をあわせた「納税額全体」を試算して、土地の生前贈与と相続を比較することが重要です。

税理士に相談していただければ、保有資産の状況、受贈者や相続人との関係などによって、生前贈与と相続のどちらが適しているかを判断して、有効な相続税対策をご提案できます。

また、受贈者で「生前贈与を受けたものの税金がいくらかかるかわからない」とお困りの方や、贈与税の手続きに不安がある方も、お気軽に税理士にお問い合わせください。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

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