【独身の子が亡くなったら】仮想通貨(暗号資産)の相続で親が知っておきたいこと
故人に配偶者や子、孫がいない場合は親が相続人となります。故人が保有する仮想通貨を相続する際には、相続の手順や評価方法などについて理解しておく必要があります。相続に関する知識を身につけておくことで、スムーズな手続きや円満な相続につながるでしょう。
この記事では、兄弟と配偶者で仮想通貨を相続するときの基礎知識をわかりやすく解説します。
目次
『子供名義の仮想通貨(暗号資産)の相続』に関する基本事項
仮想通貨(暗号資産)とは
仮想通貨とは、インターネット上で取引される財産的価値のことです。仮想通貨は、一般的な通貨のように中央銀行や政府などの発行主体が存在せず、取引参加者の信用によって価値が担保されています。
仮想通貨で代表的なものに、ビットコインやイーサリアムなどがあります。仮想通貨に実体はなく、インターネット上のデータでやりとりをするのが特徴です。仮想通貨の売買は、取引所と呼ばれる事業者を通じて行われます。仮想通貨は、取引所で口座を開設し、取得した通貨をウォレットで保管するという仕組みです。
法定相続分による相続割合【親が相続する場合】
相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるのが法定相続分です。
故人に配偶者や子、孫がいない場合の相続人は親になります。このとき、父または母の場合は全額、父母の場合は2分の1ずつで分割します。
- 父または母:全額
- 父母:1人あたり1/2
子供が亡くなって8,000万円の遺産が発生し、両親で相続する場合は4,000万円ずつで分けます。ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。
仮想通貨(暗号資産)を相続するときの手続きの流れ
被相続人名義の仮想通貨を相続する場合は、以下のような流れで手続きを行います。
1.遺言書の有無を確認する
被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。
2.相続人を確認する
相続人となるのは被相続人の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹などです。このとき相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認する場合もあります。
3.保有している仮想通貨(暗号資産)を確認する
仮想通貨取引所の口座やウォレットなどを確認し、被相続人が保有していた仮想通貨の種類や保有数などを調べます。
4.仮想通貨(暗号資産)以外の相続財産を確認する
仮想通貨以外の相続財産も調査し、不動産や預貯金など、どのような財産があるのか、評価額はいくらなのかを確認します。
5.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、どのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。
6.仮想通貨取引所で相続手続きを行う
仮想通貨取引所に、被相続人が亡くなったことを連絡し、案内に従って必要書類を送付します。なお、仮想通貨取引所に対面の窓口はないため、メールや郵送でのやりとりとなります。
7.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、相続税額が発生した場合は納税も行います。
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仮想通貨(暗号資産)の相続税評価額を計算する方法
仮想通貨の場合、活発な市場が存在するかどうかで相続税評価額の計算方法が異なります。たとえば複数の仮想通貨取引所で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合は「活発な市場が存在する」と判断します。
一方、特定の取引所でのみ取引がされている場合や、新規発行されたばかりの仮想通貨は「活発な市場が存在しない」と判断します。
活発な市場が存在する仮想通貨(暗号資産)の評価
活発な市場が存在する仮想通貨は、以下のいずれかで評価額を算定します。
- 仮想通貨取引所が公表する相続開始日の価格
- 相続開始日時点で取引所に売却することができる金額
活発な市場が存在しない仮想通貨(暗号資産)の評価
活発な市場が存在しない仮想通貨は、類似する売買実例をもとにしたり、専門家による鑑定から評価額を算定します。
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相続税における基礎控除の概要と計算方法
相続税は遺産のすべてに対して課税されるわけではなく、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生します。また、場合によっては相続税額が発生することもあります。
相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
父or母(1人) | 3,600万円 |
父母(2人) | 4,200万円 |
たとえば、父または母が法定相続人の場合は3,600万円、父母の場合は4,200万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。
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相続税の申告方法と申告期限
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほかe-Tax(電子申告)でも可能です。
相続税の申告書作成は自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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仮想通貨(暗号資産)を相続する際の注意点
仮想通貨を相続する際は、以下の点に注意しましょう。
被相続人のスマートフォンやPCをすぐに処分しない
仮想通貨に関する情報は、被相続人のスマートフォンやPCに残っている可能性が高いです。そのため、相続が完了するまでは、データの初期化や処分をせずに保管しておきましょう。
パスワードがわからない場合に放置しない
仮想通貨を引き出すには、パスワードや秘密鍵が必要です。パスワードや秘密鍵が見つからない場合は、早めにサポートセンターや問い合わせ窓口に連絡しましょう。仮想通貨は相続税の課税対象であるため、放置するのはNGです。
海外の取引所を利用していた場合は税理士に相談する
仮想通貨の場合、被相続人が海外の取引所を利用していることも考えられます。その場合は仮想通貨の相続にくわしい税理士に相談し、サポートを依頼することをおすすめします。
『子供名義の仮想通貨(暗号資産)の相続』に関するよくある質問
親の相続割合は?
法定相続分による親同士の相続割合は、均等に分割します。なお、相続人同士の合意があれば相続割合を自由に決めることもできます。
仮想通貨の相続税評価額はいくら?
仮想通貨の評価額の算定方法は、活発な市場が存在しているかどうかで異なります。活発な市場が存在する仮想通貨は、仮想通貨取引所が公表する相続開始日の価格または仮想通貨取引所による相続開始日時点の売値のいずれかで算定します。一方、活発な市場が存在しない仮想通貨は、類似する売買実例や、専門家による鑑定により評価額を算定します。
仮想通貨の相続で必要な手続きは?
仮想通貨の相続手続きは、以下の流れで進めます。
1.遺言書の有無を確認する
2.相続人を確認する
3.保有する仮想通貨を確認する
4.遺言書がない場合は相続人同士で遺産分割協議を行う
5.仮想通貨取引所で相続手続きを行う
6.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
仮想通貨(暗号資産)のパスワードがわからないときはどうすればいい?
国内の取引所の場合、仮想通貨のIDやパスワードがわからない場合でも、サポートセンターや問い合わせ窓口に本人確認が可能な書類を提示することで、相続手続きをすすめることができます。
相続税の申告をしないとどうなる?
遺産の総額が基礎控除額を下回る場合、相続税の申告は必要ありません。ただし、基礎控除額を超えていて申告を怠った場合、税務署から連絡がきてペナルティが課される可能性もあります。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士