仮想通貨(暗号資産)の相続税|評価方法や計算例、売却時の税率110%についても解説

ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)にも相続税は課税されます。仮想通貨の相続税評価額は、原則として相続開始日(死亡日)の時価を基準に計算します。
仮想通貨の評価方法は、不動産や株式とは異なります。
相続した仮想通貨を売却して利益が出ると、所得税も発生します。相続税の最高税率55%と所得税45%・住民税10%を単純に合計して「最大110%」と説明されることがありますが、相続財産全体や同じ金額に一律110%が課されるわけではありません。
この記事では、仮想通貨の相続税評価額の計算方法や、相続した仮想通貨を売却するときの税金、仮想通貨を相続するときの注意点について解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
仮想通貨の相続税評価額の計算方法
仮想通貨の相続税評価額は、以下のように計算されます。
仮想通貨の相続税評価額
相続税評価額 = 相続開始日における取引所の取引価格 × 保有数量
仮想通貨(暗号資産)は相続税法22条により相続開始時の「時価」で評価することが定められています。
ここでいう「時価」とは、原則として相続人などの納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する、相続開始時の取引価格を基準とします。納税義務者が複数の暗号資産交換業者で取引している場合は、その中から選択した交換業者の取引価格を使用できます。
不動産のように路線価や固定資産税評価額を使うわけではなく、活発な市場が存在する暗号資産では、交換業者が公表する相続開始時の取引価格を基に評価する点が特徴です。
ただし、暗号資産の評価方法は、活発な市場が存在する場合と、活発な市場が存在せず価格が一義的に定まらない場合で異なります。
それぞれのケースについて、見ていきましょう。
【補足】
自己管理ウォレットで保有している場合でも、BTCやETHなど活発な市場が存在する暗号資産は、原則として暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格を基準に評価します。
一方、DEXでのみ取引される流動性の低いトークンなど、客観的な相場が明確でない暗号資産は、売買実例価額や精通者意見価格などを参酌して個別に評価します。
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(1)活発な市場が存在する暗号資産の場合
活発な市場が存在する暗号資産は、相続人などの納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する、相続開始時の取引価格を基に評価します。
相続税評価額=相続開始時の1単位当たりの取引価格×保有数量
暗号資産販売所が購入価格と売却価格の双方を公表している場合は、納税義務者が販売所へ暗号資産を売却するときの価格を、1単位当たりの評価単価として使用できます。
暗号資産交換業者が発行する残高証明書に相続開始時の取引価格が記載されている場合は、その価格を評価に使用できます。ただし、残高証明書の取得自体が評価の必須条件ではありません。
相続開始時の保有数量や採用した価格を確認できるよう、残高証明書、取引明細書、交換業者の価格履歴などの客観的な資料を取得し、保存しておくことが重要です。
暗号資産は24時間取引されており、「終値」が一つに定まりにくい性質があります。取引所や販売所によって価格の公表方法が異なるため、採用した交換業者、日時、価格を確認できる資料を残しておきましょう。
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(2)価格が一義的に定まらない場合
取引価格が一義的に定まらない仮想通貨の場合は、その通貨の内容や性質、取引実態を考慮し個別に評価が行われます。
例えば、類似する売買の実例に基づいた価額(売買実例価額)や、専門家による鑑定価格(精通者意見価格)を用いて評価する方法が挙げられます。
【計算例】ビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)の相続税評価額
実際にどのように評価額を計算するのか、ビットコインとイーサリアムを例に見てみましょう。
ビットコイン(BTC)の評価例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相続開始日のBTC価格 | 1BTC = 1,000万円(仮定) |
| 保有数量 | 0.5BTC |
| 相続税評価額 | 1,000万円 × 0.5 = 500万円 |
イーサリアム(ETH)の評価例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相続開始日のETH価格 | 1ETH = 40万円(仮定) |
| 保有数量 | 10ETH |
| 相続税評価額 | 40万円 × 10 = 400万円 |
このように計算自体はシンプルですが、相続開始日の価格を正確に記録・証明することが実務上の重要なポイントです。取引所の価格履歴を取得し、証拠として保管しておきましょう。
仮想通貨でも相続税の基礎控除や特例は使える?
仮想通貨を相続する場合、他の相続財産と合わせた遺産総額に対して以下の基礎控除が適用されます。
相続税の基礎控除
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
- 相続放棄した法定相続人も、「法定相続人の数」に含めます。
- 養子がいる場合、実子がいるなら1人まで、いないなら2人まで「法定相続人の数」にカウントできます。
仮想通貨も含めた遺産総額がこの基礎控除額を下回る場合は、相続税はかかりません。
相続税には基礎控除のほかにも、一定の要件を満たす場合に利用できる税額控除や軽減制度があります。暗号資産(仮想通貨)が相続財産に含まれていても、配偶者の税額軽減や未成年者控除、障害者控除の適用が可能です。
配偶者の税額軽減とは
配偶者が遺産分割などで実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円と法定相続分相当額のどちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。
この軽減を受けるには、相続税申告書を提出する必要があります。原則として申告期限までに遺産分割を終えなければなりませんが、所定の書類を提出しておけば、期限後に分割した場合でも適用が認められることがあります。
未成年者控除とは
財産を取得した18歳未満の法定相続人は、相続税額から「10万円×満18歳になるまでの年数」を差し引けます。年数に1年未満の期間があるときは、1年に切り上げて計算します。
本人の相続税額から控除しきれない分は、その未成年者を扶養する義務がある人の相続税額から差し引ける場合があります。
障害者控除とは
財産を取得した85歳未満の障害者である法定相続人は、満85歳になるまでの年数に応じて障害者控除を受けられます。控除額は1年につき、一般障害者が10万円、特別障害者が20万円です。年数に1年未満の期間があるときは、1年に切り上げます。
こちらも本人の相続税額から控除しきれない分は、扶養義務者の相続税額から差し引ける場合があります。
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相続した仮想通貨を売却すると税率110%?
仮想通貨を相続した後に売却すると、相続時には相続税、売却時には所得税がかかる場合があります。相続税の最高税率55%と、所得税45%・個人住民税10%を単純に合計すると「最大110%」となるため、税負担がおかしいと感じる人もいるでしょう。ただし、相続財産全体や同じ金額に一律110%が課されるわけではありません。
ここでは、相続した仮想通貨に相続税と所得税がかかる仕組みや、最高税率の単純合計が110%といわれる理由、今後導入される申告分離課税、生前贈与時の注意点について解説します。
相続税と売却時の所得税は別の金額を基に計算する
相続した仮想通貨には、相続時に相続税がかかる場合があります。その後、相続人が仮想通貨を売却して所得が生じた場合は、原則として雑所得として所得税の対象になります。
ただし、相続税と所得税は、同じ金額に対して課されるものではありません。
相続税は、相続開始時の暗号資産の相続税評価額を、預貯金や不動産などの他の相続財産と合算して計算します。一方、売却時の所得税は、売却額から所得税計算上の取得価額や必要経費を差し引いた所得を基に計算します。
相続・包括遺贈・相続人に対する特定遺贈などで取得した暗号資産の取得価額は、被相続人の死亡時に、被相続人が選択していた評価方法で算出した金額となります。
そのため、相続税と所得税の両方が生じることはありますが、同じ課税標準に同じ税金が重ねて課されるという意味での二重課税ではありません。
例えば
被相続人が保有していたビットコインについて、相続税評価額と、所得税計算上の死亡時の取得価額がいずれも1,500万円であり、相続人がその後2,000万円で売却したケースを考えてみましょう。
- 相続税
相続税は、死亡時の相続税評価額である1,500万円を基に、他の相続財産と合算して計算します。 - 所得税
所得税の計算上、相続によって取得した暗号資産の取得価額は、被相続人の死亡時に、被相続人が選択していた評価方法で算出した金額となります。この例では取得価額を1,500万円と仮定しているため、売却による所得は「2,000万円-1,500万円=500万円」です。
実際には、この500万円から売買手数料などの必要経費を差し引いた金額が、原則として雑所得の計算対象となります。
なお、相続税評価額と所得税計算上の取得価額は、それぞれ異なる規定に基づいて計算するため、必ず同額になるとは限りません。
仮想通貨の税率が最大110%といわれる理由
相続した仮想通貨について「税率が最大110%になる」といわれるのは、相続税の最高税率55%、所得税の最高税率45%、個人住民税の所得割の標準税率10%を単純に合計したためです。
ただし、これらは異なる金額に適用される限界税率です。相続財産全体や、同じ金額に対して一律110%が課される制度ではありません。
相続税の最高税率55%は、課税遺産総額を法定相続分で按分した「法定相続分に応ずる取得金額」のうち、6億円を超える部分に適用されます。
所得税の最高税率45%は、暗号資産の売却による雑所得などを含む課税所得金額のうち、4,000万円を超える部分に適用されます。個人住民税の所得割の標準税率10%と単純に合計すると55%になりますが、所得税と個人住民税では税額の計算方法が同一ではありません。
したがって、「最大110%」は各税目の最高税率を足した説明上の数字です。実際の税負担は、遺産額、法定相続人の数、売却額、取得価額、必要経費、所得控除などによって異なります。
一定の暗号資産の売却益には申告分離課税が導入される
現時点では、暗号資産の売却益に対する申告分離課税はまだ適用されていません。
令和8年度税制改正により、一定の「特定暗号資産」の対象取引について、所得税15%、個人住民税5%の申告分離課税制度が設けられました。制度の適用時には、復興特別所得税と防衛特別所得税を含めた実効税率は合計20.315%となります。
対象となるのは、金融商品取引業者登録簿に登録されている一定の暗号資産を、暗号資産取引業者への売委託または暗号資産取引業者への譲渡によって売却した場合です。すべての暗号資産や取引に適用されるわけではありません。
制度は、金融商品取引法等の改正法の施行日が属する年の翌年1月1日以後に行う対象取引から適用されます。現時点では施行日が確定していないため、具体的な適用開始年も未確定です。
適用開始前の取引には、従来の総合課税が適用されます。適用開始後であっても、特定暗号資産や取引方法などの対象要件を満たさない取引は申告分離課税の対象外となり、取引の内容に応じて所得区分や課税方法を判断します。
仮想通貨を生前贈与するときの税務上の注意点
暦年課税では、受贈者が1年間に受けた贈与の合計額について、110万円の基礎控除があります。
ただし、暗号資産の生前贈与では、受贈者に贈与税がかかるかどうかだけでなく、贈与者の所得税にも注意が必要です。個人が暗号資産を贈与した場合は、原則として贈与時の時価を基に贈与者の所得を計算するため、暗号資産が値上がりしていると贈与者に所得税が生じる可能性があります。
したがって、贈与額が受贈者の贈与税の基礎控除である110万円以内であっても、贈与者の所得税まで非課税になるとは限りません。
ただし、贈与した相手が相続発生時に相続や遺贈でその他の財産を受け取った場合、相続開始前3~7年の贈与は相続税の対象となる点に注意しましょう(生前贈与加算)。
生前贈与加算の対象期間
| 被相続人の死亡日 | 遡る期間 |
|---|---|
| ~2026年12月31日 | 死亡日前3年間 |
| 2027年1月~2030年12月 | 2024年1月1日から相続開始日までの間の贈与 |
| 2031年1月1日~ | 死亡日前7年間 |
※相続開始の日が2027年1月2日以後の場合、延長された4年間(亡くなる3~7年前)の贈与については、その4年間に行われた贈与額の合計から総額100万円を差し引いた残額が相続税の課税価格に加算されます。
生前贈与には、相続時精算課税を選択する方法もあります。
相続時精算課税では、2024年1月1日以後の贈与について、年間110万円の基礎控除があります。相続発生時に相続税の課税価格へ加算されるのは、原則として各年の贈与価額から、この110万円の基礎控除額を差し引いた残額です。
累計2,500万円の特別控除を適用した部分は、贈与時に贈与税が課されていなくても、相続発生時には相続税の課税価格へ加算されます。相続税の課税価格へ加算される金額は、原則として贈与時の価額を基に計算します。
なお、相続時精算課税を一度選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできません。
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仮想通貨を相続するときの注意点
パスワードが分からなくても相続税はかかる
仮想通貨のパスワードが分からない場合、仮想通貨のアカウントにアクセスできず、実質的に資産を動かせないケースがあります。
ただし、パスワードが分からない場合でも、状況によって相続税の扱いは異なります。
まず、国内の暗号資産交換業者(取引所)の口座で保有している場合は、IDやパスワードが不明でも、本人確認書類などを提出することで、残高の確認や相続手続きを進められる可能性があります。この場合、原則として相続財産として申告が必要です。
一方で、自己管理ウォレットで保有している場合は、秘密鍵やシードフレーズが失われていると、資産の移転ができず、実質的に利用できない状態になることがあります。このようなケースでは、評価や申告の取り扱いについて個別の判断が必要となります。
いずれにしても、IDやパスワードが分からないことを理由に申告を行わないと、延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。
また、被相続人が複数の仮想通貨や取引所を利用していた場合、特定の資産だけを選んで相続放棄することはできません。
国内取引所であれば、相続手続きに対応しているケースが多いため、早めにサポート窓口へ問い合わせることが重要です。海外の取引所を利用していた場合には、各取引所ごとに手続きが異なるため、利用が判明した時点で速やかに確認を行いましょう。
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スマートフォンやパソコンはすぐに処分しない
被相続人が所持していた仮想通貨に関する情報は、スマートフォンやパソコン内にある可能性が高いです。そのため、スマートフォンの解約やアカウントの削除を行ってしまうと、相続に必要な情報が集められなくなってしまいます。
スマートフォンやパソコンの解約手続き、処分に関しては相続の手続きがすべて終了してからにしましょう。
相続が終了するまで仮想通貨の売買・出金などはしない
相続手続きが完了するまでの間に仮想通貨の売買・出金などを行ってしまうと、各取引所の利用規約(借名取引の禁止)に違反するリスクがあります。
また、民法上、相続財産の処分行為は単純承認とみなされる場合があり(民法921条)、相続放棄を検討している場合は特に注意が必要です。手続き完了まで取引は控えることを強くおすすめします。
相続開始後、遺産分割が終わるまでの暗号資産は、相続人間で権利関係が未確定の状態です。相続人の一人が勝手に売買・出金すると、他の相続人とのトラブルや、相続放棄を検討している場合の法定単純承認リスクが生じるため、手続き完了まで取引は控えましょう。
暗号資産を含む相続財産を承継しない場合は相続放棄を検討する
相続放棄は、税額を抑えながら一部の財産を取得する制度ではありません。相続放棄が認められると、初めから相続人ではなかったものとみなされ、暗号資産だけでなく、原則として被相続人の権利や義務を承継しません。
そのため、暗号資産だけを相続放棄して、預貯金や不動産を相続することはできません。被相続人の債務が財産を上回る場合や、暗号資産を含む相続財産を一切承継しない場合に検討する手続きです。
相続放棄をした人が、受取人固有の財産である死亡保険金を受け取ることは可能です。ただし、その死亡保険金が相続税の課税対象となる場合、相続放棄をした人には、相続人を対象とする死亡保険金の非課税枠は適用されません。
また、被相続人の子が相続放棄した場合、その子である孫が代襲相続人になることはありません。
相続放棄をする場合は、原則として相続の開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。暗号資産を売却・送金すると、相続財産を処分したとして相続放棄が認められなくなる可能性があるため、取引前に弁護士へ確認することが重要です。
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仮想通貨の相続税申告は税理士への相談がおすすめ
仮想通貨の相続税申告は、通常の相続と比べて専門的な判断が必要な場面が多くあります。特に以下のようなケースでは、税理士への相談を強くおすすめします。
- 複数の取引所・銘柄・ウォレットにまたがって保有していた
- 評価額が大きく、相続税が高額になりそう
- 「おかしい」と感じるほど税負担が重く、節税策を検討したい
- 故人が仮想通貨を保有していたことは知っているが、詳細がわからない
仮想通貨の相続税申告を得意とする税理士は、暗号資産の評価方法や税務調査への対応にも精通しています。「相続税に強い税理士」を選ぶことが、適切な申告と節税につながります。
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監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
