インスタの開示請求と特定のやり方!被害を訴えるなら弁護士に依頼しよう

インスタ【開示請求・特定】

インスタ(Instagram)で誹謗中傷を受けたことで大きなショックを受けるだけでなく、そういった投稿が残ることでさらなる被害につながるおそれもあります。

そこで、投稿者を特定して法的措置をとることが重要です。開示請求とは、投稿者の氏名や住所などの情報を取得するための手続きといいます。

開示請求が認められれば、投稿者を特定して、名誉毀損や侮辱などの刑事告訴や、損害賠償請求もできます。

本記事では、インスタグラムで誹謗中傷を受け、開示請求によって相手を特定する方法について解説します。

ネット上にプライベートな画像がさらされるリベンジポルノや、身体に危険をおよぼす旨の予告を受けた場合などはきわめて早急な対応が必要です。警察への相談も検討しましょう。

インスタの開示請求!IPアドレスでプロバイダーを特定

インスタで誹謗中傷を受けて相手を特定するためには、まずIPアドレスを知る必要があります。

IPアドレスとはインターネットの住所とも言われており、そのIPアドレスを元に本人特定を進めていくためです。

そこで、IPアドレス情報を所持しているインスタの運営(Meta Platforms, Inc.)に対してIPアドレスの開示を求めていきます。

インスタにIPアドレスを開示請求

インスタの画面上には、相手のIPアドレスは表示されていません。しかしインスタ運営側はIPアドレスの情報を知っているので、情報の開示を求めていくことになります。

もっとも、個人からの依頼に対してインスタ側が応じる義務はありません。自社のサービスを利用している人の個人情報になるので、インスタ側も任意の要求に応じる可能性は低いでしょう。

そのため、裁判所からインスタ運営に対してIPアドレスを開示するように命令してもらう「仮処分」という方法を採ることになります。

裁判所から仮処分命令を出してもらう方法

裁判所からインスタ運営側へ「IPアドレスを開示するように」と命令を出してもらうことができます。この命令は仮処分命令といわれるものです。

仮処分命令が下された場合、インスタ運営側からIPアドレスの開示があります。

ただし、仮処分命令が常に認められるわけではありません。申立て者が受けた権利侵害をしっかりと主張し、その申立てが正当であると認められる必要があります。

権利侵害の例としては、プライバシーの侵害、名誉毀損、侮辱罪などがあげられます。インスタでの誹謗中傷の内容によって異なるので、どういった法的根拠で申し立てるべきかは弁護士に相談してアドバイスを受けておきましょう。

IPアドレスはアルファベットとと数字の羅列情報ですが、その内容を元に投稿者の利用していたプロバイダーがわかります。

ありがちな勘違い

IPアドレスでわかることはプロバイダー情報であって、投稿者の氏名や住所の情報ではありません。氏名や住所を知るためには、IPアドレスから判明したプロバイダーに発信者情報の開示を受ける必要があります。

なお、仮処分手続きには担保金が必要です。仮処分による情報開示で何らかの不利益があった場合、担保金がその補償に充てられます。正当な申立てであれば後ほど返還されるのですが、申立て時には用意しておく必要のあるお金といえます。

インスタの開示請求!プロバイダーから発信者情報の開示を受ける

裁判所からの仮処分命令によって、インスタ投稿者のIPアドレスの開示を受けられます。

そのIPアドレスから分かったプロバイダーに対して発信者情報の開示請求をおこないましょう。

プロバイダーに発信者情報の開示を求めよう

IPアドレスから分かったプロバイダーに対して、発信者情報の開示を求めることができます。

ただしこの書面での開示請求は「任意」のため、プロバイダー側が応じる義務はありません。プロバイダーとしても、契約者の情報開示に安易に応じるわけにはいかないものです。

そのため、プロバイダーに対して「発信者情報開示請求訴訟」を起こすことになります。

プロバイダーへの発信者情報開示請求訴訟

プロバイダーへの発信者情報開示請求訴訟では、インスタの投稿によってどんな権利侵害を受けているのか、証拠と共に示す必要があります。

訴訟時に有効な証拠としては、誹謗中傷のスクリーンショットやPDFがあげられます。

投稿はもちろん、コメントやストーリーズで誹謗中傷されている場合は、それらも必ずスクリーンショットをとっておきましょう。投稿したアカウントや投稿日が映るように保存しておいてください。

誹謗中傷で受ける権利侵害の例は?

裁判所は証拠をもとにして、被害者の権利侵害の内容を十分に検討します。

権利侵害については、誹謗中傷の内容次第ですが、プライバシー侵害、侮辱罪、名誉毀損があげられるでしょう。

もっとも誹謗中傷された人がこれらをひとつずつ精査していくのは難しいので、「誹謗中傷を受けた」と感じる部分は全て証拠を保存して弁護士に相談しましょう。

発信者情報開示請求によって特定にいたる

繰り返しますが、インスタから開示されたIPアドレスだけでは個人は特定できません。

発信者情報開示請求訴訟によって、裁判所からプロバイダーに対して開示命令がくだされ、そこで契約者の氏名や住所が明らかになります。

インスタへの仮処分申し立てからプロバイダーへの訴訟対応までは、様々な法的手続きが必要です。申立て書類や証拠の用意についても、法律や裁判手続きにくわしい者でないと、準備に時間がかかってしまいます。

開示請求による特定は時間との勝負になることも多く、準備に手間取っていると誹謗中傷したアカウントの特定が難しくなるのです。

インスタの投稿者を特定して法的手続きを取りたいという方は、弁護士への早急な相談をおすすめします。弁護士を立てるメリットはもちろん、費用面のリスクについてもしっかり説明を受けておいてください。

発信者情報開示請求についてもっと詳しく知りたい方は、関連記事『発信者情報開示請求の要件と流れ|誹謗中傷の投稿者を特定する方法を解説』も参考になります。

【改正プロバイダ責任制限法】施行により時間短縮も期待

2022年10月1日には改正プロバイダ責任制限法が施行され、インターネット上の誹謗中傷に苦しむ人にとってのメリットが期待されています。

従来からの主な変更点としては、IPアドレスの開示請求とプロバイダーへの発信者情報開示請求が同時におこなえる点、発信者情報の開示範囲が広くなった点です。

IPアドレスと発信者情報の開示請求を同時におこなえる

従来の方法では、IPアドレスの開示請求を「仮処分」で申し立てた後、別途、プロバイダーに対して発信者情報の開示請求をおこなう必要があります。

しかし改正プロバイダ責任制限法による「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」を利用すると、こうした手続きを一度におこなえるようになり、時間短縮が期待されているのです。

正式な裁判ではない「非訟手続」であることも、事務手続きの簡略化などから時間短縮につながると考えられています。

発信者情報の開示範囲が広くなった

これまでの情報に加えて、アカウントを作成・削除したときの情報、アカウント作成時のSMS認証における電話番号、アカウントへのログイン・ログアウト時の情報などが開示対象とされました。

インスタのように、アカウントにログインする形式のサービスについても開示請求がしやすくなったといわれています。

相手の出方に左右される側面もある

改正プロバイダ責任制限法による「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」は時間短縮が期待できる一方、インスタ側やプロバイダー側の異議申し立てによっては、通常の裁判手続きへ移行するものです。

通常の裁判手続きに移行するとかえって時間がかかるケースもあるので、従来の方法をとるのか、「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」でおこなうのかは慎重に検討しましょう。

インスタの開示請求や特定実績のある弁護士に見解を聞いてみることをおすすめします。

特定に必要な情報が削除される前に対処!

インターネット上の情報はずっと残っているわけではなく、とくにプロバイダーのログ保存期間は約3ヶ月から半年ほどといわれています。

インスタで誹謗中傷がなされても、特定までに時間がかかってしまうと対処が間に合いません。こうした情報の消去がなされないよう、保存を申し立てる必要があります。

インスタの開示請求や特定に詳しい弁護士であれば、先々を見据え、あらゆるリスクに粛々と対処可能です。一人で悩まず、早めに弁護士相談を利用してみましょう。

インスタで特定した相手を訴えることはできる?

インスタで特定した相手には、その誹謗中傷の内容に応じて民事責任と刑事責任の両方を問うことができます。

かみくだいていうと、民事責任とは、誹謗中傷の内容によって受けた損害を金銭で賠償してもらうことです。慰謝料や弁護士費用等が内訳としてあげられるでしょう。

刑事責任とは、警察に告訴状を提出して相手への刑罰を求めることをいいます。どういった訴えの内容になるのか、民事責任と刑事責任とにわけて説明していきます。

慰謝料の請求(民事責任)

インスタ上での誹謗中傷によって権利侵害を受けた場合、民法709条をもとに損害賠償請求が可能です。代表的な権利侵害としては、侮辱罪、名誉毀損などがあげられます。

ただし慰謝料にはおおよそ相場が決まっているので、あまりにも法外な金額の請求は認められない可能性が高いです。

名誉毀損にあたる誹謗中傷に対しては10万円程度から50万円程度侮辱罪にあたる誹謗中傷に対しては数万円程度が相場と考えられます。

このように誹謗中傷によって侵害を受けた被害者の権利によって、慰謝料の相場は変わるものです。

関連記事『誹謗中傷の慰謝料相場はいくら?損害賠償請求の流れと注意点をおさえよう』では、慰謝料請求の流れや請求時に知っておきたい注意点も解説しています。参考にしてみてください。

名誉毀損と侮辱罪の違いはどこにある?

名誉毀損の成立要件として、(1)公然性があること(2)事実を摘示して名誉を毀損したことの両方が必要です。

インスタの投稿やコメントなど不特定多数の人にみられる状況であれば、公然性があると認められるでしょう。

事実の摘示については個別の判断になりやすいので、弁護士にたずねてみることがおすすめです。考え方の一例を以下に示します。

  • 「Bさんは詐欺師で、虚偽の投稿ばかりしている」と書かれると、詐欺師、虚偽の投稿をしているといった事実が摘示されており、なおかつBさんの社会的評価をおとしめるものといえます。名誉棄損にあたる可能性があります。
  • 「Cさんは美容整形ばかりしていて常に金欠」と書かれた場合、美容整形をしているということが事実の摘示にあたり、社会的評価をおとしめるものといえるでしょう。名誉毀損にあたる可能性があります。
  • 「Dさんはブスだ」と書かれた場合、事実の摘示とはいえず、名誉毀損ではなく侮辱罪の成立を検討するべきです。

誹謗中傷を書かれた人が、名誉毀損や侮辱罪を冷静に区別することは難しいものです。

インスタの誹謗中傷にお困りで、相手を特定したい、もう悪口を書かれないように賠償請求したいという方は弁護士への相談も検討してください。

侮辱罪と名誉毀損の違いについては関連記事『侮辱罪の成立要件は?名誉毀損罪との違いや侮辱罪になる言葉の具体例を紹介』も役にたちます。

誹謗中傷を警察に訴えて告訴する(刑事責任)

インスタ上での誹謗中傷について警察に被害を訴え、加害者への刑罰を求める「告訴」もできます。

侮辱罪や名誉毀損は親告罪といって、その事実を知って半年以内に告訴する必要があります。告訴とは警察に被害事実を申告し、加害者への刑事処分を求めるというものです。

告訴後は、警察や検察が事件を捜査して刑事処分が決定します。起訴されると前科がつきますし、不起訴となっても前歴といって、警察の捜査を受けた記録が残ります。

名誉毀損の刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金、侮辱罪の刑罰は拘留(1日以上30日未満の拘置)または科料(1,000円以上1万円未満)です。

刑事告訴についてくわしく知りたい方は記事『刑事告訴の方法と告訴費用を解説!ネットトラブル・誹謗中傷を警察に訴えたい』もお役立てください。告訴のやり方や費用を解説しています。

インスタの開示請求に関するよくある質問

ストーリーズも開示請求できる?

ストーリーズでの誹謗中傷も開示請求できる可能性があります。

ストーリーズとは24時間後に自動的に削除される形式のものです。写真や文章とともに名誉毀損、侮辱にあたる投稿がなされている場合、早急にそのストーリーズの画面をスクリーンショットで保存しておき、証拠としてください。

事実も名誉毀損として訴えることはできる?

名誉毀損の成立要件には、事実かどうかは関係ありません。そのため、本当のことでも、嘘のことでも、名誉毀損の成立要件を満たしていれば成立します。

たとえば「美容整形を繰り返しているのにブス」などと書かれた場合、美容整形しているかどうかは重要ではありません。

関連記事『名誉毀損とは?成立要件や被害者が行える法的請求の内容がわかる』の解説を読むと、名誉毀損の成立要件の理解が深まります。

DMで誹謗中傷を受けたら開示請求できる?

DMでの発信者情報の開示請求は難しいでしょう。

DMはきわめてプライベートなコミュニケーションであり、特定のユーザー間でのやり取りになるので、開示請求が認められる可能性が低いといえます。

ストーカーのように嫌がらせを繰り返して受けていたり、身体に危害を加える旨の予告・脅迫ならば、警察への相談を行いましょう。

関連記事では匿名の相手からの誹謗中傷や嫌がらせへの対処法についてもくわしく解説しています。関連記事『捨て垢や匿名も特定できる!誹謗中傷や嫌がらせへの開示請求と特定後の対応』も併せてご確認ください。

開示請求は赤字になることもあるの?

インスタを問わず、インターネット上の誹謗中傷の特定は費用面で損をする可能性があります。

その理由としては、名誉毀損や侮辱罪の慰謝料相場が高額ではないこと、特定できても相手にお金がないと賠償を受けることが困難になること、必ずしも特定できるとは限らないことなどがあるでしょう。

開示請求については「相手から多額のお金をもらう」という意味合いよりも、「相手に本当に反省してほしい」「再発防止の抑止力にしたい」というお気持ちの方が多いといえます。

開示請求にかかる費用については関連記事『発信者情報開示請求の費用相場と内訳は?弁護士費用は相手に請求できる?』でより詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

開示請求にかかった費用は相手に請求してもいい?

相手を特定できた場合、弁護士費用の請求は可能ですが、全額請求は難しい可能性もあります。

弁護士費用については一部の請求にとどまる可能性が高い点に注意してください。なお、弁護士費用については各法律事務所の費用体系によるため、着手金や報酬金がどういった場合にいくらかかるのか、きちんと説明を受け、納得感を持つことが大切です。

開示請求費用の内訳や相場は、関連記事『発信者情報開示請求の費用相場と内訳は?弁護士費用は相手に請求できる?』でわかりやすく解説していますので参考にしてみてください。

特定にかかる期間はどれくらい?

発信者情報開示請求によって相手を特定するまでおよそ10ヶ月はかかると考えておきましょう。

もっとも改正プロバイダ責任制限法による「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」によって、比較的スムーズに特定に至った場合には、時間短縮が期待できます。

インスタの開示請求を弁護士に依頼するメリット

インスタで開示請求を考えている方は、特定・開示請求といったネットトラブルに詳しい弁護士への相談・依頼がおすすめです。

誹謗中傷の内容によって、どういった民事責任に問えるのか、刑事処分を負わせることができるのかなど、弁護士に見通しを聞いてみましょう。

インスタの開示請求を弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。

  • 法的知識とノウハウで開示請求を進めることができる
  • インスタ運営やプロバイダーの出方に合わせた柔軟な対応がとれる
  • 誹謗中傷による権利侵害を「法的トラブル」として訴えることができる
  • 開示請求によって特定した後の対応にもくわしい

インスタの開示請求を考えている方は、ログ情報が失われる前に対処が必要なので、早めに弁護士への相談を検討してください。

インスタの誹謗中傷削除を検討している方は『インスタグラムで削除して欲しい投稿やコメント、アカウントへの対処法』の記事も併せてお読みいただけます。

もっとも削除によって証拠となる投稿が失われれば、開示請求や特定が困難になる恐れもあるので、弁護士に相談して判断してください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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