YouTubeに名誉毀損・肖像権侵害・著作権侵害を訴えて削除依頼できる?
Youtubeは簡単に投稿できるなじみやすい動画サイトである一方、なかには他人の権利を侵害しているものも存在するのが実情です。
- 自分を名指しでバカにしている動画がアップされている…
- 知らないうちに顔写真が出回ってしまっている…
- 自分のSNSがYoutubeに転載されている…
こうした動画は、あなたの権利を侵害するものとして削除を依頼すべき対象といえます。
この記事では、名誉毀損・肖像権侵害・著作権侵害といった権利侵害が、Youtube動画の削除依頼の根拠になることを説明していきます。
目次
Youtubeはどんなときに削除依頼できる?
名誉毀損や著作権侵害など権利侵害をしているもの
「具体的に権利侵害が発生していること」を主張し、認められるときには削除依頼によって削除ができます。
動画削除を依頼する方法としてはYoutubeへの通報・報告があります。関連記事では動画の削除依頼方法をくわしく解説しているので、参考にしてみてください。
Youtubeは自由度の高い動画投稿サイトですが、他人の権利を侵害するものや犯罪行為にあたるものは当然認められません。
つづいて名誉毀損、肖像権侵害、著作権侵害など権利侵害別にYoutube削除の流れをみていきましょう。
誹謗中傷動画は名誉毀損で削除依頼できる?
誹謗中傷動画を名誉毀損として削除依頼する方法
YouTubeは「法律に関するポリシー」にて、名誉毀損についても報告フォームを設けており、フォームを使って削除を申立てることができます。
Youtubeへ名誉毀損を根拠に削除の申立てをする流れは以下のとおりです。
名誉毀損による削除依頼
- Youtubeの「ヘルプセンター」から「Youtubeのポリシー」を選択
- 「法律に関するポリシー」から「名誉毀損」を選択
- 国を選択し、フォームを選択
- 削除依頼のウェブフォームが開かれる
※アップデートによる仕様変更で手順が異なることもあり
削除依頼フォームには、名誉毀損に該当する文言を入力することがポイントです。
また、名誉毀損にあたる部分が動画内のどのあたりか、あるいは動画タイトル、概要などのどの部分なのかも明確に記載しましょう。
注意
「名誉毀損の申し立ての要件」にも記載がありますが、相手方に氏名などを通知したくない場合はその旨を明記せねばなりません。
なお、Youtubeが法的申立てと見なすものは、当事者やその代理人からの通知に限っています。
そのため、ご自身でどのように記載すべきか迷いがある方は、弁護士に書き方の助言を受けることや、削除依頼そのものを任せることもおすすめです。
報告しても削除されるかは不透明
悪質な誹謗中傷コメントは、運営側への報告(通報)で削除を求めることが可能です。
ただし、削除されるのは他人の権利を侵害しているとして運営側が認めた場合に限られます。悪質性の程度によっては削除対象にならないものもあるでしょう。
本記事内「Youtubeに削除してもらえないときの対処法は?」でも解説の通り、裁判手続きである「仮処分」を利用できる可能性もあります。
名誉毀損にあたる誹謗中傷とは?
名誉毀損は次のようなときに成立しうるものです。
成立要件
名誉毀損:事実の摘示をして、公然と人を侮辱する
事実の摘示とは、具体性のある誹謗中傷ということです。「前科がある」「職場不倫している」などは具体性があるとして名誉毀損を検討します。
あるいは、名誉毀損のような事実の摘示がないケースでも公然と人を侮辱した場合には「侮辱罪」が適用される可能性はあります。
名誉毀損と異なる「名誉感情の侵害」は削除の理由になる?
名誉毀損の適用が難しくても、名誉感情の侵害を根拠に訴えるケースもあります。
名誉感情とは、自己評価や自尊心のことです。こうした名誉感情を傷つけられたと判断された場合には、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められるでしょう。
現に「インターネット上の動画投稿サイトに投稿された動画等により自己の名誉を違法に侵害された者は、上記動画等の削除権限を有する動画投稿サイトの管理者に対し、人格権としての名誉権に基づき、当該動画等の削除を請求することができるものと解される。」と述べる判例もあります。(東京地方裁判所 令和5年2月1日 発信者情報開示等請求事件)
Youtubeのポリシーにも注目
たとえば、Youtubeは「ハラスメントやネットいじめに関するポリシー」をかかげ、「次のようなコンテンツはYouTubeで許可されていません。」と明言しています。
Youtubeでは許可されないコンテンツとして例示されているものの一部を示します。
ポリシーより一部抜粋
- 個人を標的とし、その人物の死や深刻な負傷を望むこと。
- 他人の身体的安全に対する脅し。
- 他者の写真を繰り返し提示して「あいつの歯を見てみろ。気持ち悪いな」といった発言をする、または本質的属性を対象として動画で類似のコメントをすること。
名誉毀損の成立要件を満たさないときには、名誉毀損罪で刑事責任を負わせることは難しいです。しかし、名誉感情の侵害を根拠とした民事責任を追及できる可能性は十分あります。
おおまかえにいえば、刑事責任を問うことは相手に対して刑罰を負わせることです。民事責任を問うことは相手に対して賠償金の支払いを求めることをいいます。
「相手に対して何を望むのか」の整理をしつつ、対応に悩んでいる方は一度弁護士に相談をして、方針の検討を進めるとよいでしょう。
自分の顔が勝手にアップされたら肖像権侵害で削除できる?
どんな動画が肖像権侵害になる?
Youtubeプライバシーガイドラインによると、「個人を一意に特定できる」とき、動画は削除の対象です。
個人を一意に特定できるとは、「他人が個人を特定するのに十分な情報が動画の中に含まれている」ことを意味します。
具体的には、顔写真、音声、名前、連絡先などの情報が動画内にあり、個人を特定できる場合は、その動画はプライバシーを侵害するものといえるのです。
「OKを出していないのに、自分の顔がはっきり映った動画が投稿された」「盗撮されていて顔がはっきりと映っている」などは、権利侵害といえる可能性があります。
削除を希望する場合、Youtubeプライバシーガイドラインを参考にして動画の運営側に通報しましょう。
顔や名前が映っていても削除されないことはある?
被害にあった本人からすると「これは自分のことだ!」と思うはずです。ところが、他の人から見ると誰のことだかわからない、特定できないということもあります。
そうすると、残念ながら削除に応じてもらえない可能性が高いのです。
たとえば、次のようなものは個人を一意に特定できるとはいえない場合があります。
- 雑踏を映した動画に自分が少し映り込んだ
- 自分の下の名前だけが出ている
- コンサートの映像の中に自分の歓声が入っている
客観的な判断が必要になるため、上記のような被害にあってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
プライバシー侵害についての理解が深まる関連記事も参考にしてみてください。
YouTubeに無断転載された場合は削除できる?
著作権侵害を主張する
自身のSNSにアップロードしたコンテンツが無断でYoutubeにアップロードされていたり、Youtube内で無断転載されたりといったトラブルも起こっています。
無断転載については著作権侵害を訴えることで削除できる可能性はありますが、その方法には注意が必要です。
SNSの転載も著作権侵害
YouTubeに自分のTikTok動画やストーリーが無断で転載されて困っているというケースも増えています。
動画は、作成した方の著作物となります。Aさんが個人的に撮った動画は、Aさんの著作物であり、Aさんに著作権があります。
勝手にYouTubeにアップされることは、他人の著作物を無断で使用した動画ということです。Aさんは、「自分の著作権が侵害された」と主張して、動画の削除を求めることができます。
YouTubeでの報告には慎重な判断も必要
著作権侵害について、YouTubeでの報告方法はこのような手順で行います。
Youtubeでの報告方法
- 動画に設置された報告ボタンから「法的問題」を選択する
- 「著作権の問題」を選択する
※アップデートによる仕様変更で手順が異なることもあり
その他にも、サポートページを使って運営側に通報する方法もあります。
もっとも、著作権侵害については著作権者名に本名を書くと相手に伝わってしまうことに注意してください。
著作権侵害は弁護士の見解も聞いておこう
以前、他の人の動画が自身の動画の著作権を侵害しているとして、報告機能から著作権侵害を通報したケースがあります。
通報されて動画を削除されてしまった方は「自分は著作権侵害はしていない」として裁判を起こし、逆に通報した側に損害賠償が命じられたこともあるのです。
Youtubeの報告機能は権利を守るために有意義ではありますが、自身の権利を主張することが他人の権利を侵害するケースがあることも忘れてはいけません。
著作権侵害については弁護士に相談をして、法的な見解を聞いてみることをおすすめします。
Youtubeでの動画削除に関してよくある質問
本名が動画に出されているときには削除される?
動画に本人の同意なく個人を特定できる情報が含まれている場合、プライバシー侵害の申立てにより削除される可能性があります。
個人情報とは、画像、お名前、マイナンバー、銀行口座番号、連絡先情報をはじめとして本人を特定できる情報をさします。
「プライバシー侵害の申し立て手続き」から手順に沿って申請しましょう。
Youtubeに削除してもらえないときの対処法は?
Youtube側に削除を求めても対処してもらえないときには、裁判手続きである「仮処分申立て」による削除も有効です。
仮処分とは、通常の裁判の結果を待っている間にも権利侵害が進んでしまったり、仮処分命令がなければ権利侵害が起こってしまうといった場合に用いる手段になります。
仮処分申立ては裁判の手続きになるので、裁判費用が必要です。また、手続き上かならず「担保金」が必要になるので、仮処分申立て時には用意しておきましょう。
削除請求における仮処分申立てについては関連記事で解説しています。弁護士に対応を任せることが望ましいケースもあるため、まずは弁護士への相談も検討しておきましょう。
何度削除しても再発するときの対処法は?
Youtube側に削除を申請し、実際に削除がなされてもまた同様の誹謗中傷や権利侵害が起こってしまうことも十分あります。
そんなときには削除するだけではなく、匿名の相手が誰なのかを特定し、損害賠償請求をすることも視野に入れるべきでしょう。
匿名の相手を特定する方法は「発信者情報開示請求」という手続きですが、裁判による法的手続きなので、弁護士へ相談・依頼する被害者も多いです。
誹謗中傷のYoutube動画が他に転載されているときは?
Youtube動画が他の掲示板サイトやSNSに転載されているときには、おおもとのYoutube動画を削除すればいい場合もあれば、転載先の対応が必要になる場合もあります。
もしもYoutubeに対して削除を申請して対応してもらえたとしても、削除対象はあくまでYoutubeサイト内の動画のみです。
掲示板サイトやSNSの削除方法については、関連記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
これって削除できる?弁護士に意見をもらうのがおすすめ
Youtubeで悪口を言われたり、勝手に顔写真を乗せられたりといった被害にあったとき、削除を検討しているなら弁護士への相談もおすすめです。
インターネット上のトラブルにくわしい弁護士であれば、
Youtubeに関する削除申請を検討している方にとっては、他にもさまざまなメリットを受けられるでしょう。
弁護士相談をすすめる理由
- 法律の専門家の立場からの見解を聞ける
- 弁護士なら被害者の代理人として削除申請できる
- 法的根拠にもとづく削除申請で説得力が増す
とくにネット上の誹謗中傷問題について知識のある弁護士であれば、削除申請の手順や法的根拠の示し方を熟知しています。スピーディな対応が期待できるでしょう。
無料相談をおこなう法律事務所や、電話・オンライン相談をおこなう法律事務所もありますので、自分の希望に合う法律事務所を探してみましょう。
ネット上の誹謗中傷問題にくわしい法律事務所や弁護士を探したい方は、下記バナーより、弁護士探しのポイントをまとめた記事もお役立てください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了