裁判離婚の流れと期間や費用相場を弁護士が解説

配偶者が離婚を拒否しており、調停でも合意できなかった場合、最終手段となるのが離婚裁判です。
離婚裁判が必要になるのは、配偶者が離婚を拒否して調停でも解決しなかった場合、慰謝料や財産分与で譲れない条件がある場合などです。
ただし、裁判で離婚を認めてもらうには、不貞行為やDV、悪意の遺棄といった法定離婚事由が必要です。
裁判には平均で1年から2年という長い期間がかかり、弁護士費用も70万円から120万円と高額です。精神的な負担も大きいため、誰にでも適した方法とは言えません。
この記事では離婚裁判の流れや期間と費用の内訳に加えて、有利な条件で離婚するための実務的なポイントを弁護士が解説します。裁判を迷っている方や不安を感じている方はぜひ参考にしてください。
目次
離婚裁判の流れは提訴から判決まで5段階
離婚調停で合意に至らなかった場合には、離婚裁判を検討することになります。
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離婚の裁判は以下の流れで進みます。
離婚裁判の流れ
- 原告が家庭裁判所に訴状を提出する
- 訴状の送達を受けた被告が、答弁書を送る
- 第一回口頭弁論が開かれる
- 月に1回程度の頻度で口頭弁論を繰り返す
・必要に応じて本人尋問が行われる
・裁判官から和解の勧告を受ける - 判決とその後の手続き
訴状・答弁書の提出
離婚裁判の第一歩は、訴状の提出です。訴状には、以下の事項を記載します。
- 原告・被告の氏名・住所
- 離婚に伴う財産分与や親権などの請求
- 離婚を求める理由
訴状は、家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。
訴状の提出先は夫婦どちらかの住所地を管轄する家庭裁判所です。訴状と合わせて証拠書類の提出や費用の支払いも行います。
訴状を提出すると、訴状のコピーと呼出状が相手方に送達されます。相手方は、訴状が送達された日から定められた期限内に答弁書を提出する必要があります。相手方は、答弁書に訴状に対する反論を記載します。
訴状・答弁書の提出は、離婚裁判の第一歩です。この手続きをしっかりと行うことで、離婚裁判を有利に進めることができます。
口頭弁論|本人尋問のポイント
訴状を出すと、通常、1か月~2か月程度で第一回の口頭弁論が開かれます。
口頭弁論とは、裁判官の面前で、当事者や弁護士が主張や証拠を述べる手続きです。
口頭弁論は1か月程度の間隔をおいて開かれますが、最初のうちはほとんどが準備した書面のやりとりで進みます。弁護士がついていれば本人が出席する必要もありません。
お互いの主張と証拠が整理された段階で、いよいよ当事者本人が裁判所に出廷して、裁判官や相手方からの質問に答える本人尋問がおこなわれます。
本人尋問のポイント
- 事前に準備をしておく
- 正直に答える
- 相手方の質問には、冷静に
本人尋問は、離婚裁判において重要な手続きです。この手続きで、裁判官が当事者の主張や立場をどのように判断するかが決まると言っても過言ではありません。
そのため、事前に準備と練習をしておくことが大切です。
裁判官は、当事者本人の態度や表情から主張の信憑性を判断します。一貫した態度で正直に答える姿勢が重要です。相手方の質問に対しても感情的になることなく冷静に答えるようにしましょう。

弁護士
弁護士に依頼すれば、本人尋問の練習をすることができます。
本人尋問の進め方や、回答のポイントなどについてもアドバイスを受けられるので、本人尋問を成功させるためには弁護士に依頼することをおすすめします。
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・離婚裁判の本人尋問では何が聞かれる?|本人尋問7つのポイント
判決とその後の流れ
口頭弁論が終了すると、裁判官が判決を下します。判決書は、裁判所から当事者双方に送達されます。
判決に不服がある場合は、2週間以内に高等裁判所に控訴することができます。この間に控訴がなければ判決が確定し、離婚もその時点で成立します。
判決確定後は、10日以内に離婚届を提出する必要があります。裁判離婚の場合は、離婚届に相手の署名や証人の記載は必要ありません。
離婚後の手続きでは、離婚届の受理を証明する「離婚届受理証明書」が必要な場面も多くあるため、早めに提出しましょう。

弁護士
裁判離婚では、離婚自体は判決が確定すると同時に成立しますが、離婚届を提出しないと戸籍法違反になります。
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裁判で離婚する際の注意点
離婚の3つの方法|協議・調停・裁判の違い
離婚には主に3つの方法があります。夫婦の話し合いで合意する協議離婚、中立的な第三者を介する調停離婚、裁判で争う裁判離婚です。
それぞれの期間と費用を比較してみましょう。
| 方法 | 期間 | 費用 |
|---|---|---|
| 協議 | 数週間~数ヶ月 | ほぼ無料 |
| 調停 | 約6か月 | 数千円 |
| 裁判 | 1~2年 | 70~120万円(弁護士に依頼する場合) |
離婚裁判を起こすには、原則として先に家庭裁判所で調停を行う必要があり、調停が不成立となって初めて裁判を起こせます。
離婚裁判のメリット・デメリット
離婚裁判は時間と費用もかかります。また、精神的負担も大きいものですので、よく検討した上で、判断する必要があります。
離婚裁判を起こすことを検討している場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
離婚裁判を起こすメリット
- 離婚が認められる
離婚裁判で離婚が認められれば、合意がなくとも夫婦関係は完全に解消されます。 - 財産分与や親権なども判断してもらえる
訴状で申し立てた事項は裁判所が判断するので、相手に譲歩する必要もありません。 - 感情的な相手方の態度や行動を抑制できる
相手方が裁判所の判断を意識して慎重になったり、弁護士を依頼するようになる可能性があります。
離婚裁判を起こすデメリット
- 時間と費用がかかる
離婚裁判は、平均して1年から2年程度の時間がかかります。また、弁護士に依頼する場合は、弁護士費用がかかります。 - 精神的負担が大きい
離婚裁判は、当事者双方にとって精神的負担が大きいものです。
離婚を裁判で争うための条件
離婚を裁判で争うためには、婚姻関係が破綻していることと、法定離婚事由があることの2つの条件を満たす必要があります。
法定離婚事由とは、民法で定められた離婚の理由です。以下の5つがあります。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
※「悪意の遺棄」とは、夫婦の同居義務や協力義務・扶助義務を正当な理由なく放棄する行為をいいます。
法定離婚事由があっても、離婚が認められるかどうかは、裁判官の判断によります。裁判官は、当事者の主張や立場を総合的に判断して、離婚を認めるかどうかを判断します。
そのため、離婚裁判を起こす場合は、主張や立場を明確にし、証拠を収集しておくことが重要です。
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証拠収集と争点整理を徹底する
離婚裁判で勝つためには、主張や立場を裏付ける証拠を収集し、争うべき事柄を明確にしておく必要があります。
証拠が不十分であったり、争点が明確になっていないと、裁判が長引いたり、不利な判決が下されたりする可能性があります。
主張や立場を裏付ける証拠
- 書類:メール、LINE、手紙、契約書、診断書など
- 写真や動画、音声データ
- 証言 など
証拠を収集する際には、以下のポイントを押さえることが大切です
離婚を切り出す前に収集する
証拠は、早めに収集しておくことが大切です。時間が経つと、証拠が消失したり、改ざんされたりする可能性があります。
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客観的な証拠を集める
主観的な証言や、推測に基づく証拠は、裁判官に認めてもらいにくい傾向があります。客観的な証拠を集めるようにしましょう。
どのような証拠を集めたらよいか弁護士に相談してみることをおすすめします。また実際の証拠集めでは探偵などを利用することも有効です。
証拠の信ぴょう性を高める
証拠の信ぴょう性を高めるためには、証拠を複数集める、弁護士に見てもらうなどが有効です。
和解はすべき?
離婚裁判では、裁判官の判断で離婚が認められるかどうかが決まります。しかし、判決に至る前に裁判所から和解の勧告を受けることが通常です。
裁判は時間と費用がかかり、精神的負担も大きいものです。
そのため、和解を検討することも大切です。
和解のメリット
- 時間と費用がおさえられる
- 精神的負担が少ない
- 離婚の条件を自由に設定できる
- 納得して合意しているので、取り決めが守られやすい
和解のデメリット
- 相手方の同意が必要
- 希望する条件が得られない可能性がある
裁判を進める中で、判決の見込みや落としどころというものも見えてきます。
財産分与や親権などの請求が満足できるものであれば、和解を検討する余地があります。 弁護士と相談しながら慎重に判断しましょう。
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離婚裁判の期間と費用
離婚裁判の期間は1年から2年程度
離婚裁判の期間は、平均して1年から2年程度です。ただし、争点が多い場合や、和解交渉が長引く場合は、3年以上かかることもあります。
判決後に控訴や上告が行われると、さらに期間が長引く可能性があります。
離婚裁判の期間を短縮するためには、早めに弁護士に依頼し、争点を明確にしておくことが大切です。
また和解によって早期解決をすることも考えられます。
離婚裁判の費用は弁護士依頼の有無で変わる
離婚裁判にかかる費用は、主に裁判所への費用と、弁護士費用があります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 裁判所費用 | 約2万円 |
| 弁護士着手金 | 33~55万円 |
| 弁護士成功報酬 | 33~55万円 |
| 諸経費 | 数万円 |
| 合計 | 70~120万円 |
弁護士費用は高額ですが、証拠収集や本人尋問の準備といった専門的なサポートが受けられます。また、証拠集めに探偵や調査会社を利用する場合は、別途費用がかかる点に注意しましょう。
それでは、裁判所への費用と弁護士費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
裁判所への費用
裁判所への費用は、以下のとおりです。
- 収入印紙代
- 郵便切手代(予納郵便料)
収入印紙代は、裁判の申立手数料です。訴状などの書類に貼付されます。郵便切手代は、裁判所から被告や関係者に郵便物を送付するための郵便費用です。
収入印紙代は、離婚の請求のみの場合は13,000円、慰謝料や財産分与などの請求も併せて行う場合は20,000円程度です。郵便切手代は、約6,000円程度です。
弁護士費用
弁護士費用は、弁護士によって異なります。着手金、成功報酬金、諸経費などから構成されます。
着手金は、弁護士に依頼する際に支払う費用です。成功報酬金は、裁判で勝訴など一定の成果が得られた場合に支払う費用です。諸経費は、裁判書類の作成や証拠収集などの費用です。
離婚裁判を依頼する場合の弁護士費用の相場は、着手金が33~55万円ほど、成功報酬金が33~55万円ほど、諸経費が数万円程度です。
弁護士に離婚裁判を依頼する場合は、着手金と成功報酬金の合計で、70~120万円程度の費用がかかることを想定しておきましょう。
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離婚裁判に関するよくある質問
Q. 離婚裁判で和解をすすめられたら応じるべき?
和解は任意であり、必ず応じる必要はありません。判決の見込みや提示された条件を踏まえて、当事者が慎重に判断すべきものです。
希望条件の8割程度が満たされる場合や、判決が不利と予想される場合は和解を検討する価値があります。弁護士とよく相談して判断しましょう。
Q. 相手が裁判に出席しない場合はどうなりますか?
相手が欠席しても裁判は進行します。答弁書が提出されていれば主張があったとみなされ、裁判所は提出された証拠に基づいて判断します。
Q. 判決に不服がある場合、控訴の期限はいつまで?
判決書が送達されてから2週間以内です。この期間内に控訴しなければ判決が確定し、離婚が成立します。控訴を検討する場合は迅速に弁護士に相談してください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
まずは調停を経てからでなければ離婚裁判をすることはできません。