離婚のメリットとデメリットは?女性のリスクを弁護士が解説

離婚を検討している女性にとって、もっとも気になるのは「離婚後の生活がどうなるか」ではないでしょうか。
離婚には「夫からの解放」「時間の自由」といったメリットがある一方、「経済的困窮」「子どもへの影響」など、無視できないデメリットやリスクも存在します。
厚生労働省の「令和7年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2025年の離婚件数は約17万9,000件です。
この記事では、弁護士監修のもと、女性が離婚する際のメリット・デメリット・リスクを網羅的に解説します。離婚前に確認すべきチェックリストや、離婚以外の選択肢もあわせてご紹介しますので、後悔のない決断をするための判断材料としてお役立てください。
女性が離婚するメリット
精神的な解放感を得て自分らしい人生を送れる
離婚を検討している方が一番望んでいるのは、おそらく夫から離れることでしょう。
たとえ離婚をして生活水準が下がっても、夫と暮らさなくていいのなら構わないと考えている方は多いです。DV・モラハラや夫のお世話から解放されるだけでも、離婚のメリットは大きいといえます。
離婚してみると、知らず知らずのうちに夫に怯えて過ごしていたことに気づいたり、ずっと続いていた体調不良が治ったりする方もいるようです。
また、高齢になった時、夫の介護をしなくて済むのもメリットです。
子どもを問題のある家庭環境から守ることができる
- 夫が子どもを虐待している
- 子どもの前でDV・モラハラを受けている
- 子どもの前で夫婦喧嘩をしたり、険悪な空気で過ごしている
こうした環境は子どもに悪影響を与える可能性があります。離婚によって子どもを守れるケースもあります。
また、このような状況を見てきた子ども自身が、両親の離婚を望んでいる場合もあります。
家事や時間の使い方を自由にコントロールできる
離婚をすれば、夫の分の家事をしなくてよくなる上に、ひとりで過ごす時間も増えます。また、夫の帰宅時間や生活リズムに気を遣う必要もありません。
一緒に暮らしている間は、当たり前に相手のペースに合わせていたかもしれませんが、いざ離れてみるとそれが思っていた以上に負担だったと気づきます。
空いた時間を自分の趣味や友人との交流に使ったり、好きなように仕事をしたりと、自分らしい生き方ができるでしょう。
新しいパートナーとの恋愛や再婚が可能になる
子どもの有無や自身の状況にもよりますが、離婚後は自由に恋愛できるようになります。
厚生労働省の人口動態統計(令和6年)によると、結婚した夫婦の約4組に1組は、どちらかまたは両方が再婚です。
また、法務省の協議離婚に関する実態調査(令和3年)では、協議離婚経験者の約8%が「再婚はしていないが事実婚の相手ができた」と回答しており、法律上の婚姻に限らず新しいパートナーを得ている人は、統計上の数字よりも多いと考えられます。
義実家や親戚付き合いのストレスから解放される
義実家との付き合いに悩んでいる妻は多く、嫁姑問題のストレスで体調を崩す人がいるほどです。夫の親族の集まりでは気を抜くことができませんし、義両親の介護まで押し付けられることもあります。
離婚によって夫の親戚付き合いから解放されるのは大きな魅力です。
女性が離婚するデメリット・リスク
女性の離婚デメリット①経済的に苦しくなる
女性は離婚後に経済的に苦境に立たされるリスクが非常に高いため、注意が必要です。
特に、離婚前は専業主婦だった方や、パート・アルバイトで働いていた方にとっては、すぐに十分な収入を得るのは簡単ではありません。
離婚前から仕事を探しておく、貯金を作っておくなどの備えがあると安心です。
また、離婚時に夫から受け取れるお金は、最大限受け取っておくことをおすすめします。
請求できるお金
| お金の種類 | 概要 |
|---|---|
| 財産分与 | 婚姻期間中に築いた財産を夫婦で分ける(原則2分の1ずつ) |
| 年金分割 | 婚姻期間中の厚生年金記録を分割し、将来の年金額に反映 |
| 慰謝料 | 離婚原因を作った側に対して請求できる損害賠償金 |
| 養育費 | 子どもの生活費・教育費として、子どもと離れて暮らす親が支払う |
お金のやりとりについて話し合いで取り決めを行った場合は、内容を公正証書として残しておくことをおすすめします。強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくと、相手が支払いを怠った際に裁判を経ずに強制執行(差し押さえ)を申し立てられるようになります。
なお、自分の方が夫より収入や財産が多い場合は、財産分与で財産が減ったり、年金分割によって受け取れる年金が少なくなったりするデメリットがある点にも注意が必要です。
女性の離婚デメリット②子どもが父親と離れて暮らすことになる
子どもが父親と離れて暮らすことになるのは、子持ち離婚の大きなデメリットのひとつです。
父親と別居することで経済的な負担が増す可能性は高く、また子ども自身も寂しさを感じたり、学校行事などで周囲と比べて傷ついたりすることもあるでしょう。法務省の調査では、片親であることへの偏見を敏感に察知し、1人で辛さを抱え込んでしまう子どもの存在も報告されています。
一方で、離婚後も父親との関係が完全に途切れるわけではありません。子どもの気持ちや生活リズムを尊重しながら、学校行事への参加や親子交流(面会交流)を通じて父子の繋がりを維持できると、子どもにとって大きな支えになります。
ただし、親子交流は回数や頻度を増やせば良いというものではありません。子どもの意向を無視した交流や、両親の対立に子どもが巻き込まれるような状況は、かえって精神的な負担になることも指摘されています。あくまで「子どもにとって無理のない形」を軸に考えることが大切です。
女性の離婚デメリット③話し合いや手続きが大変
離婚するには夫との話し合いが必要ですが、精神的な消耗を伴うことが少なくありません。
決めなければならないのは「離婚するかどうか」だけではありません。親権・養育費・親子交流(面会交流)・財産分与・慰謝料など、多岐にわたる事項を話し合う必要があります。
これらがスムーズに決まるとは限らず、財産分与の額や親権の帰属に決着がつかず、離婚が長引くケースも珍しくありません。法務省の調査によれば、別居前に主要事項を話し合っても「合意できなかった」「そもそも話し合っていない」という夫婦は半数から6割近くにのぼります。
夫婦間で合意できなければ、家庭裁判所での離婚調停に進むことになります。それでも折り合いがつかなければ、離婚裁判での解決を目指すことになります。調停の平均審理期間は約6.8か月、裁判に至ると約14.8か月、財産分与が絡む場合は約19か月に及ぶこともあります。
さらに、離婚が成立した後も手続きは続きます。引っ越しや苗字の変更に伴う名義変更は、対象となる書類や窓口が多く、相当な時間と労力が必要です。厚生労働省の人口動態統計(令和6年)によれば、結婚時に姓を変えるのは約94%が女性であるため、離婚後の名義変更手続きの負担も女性に集中しやすい実態があります。
女性の離婚デメリット④家事・育児の負担が増える
婚姻中は夫が担当していた分もひとりで担うことになるため、家事・育児の負担が大きくなります。
自分の仕事や子どもの世話の合間に全ての家事を行うのは、簡単ではありません。体力的にも厳しいと感じる方が多いでしょう。
子どもを預ける場合は、保育園・幼稚園やベビーシッターの費用もかかります。
女性の離婚デメリット⑤介護・看護してくれる人がいなくなる
結婚していれば、夫婦どちらかが病気になったり介護が必要な状態になったときは、互いに助け合うことができます。
しかし、離婚をすると、自分の介護や看護をしてくれる人がいなくなります。孤独死のリスクも軽視できません。
また、本来であれば夫婦同士で行えた介護・看護を、子どもに負担させることになってしまうかもしれません。
離婚前に確認すべき5つのチェックリスト
離婚のデメリットやリスクを最小限に抑えるためには、離婚前の準備が不可欠です。以下のチェックリストを確認し、計画的に進めましょう。
- 経済的な見通し
離婚後の収入見込み、住居費、子どもの教育費を試算し、最低6ヶ月分の生活費を貯蓄できているか - 財産の把握
夫名義の預金・不動産・保険などの財産を可能な範囲で調査し、財産分与の対象を明確にしているか - 証拠の確保
DVやモラハラ、不貞行為の証拠(診断書、録音、メール、写真など)を安全な場所に保管しているか - 就労の準備
専業主婦の場合、資格取得や職業訓練、求職活動を開始しているか - 法的な相談
弁護士に相談し、親権・養育費・財産分与・慰謝料の見通しを把握しているか
特に「経済的な見通し」と「法的な相談」は離婚後の生活を左右する重要項目です。弁護士への相談は、離婚を決断する前の段階でも可能ですので、早めに専門家の助言を得ることをおすすめします。
離婚以外の選択肢はある?
別居
離婚せずに別居生活を続けるという選択肢もあります。夫と離れて暮らしながら、籍を入れたままでいることのメリットを受けられる点が特徴です。
別居のメリット
- 夫が亡くなった際に、妻として遺産を相続できる
- 収入の多い方の配偶者に対して、婚姻費用(別居中の生活費)を請求できる
- どちらが親権者になるかを決めずに済む
- 苗字の変更などの手続きが不要
別居のデメリット
- 新しいパートナーと肉体関係を持つと、不貞行為を理由に離婚や慰謝料を請求される可能性がある
- 自分の方が収入が多い場合は、夫から婚姻費用を請求されることがある
- 別居が長期に及び生計が完全に別になっていると判断された場合、夫が亡くなっても遺族年金を受け取れない可能性がある
- 児童扶養手当など、ひとり親家庭向けの公的支援は原則として受けられない
DVによる保護命令がある場合や、1年以上遺棄されている場合など、児童扶養手当を例外的に受給できることがあります。
関連記事
・婚姻費用をもらい続けるには?離婚とどっちが得?具体的な方法と注意点
家庭内別居
家庭内別居(家庭内離婚)とは、夫婦が同じ家に住みながら互いに一切かかわらずに生活することをいいます。生活リズムが異なれば、顔を合わせることも会話をすることもなく過ごせます。
完全に別居したり離婚したりするよりも金銭的なメリットが大きい一方、同じ屋根の下にいる以上、精神的なストレスは避けられないでしょう。
家庭内別居のメリット
- 別居よりも経済的な負担が少ない
- 夫が亡くなった際に遺産を相続できる
- どちらが親権者になるかを決めずに済む
- 苗字の変更などの手続きが不要
- 世間体が守られる
家庭内別居のデメリット
- 夫と同じ家で過ごし続けなければならない
- 一緒に暮らす子どもが気まずい思いをする
- 新しいパートナーと肉体関係を持つと、不貞行為を理由に慰謝料を請求される可能性がある
- 児童扶養手当など、ひとり親家庭向けの公的支援は原則として受けられない
- 家事や生活費の分担が難しい
家庭内別居と離婚については「家庭内別居とはどういう状態?離婚率は高い?離婚するならここに注意」の記事でも、詳しく解説しているので、ご参考になさってください。
離婚約
離婚約(りこんやく)とは、近年登場した新しい離婚のかたちで、結婚生活を続けながら将来離婚することやその時期を約束することです。
「子どもが成人したら離婚する」「3年後に離婚する」などと決め、それまでの間は婚姻生活を継続します。
離婚約のメリット
- 子どもの環境の変化を抑えられる
- 離婚を覚悟することで、夫婦関係を修復できる可能性がある
- 離婚準備に時間をかけられる
- 離婚までの間は経済的な変化が起こらない
- 世間体が守られる
離婚約のデメリット
- 夫と同じ家で過ごし続けなければならない
- 財産隠しの恐れがある
- 開き直って夫婦関係が悪化する可能性がある
- 約束に法的な強制力はなく、相手が翻意した場合に離婚を強制することはできない
卒婚
卒婚(そつこん)とは、夫婦が籍を残したまま互いに干渉することなく自由に生活する形態です。子育てを終えた夫婦が選ぶケースが多いといわれています。
卒婚のメリット
- 夫が亡くなった際に遺産を相続できる
- 苗字の変更などの手続きが不要
- 世間体が守られる
- いつでも元の関係に戻れる
- 子どもに心配をかけない
卒婚のデメリット
- 新しいパートナーと肉体関係を持つと、不貞行為を理由に慰謝料を請求される可能性がある
- 双方が経済面・生活面で自立している必要がある
- 離婚につながるリスクがある
再構築
再構築とは、破綻してしまった夫婦関係を一から作り直して、夫婦としてリスタートすることです。互いの信頼を取り戻すために、夫婦がしっかりと話し合い、協力していく必要があります。
再構築のメリット
- 生活水準が保てる
- 子どもへの影響を避けられる
- 良好な夫婦関係を取り戻せる
再構築のデメリット
- 双方の努力が必要
- 失敗する可能性もある
なお、当事者同士だけでは冷静な話し合いが難しいと感じる場合は、家庭裁判所の「夫婦関係調整調停(円満)」を利用する方法もあります。
離婚すべきか迷っている段階でも申し立てができ、調停委員を交えて問題の整理や合意形成をサポートしてもらえます。最初は離婚を求めて申し立てた場合でも、途中で円満な関係の回復を目指す方向に切り替えることも可能です。
関連記事
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離婚のメリットやデメリットに関するよくある質問
Q. 離婚したら後悔する?
一時的な感情で離婚をすると後悔する可能性が高くなります。経済的な見通しが立っていない場合や、一時の喧嘩が原因の場合は特に注意が必要です。冷静になってメリットとデメリットを比較し、将来の生活設計ができてから決断することをおすすめします。
Q. 離婚を後悔しないために事前に確認すべきことは?
離婚後の生活費・住居・仕事の見通しが立っているか、感情が落ち着いた状態で判断できているかを確認してください。離婚理由として「性格の不一致」を挙げる方が多く、一時的な感情による決断との区別が重要です。弁護士への相談は、離婚を決める前の段階でも可能です。
Q. 専業主婦が離婚後に受けられる公的支援は?
主な支援として、児童扶養手当(子どもの人数と収入に応じて支給)、ひとり親家庭等医療費助成制度、母子父子寡婦福祉資金貸付金があります。就労支援としては自立支援教育訓練給付金や高等職業訓練促進給付金も活用できます。まず住んでいる市区町村の窓口に相談することをおすすめします。
Q. 子どもへの影響を最小限にするにはどうすればいい?
離婚が子どもに与える影響は、夫婦間の対立が長期化するほど大きくなるとされています。親同士が子どもの前で相手を否定しないこと、親子交流(面会交流)を継続して子どもと父親の関係を維持することが、子どもの精神的安定につながります。子どもの年齢に応じて、離婚について正直に説明することも大切です。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
