家庭裁判所で離婚相談はできる?利用できる家事手続案内について解説
「家庭裁判所で離婚相談はできるのか」
「家庭裁判所で離婚について何が相談できるのかを知りたい」
家庭裁判所は、「少年事件」と「家事事件」を取り扱う裁判所です。
家庭裁判所では、「離婚すべきかどうか」「慰謝料や養育費は取れそうかどうか」といった、具体的な法律相談をすることはできません。
ただし、家庭裁判所の家事手続案内を利用することで、離婚調停や離婚訴訟といった、離婚問題に関する手続きについてくわしく知ることが可能です。
今回は、家庭裁判所の家事手続案内で相談できることや、相談する流れ、相談したあとの次のステップについて解説します。
目次
家庭裁判所の家事手続案内とは?
離婚問題に関する手続きの説明が受けられる
家庭裁判所の家事手続案内とは、家庭裁判所が取り扱う家事事件の手続に関する説明のことをいいます。
相談者の抱えている問題が離婚問題である場合、離婚調停、離婚訴訟、婚姻費用分担請求調停、財産分与請求調停などの手続きの内容について教えてもらうことが可能です。
家庭裁判所の家事手続案内の流れ
家庭裁判所の家事手続案内の一般的な流れは、以下のとおりです。
家庭裁判所の家事手続案内の流れ
- 家庭裁判所の受付時間内に、訴訟事務室又は書記官室の窓口で受け付けを行う
- 利用者は、申込順の番号が記載された番号札を渡されるので、その番号が呼ばれるまで待合室で待つ
- 順番が来たら、個室である手続案内室か、家事書記官室内のカウンターで相談を行う。1回の家事手続案内は20分程度、長くても30分程度を目途に行われる。
なお、祝日や年末年始を除いて、基本的に平日の8時30分~12時、13時~17時の間で受付をおこなっています。
細かい受付時間は、各家庭裁判所で異なるほか、電話による家事手続案内の実施の有無についても各裁判所で異なるため、事前にご確認ください。
どこの家庭裁判所で相談してもよい
家庭裁判所は全国に50か所あり、各都道府県の県庁所在地(北海道は4か所)に本庁が設置されています。また、本庁のほかに、各都道府県内には支部や出張所も設けられています。
調停の申し立ては、原則として相手方の住所地にある管轄裁判所にしかできませんが、家事手続きの案内はどこの家庭裁判所でも受けることができます。
別居している場合など、相手方の住所地に赴くのが負担な場合もありますので、まずは最寄りの家庭裁判所を利用しても問題ありません。
なお、管轄裁判所以外で申立て方法や申立書の記載方法の説明を受けた場合は、管轄裁判所の名称と連絡先が伝えられ、申立書を管轄裁判所の窓口に直接提出するか、郵送で提出するよう案内があります。
予約なし・無料で利用できる
家事手続案内は、原則として予約が必要ありません。そのため、利用者の都合の良い日に相談できるというメリットがあります。
また、家事手続案内は無料であるため、費用を気にせず相談できます。
家事手続案内で相談できること
家事手続案内では、以下の内容を相談できます。
家事手続案内で相談できること
- 家庭裁判所の手続きに関すること
- 審理期間に関すること
- ほかの相談先や関係機関の情報
家庭裁判所の手続きに関すること
家事手続案内では、家庭裁判所で利用できる手続の概要、手続の一般的な流れ、手続終了後の流れなどについて説明を受けることができます。
離婚相談の場合、相談者が相手方との話し合いを望んでいるなら離婚調停について説明を受けることができます。
具体的には、離婚調停の申立て方法、申立先、費用、添付書類、申立書の記載方法などについて教えてもらうことが可能です。
審理期間に関すること
離婚調停や離婚訴訟を検討している方にとって、「解決までどれくらいの時間がかかるのか」という点は非常に気になる点でしょう。
家事手続案内では、これらの手続に関する一般的な審理期間を教えてもらうことも可能です。
ただし、あくまで目安なので、ご自分の場合にどれほどの審理期間がかかるかを約束するものではない点にご注意ください。
ほかの相談先や関係機関の情報
利用者の抱えている問題が家庭の問題ではない場合や、家庭裁判所の手続以外での解決を望む場合、関係機関の紹介を受けることも可能です。
例えば、弁護士会や法テラス、配偶者暴力相談支援センターなどの相談先について説明を受けることができます。
家事手続案内で相談できないこと
家事手続案内では、以下の内容を相談することはできません。
家事手続案内で相談できないこと
- 家庭の問題ではないこと
- 離婚すべきかどうかの判断
- 法律相談に該当すること
- 係属中の事件に関すること
- 特定の弁護士の紹介
家庭の問題ではないこと
家庭外の第三者との間の紛争については、家事手続案内の相談対象外です。
ただし、配偶者の不貞相手(浮気相手、不倫相手)に対する慰謝料請求については、手続きの説明を受けられます。
離婚すべきかどうかの判断
家庭裁判所では、離婚すべきかどうかに関して相談することはできません。
離婚すべきかどうかは、それぞれの家庭の具体的な状況によって左右されるため、弁護士などほかの相談窓口に相談することをおすすめします。
法律相談に該当すること
家事手続案内は、法律問題に関しては説明を受けられません。たとえば、以下のような相談が該当します。
法律相談に該当すること
- 「婚姻費用や養育費はいくらになるか」
- 「財産分与は請求したほうがいいのか」
- 「離婚調停を申し立てれば離婚できるか」
- 「この証拠で配偶者の不貞を証明できるか」
ご自身の離婚問題について、より具体的なアドバイスを聞きたい方は、離婚問題に強い弁護士に相談するのが最もおすすめです。
係属中の事件に関すること
すでに係属中の事件に関する相談もできません。たとえば、「次回の調停期日でどのように主張すればよいか」といった相談が該当します。
離婚調停係属中に家事手続案内を利用して自分に有利な情報を得ようとしても、係属中事件かどうかはすぐに分かるため、係属中と判明した時点で案内は終了します。
自分が当事者となっている事件について、どうしても質問したいことがある場合は、弁護士に相談しましょう。
弁護士を立てていない場合は、事件を担当している係に質問するとよいでしょう。手続に関する質問であれば説明を受けられるはずです。
特定の弁護士の紹介
家事手続案内で「その質問は法律問題に当たるためお答えできません」と言われた場合、弁護士を紹介してほしいと思う方もいらっしゃると思います。
しかし、家庭裁判所が特定の弁護士を紹介することはありません。弁護士会や法テラスについては情報提供を受けることが可能です。
家庭裁判所で家事手続案内を受けたあとは?
離婚調停や離婚裁判に進む
家庭裁判所で家事手続案内を受けた後、「離婚の話し合いがまとまらず、離婚調停をするしかない」ということになった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停は以下のような流れで進んでいきます。
離婚調停の流れ
- 申立書を作成して家庭裁判所に提出する
- 裁判所から呼出状が届く
- 調停期日が開かれ、話し合いが行われる
- 調停を何度か繰り返す
- 成立または不成立となって調停が終了
離婚調停が不成立になったら、再度夫婦で協議を行うか、離婚裁判を起こします。なお、日本の制度上、離婚裁判を起こすためには、先に調停を行って不成立になっている必要がありますので注意してください(調停前置主義)。
離婚調停では、しっかりと準備をして調停委員をうまく味方につけることで、有利に調停を進めることができます。くわしくは『離婚調停の流れは?有利に進める方法を解説!』をご覧ください。
弁護士に相談する
離婚調停を申し立てるということになったときは、弁護士に相談することをおすすめします。
離婚に関する争点が少ないケースであれば、弁護士に依頼することなく自分で進めてもよいといえます。
ただし、書類の作成を自分でおこなう必要があったり、うまく調停委員とやり取りすることが難しかったりなど、さまざまなリスクがあることも事実です。
弁護士に依頼すれば、不利な条件で離婚させられるリスクを小さくできるほか、離婚裁判に移行した際も、スムーズに対応することができるというメリットがあります。
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家庭裁判所に相談できない離婚問題の相談先は?
家庭裁判所では家事手続案内を利用することで、離婚調停や離婚訴訟といった、離婚問題に関する手続きについてくわしく知ることができます。
ただし、具体的な法律相談をすることはできません。
ここでは、家庭裁判所に相談できない離婚問題の相談先について解説します。
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離婚に強い弁護士
離婚相談をしたい場合、最もおすすめな相談先は離婚に強い弁護士です。
離婚に強い弁護士であれば、豊富な経験と専門知識をもとに、ご本人が一番知りたい情報について説明をすることが可能です。
例えば、離婚調停を申し立てた場合の結果の見通しや、婚姻費用や養育費の見込み額、適切な財産分与額について具体的な説明を受けられます。
さらに、「相手の隠している財産を調査したい」「慰謝料を増額したい」「養育費がきちんと支払われるよう対策をとっておきたい」「公正証書を作成したい」など、離婚問題に関するあらゆるニーズに対応してもらうことができます。
離婚問題は時間が経つほど解決が難しくなります。離婚に強い弁護士への相談は、離婚を切り出す前に行うのがおすすめです。
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法テラス
法テラスは、国によって設立された法的トラブル解決のための機関です。
利用者の質問内容に応じ、利用者のトラブルを解決するための方法を紹介したり、最寄りの法テラス地方事務所や弁護士会の連絡先について情報提供しています。
また、無料法律相談に加え、弁護士の紹介や弁護士費用の立替えなどの業務をおこなっています。この援助を受けるには、法テラスが定める資力要件を満たす必要があります。
まずは法テラスサポートダイヤルに電話をして、気になることを相談してみるとよいでしょう。
DVに関する相談先
配偶者からの暴力(DV)については、配偶者暴力相談支援センターや警察へ相談することができます。
配偶者暴力相談支援センターでは、DVに関する相談や別の相談機関の紹介、カウンセリング、被害者やその同伴家族の一時保護、保護命令制度についての情報提供、シェルターについての情報提供などを行っています。
警察では、「犯罪被害者の相談窓口」及び「警察総合相談電話番号」を設けて、相談に応じています。
家事手続案内でこれらの機関を利用したいと伝えれば、情報提供を受けることができます。
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その他の相談機関
①市区町村役場
離婚する際は、離婚後の生活設計について考えておくことも重要です。
児童扶養手当、児童手当、母子父子寡婦福祉資金、生活保護など離婚後に受けられる可能性のある公的支援について、市区町村役場で事前に相談しておくのがおすすめです。
②公証役場
協議離婚する場合、将来のトラブルを防ぐために、離婚協議書や公正証書を作成しておくと安心です。
特に、強制執行認諾文言つき公正証書を作成しておけば、相手方が養育費などを支払わなかった場合に裁判を経ることなく強制執行できるメリットがあります。
公正証書について、詳しくは最寄りの公証役場に相談に行ってみるのが良いでしょう。
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不安な方は弁護士に相談!
家庭裁判所では、「離婚すべきかどうか」「慰謝料や養育費は取れそうかどうか」といった、具体的な法律相談をすることはできません。
ただし、家庭裁判所の家事手続案内を利用することで、離婚調停や離婚訴訟といった、離婚問題に関する手続きについてくわしく知ることが可能です。
「家庭裁判所では相談できない離婚問題について相談したい」「離婚調停を自分ひとりで進めることが不安だ」という方は、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士に相談すれば、さまざまな離婚問題について法的な観点からアドバイスをもらえます。離婚調停の手続きを任せられるうえ、離婚裁判に移行した際もスムーズな対応が可能です。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了