離婚の慰謝料請求の方法と分割払いの注意点

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離婚慰謝料を請求する方法には、夫婦間の話し合い・内容証明郵便の送付・離婚調停・裁判の4種類があります。

慰謝料は、相手に不貞行為やDV(家庭内暴力)などの有責行為がある場合に、民法第709条に基づき請求が認められます。

法務省の調査によると、離婚時に慰謝料名目でのお金のやり取りがあったと回答した人は12.4%にとどまります。請求が認められるケースは限られており、相手の有責性を示す証拠を準備することが重要です。

この記事では、各請求方法の特徴と手続きの流れ、一括払いと分割払いそれぞれの注意点を解説します。

目次

離婚で慰謝料請求する方法

離婚慰謝料とは?

離婚慰謝料は、離婚の原因となった行為で受けた精神的苦痛に対する賠償金です。

離婚したことで負った精神的苦痛に対する「離婚自体慰謝料」と離婚の原因となった不倫やDVなどの行為で負った精神的苦痛に対する「離婚原因慰謝料」をあわせて請求できます。

離婚すれば、必ず慰謝料を請求できるわけではなく、相手の浮気などの不法行為が原因で離婚した場合に請求できます。

離婚で慰謝料請求できる条件と相場

離婚慰謝料を請求できるのは、相手に不貞行為・DV・悪意の遺棄・重大な侮辱など、婚姻破綻の原因となる有責行為がある場合に限られます(民法第709条)。

モラハラについては、暴力に準ずる言動や重大な侮辱と認められるほど程度が悪質な場合に有責行為として認められます。性格の不一致など特定の有責行為がない場合は、原則として請求できません

慰謝料の相場は離婚原因や個別事情によって異なり、裁判例では100万円〜300万円の範囲で定められることが一般的です。

不貞行為が原因の場合は200万円〜300万円程度とされる例が多く、300万円を超えるケースは相手方の資力が非常に高いなど特別な事情がある場合に限られます。

婚姻期間の長短・有責行為の回数や悪質性・子どもの有無・当事者の年齢や収入など、個別の事情を総合的に考慮して金額が決まります

離婚慰謝料を請求する4つの方法

慰謝料の請求方法は、以下のような方法があります。

  • ①夫婦間の協議での慰謝料請求
  • ②内容証明郵便による慰謝料請求
  • ③離婚調停での慰謝料請求
  • ④離婚裁判での慰謝料請求

協議での慰謝料請求は、お互いの合意が成立することで支払ってもらえます。

また、既に別居・離婚している夫や不倫相手に内容証明郵便を送付して慰謝料請求する方法もあります。

離婚調停や離婚裁判では、主に離婚をするべきかという点を中心に話し合っていきますが、慰謝料や養育費、親権についてもいっしょに話し合うことができます。

請求方法①夫婦での協議で慰謝料請求する

夫婦間の協議で慰謝料請求できる!

夫婦間の協議で、慰謝料を請求することができます。

協議離婚は、お互いが合意して、離婚届を提出することで成立する離婚方法です。

その協議の中で、慰謝料や財産分与、親権などの離婚条件について協議することができます。

メリットは、相手が同意すれば、相場の金額以上の慰謝料を請求することができる点です。

あくまで裁判でなく協議であるため、お互いが納得すれば慰謝料金額を自由に設定できます。

しかし、離婚協議はお互いが話し合って合意することによって成立するので、相手が応じてくれないと協議に基づいて慰謝料を請求できないのがデメリットです。

また、協議だけでは単なる口約束となってしまうため、せっかく協議が成立しても反故にされて慰謝料を支払ってもらえないおそれがあります。

公正証書を作成して慰謝料を確実に支払ってもらう方法

離婚協議で慰謝料を請求する場合、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することをおすすめします。

公正証書とは、公証人が作成した証書であり、書かれた内容には法的拘束力が生じます。

単に離婚協議だけで慰謝料を支払ってもらおうとすると、離婚後に約束を反故にされて慰謝料を支払ってもらえないおそれがあります。

離婚する際、慰謝料や養育費、財産分与を公正証書にしておけば、慰謝料の支払いが滞った際にただちに差し押さえをすることができます。

公正証書の作成は、弁護士や行政書士、司法書士などの専門家に依頼することもできます。

弁護士に依頼すれば、公正証書の作成だけでなく、相手との交渉や内容の取り決めのご相談にも対応してもらえます。

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解決金として支払ってもらう方法もある

協議離婚や調停離婚の際、解決金の名目でお金を支払ってもらう方法もあります。

解決金とは、離婚時に夫婦間のトラブルを解決するために支払われるお金です。

例えば、「慰謝料」とすると支払った側に離婚原因があることが明確になってしまうため、「解決金」という名目で慰謝料に相当する金額を支払うようなケースが考えられます。

解決金は、名目が違うだけで、協議による慰謝料請求と同じくお互いが合意することで支払ってもらえます。

そのため、相手が合意すれば、離婚理由に関わらず金銭を支払う内容で合意することも可能です。

ただ、慰謝料と違って法的根拠がなく、あくまで相手が任意に支払ってくれるお金なので、離婚後に相手が支払ってくれないおそれもあります。

確実に解決金を支払ってもらうためにも、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくことをおすすめします。

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請求方法②内容証明郵便による慰謝料請求

内容証明郵便による慰謝料請求で言い逃れを防ぐ

既に夫と別居・離婚している際には、内容証明郵便を送付して慰謝料請求する方法があります。

内容証明郵便とは、郵便局がいつ、どんな内容で郵便を送ったかを証明してくれるサービスです。

郵便を送ったことだけでなく、いつ、どんな内容で送ったか記録されるため、遠方に住んでいる相手が離婚条件について言い逃れることを防ぐことができます。

また、内容証明郵便は普通の郵便とは違い、「正式な文書」としての書式となるため、受け取った相手に事態の重大性を気づかせ、心理的な圧迫を与えることができます。

慰謝料請求の時効を延ばせる

内容証明郵便による請求をすれば、慰謝料請求の時効を延ばすことができます。

離婚慰謝料は、離婚の成立から3年の時効期間が過ぎると請求できなくなるおそれがあります。

しかし、慰謝料を支払うよう求める「催告」をすれば、時効の完成が6ヶ月猶予され、その間に調停や裁判で慰謝料を請求する準備をする時間を稼げます。

支払うよういつ求めたかを証明してくれる内容証明郵便を使って催告をすれば、確実に慰謝料請求の時効を延ばすことができます。

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浮気相手の慰謝料請求方法│自分で内容証明郵便を送付

夫が不倫や浮気などの不貞行為をした場合、妻は夫に慰謝料を請求できるほか、浮気相手にも慰謝料を請求できます。

不倫に対する慰謝料とは、不倫によって「平和な結婚生活を送る権利」を侵害されたときに請求できるものです。

浮気相手が既婚者と知りながら関係をもった場合には、夫だけでなく浮気相手にも慰謝料を請求できます。

浮気相手の住所が分かっていれば、内容証明郵便を送付することで相手と顔を合わせることなく慰謝料を請求することができます。

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請求方法③慰謝料を離婚調停で請求する

慰謝料も離婚調停で請求できる!

離婚調停を利用して慰謝料を請求することができます。

離婚の合意ができず協議離婚ができない場合、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てる方法があります。

この調停では、夫婦関係をどう改善するか、改善できないなら離婚の合意はできるのか話し合っていきますが、慰謝料のこともいっしょに話し合うことができます。

調停は、当事者が交互に調停の部屋に入り、調停委員に自分の意見を聞いてもらう形で進めることが多いため、相手と顔を合わせずに手続きを進められます。

また、調停は第三者が間に入って解決策を提示してくれるため、夫婦だけで話し合うよりも感情的にならず、冷静に話し合えることも期待できます。

しかし、お互いが離婚に合意できず、調停が不成立となった場合、調停離婚や慰謝料を請求できないことがデメリットです。

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請求方法④裁判で旦那から離婚慰謝料を取る方法

離婚慰謝料を裁判で請求できる!

協議や調停で離婚の合意ができなかった場合、裁判で離婚を求めることができます。

また、離婚裁判に併せて慰謝料請求の訴訟も起こすことができます。

裁判では、お互いが合意する必要はなく、裁判所が慰謝料請求を認めれば、判決に基づいて慰謝料を支払ってもらえます。

一方で、裁判という性質上、慰謝料請求を認めてもらうには不法行為があったことを証明する証拠を提出しなければいけません。

慰謝料は、相手の不倫やDVなどの離婚の原因となった行為がなければ請求できません。

不法行為の存在を証明しなければならないのは、浮気やDVをした相手でなく慰謝料を請求する被害者側であり、証拠も被害者側で用意しておく必要があります。

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離婚慰謝料は一括請求が原則|分割払いのデメリット

離婚慰謝料は一括で請求するのがおすすめ

離婚後のトラブル回避のためにも、離婚慰謝料を一括で請求することをおすすめします。

慰謝料は、「慰謝料請求権」というひとつの権利であり、一括で請求することができます。

一方で、相手が慰謝料額を一括で支払える能力(資力)がない場合には、分割で支払ってもらう方法もあります。

しかし、分割請求にはいくつかのデメリットがあります。

  • 途中で慰謝料が支払われなくなるおそれがある
  • 離婚後も相手との関係をもち続けなければならない

一括請求であれば、慰謝料を支払ってもらえないような事態を防ぎ、相手との関係も断ち切ることができます。

離婚慰謝料を減額して一括請求する方法

離婚慰謝料を一括で請求する方法のひとつとして、相手が一括で支払ってもらえる金額まで慰謝料を減額する方法があります。

慰謝料の総額自体は減ってしまいますが、一括ですぐに慰謝料を手に入れることができます。

相手が支払いを滞納するおそれがある場合に、自分が妥協できる金額まで減額したうえで一括で支払うよう提案するのも1つの手段です。

第三者に離婚慰謝料を立て替えてもらう方法

第三者に離婚慰謝料を立て替えてもらう方法があります。

たとえば、相手の親族に離婚慰謝料を代わりに立て替えて支払ってもらうことにすれば、慰謝料を減額しなくても一括請求できます。

しかし、法的には離婚慰謝料を支払う義務があるのは離婚の原因となる不法行為をした配偶者や不倫相手です。

配偶者や不倫相手の親族であっても、その親族が立て替えることに同意しなければ、親族に慰謝料を直接請求することはできません。

財産分与として離婚慰謝料分を一括請求する方法

離婚慰謝料を財産分与に含める形で一括請求する方法があります。

夫婦の共有財産を公平に分担する財産分与は、慰謝料とは本来異なるものです。

しかし、慰謝料を、財産分与の中に含めて請求する慰謝料的財産分与という形で請求する方法があります。

判例も、財産分与に慰謝料を含めて請求することを認めています(最判昭和46年7月23日)。

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離婚慰謝料が分割で支払われる時の注意点

途中で離婚慰謝料が支払われない場合に備える

相手がどうしても分割でしか支払えない場合、支払いの内容や条件について強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しましょう。

慰謝料について話し合った内容を公正証書にしておけば、慰謝料の支払いが滞った際にただちに差し押さえをすることができます。

また、離婚慰謝料が支払われない際に支払うよう催促したり強制執行が行えるよう、離婚後の相手の住所や連絡先、勤務先も必ず把握しておきましょう。

さらに第三者に連帯保証人になってもらえれば、相手が慰謝料を支払わない場合に代わりに第三者から支払ってもらえます。

離婚慰謝料の頭金を一括請求し残額を分割請求する方法

離婚慰謝料の一部を頭金として支払ってもらい、残りの金額を分割請求してもらう方法があります。

最終的には分割請求をするため、途中で支払われなくなるリスクはありますが、一部だけでも一括払いで確実に支払ってもらえます。

離婚の慰謝料請求に関するよくある質問

Q. 慰謝料は離婚すれば必ず請求できる?

離婚慰謝料は、相手に不倫やDVなどの不法行為があった場合にのみ請求できます(民法第709条)。性格の不一致や双方に責任がある場合は、請求は認められません。

Q. 慰謝料請求の時効は何年?

離婚慰謝料の時効は、離婚が成立した日または不法行為を知った日から3年です(民法第724条)。内容証明郵便で催告しておくと、時効完成を6か月猶予できます。

Q. 分割払いで取り決めた慰謝料が途中で払われなくなったら?

強制執行認諾文言付きの公正証書を作成していれば、支払いが滞った時点で相手の財産を差し押さえることができます。公正証書がない場合は、改めて裁判手続きを行う必要があります。

Q. 浮気相手にも慰謝料請求できる?

配偶者と浮気相手は共同不法行為者として連帯責任を負うため(民法第719条)、どちらか一方または両方に慰謝料を請求できます。ただし、合計額を超える二重請求はできません。

弁護士に依頼して離婚の慰謝料請求をする方法

離婚慰謝料は、相手と交渉し合意し、それができなければ裁判で請求する方法があります。

相手と交渉して支払ってもらう方法は、相手が応じてくれることが前提であり、合意ができたとしても約束を反故にされて結局支払ってもらえないおそれがあります。

裁判で請求する方法も、相手の不法行為について自分で主張・立証をしなければならず、事前に証拠を集めておかなければ慰謝料請求を認めてもらえません。

離婚慰謝料を確実に支払ってもらうためにも、弁護士に依頼して請求しましょう。

慰謝料や解決金などの離婚問題を扱う弁護士に依頼すれば、慰謝料について適切なアドバイスをもらい、協議の段階から交渉してもらうこともできます。

離婚慰謝料の請求方法に迷ったら、ぜひ弁護士にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了