離婚における財産分与と慰謝料の違い|それぞれ請求できる?

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離婚の財産分与と慰謝料の関係

「財産分与と慰謝料ってどこが違うんだろう?」

「両方とも請求することはできないの?」

離婚の財産分与と慰謝料は、目的や請求できる条件、請求できる人が違います。

しかし、慰謝料と財産分与は全く無関係ではありません。慰謝料を財産分与に含めて請求したり、慰謝料と財産分与を相殺することもできます。

本記事では、慰謝料と財産分与の違いと関係、それぞれの金額の相場について詳しく解説していきます。

離婚の際の財産分与と慰謝料の違い・関係

離婚の財産分与と慰謝料の違いは目的や金額、請求者

財産分与と慰謝料は、どちらも離婚時に金銭を請求できる権利ですが、請求できる条件請求できる者請求期間などが異なります。

財産分与は、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を2分の1ずつ分ける権利です。

一方で、慰謝料は、離婚の原因が相手にある場合に限り、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償を求めることができます。

つまり、財産分与は離婚原因に関わらず請求できますが、慰謝料は必ず請求できるわけではありません

また、慰謝料は不法行為をされた配偶者が請求することができますが、財産分与は夫婦どちらからも請求することができます。

さらに、請求できる期間も財産分与が離婚後2年以内であるのに対して、慰謝料は通常、離婚後3年が時効期間となっています。

財産分与と慰謝料の違いまとめ

財産分与慰謝料
内容共有財産の公平な分配精神的苦痛の賠償
請求できる人夫婦どちらからでも不法行為をされた側
請求できる金額原則共有財産の2分の1100~300万円程度
請求できる期間離婚後2年間離婚後3年間
お互いの関係慰謝料と別に請求できる財産分与に含めることもある

離婚の財産分与と慰謝料はそれぞれ請求できる関係

財産分与と慰謝料は、目的の異なる別個の請求なので、それぞれ請求することも同時に請求することも可能です。

不倫やDVなどの不法行為が原因で離婚する場合、慰謝料だけでなく財産分与請求をすることで夫婦の共有財産を分けることができます。

とはいえ、実際の離婚では同時に話し合われることが多く、あえて財産分与と慰謝料を別々に考えなくとも、慰謝料的財産分与として、慰謝料を財産分与に含めて金額を調整する方法も採られます。

たとえば、家や車などを売却せず使用し続けたい場合、慰謝料をお金ではなく財産分与という形で家や車をそのままもらうことができます。

慰謝料的財産分与を行った場合、慰謝料も財産分与に含めて既に請求できているため、財産分与とは別に慰謝料を請求することはできないことにも注意しましょう。

また、慰謝料の名目で金銭のやり取りをすると、支払った側に離婚原因があることが明確になってしまうため、財産分与と慰謝料をあえて分けず「解決金」の名目で金銭をもらう場合もあります。

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離婚の財産分与と慰謝料は相殺できる

慰謝料と財産分与は、条件を満たせば「相殺」をすることができます。

相殺とは、対等な額を帳消しにすることです。

ただし、不貞行為などの不法行為に基づく慰謝料の場合、慰謝料を請求された側から一方的な相殺は法律上禁止されています。

たとえば、夫が浮気をした場合、「財産分与の取り分を慰謝料ぶん減らすから、慰謝料の支払いはそれで終わり」と夫から主張することは認められません。

もっとも、有責配偶者でない妻の方から相殺をすることは可能です。

離婚時に現金がない場合など、「後からだと本当に支払ってもらえるかわからない」というような場合には、財産分与と相殺して処理してしまった方が安心でしょう。

離婚で財産分与も慰謝料もないケースはある?

離婚で財産分与が認められないケース

財産分与は離婚の原因に関わらず請求でき、相手も原則拒否することができません。

ただし、築いた財産に対する貢献度や経済状況に応じて、減額が認められることがあります。

また、財産分与の対象となるのは婚姻中に築いた夫婦の共有財産のみで、一方の配偶者が独自に所有する「特有財産」(例えば、結婚前に取得した財産や相続・贈与による財産など)は含まれません。

さらに、財産分与の請求は離婚後2年以内に行わなければ、家庭裁判所での審判申立てが不可能になることがあります。

離婚で慰謝料請求が認められないケース

慰謝料は、精神的苦痛の賠償として、浮気やDVなどの不法行為を行った配偶者に対して請求できます。

夫婦双方に原因がある場合や、夫婦関係がすでに破綻していた場合には慰謝料の請求が認められないことがあります。

すでに十分な慰謝料的財産分与の支払いを受けている場合も、慰謝料の請求は認められません。

また、慰謝料は離婚後3年を過ぎると時効によって請求できなくなる可能性があります。

財産分与とは?

財産分与は夫婦共有財産の分割

財産分与とは、夫婦が離婚する際に、婚姻中に築いた財産を公平に分ける制度です。

例えば、結婚中に購入した家や貯金、車などは、財産分与の対象となります。

財産分与のポイント

  • 離婚の原因に関係なく、どちらの配偶者からでも請求できます
  • 専業主婦・主夫であっても、基本的には財産の半分の分与を受けられます

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財産分与には、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与という3つの性質があり、それぞれ目的が異なります。

清算的財産分与:夫婦の財産を公平に分配する

清算的財産分与は、夫婦が築いた財産を築いた財産を公平に分配する、最も一般的な財産分与です。

例えば、夫婦が結婚後に購入したマイホームは、清算的財産分与の対象となります。この場合、誰がマイホームを所有するのか、売却代金の何割を得られるのかなどを話し合い、決めることになります。

扶養的財産分与:離婚後の生活を守る

扶養的財産分与は、離婚によって一方の配偶者が経済的に困窮してしまわないよう配慮するための財産分与です。

とくに、育児のため仕事を辞めて専業主婦となっているような場合は、突然離婚という事態となると、たちまち生活が立ち行かなくなってしまう可能性があります。

そのような事態を防ぐために、収入の十分でない配偶者は、扶養的財産分与を相手に請求することができます。

扶養的財産分与の金額は、夫婦の収入や財産状況、離婚後の生活状況などを考慮して決められます。

一般的には、離婚後に新たな職を見つけ、自立して生計を立てるまでの1年程度の生活費が認定されることが多いです。

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慰謝料的財産分与:離婚による精神的苦痛を金銭で解決する

慰謝料的財産分与とは、離婚によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料を、財産分与の中に含めて請求するものです。

本来、離婚によって精神的苦痛を受けた場合は、財産分与とは別に「慰謝料」という形で金銭を相手方に支払うよう求めることができます。

しかし、財産分与と慰謝料を別々に請求するのは煩雑な場合もあるため、慰謝料も考慮した上で財産分与の金額を決め、まとめて解決するという方法も一般に用いられています。

財産分与の相場は2分の1が原則

財産分与の割合は、原則として2分の1、夫婦の財産の半分を分けるよう求めることができます。

ただし、夫婦間で話し合いによって自由に分与額や方法を決めても問題ありません。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所で財産分与調停や審判を申し立てることができます。

家庭裁判所は、夫婦双方が協力して得た財産額、協力度、婚姻期間、生活状況など、離婚前後のあらゆる事情を考慮して分与額を決定します。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

配偶者の一方の財産形成への貢献度が極めて高い場合には、分与の割合が変更されることもあります。ただし、これは例外的なケースで、原則通り2分の1の割合での分与となることがほとんどです。

慰謝料とは?

慰謝料とは?離婚による精神的苦痛の賠償金

慰謝料とは、離婚によって受けた精神的苦痛に対する賠償金として支払われるお金です。

ただし、離婚すれば必ず慰謝料を支払ってもらえるわけではありません。

慰謝料は、配偶者の浮気やモラハラ、DVなどの不法行為が原因で離婚に至った場合に請求できます

離婚原因によって変わる慰謝料の相場

慰謝料も、夫婦間の話し合いで金額を自由に定めることができます。

しかし、合意ができなかった場合は離婚調停や離婚裁判を通じて慰謝料を支払ってもらえるか、具体的な金額をいくらにするか決めていくことになります。

浮気などの不貞行為の場合の慰謝料相場は100万円〜500万円、悪意の遺棄やモラハラでは50万円〜300万円、DVでは50万円〜500万円と個別の事情によって金額に幅があります。

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財産分与と慰謝料請求は弁護士に相談

慰謝料と財産分与は、それぞれ別の請求ではありますが、まったく無関係というわけではありません。

離婚の原因や夫婦の経済状況、婚姻生活中の状況によって金額は大きく変動します。

また、慰謝料を財産分与に含めて請求できることができたり、慰謝料と財産分与とを相殺できることもあるため、交渉によっては自分に有利な価格に決めることもできます。

離婚後の生活にもかかわる、大事なお金の話ですから、損をしないためにもまずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了