好きだけど離婚したいと思うのはおかしい?仲良し夫婦が別れを選ぶ理由と向き合い方

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自営業さy

「お互いを嫌いになったわけじゃない。むしろ仲はいい。でも、なぜか一緒にいるのが苦しい」

そんな風に感じている方は、少なくありません。最近では「仲良し離婚」や「好きなまま離婚」という言葉も耳にするようになりました。

しかし、夫婦仲がいいのに離婚するというのは周囲には理解されづらいですし、自分でもまだ好きな相手と離婚に踏み切ってよいのか分からずに悩んでいる方が多いのではないでしょうか。

この記事では、「好きだけど離婚したい」と悩んでいる方に向けて、なぜそんな思いになるのか、どう向き合えばよいのかをわかりやすく解説していきます。

「好きでも一緒にいられない」はおかしくない

「愛しているのに離婚したいなんて、自分はおかしいのかも…」
そう感じる人は多いものです。しかし、人間関係、とくに結婚生活は「好き」という気持ちだけで成り立つものではありません

結婚生活には、以下のような現実的な側面があります。

結婚生活で重要な要素
生活リズムや価値観の一致家事の分担、金銭感覚、時間の使い方など
子どもや家族に対する考え方子どもの有無や教育方針、親との関係など
将来設計仕事、住環境、老後の暮らしなど

こうした価値観がすれ違うと、「好き」という感情があっても、共に暮らし続けることに無理が出てくるのです。

仲良し夫婦でも離婚を選ぶ理由とは?

夫婦仲が良好なのに離婚を選ぶなんて、もしかしたら周囲には理解されにくい選択かもしれません。ですが、近年では「仲良しでも離婚する夫婦」も珍しくありません。

ここでは、仲のいい夫婦が離婚を選ぶ理由の一例を紹介します。

仲良し夫婦の離婚理由

  • コミュニケーションのすれ違い
  • 将来の方向性
  • 家事や育児をしない
  • 経済的な理由
  • セックスレス・恋愛感情がなくなった

コミュニケーションのすれ違い

  • 仲がよすぎてかえって本音で話せない
  • 言わなくても理解してくれると期待してしまう

あまりに仲がいい夫婦だと、不満があっても言い出しづらくなってしまったり、言わなくても分かってくれると期待しすぎてしまう場合があります。また、ずっと仲がよかった夫婦は話し合いや喧嘩に慣れておらず、関係改善に踏み出せないケースもあるでしょう。

受け入れられない点が多くあり離婚した方が幸せだと分かっていても、「やっぱり好きだから離婚できない」「私たちならやり直せるはず」と迷う方もいます。

将来の方向性の違い

  • 子どもが欲しいのに真剣に考えてくれない
  • 夫のことは好きだけど義両親との同居はどうしても無理

一緒にいて楽しいと感じられる関係性だったとしても、老後まで安心して一緒に過ごせるのかは別の問題です。

子どもが欲しいか、転勤を希望するか、互いの親の介護をどうするかなど、たとえ相手のことが好きでも、どうしても歩み寄りが難しい事項もあります。重大な方向性の違いがあれば離婚が頭をよぎってしまうのも仕方ないことでしょう。

家事や育児をしない

  • 共働きなのに自分ばかり育児をしている
  • 妻が家事をするのが当然という価値観を改めてくれない

相手のことが好きでも、自分ばかり家事や育児をしている状態では生活に無理が生じてしまいます。また、家事・育児に協力してほしいという要望が聞き入れてもらえなかった場合、対話が難しいと感じてしまうでしょう。

経済的な理由

  • 子どもを産んで育てていくためにはもっと収入が必要。だけど相手は収入アップや転職に前向きではないため将来が見えない
  • 相手のことは好きだけど浪費やギャンブルはやめてほしい

このように、たとえ仲がよくても金銭的な不安から離婚に踏み切るケースもあるようです。「家計が苦しいのに相手が働いてくれない」「収入アップを検討してくれない」といったお悩みもよく見られます。

セックスレス・恋愛感情がなくなった

  • 友達のような関係性になり性行為をしてくれなくなった
  • 家族としては好きだけど恋愛感情は薄れてしまった

「友達のように仲のいい夫婦」にはこのような落とし穴があります。友達に対しては性的な感情を抱かないのが普通ですが、たとえ夫婦の一方がそう思っていても、もう一方も同じとは限りません。

異性として見られる機会がなくなり、「もう愛されていない」と悩む方もいます。一度友達のような関係性になってしまうと、男女に戻るのは難しいものです。

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「好きだけど離婚したい」ときに考えてほしい選択肢

相手が好きで離婚してもよいのか迷っている方は、離婚以外の選択肢も検討してみてください。これらの選択肢を見てもやはり離婚するしかないと思うなら、離婚がベストの選択肢なのかもしれません。

まずは話し合う

離婚を考えるほどのすれ違いがあるのなら、まずは話し合いの機会を設けてみましょう。

仲がいい夫婦の中には、改まって話し合うのは照れ臭いと感じる方もいるかもしれません。その場合、まずは手紙やLINEなどを使って不満や要望を伝えたり、話し合いの申し入れをするという方法が考えられます。

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一時的な別居

一時的に別居して、相手と離れたときにどう思うのか確かめてみるのもよいでしょう。別居に踏み切ることで、相手がこちらの悩みを真剣に受け止めてくれて、関係改善に向けた話し合いが円滑になる可能性もあります。

卒婚・別居婚

卒婚(そつこん)とは、夫婦が籍を残したまま、互いに干渉することなく自由に生活するという新しい生活形態です。夫婦の住まいについては、完全に別居する場合も家庭内別居をする場合もあるようです。

別居婚とは、夫婦が婚姻関係を継続しながら完全に別居することを指します。

卒婚や別居婚という形をとれば、法的に結婚していることで得られる金銭的なメリット、例えば婚姻費用の請求権や相続権、税制上の優遇などを享受しながら、双方が自由に生活することができます。夫婦としての繋がりも保たれるため、いつでも元の関係に戻ることが可能です。

離婚を伝えるときのポイント

「好きだけど離婚したい」という思いをパートナーに伝えるのは、とても勇気がいることです。

一緒に過ごしてきた時間や思い出があるからこそ、相手を傷つけたくない気持ちや、自分の本音をどう伝えるかの葛藤が生まれます。ここでは、できる限り冷静に、相手を尊重しながら自分の気持ちを伝えるための3つのポイントをご紹介します。

1. 相手を責めない言葉を選ぶ

離婚の意思を伝える際に大切なのは、相手を非難しないことです。
相手の人格や行動を責めるような表現は、相手の防衛心を強くし、話し合いが感情的にこじれやすくなります。

大切なのは、「私はどう感じているか」「私はこうしたいと思っている」と、自分自身を主語にした伝え方です。これは、カップルセラピーなどでも推奨される「アイ・メッセージ(Iメッセージ)」と呼ばれる伝え方です。

悪い例:「あなたは何もしてくれない」
良い例:「私自身がどう生きたいかを見つめ直したいと思った」

自分の思いを伝えようとするとつい感情的になってしまうという方は、あらかじめ話したいことをまとめたメモを作っておくとよいでしょう。

2. 感情が落ち着いているタイミングを選ぶ

離婚という話題は、どんな状況でも衝撃を与えるものです。

喧嘩の直後や相手が体調不良・仕事でストレスを抱えているときなどは避け、できるだけ穏やかで冷静に話せるタイミングを選びましょう。

話し合いに適したタイミングの例

  • お互いが時間に余裕のある休日
  • 子どもがいない静かな時間帯
  • 心理的に落ち着いた時期や環境(旅行や行事が終わった後など)

3. 第三者の力を借りるのも一つの方法

当事者だけでの話し合いが難しい場合は、第三者の力を借りるという選択肢もあります。

身近な人で言えば、自分たちの親や兄弟、知人などに頼んで話し合いに同席してもらうことが考えられます。また、夫婦関係を扱うカウンセラーに双方の感情を整理してもらうこともできます。

家庭裁判所の離婚調停を利用するのもよいでしょう。離婚調停とは、夫婦間の話し合いで離婚に関して合意ができなかったときに、裁判所の調停委員会の介入を受けて話し合いを行う手続きです。離婚調停では基本的に夫婦が顔を合わせることはないため、冷静に話し合うことが可能です。

その他、弁護士に離婚の話し合いを依頼することもできます。弁護士は依頼者の代理人となり、円満離婚や依頼者の利益の実現のために相手方と交渉します。

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離婚後はどんな関係性になる?

離婚して夫婦としての関係は終わっても、様々な形で関わり続けることが可能です。相手と離れるのが嫌で離婚をためらっている方も、離婚後にどのように繋がりを持つか2人で話し合っておくことで、気持ちの整理がつきやすくなるかもしれません。

子育てのパートナー

円満に離婚すれば、離婚後も子どものために協力し合う関係になれるでしょう。

養育費を通じて金銭的にサポートしたり、一時的に子どもを預かったり、子どもと一緒に出掛けたりなど、親としての役割を続けていくことができます。恋愛感情とは別に、子どもへの責任や愛情を共有できる相手として、尊重し合う形です。

子どもにとっても両親からの愛情を受けられるという大きなメリットがあります。

親戚や義実家との付き合い

義理の両親や兄弟姉妹と良好な関係を築いていた場合、離婚後も無理に縁を切らず、交流が続くことがあります。とくに子どもがいる場合、祖父母としての関わりが続くケースは多く、家族の形は変わっても「信頼できる身内」としての存在感が残ることも。あたたかな関係性を保ちやすい形です。

親しい友達

一緒に過ごした時間や思い出が多いからこそ、離婚しても「人生を共有した同志」のような親しみが残ることもあります。連絡はときどき、でもどこかで互いのことを気にかけている。そんな旧友のような関係性は、執着や未練ではなく、穏やかで健全な距離感を保ちながら続いていくこともあります。

人生の相談相手

長く一緒に過ごしたから相手なら、誰よりも自分の価値観や弱さを知ってくれています。

その安心感から、離婚後も節目のタイミングで連絡をとり、相談したり励まし合ったりする関係になることもあります。夫婦ではなくなっても「何かあったら連絡したくなる人」として心に残る存在です。

最後に|好きでも離婚していい。あなたの人生を大切に

「好きだけど離婚」「仲はいいけど離婚したい」と感じるのは、決しておかしな感情ではありません。むしろ、自分や相手の人生を深く考えているからこそ出てくる思いです。

夫婦関係のあり方や続け方は一つではなく、時には距離をとることでお互いを大切にできる場合もあります。

今の気持ちを無理に押し込める必要はありません。信頼できる人に話を聞いてもらったり、専門家に相談したりすることで、少しずつ自分の本音や望む未来が見えてくることもあるでしょう。

夫婦関係に正解はありません。あなたのペースで、納得のいく形を探していけるとよいですね。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了